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2018年 12月の記事 (4)

思叫堂~ロア~ 2018/12/28 01:18

次回作予定:クトゥルフもの 台本1とご意見募集中

吸血のフィーちゃん、愉しんで頂けてるようで有難う御座いますー!
ぼちぼち次回作を作っていこうかと思ってまして、今度はクトゥルフものとかいいかなぁなぞと台本つくっておりますっ!

それで、今回男性ナレにしてみたらどうしようかと少し準備してみたのですが……如何でしょうか?
まだどうしようか悩んでる所がありまして、ノイズ取りなどはまだですが。
これにノイズ取り、SE追加、仔山羊ちゃんの台詞を入れていく……という感じを考えております。

参考にさせて頂きたいので、感想を是非是非頂けると助かりますっ、お願いしますっ!

-=-=-=-=-=-


【黒い子山羊の物語:冒頭】

《がこん……っ!》
(椅子をつっかえ棒にする音)

ショゴス
《てけぇりりりぃいいいいいいいいっっっっっ!!!!》

《どんっ、どんっ、どんっ!みしみしみし……》
(扉を叩く音と、軋む扉)

ドンドンドンと、所々小さく穴の空いた扉が激しい音を立てて悲鳴をあげる。それは、貴方が急ぎ扉に押し当てた椅子が支え棒としてあげる騒音であった。
この異音にして奇音(きおん)、耳を塞ぎたくなる怪音(かいおん)を放ち、破壊を振りまこうとしている存在。

それは、目や口をぐじゅぐじゅと生やしては自ら消化するように泡立つ、大きく、不快な、緑色のスライムとしか形容出来ない化け物……それが放つ轟音(ごうおん)であった。

化け物に出会った部屋は、異様という言葉そのもの。
粘液という粘液に塗れ、部屋の奥には積み上がった朽ちかけた木箱が重なり、貴方はその後ろにあった梯子の先にボロボロの扉をどうにか見つけ、そこに逃げ込んだのだ。

――やっぱり、興味本位でこんな廃屋なんかを見に来るんじゃなかった!
怪しい影を見たなんていう言葉に、好奇心を働かせるんじゃなかった!!

そんな、今更しても仕方のない心の叫びを、何度も繰り返す貴方の背後で響き続ける破滅の音。

《じゅわぁ……》
(扉のとける音)

だが、気のせいでなければ……気のせいであって欲しいと切に願うものの。
扉からはじゅくじゅくと、何か……まるで硬い物が溶け落ちていくような音がはっきりと破壊の音に混じり貴方の耳に届いていた。

タイムリミットを告げてくるかのようなその音に急かされるようにして、逃げ込んだ部屋に何か助けになる物はないかと、貴方は視線を彷徨わせた。

……そこは、直前の部屋とはまた別の、一種の異様としか表現し出来ぬ部屋であった。
歪(いびつ)に歪み(ゆがみ)、不気味に捩れた樹木のような形の蝋燭。
顔の倍はあろうかという立派過ぎる角を持ち、額に五芒星のような文様が刻まれた黒い山羊の剥製。
そして何より、部屋中の壁という壁、床という床、その全てに余す所なく描かれた、何処の文字とも分からぬ蚯蚓の断末魔の動きを表したかのような異様な文字が、その全てを覆い尽くしていた。

黒魔術、カルトの儀式。
そんな言葉がいやでも思い浮かんでしまうその部屋は、どう考えてもマトモな人間が発想すらしないような部屋であり、
その狂気の有様が救いを求める貴方の精神を、余計に追い詰めてくるようであった。

けれど、そう……けれど。
何よりも、貴方の精神を追い詰めているのはその部屋の在り様ではなかった。
そこに置かれた全ての家具、置物、床や壁の異質な文字、それ等全てが……。

一様に、背後から迫り来る怪物の粘液と思わしき緑色の粘着物に覆われ……溶け、崩れかけているという事であった。

ショゴス
《てけぇりぃぃい!!てーけーりーりぃいいいいいいいいっっっっ!!!!》

気付けば、先程まで聞こえていたドンドンと叩くような音が消え失せている。
それと同時に、じゅうじゅうと何かを溶かす音がより大きくなってきているのを、貴方は確かに感じとってしまった。

――この部屋は、決して安全な逃げ場所ではない……。

貴方がそう察するまでに掛かった時間はほんの僅かなものであった事だけが、不幸中の幸いと言うべきものであっただろう。

恐怖が喉元のすぐ近くに、絶叫という形で上って(のぼって)来るのをはっきりと感じながら、貴方は何か逃げ道はないかと忙(せわ)しなく辺りを見回し続ける。
そして……ふいに、とある事に気付いた。

粘液に塗れた山羊の剥製のその真下。
そこに何かを捧げる祭壇のような台と、そこを中心にした小さな円状の周辺にだけ……何故か粘液が存在していない事を。

《ダダダダダッッ》
(駆け寄る音)

その気付きに何かを感じた貴方は、急ぎその台へと向かう。
何かこの窮地から逃れる術がないかと目を血走(チバシ)らせる貴方に……粘液が避けた円の丁度中央。
その台の上に、黒い……何かの毛皮と思われるモノで丁寧に装丁を施(ほどこ)された、一冊の本が置かれている事に気付く。

貴方はその事実に救いを求めるよう、黒い本に手を伸ばし……しっかりと掴んだ。
手に触れた本の装丁の感触は、まるで呼吸する吐息のように生暖かい水気を帯びており、ざわりと……気のせいかもしれないが、微かに鼓動するかのような脈動(みゃくどう)を感じさせた。
貴方はこの、まるで生き物であるかのような、不気味な感覚を放つ本を思わず手を放しそうになる。
だが、未だ止まぬ、迫り来る危険の音がその嫌悪感を押し殺させ、本を……開く事を選ばせた。

《ぱら、パラララ……》

本を開くとそこには、英語やドイツ語と思われる比較的見覚えのある文字、それに床や壁に描かれた奇怪(きっかい)な文字が入り混じり、ツギハギだらけの異様な文章の羅列を作っていた。
箇所によっては古い……それこそ何十、或いは何百年、それ程昔の本をコピーでもしたのかのような皺だらけのページや、紙質(かみしつ)からそもそも作られた年代自体も違うようなものが入り混じり、本と呼んでいいかも分からぬ紙片の集合体といった様子であった。
そうした理解の及ばぬ……本と呼ぶべきかも怪しい、正しく(まさしく)奇怪なる紙の束……それが黒い毛皮の装丁の本の内容だった。

勿論、貴方にはそれは読む事も、文字の意味の一つすら分からぬモノであったために、一刻(いっこく)を争う現状においては、解決の糸口にすら成りえぬモノであった。

落胆と恐怖、そうしたものに心が塗り潰されそうになるのを感じながら、それでも何かないかと必死にページを捲(めく)っていると……その本の中に数行。

そこにだけ、読み方の注釈を入れたかのように、一つの付箋(ふせん)が張られている場所がある事に貴方は気付いた。
その付箋だけは、何故かひらがなで……まるで決して読み間違える事のないようにでもしたかのように、こう書かれていた。

――「え=う しゅぶ=にがあす! んが=りら ねぶ しょごす!」
――「いや いや しゅぶ=にぐらす! いあーる むなーる うが なぐる となるろ よらなるか! 」

付箋にはただそれだけ。
意味のわからぬ、何を指すかも分からぬその言葉だけが記されている。

だが、あまりに……そう。
あまりに異常なこの状況に、何かが起きると期待した訳でもなかったが……貴方は気付くと、その付箋の言葉を呟いた。
貴方がその言葉を最後まで言い切った瞬間、何故かくらりと一瞬意識が遠くなった……。

そして、黒く大きな巨木、いや巨木と思える程に大きく捻じ曲がった雲のような体と角を持った歪(ひず)んだ黒い山羊のようなナニかが、貴方を見つける……そんな幻影を見た、気がした。

《じゅる…………どごんっ!!》
(溶け落ちる音)

ショゴス
《てぇけぇーーーーー、りーーーーーーーりぃいいいいいいいいい!!!!》

だがその瞬間、貴方の背後で硬かったはずの何かが溶け落ち、そして爆ぜるように木材が跳ね飛ばされる音が貴方の耳に届き、ハっと後ろを振り返る。

そこには既に、辛うじて貴方を守ってくれていたはずの扉は存在していなかった。
代わりとばかりに、無数と目と口、そして不定形にわななく粘液を滴らせた……貴方を襲おうとした化け物が、もはや何の障害もないと嘲笑うかのように全身を蠢(うご)めかせている。
そして化け物は、ようやく追い詰めた獲物を味わうべく……ゆっくりと体の一部を触手のように伸ばし、ゆっくり……ゆっくりと……貴方に向かって、その触腕(しょくわん)を纏わりつかせんとした。

もはやここまでと、粘液を滴らせる触手を目前に、ぎゅっと目を閉じる貴方。

せめて、その触手に捕われても痛みがないようにと祈り……。
もはや、そんな儚い望みを願うしか出来なくなった貴方の耳に、ぴちゃりと、粘液がまさに絡まる音がはっきりと聞こえたそうになった……その瞬間。

仔山羊
「めぇ”ぇ”ぇ”ぇ”ぇ”ぇ”ぇ”ぇ”…………!!」

《ばしんっ!!》
(触手を叩き落とす音)

ショゴス
《でげぇっ!?てけ、り……りぃいいいいいいっっ!!!!》

甲高く、濁り……動物の声のようで何処か(どこか)不快感を思わせ……なのに、何故か(なぜか)愛らしい。
そんな形容し難い(がたい)ナニかの叫び声が響いた瞬間、間近に迫った、濁った水音が遠くに弾かれる音が聞こえた。

そして、今まで貴方を嘲る(あざける)ように耳障りに喚(わめ)いていた怪物の、焦るような悲鳴が部屋に響いたのだ。

仔山羊
「お母様の子供である私たちと、奉仕種族のどちらが優秀かこの目で見たい……。
そんな馬鹿げた願いを、よくもこんなバラバラで、不躾で、無様な切り貼りの言葉での嘆願。
何より、精神力だけという粗末な供物(くもつ)しか用意せず……お母様にお願い出来たものですね?
まったく……人間というのは、本当に失礼で無謀(むぼう)な生き物です」

ずるずると、遠ざかっていく様子の粘り気のある水音を遮る様にして、涼やかな声が……貴方に語りかけてきた。

何が起きたか理解出来ず、大きく目を見開く貴方の目の前に……濡れるような長い長い黒髪。
不思議なものを見るように貴方をしみじみと見つめる、漆黒の瞳。
そして、体をシルクのような滑らかな質感(しつかん)の……けれど所々フリルの混ざったシンプルながら可愛らしい黒いドレスを纏い、両耳に小さな山羊の角を模したイヤリングをつけ、そこだけは少女らしい愛らしさを残している。
華奢で、背丈に似合わぬ怪しげな色香を感じさせる少女が……部屋の中に立っていた。

仔山羊
「それにしても、お母様も……!
こんな願いを聞き届けたのも不思議ですけど、供物が不足だからって……こんな人間のような体で来させるなんて。
お陰で……アレを一時的に追い払うだけでヘロヘロです。
……貴方が召喚主(マスター)ですね?
召喚(よ)んだのですから、しっかり責任を取って下さいよ?」

黒い少女は少しだけ不機嫌そう呟き、そして貴方の前でドレスの裾を摘み、小さく頭を下げ礼をする。

仔山羊
「“千匹の仔を孕みし森の黒山羊”が娘、黒い仔山羊……招来の願いによって貴方の元へ参りました。
人らしい傲慢な願いでしたが、お母様が聞き届けた以上見事あの不定形の汚物……奉仕種族の、ショゴス……で良かったですか?
えぇ……お母様の娘として、見事あいつには勝利してみせましょう!
けれど……こんな力のない、人間のような体になってしまったのですから……力の足りない分は魔力の提供という形で協力をして頂きますからね、召喚主(マスター)?
めぇぇぇぇ……!」

貴方には全く訳の分からぬ事を告げながら、少女は可愛らしく小首を傾げ、くすりと……微笑(ほほえ)んだ。

そんな姿を見ながら、貴方は危険と緊張感からの開放による安堵(あんど)。
……何より、彼女が現れる瞬間から感じていた。異様なまでの精神の疲労感に引きづられるようにして、ふらりとその場に倒れてしまう。

《ふら……どさりっ》
(倒れる音)

仔山羊
「え……あの、マスター?……マスター??
まだショゴスは生きてますし、力も頂いてないから倒れられても困るのですけど?
え、っと、マスター?……人間?……おーい!!
寝られると、困ってしまうのですけど、おーいってば……マスター????」

少女が困ったように貴方を揺すってくるのを感じながら。
何故、こんな事になったのだろうかと……貴方は、ここに来る経緯を思い返しながら、ゆっくりと意識を手放してしまうのであった……。

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思叫堂~ロア~ 2018/12/15 14:19

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思叫堂~ロア~ 2018/12/02 05:06

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思叫堂~ロア~ 2018/12/01 21:34

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