●スキャンダラスブラック9●

「んふふ、相変わらずキスのし甲斐がある唇・・・もう一回いただいちゃおう」



そう言いながらアデスは角度を変え、何度も鬼灯に激しい口づけをする。
アデスの体液がどんどん体中に流れ込み、鬼灯の身体は抵抗の意思を失い、アデスの胸板を押していた腕も、アデスの着ているスーツに縋り付くようになってしまった。
熱い舌で歯列をなぞられ、顎の上をくすぐられると、脳天にまでゾクゾクとした快感が突き抜ける。



「んっ・・・んん・・・」



鬼灯からは鼻にかかった甘い声がこぼれ、どんどん反抗する術が削られてゆくのを忌々しく感じながら、身体はすでに陥落しかけていた。



唇が滑り、鬼灯の首筋に落ちると、頸動脈の隆起を通って鎖骨に落ちる。
ぬるりとした舌の感触と柔らかい唇の感触を性感帯で同時に感じ、鬼灯の身体が縦に揺れた。



「はぁっ・・・!あっ・・・!」



胸元の性奴○の刻印に舌を這わされ、放たれる紅い光がさらに強さを増し、それに比例して鬼灯の身体もどんどん加熱されてゆく。



「あららー?こんなところで声だしちゃって、イインデスカー?」



快楽に没入しかけた鬼灯に、アデスは意地悪な声で状況を思い出させる。
頭も半分熱に茹でられていた鬼灯だったが、その言葉で若干理性を取り戻してしまった。
ドアを挟んで、すぐそこはプラットホームだ。
電車を待つ群衆がずらりと並び、厠で何が行われているかなど知る由もない者たちが、そこにはいる。



「こんな場面、見つかっちゃったらヤバいでしょー?ヨッ!三大美男!」



その言葉を聞いて、鬼灯の頭が快楽とは違う熱で茹で上がった。
上体を起こしてアデスの胸板を力いっぱい押し出し、アデスをドアごと外へ吹き飛ばす。



「あいたっ!」



派手な音を立てて、蝶番の外れたドアと絡み合いながら地面を転がるアデス。
厠の中には、怒りの形相で立つ鬼灯がいた。



「あららー、なーにをそんなに怒っていらっしゃるんですかぁー?自分が美男と言われるのは好きくないですか?じゃあ、日本では最近、こういうんですっけ?イケメンって・・・」



アデスが言葉を続けようとしたところで、今度は金棒が飛んできた。



「あれえーーー!」



素早く転がって金棒を避け、改めて鬼灯を見ると、背中に朱い怒りのオーラをまとい、こちらに近づいてくる。
ホームで並んでいた群衆も、いきなりの爆音に、何事か、と振り返り、そこで二人の青年が向かい合っているのを目撃する。



「あ!鬼灯様だ!」



「向かいの男の人は誰?ちょーイケメン!」



「鬼灯様、怒ってるみたい・・・」



「やだ、イケメン写メろう!」



騒然となったプラットホームに、カラス天狗警察が駆けつけたのは、その十分後だった。


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