●広翼の孔雀60●(終)

キラキラした目で白澤が鬼灯に迫り、未だ鬼神の力が戻っていない鬼灯は、○問道具を持ち上げようとして動いたが、それより先に白澤に迫られた。



「んぐうぅっ・・・!」



前から両足の間を片手で鷲掴みにされ、一気に甘い愉悦が体中を駆け巡る。



「ほらほら、一度イッちゃえ・・・」



鬼灯は着物の下になにも着けていなかった。それは白澤の言いつけで、いつ鬼灯が欲情してもすぐ自分と情交できるように、との仕様だったが、当然説得するのは生半可な苦労ではなかった。最後には「じゃあ僕が脱ぐ!」と言い出し、なんとか言いくるめられたのだが。



白澤の長く細い指が、すでに濡れた鬼灯自身に絡み、上下に動く。



「あっ・・・あ、うあぁあっ・・・!」



鬼灯は立ったまま白澤に愛撫され、足元がおぼつかなくなり、白澤にしなだれかかって辛うじて立ちつくす。しかし足が内またになり、今にも尻をつきそうだ。



白澤の手の動きがどんどん早くなり、同時に濡れる音が大きく空間に響き渡る。
鬼灯が白澤の白衣を握りしめ、その肩口に顔をうずめる。



「んんんんっ!」



呻いて体を痙攣させた直後、鬼灯はあっけなく精を放っていた。
吐精の脱力でとうとう足の力が抜けた鬼灯は、地面に頽れてそれでも白澤の白衣にすがっている。



「鬼灯、欲しかったらおねだりは?」



「はぁ、はぁ、お、おねだりなど、する気はありませんがっ・・・」



そう言いながら鬼灯は白澤のズボンの前を広げてゆく。



「あなたがそうしたいなら・・・しましょう・・・」



膝立ちになり、自分の雄を片手に持って見上げてくる鬼灯の表情が、たまらなく色っぽい。
顔はすでに耳まで紅く染まり、唇をさらに朱くさせ、釣り上がった眉はハの字に垂れ下がっている。
誰がどう見ても「おねだり」のポーズだが、鬼灯自身に限ってはそうは思ってはいないらしい。しかし白澤にとっては、そんな頑固なところも愛おしい。



鬼灯の熱い舌が自分の雄をはい回る。あの鬼灯がしているのだと思うだけでゾクゾクと愉悦がこみあげてきて、いいようのない優越感に浸れる。
鬼灯の身体を狙ってきた輩の気持ちがわかる白澤には、鬼灯がいつか、戻れなくなってしまうほど凌○されつくすのでは、と危惧していた。
それなのに当の本人にはその恐怖の自覚はない。一度心が壊れてしまいそうなほど酷い凌○を受けたことがあったが、その記憶は白澤が消した。消したというよりも、取り除き、保管している。
その記憶を鬼灯に戻せば、彼もこれから十分警戒をするだろうが、もし思い出してしまったら、鬼灯が鬼灯でなくなってしまいそうで恐ろしかった。



だから今回、わざとこのような手段を取った。
実際の術は、電話口で言ったように、相手の欲情を感じ取ると、身体に痛みを感じるという術だった。鬼神の力も半減するよう術を駆けたが、二重にかけたのが悪かったらしい。
まさか痛みではなく、欲情するようになってしまうとは予想外だった。いや、もしかしたら心の底ではこれが好都合だったかもしれないと思う。
術は術者の心情も反映する。白澤の邪念が形となって、今回このような仕様になってしまったのだろう。
いつも自分を邪魔してくる鬼神の怪力を失くし、いつでも自分を求めてくるように欲情してくる鬼灯。
それを術中に一瞬でも想像してしまったのが悪かったのかどうか。



そもそも白澤は術を掛けるセンスがないので、手順通りにやっても八割失敗するのだから、今回はうまくいったほうだと言えよう。
鬼灯は望み通り、怪力を失くし、すぐに欲情する身体になっている。
素直ではないのはいつもの通りだが。
それと、鬼灯の艶姿がSNSに拡散してしまったのも誤算だった。自分だけが知っているはずの鬼灯の床での姿が、不特定多数の邪な感情を持った者たちに簡単にさらされるなど、これを知った瞬間、白澤はしばらく何も考えられず無になった。
桃太郎が何か自分に話しかけ、身体を揺さぶってきたが、それでも正気に戻るのにしばらくかかった。



なにされてんだよ鬼灯お前は僕のものなのにどうしてそんな大勢に犯されて悦んだ声を上げて悶えているんだよいい加減にしろよこんなの許せないもっと僕のほうが鬼灯の事を知っているのにこいつら一体なんなの鬼灯に勝手にさわるんじゃないよああ鬼灯抱きたいなあ



この五日間で、鬼灯を数知れず抱いた。
鬼灯に下着をつけることを許さず、不特定多数の獄卒とすれ違うたびに欲情する鬼灯を抱き、あらゆる場所で抱いた。
どこで犯されたかと問い詰め、いちいちその場でも抱いた。
鬼灯のあらゆる表情を見たくて、わざと焦らしたり激しくしたりして、思う存分堪能した。



しかし、その術の効力も今日で切れる。



これが終われば、また、次はいつになるかわからない閨を待たねばならないのだ。
それが通常の二人の関係なのだが、また元に戻ってしまうのは惜しい。第一、鬼灯はこれほどの目にあっても未だ貞操観念が希薄なのだ。



鬼灯には悪いが、白澤は新しい術をかけるつもりだ。
その術は、必ずうまくいく。白澤には確信があった。



「鬼灯・・・もういいよ。寝るから、上に乗ってくれない?」



「えっ・・・ぁ・・・」



鬼灯は騎乗位を恥ずかしがる。自ら動いて、相手に淫らだと思われるのを恐れているのだろうが、始まってしまえば遊女裸足の技巧をこらしてくるのだから、この落差がたまらない。



鬼灯は地面に寝そべった白澤の腰をまたいで中腰になり、白澤の雄を手に添えて秘孔へと導いてゆく。



先端が挿った瞬間、思わず表情が緩んでしまうほどの快感が、白澤の脳天まで駆け上る。
そのまま鬼灯は苦しそうに腰を落とすが、洞内はきつく締まりながらもウネウネと白澤自身を奥へと引き込み、その名器ぶりにまたもや表情が緩みそうになる。



「鬼灯・・・動いて・・・」



全てが挿入し終わり、激感に震えている鬼灯にささやくと、濡れた瞳で白澤を見下ろし、ゆっくりと動き始める。



「あぁっ!」



最初は感じすぎるのか、まともに動くこともできないので白澤が手伝ってやる。鬼灯の腰を抱いて、自らの腰を使って入り口から奥までまんべんなく汚してゆく。



「あっ!あっ!あっ!あぁっ!あっ!あぁぁ!」



「ほら、もう動けるでしょ?」



「んんっ・・・うぅ、はぁ・・・・・あっ・・・!」



白澤の雄が鬼灯の身体に馴染み、違和感がなくなったと思えるところで再びささやくと、鬼灯は自ら動き始める。
下から見上げる白澤は、絶世の妖艶さと美しさを堪能し、これをほかの誰にも見せたくない、と激しい独占欲にかられた。



白澤が気が付くと、そろそろ術の期限が切れてくるころだ。鬼灯本人は快楽でそれどころではないらしいが、必死で理性にしがみついてる白澤は、この時だけは逃すまいと、起き上がって鬼灯に激しい口づけを施した。



その口づけは甘く妖艶で、脳の芯からとろかすような、理性を蝕む危険な口づけだった。
白澤が再び術を使ったのは明白だが、快楽に溺れている鬼灯は、ますます興奮状態になって腰を振り続ける。



「はあ、はあ、はあ、はあ・・・っ」



薫る汗を弾き飛ばし、絶世の鬼が自分の上にまたがって性の快楽を貪っている。それだけで地獄に落ちても構わないと思えるほどの美しさと妖艶さと快楽だったが、白澤は欲張りだった。



「ねえ、鬼灯・・・」



鬼灯のとろけた頭に、呪文のように白澤はささやきかける。



「僕のこと好きでしょ?」



鬼灯は答えない。



「ねえ、好きなんでしょ?」



鬼灯は答えず、滑らかな黒髪を振り乱して、正気と狂気のはざまを行き来する。



「もう観念して、好きって言ったら?」



「はあ、あっ・・・んんっ・・・」



鬼灯はその問いには答えず、ただ白澤との甘美な口づけを繰り返すだけだった。



<終>


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