○忍んできた夜○

「頼まれたウスベニアオイとトケイソウだよ。はい」



麻袋へ無造作に詰め込んで、天国と地獄の出入り口で、白澤は鬼灯へ不機嫌そうにつきだした。



「・・・ありがとうございます」



同じく不満顔でそれを受け取り、鬼灯がペコリと頭を下げる。



「全く、桃タローくんが捻挫さえしなければ、僕がここまで足を運ぶことなんてなかったのに・・・」



ブツブツと文句を言いながら、白澤は鬼灯から代金を受け取る。



「何?最近目の具合でも悪いの?」



「悪くありませんが、近頃パソコンをいじる機会が多いので、予防のために。あと、ストレス対策ですかね。獄卒たちの」



麻袋を広げ、確かに中身を確認する鬼灯。言われてみれば、少し鬼灯の目の下に疲労の影が見えていた。



「ウスベニアオイは、もう完全に乾燥してるから、今日中でも飲むと良いよ。トケイソウは、ちょっと乾燥が足りないからしばらく待てよ」



「なんですぐ服用できる状態で持ってきてくれないんですか」



「お前の注文、いつも急で唐突なんだよ!丁度品切れの商品を注文してくるなんて、嫌がらせとしか思えないね」



白澤はジロリと鬼灯を睨みつけるが、相手はガン睨みだった。



「な、なんだよ・・・」



「別に・・・あなたが睨むからでしょうが・・・」



「睨んでないよ!なんでいっつも物騒なのお前!?例え睨んでいたとしても、受け流すってことはしないの?」



「売られた喧嘩は買います。でなければ、地獄ではやっていけませんから」



そんな事しなくても地獄で平穏無事に暮らしている者たちが、白澤の頭を次々とよぎる。



剣呑な表情をしていた白澤だったが、ふと表情が変わり、つかつかと鬼灯に近寄ってゆく。



「?」



鬼灯の手にしている麻袋を手にすると、生薬の中へ手を突っ込んで何かを探っているようである。



白澤の前髪が鬼灯の鼻先すぐにかかり、彼独特の生薬の香りが鬼灯の鼻腔をくすぐる。
白澤も、鬼灯の着物から漂う白檀の香りを少しながら意識してしまう。



互いの間に何とも言えない雰囲気が漂い、空気が独特の粘質を帯びてきたとき、白澤はようやく袋の底から目当てのモノを取り出し、胸元のポケットへしまった。



「・・・なんです?」



「大したものじゃないよ。じゃ、僕は桃源郷へ帰るから。女の子が待ってるからね~」



ヘラヘラと軽薄に笑い、さっさと鬼灯に背中を向けて去ってゆく。



その後ろ姿を見ながら、鬼灯は呆れたため息を一つつき、受け取った麻袋を片手に閻魔殿へと戻って行った。







さてその夜・・・



白澤は厳重な閻魔殿のセキュリティをかいくぐり、高級官吏の寮へ入り込んでいた。目当ては無論、鬼灯の部屋である。



何度か訪れたことがあるので、部屋へたどり着くのは簡単だった。しばらくテクテクと歩いていると、大きく鬼灯の図柄が描かれた扉が奥まった場所で存在している。



どこか浮ついた感じで扉に駆け寄り、ノブを捻ってゆっくりと押す。



(あれ?鍵かけてないの?無用心だなあ・・・)



そう思いながらも、どこか浮き足立った白澤は、真っ暗な部屋のすぐ入口にある障害物に気づかず、そのまま足をぶつけてしまった。



「イデッ!」



思わず声を上げてしまい、慌てて口を抑えてしばらく動きを止め、何故か息までとめてしまう。



しばらく様子を伺っていたが、暗闇に慣れてきた白澤の瞳に、寝台の上へ仰向けになって眠っている鬼灯がぼんやりと映り、起きる気配もなさそうだった。



冷や汗をぬぐい、静かに安堵の吐息をつき、真っ暗闇では危険だと判断し、暗闇でも見通せる第三の目を発動させる。
そして足元の遮蔽物を交わし、無防備に睡眠を貪る鬼灯へ近寄ってゆく。



昼間の厳格な印象はなりを潜め、瞳を閉じた表情は柔らかで、いっそ可愛く見えてくる。



白い枕に乱れた黒髪がなんだか色っぽく、白澤は胸の早鐘が激しくなるのを感じた。



(鬼灯の寝顔、すごく可愛い・・・)



口づけをしたい衝動に駆られたが、流石に起きるだろうと諦め、ソロリと鬼灯の足元へと移動する。



掛け布団は想像よりも乱れていて、寝巻きがわりにしている赤い長襦袢が大胆に晒され、その隙間から白い足首と膝頭、さらに上・・・白い太腿がほんの少し覗いている。



(おおおおお!)



思わぬ眼福に白澤の興奮がさらに高まる。



襦袢は足のつけまでめくれ上がっているらしかったが、掛け布団に邪魔されてその先が見えない。



(うわうわ、エロいなああ・・・)



無防備に寝乱れている鬼灯に勝手に欲情し、白澤はその場で足踏みをしたい喜びで胸がいっぱいだった。



(ちょっとめくってみようかな・・・)



そろー・・・っと音を立てないように動き、布団の端をつまんでゆっくりと捲り上げてゆく。



ひざ下に襦袢はかかっておらず、滑らかな白い足が眼前に現れる。そのまま布団を動かし、膝頭、お目当ての太腿まで捲り上げたとき、白い内腿が覗いて一気に白澤の興奮が湧き上がった。



普段絶対に見せない部分を見られたことの喜びも相まって、このまま上にのしかかって襲ってしまいたい衝動に駆られてしまう。



しかしそこは抑え、白澤は手につまんでいる掛け布団をさらに強く引っぱた。



布団を予想以上に大きく捲ってしまい、白澤は一瞬慌てたが、その下から現れた鬼灯の下半身に釘付けになった。



赤襦袢の裾は腰帯まで大胆に捲られ、へそ下の下腹部まで露になっている。しかしその下・・・
白澤は我が目を疑ったが、確かに足の付け根の部分が、想像以上のことになっている。



白い褌が横にずらされ、その部分へ鬼灯自身が根元からさらけ出されているのである。しかも、半分反応しかけている。



(うううっエロい!エロいよ鬼灯!普通に裸よりもずっとエロい!)



自分の予想を上回る鬼灯の艶姿に、感動で顔のニヤケが止まらない。



やはり昼間渡した薬に、暗がりになると催淫効果を発揮する調合薬を染み込ませていただけの効果はあった。



汚れの見えない薄桃色の鬼灯自身を近くで眺めると、少し濡れているのがわかった。腰のすぐ横には、掌を返した鬼灯の手があり、そこもわずかに指先が濡れているように見て取れる。



(もしかして、自分でしてた?)



それならおかしい。鬼灯自身は射精した様子もなく、切なげに半分立ち上がったままだ。先端をよく見ると、先走りが伝落ちた跡がある。



自らを慰めていて、その途中でそのまま寝込んでしまったと考えるのが妥当だが、白澤はピンときた。



(こいつ、起きてるな・・・?)



おそらく暗がりになって急に発情し、たまらなくなって自慰を試みていたところ、白澤の物音で人の侵入に気づき、とっさに布団だけをかぶって取り繕ったのだ。



まさか相手が布団を捲ってくるなどという行動を起こすとは予想していなかったらしく、全てを相手に見られてしまっている鬼灯は今更起きることもできず、こうして寝たふりを続けているのだろう。



全て白澤の想像だが、十中八九間違いないだろう。



試しに横へずらされた褌を指に引っ掛け、さらに緩めてやろうとして引っ張ると、ビクンとわずかに鬼灯の体が動いた。



(起きてる!やっぱり起きてるよ!)



その事実に、白澤は地団駄を踏んで喜びたくなった。
頭はいいのに、ちょっと馬鹿なところがある、そんな鬼灯が愛おしくてたまらない。



こうなると、鬼灯がどこまで自分の狼藉を許すかが問題だ。当然目覚めたときには殴打必至だが、当然その覚悟で白澤もいどみかかる。どうせ次のコマになれば怪我などすぐに治るのだ・・・



白澤は鬼灯の半分勃ちあがった自身へ顔を近づけ、匂いを嗅いでみる。自分が何をしているのか鬼灯にわからせるため、あえて鼻息をたててやるのも忘れない。



汗のような匂いが少ししているだけで、不快な印象はない。むしろ、眠る前に使っていた湯の香りか、石鹸の香りが強いぐらいだ。



そのまま口を寄せ、舌を出して固く尖った先で裏筋を舐め上げる。
鬼灯自身がヒクリと反応し、鬼灯の足も一瞬ビクついた。



(どこまで寝たふりするのかな・・・)

《続く?》


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