Megrim 2018/11/20 12:22

【ラブラブ!マイばでぃ】夜に目覚める狩人たち

●まえがき

久々に掲載の読み物シリーズです!

今回は、「薪割り婦人亭」が舞台のお話。

ミカの「探究の書」の途中を描いております。
どうやら、主人公はすぐに「魔法都市ネフロ」にお使いに行かなかった様子。

この辺は、プレイヤー様毎にプレイの内容が違うと思うので、物語にするときの描写が難しいですね。
違和感なく読んでいただけるか…少し不安があります。

自分がイケメンで、自分のいない場所で女子たちに噂話をされていると思いながら読むと楽しめるかと思います。
そういうモテ願望を実現してほしいという思いが込められています。

ぜひ、作品内の「アイツ」を自分と置き換えて読んでみてくださいね。
きっと気分が良くなると思います。

そういえば、小説を書く度にどんどん文章が長くなってきているみたいです。
だんだん本格的になっちゃってるかも?

ちなみに、この小説シリーズでは、ゲーム内で体験する事ができない部分を描写し、
世界観を広げていくことを目的としています。

基本的にはゲームをプレイしてあることが前提の描写になっており、
サクッと読めるよう細かい設定や人物の説明が排除されています。
ご注意下さい。

それではお楽しみ下さい!
●夜に目覚める狩人たち




「おやっ?随分上機嫌だねぇ。アイツが来たのかい?」




褐色肌の大柄な女が、恰幅のいい宿の女将に話しかける。




「ザウナーさん、分かっちゃったぁ?そうなのよ…ンフッ!」




女将は、赤らんだ頬に両手を当てて微笑んだ。




彼女の名前はミカ。



多くの旅人が行き交うキータニ平原の中央に建つ、「薪割り婦人亭」を切り盛りしている。




この宿は、冒険者の拠点として重宝され、非常に人の出入りが激しい。



また、踊り子や娼婦達も人気で、王都からの客も多く、女将は休みなく働き続けている。



故に、彼女が一人の女に戻る時間などなかった。




そんな彼女が笑みを浮かべている事に、ザウナーは気づいたのだ。




「ミカさん、私にはアンタの接客用の笑顔と、本当の笑顔の区別ができるんだよ。」




ザウナーは、逞しい両腕を胸の前で組み、口角を上げた。




「まぁ、怖いわねぇ。でも、流石は族長のお嫁さんになりかけた人ね。



アナタの前では、隠し事ができないわぁ。」




「おいおい、その話、忘れかけていたところだよ。思い出させないでおくれ。」




「あらっ、ゴメンナサイ!ウフフフッ!」



「ハッハッハッ!」




ザウナーという女は、オデイア王国西方の山中にある蛮族の村の出身だった。



外の世界に憧れ、族長との結婚を拒んでまでこの地にやってきたのである。




そんな彼女を受け入れてくれたのが、このミカであり、「薪割り婦人亭」だった。




彼女は、その逞しい肉体美を駆使して踊り子として活躍し始めている。



褐色の筋肉と程よい大きさの乳房が美しい踊り子がいると、王都に噂が広まっているのだ。




お陰でミカは余計に多忙になってしまったのだが、一人の女性の人生を変えたという事実が救いだった。




「で、アイツは上に?」




「えぇ、今度は違う女性と旅をしているみたいね…。」




先程まで笑顔だったミカの顔を曇らせた「アイツ」とは、ザウナーをこの宿へ連れてきた冒険者の事である。




その冒険者は、英雄と歌われた男の息子で、冒険者としての活躍が王国内に広がり始めているという有名人だった。




そして、ザウナーを連れ戻すために追いかけてきた族長を一対一の決闘で打ち負かし、



無事に彼女をこの宿へ連れてきた恩人でもあった。




その出来事があってからというもの、この二人の女は彼を特別視しており、



彼が訪問する度に心を踊らせているのである。




「まぁ、冒険者ってのは大抵仲間がいるモンさ。あまり気を落とすなよ。」




ザウナーは、女将の肩をさすりながら呟いた。



だが、その実は自分にも言い聞かせているのだった。




「そ、そうよね。一人旅はいくら強い方でも危険ですものね!」




顔を上げたミカの顔は、普段の元気な女将の表情に戻っていた。




「さて、夜は長いわ!もうひと頑張りしなくっちゃね!」




ミカは、両手で力こぶを作ると、ザウナーに満面の笑みを見せた。




「そうそう、ミカさんはそうでなくっちゃね!」




ザウナーは、ミカの背中をバシバシと叩いて激励した。






…こうして、「薪割り婦人亭」の夜は更けていった。






…しばらくして、宿泊客が二階の部屋に移動し、店内の喧騒が収まりはじめた頃、二階から一人の女が下りてきた。




その女は「アイツ」の仲間で、共に宿へやってきた人物であった。




頭頂部の髪は動物の耳のように左右にツンと突き出し、耳の前には髪の房が垂れている。



獣じみた、随分個性的な髪型である。




そんな彼女の動きは無音で隙がなく、明らかに手練の雰囲気を醸し出していた。




その女が、酒場のカウンター席に一人座り、ミカに声をかけてくる。




「女将、何か温かい飲み物をくれないか?目の緊張が解けずに眠れないんだ…。」




女は、眉間を指で抑え、目の疲れを癒やしながら顔を伏せた。




「あらあら。お疲れのようですね。それならば、温かい牛乳はいかがかしら?



心も身体も温まりますよ。」




「フム…それはいいな。私はあまり酒は好まないから…。」




「少々お待ち下さいね。スグにご用意しますから。」




「ありがとう。」




ミカは、店の奥の厨房へ入っていった。



女は、相変わらず眉間を揉んでいる。



そんな疲れた女の右側の席に、木製のイスが壊れるのではないかという勢いで大きな影が落ちてきた。




「おぅ!アンタ、アイツの連れじゃねぇか!な、そうだろ?」




空気を読まない大声で女に語りかけるザウナー。



丁度踊り子としての出番が終わり、休憩に来たのであった。




「…アイツって?あぁ…私達が入店した時に見たんだね。」




女は、静かな口調でザウナーに答えた。



だが、顔の向きと仕草はそのままで、話しかけないで欲しいというような雰囲気だ。




「アイツにはちょっと…じゃない…すげぇ助けてもらってねぇ。



ちょっとやそっとじゃ返せない恩義があるんだよ。」




ザウナーは、殻に閉じこもっている女を無視して、



「アイツ」との出来事やミカとの事を一方的に早口で語りだした。



女は、その間にザウナーに向き直り、静かにその話を聴いていた。




「へぇ、そんな事が…まぁアイツならそれくらいの事はするだろうね。」




女は大して驚く様子もなく、淡々と答えた。




「おっと、喋りまくっちまったけど、自己紹介がまだだったな!



私はザウナーってんだ、よろしく!」






ザウナーは、握手を求めて手を突き出した。



女は、静かにそれに応える。




「おぅっ!コイツは凄い!アンタ…相当腕の良い狩人だね!」




ザウナーは、握っている女の手を眺めながら感心している。






「へ、へぇ、凄いね。」




女は、目を皿のようにして「良く分かったな」と顔で答えた。




「へへへ、驚いたかい?私は人を見る目には自信があるんだぁ。



で、名前は?」




「あ、あぁ…わ、私はルチアだ。よ、よろしく。」




「よろしく、ルチア!



で、で、で、アイツとはどんな仲なんだい?」




いきなり核心をついてくるザウナーに、ルチアはポカンと口を開けてしまった。



そこへ、ミカが温まった牛乳を注いだ木の器を手にカウンターに戻ってくる。




「ザウナーさんったら、大胆過ぎよぉ?



いきなりそんな質問の仕方はないでしょ!」




ミカは、カウンター越しにルチアに牛乳を渡しながら苦言を呈した。



その顔は、出来の悪い妹を叱るような苦笑いを浮かべている。




「ハハハッ!やっぱマズかったかなぁ?…でも、こういうのは隠すようなモンじゃないだろ?」




「あぁ、そうだ。別にやましい事など無いさ。」




「だろう?…じゃ、聞かせてくれよ!」




ルチアは、「アイツ」とは幼馴染で、英雄と呼ばれた彼の父親に憧れて共に旅を続けている事を話した。




「へぇ!やっぱアイツって凄い男だったんだねぇ!」




腕を組んで「うむうむっ!」と頭を縦に振るザウナー。



その脳裏には、彼女の眼前で行われた彼と族長との一騎打ちの映像が浮かんでいた。

ミカは、冒険譚を吟遊詩人から聴いた子供のように瞳を輝かせている。




「私は、目の前で彼の活躍を見た事がないので良く分からないけど、お二人のお話から察する事はできるわ。



とても凄いお強いのでしょうねぇ!」




彼女は、長い事この宿で女将をし、様々な冒険者と交流してきたが、



かの英雄…「アイツ」の父親…以外の冒険者の話でここまで心が踊った事はなかった。




「そんでさぁ…アイツ…心に決めた女はいるのかねぇ?」




ザウナーがボソッと呟くと、ルチアは「ブッ!」と牛乳を吹き出した。




「げほっげほっ!」




「まぁ、大変!」




ミカは、カウンターをくぐり、ルチアにハンカチを手渡す。




「さぁ、これでお顔を拭いて。…もぅ、ザウナーさんったら!変な事言わないでよぉ!」




ルチアの横に座っているザウナーの肩を、女将はバシッ!っと強く叩いた。




「そうは言うがな、私らにとって、とても大事な事だぞぉ?」




ザウナーは、悪びれた様子も、叩かれた衝撃を感じる事もなく、真顔で平然と語る。



残りの二人は顔を紅潮させながら見つめ合い、沈黙している。




「あんな良い男が旅をしているんだ。王国内の女共が狙っているに違いないよ!



あぁ、クソ!そう思うと眠れなくなりそうだねぇ!」




ザウナーは眉間にシワを寄せて、カウンターに右拳を叩きつけた。



静かな店内に、二階の就寝済みの客が起きてしまうような大きな音が響き渡った。




「ちょ、ちょっとぉ、ザウナーさんったらぁ!」




ミカは冷や汗をかきながらザウナーの背中をさする。



そうしながらも、ザウナーの言った事を想像し、肩をすくませた。




「いや、既に…誰かがツバをつけちまったかもなぁ…。まさか、ルチア、アンタ既に…。」




ザウナーは、ルチアの顔を下から舐め回すように見上げた。



その眼光は、嘘を見抜かんと光り輝いている。




「…す、すまない…まぁ、その、何度か…。」




ルチアには、彼女に嘘をつく勇気がなかった。



普段冒険者として魔物を狩るような心強い女でも、である。



それほどまでに鋭い殺気がザウナーの視線に宿っていたのだった。




「ハッハッハッハッ!まぁーそうだよな!」




鬼の形相から一転し、腕を組んで高笑うザウナーの横で、ミカは肩を落とす。



ルチアの方は、赤面して牛乳の入った器を両手で握りしめながらうつむいている。




「男と女が旅をしていて、おまけにその相棒が出来る奴ときたら、夜に何も起こらないワケがないよな!」




断言するザウナーが、ふとミカに目をやると、彼女は頬を膨らまし、口を尖らせている。




「おいおい、ミカさん、怒りなさんな。これが男女ってモンだよ!」




「わ、私は…その…彼についてどうこう言う間柄じゃないし…ねっ…。」




しどろもどろな女将。




「わ、私も…そ、その、そんな淫らな理由では…。なんとなく…流れで…。」




うつむきながら言い訳を呟くルチア。




頬を赤く染める純真な乙女二人を交互に見やるザウナーが言う。




「そんな消極的だと、他のやべぇ女に盗られちまうかも、だぜ!



いいかぃ?これはなぁ、女の戦いなんだよ!オデイア王国の女が全員敵の決闘さぁ!」




ザウナーは雄弁に語りだす。




「人生は一度きり!だから私は村を出て、ここへやってきた!



だからねぇ、幸せになる事を絶対に諦めたくないんだ!



なぁ、そうだろぉ?」




ミカとルチアは小さく頷いた。




「コレは狩りなのさ!良い男を得るためのねぇ!」




ルチアがその言葉に反応し、瞳に光を灯す。




「狩り…。」




「結局の所、先にアイツの心臓を射抜いたモンが勝つんだよ!」




ザウナーの言葉で、ルチアの心に「獲物」の姿が浮かび上がる。



ルチアは、ギュッと器を握りしめた後、グイッとアゴを上げて中の牛乳を一気に飲み干した。



その姿からは、何かを覚悟した雰囲気が感じられる。




だが、ミカの方は、ルチアから取り戻したハンカチを握りしめてうつむいている。




「わ、私には…その…狩りとかって無理かなぁって…。」




そんな彼女の背中にザウナーの手が叩きつけられた。




「おいおい!こんな歴史のある大きな宿を切り盛りする大女将が、そんな縮こまってどうする!



さぁ、顔を上げて戦いを始めるんだよ!」




ザウナーの言葉が、ミカの顔を上向かせる。




「そ、そうね!…わ、私だって戦えるわよね!」




「へっへっへ!その意気だ!…よぉーし、なんか盛り上がってきたなぁ!



女将、今日はもう仕事を終わりにして、三人で飲もうじゃないか!



酒代は、私の給料から天引きで良いよ!



さぁさぁ、酒を持ってこぉーぃ!」




「もぅ、仕方がないわねぇ!酒代は気にしないでいいわよ!



今日は、三人で盛り上がっちゃいましょう!」




ミカは、満面の笑みで厨房へ走り出す。




「眠れるように、目の疲れを癒やしたかっただけなんだがなぁ…。」




ルチアは、小声で愚痴をこぼしたが、もう二階に戻れそうな空気ではない。



仕方がなく、二人に付きう事にした。






…「薪割り婦人亭」の夜は、まだまだ終わりそうにはなかった。






Fin.









…というわけで、いかがだったでしょうか?

女子会チックな内容になっちゃいましたね。

ザウナーを登場させたら勝手に動き出して最後まで勢いよく書けました。
ザウナーはまだゲーム内では娼婦をしていませんが、
「LLMB:X」で娼婦として登場させる予定なのでお楽しみに!

RPGの小説としては、冒険や戦いを描いた方がいいのでしょうが、
このシリーズではそれ以外の部分を補完していきたいと思っております。
実際に戦うのはゲーム内のほうが面白いですからね。

どうせなら、ゲーム内で体感できない部分を楽しみたいでしょう。

今後も、このようにプレイヤーから見えない部分を描いていきたいと思っております。

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