○逆らえない鬼56○
『ああ、気持ちいい!?だったらもっとアピールしてくれないとさあー、こっちもやりにくんだよねー!』
ヤツが気持ちよさを白状したことで明らかに調子に乗り、白澤は声を高らかに言い放った。
ウザいなあ・・・あっ、ヤツも心底ウザそうな顔してら。
『とっとと治療を続けなさい・・・』
声がめちゃくちゃ低い・・・怖いな、こりゃ恥ずかしさと相まって相当怒ってるぞ。
『はいはい、わかったわかった。だからちょっと静かにしろよ~。』
『んぐっ!あぁぁ・・・やめ、なさいっ・・・!』
ヤツが一気に焦った表情を見せ、ぎゅっと目を瞑り始めた。
白澤がまたなにか悪戯をしかけているらしく、細顎が時折ヒクヒクと上がり、長い睫毛がブルブルと震えている。
(んんっ!やはり言うのではなかった・・・!コイツ、調子に乗って・・・!私も、どうかしてました・・・あぁぁ・・・)
最後は気持ちよさでフェードアウトしたようだ。
ヤツの上半身を映している鏡の中に、白澤の後ろ頭が入り込んでくる。
一瞬ヤツと目を合わせたが、ヤツがフイと横を向いて先に視線を逸らせ、ベッドのシーツを握りしめた。
すると白澤はすっかり乱れきった着物の合わせ目に手をかけ、一気に左右へ開いて、白い胸を全開にする。
(うっ・・・胸を責めるつもりか、我慢しないと・・・)
ヤツの思考がそう動いているが、心の隅では諦めににたような感情も感じられた。
すげえな、この鏡。心の中の、こんな繊細な部分まで感じ取れるのかよ。
『んあっ!あぐっ・・・!』
白澤の指が鬼神様の胸の突起を掴み、その感覚を愉しむように指で転がしている。
『うぅっ!うっ・・・んんっ!や、やめ・・・』
(口で吸われている感覚の上に、指で触られている感触が重なる・・・っ!感じすぎです、我慢できない・・・)
『すっかり硬くなってるね。興奮してる?』
『んんっ・・・る、さいっ・・・!』
指先でギュっと乳首をつまむと、ヤツがあああ、と叫んで背筋をのけぞらせた。
イッたか?
たしか胸でもイケるんだよな、こいつ。白澤も知ってるのか?
『ふふ、感じてる感じてる・・・キモチイイんでしょ?』
『ううっ・・・い、痛いですっ・・・今は、いた・・い・・・』
(触るな、もうこれ以上刺激するな、もう、イキそう・・・絶頂が、せまって・・・あぁぁ・・・!)
『ふーん、お前のくせに、随分見え透いた嘘つくね。もうイキそうなの?』
『うぅっ・・・誰が・・・!あっ!あぁぁっ!』
白澤の乳首を嬲る指の動きが急に素早くなり、実に器用に突起を擦りまわしている。
超絶テクだな。女がこれをされたら、そりゃ喜ぶよ。
『んんんんっ!』
しかも今のこいつには口で吸いつかれている感覚まで重なっているんだから、もうエロく乱れるしかないだろ。
よくここまで我慢できるもんだ。それだけは感心するぜ。
『あぁぁっ!うあ、やめ、やめ、んんっ・・・!ううーーーっ!』
ビクン、とヤツの身体が強烈に仰け反り、そのままの姿勢でピタリと動きを止める。
ブルブルと痙攣を終えると、ドサリと身体をベッドに落とした。
『はぁ、はぁ、はあ、は・・・ぁ・・・』
完全に絶頂したな。こいつのイキきった顔は本当にエロ可愛い。
白いシーツに散る黒髪と、ヤツの首元を流れる汗がエロい。舐めたいなあ・・・。
と、俺が思っていると、白澤が舐めやがった。
「おい、誰が舐めろっつったんだよ!」
俺はつい鏡に向かって怒声を放っていた。
ヤツがいろんなヤツに弄ばれるのは楽しめるが、こいつとのお楽しみを見るのは、若干のイラつきを感じる。
『んんっ・・・ふ・・・ぅぅ・・・ん、む、んん・・・』
胸元を流れる汗を一通り舐め終わると、横を向いていたヤツの顔を上向かせ、白澤の頭が重なった。
『んっ・・・ん・・・』
キスしているらしい。しかも結構濃厚そうだ。問題なのは、ヤツが甘えた声をあげて喜んでいるらしいことだ。
なんだかおもしろくないな・・・
そこで俺はヤツにある言葉を言わせることにした。
まあ、いつもの鏡の効果なら、たぶん伝わらないだろうが・・・
しかし、俺の予想に反して、鏡は命令を伝えた。
『白澤さん、好きです・・・』
ピタ、と、白澤の後ろ頭が動きを止めた。