【ジュークボックス】既存のIPの続編が最近多い
最近のゲームはリメイクや続編が多い。ファン待望の、とか伝説のあの作品がよみがえる、なってキャッチコピーで売り出される場合が多い。本当にファンが求めてたのかな、と私は眉唾で眺めていたのだが。友だちの話では、売り上げが見込めないと予算が下りないから既存IPの続編じゃないとだいたい企画会議通らないから、とか言っていた。
ゲーム業界は一本にかかる制作費が無限に肥大していて、今では一本数億とかザラらしい。で、売り上げで回収できないと大爆死。冗談抜きで倒産も見えるそうだ。だから、大手のゲーム会社以外はバタバタと倒産している現状があり。生き残っている会社も大手の下請けで自社IPなんて出す余裕も全くないんだとか。夢を売る業界も、夢や希望が枯渇気味なのかも。
私が昔好きだったゲームに、『デビルサマナーソウルハッカーズ』というゲームがある。発売当時としては近未来的な世界観で、電子的なあれこれと悪魔を組み合わせた先進的なゲームだった。AIと悪魔が合体して、主人公の幼馴染が憑依されて二重人格のようになり。町ではパラダイムXというバーチャル空間にアバターを投影するゲームが流行っていて、しかし、プレイヤーが現実でこん睡状態に陥る病気が流行り始め……ネトゲ系ゲームのよくあるパターンである。アトラスのゲームだからまあ、もちろん魂が抜かれてるわけだ。それについていろいろ調べていくうちに大きな事件に巻き込まれていく。
あのゲームは楽しかった。味のあるキャラクターたちに、ヒロインに憑依した悪魔の精神的成長。主人公はセリフが無いパターンの仕組みだったから、シナリオ上のメインキャラクターはそのAIと合体した悪魔だった。頑張って最後までクリアして、エンディングで感慨にふけったのを覚えている。
んなゲームの、続編が先日発売された。気になっていたので、youtubeのアトラス公式アカウントでPVを見る。そしてがっかり。コレジャナイ感が半端ない。主人公たちは悪魔よりも奇抜な格好をしていて、メインキャラの一人のアジトはなんかデビルメイクライのダンテが住んでそうな事務所である。しかも、その奇抜な服装は普段着らしい。事務所内では観葉植物を育てていて、じょうろで水をあげていた。PVでちょっと見ただけだけど、そんなことをしそうな言動のキャラクターには見えないのだが。なんというか、何から何まで寒い。
オープニングというのは大事である。例えば、服装。スーツのジェントルマンで休日だろうが何だろうがびしっとスーツを着込んでいる。部屋もアンティークで固めた英国調の探偵事務所のようなデザイン。こてこてのイギリス紳士のようなキャラだったとする。が、世界観は普通の現代社会。そうなるとそのキャラは日常からすごく浮くわけであるが。周りにからかわれたり陰口をたたかれても、そのキャラは何一つ気に留めない。そうなると、そのキャラは【そういう服装やセンスが好きで、そのことに対してこだわりを持っている】というのがそのオープニングから受け取れるわけである。
キャラ紹介を兼ねるのがオープニングであり、何も伝わらないオープニングってのははっきり言えば時間の無駄でしかない。で。ソウルハッカーズ2のあの赤いパーカーキャラのオープニングは……残念ながら、何も伝わってこないわけである。普段からあんなに奇抜な服装で髪形もガッチガチにしてるのに。言動がなんというか普通の若者っぽい。事務所もあんな感じなわりに、そのセンスをしていそうな言動をしていない。キャラクターとキャラデザインが全くマッチしていない。かっこいいからこういう服装にしよう、こういう事務所って外国映画とかでよくあるからかっこいいよね。みたいな思い付きで作った感じがすごくする。ゆえに、それを着るキャラクター、そこに住むキャラクターの中身が、そのデザインに伴っていないのだ。
主人公三人の中では、いけてるのはサイゾーだけである。あのキャラは立ち振る舞いと服のセンスが合致している。あそこまでやり切ってるなら、キャラクターとして成立しているといえるだろう。他のキャラ二人は、ダメだね。【ああいう服装をしていそうな言動ができてない】。キャラデザするなら、服装や見た目と言動はちゃんと調整しないと歪みが出る。
今回のネミッサ役である情報生命体みたいなのもちょっとなあ、という感じ。まあ、現代でこういうネタやるなら中身がいないキズナアイみたいなのと悪魔が合体したみたいな感じが鉄板だろうと思うので設定としては旬を押さえてていいと思うんだけど。いかんせん、言動が寒いんだよね……。PVだけでこれだから、ゲーム遊んでたらストレスで発狂しそう。プロデューサーが海外ドラマかぶれっぽすぎる。大げさな振る舞いと言動で、まるで舞台役者みたい。一言でいえば、全てがわざとらしい。
コンセプトアートというか、UIデザインその他全部をPシリーズに寄せているのも気になる。全体的に若い世代向けでリファインしているんだろうというのはわかる。が、ソウルハッカーズを遊んでいた世代はじつに二十年ぐらい前の人々だ。それに対してPシリーズのデザインでゲーム出されても、違和感しか無い。そのくせ、メインキャラクターたちは全員成人してる。シナリオの構造がジュブナイルじゃないのである。この、デザインとシナリオの方向性の乖離もとても気になる。
ジュブナイル、というカテゴリというか、定義が何なのか。私は私の基準で定義を作っているので一般的ではないのだが。一言でいえば、【シナリオの延長線上に主人公たちの成長を入れるかどうか】である。十代の少年少女は思春期であり、精神的葛藤やら人生の分岐点、障害なんかが生きてたら普通に直面するわけで。それが、敵対する組織やら倒すべき敵、達成すべき目標(世界を救うとかね)と一緒に存在すれば、シナリオを書く側としてすごく楽。だって、普通に書いてるだけで山場とかクライマックスとかが勝手にできるわけだからね。で、エンディングでは主人公たちは思春期を乗り越え、一人前の人物として成長する。ジュブナイルの基本構造というのは、【主人公たちの成長】にあるわけよ。
でも、ソウルハッカーズ2はそうじゃないっぽい。主人公たちの記憶の領域みたいなのに入って、過去を垣間見る形で問題や葛藤を描写する。これ、たぶんメインシナリオには入ってないんだよね。だって、主人公たちはそれらが過去のことであり、【既に乗り越えてる】から。終わった話をメインシナリオに組み込んだら単純に間延びするし、そもそも無理なわけよ。だって、メインシナリオにとって既に思春期を終えた人たちの思春期の話なんていらないんだから。で、サブシナリオとして主人公たちの過去が配置されるわけだけど。サブという時点で興味ない人は見ないわけ。そうなると、そもそも存在する意義自体が不明瞭になっていくんだよね。
ジュブナイルにすればなんやかんやでプレイヤーは主人公たちに愛着みたいなのを持つようになるけど。それをしない場合、ただただわけわからん連中が寒い言動で寒いシナリオを進んでいく寒いゲームになる。ソウルハッカーズ2はなんかそんな風に見えるんだよね。
私が好きだった風来のシレンシリーズもそれで終わった。Wiiで新作が出ると聞いてWiiを買ってまで用意したのに。買って遊んでみたらわけわからんシナリオでただただ気持ち悪かった。プロデューサーらしい人の対談とか読んでみたら、「センセー超かっこいい」みたいに自己陶酔してるし。単純に反吐が出た。風来のシレンに求めてるのはそういうプロデューサーのキモイ自慰じゃないんだよ。そういうのは新規IPで勝手にシコれよ。シレンを汚すな。好きだったゲームが赤の他人に凌○された気分だった。
で、それが爆死してシレンシリーズは完全に終了。そのあと、DSで4と5が出たけど。DS自体が開発費安いプラットフォームだったから出せただけだろう。
既存のIPタイトルじゃないと売れないのはわかる。だが、シリーズの名を冠するならちゃんとシリーズの作風を踏襲してほしいと思う。
ソウルハッカーズ2は……PV全部見たけど、受け入れがたかったのでスルー。もはやペルソナのナンバリングにした方がいいんじゃないだろうか。