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2021年 07月の記事 (19)

官能物語 2021/07/31 12:00

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官能物語 2021/07/30 12:00

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官能物語 2021/07/30 10:00

美少女のいる生活/26

 入学式の朝が明けた。
 この日は平日だったが、貴久はあらかじめ休みを取っておいた。

「どうですか……何か変じゃありませんか?」

 朝食をバナナとコーヒーだけで済ませた貴久は、それに加えてサラダとハムエッグとトーストを食べた美咲が、スーツ姿で現われるのを見た。

「変どころか、よく似合っているよ」
「スーツってあまり着たことないので」
「お父さんが涙ぐむな、成長した娘の姿を見て」
「それ、無視してもいいですか?」
「いや、ダメだろ、何か一声かけてやらないと」
「面倒くさいです」
「じゃあ、おれがやろう」
「お願いします」

 入学式にふさわしい青々とした空の下、会場へと向かうと、待ち合わせた大学門前で、見覚えのあるむさくるしい中年男と、見覚えの無い爽やかな顔立ちの若い女性が立っていた。

「まさしく美女と野獣だな」

 貴久が友人に声をかけると、

「第一声がそれかよ」

 と彼は嫌な顔をした。

「しょうがないだろ、そう見えるんだから」
「『妻』を紹介させてもらってもいいか?」

 二人の近くで、クスクスと軽やかな笑声を立てていた女性は、ショートカットの清楚な風貌である。

「景子と申します。お噂はかねがね窺っています」
「どうせ悪口ばっかりでしょう。全部それひっくり返して聞いてくださいね」
「夫は、『世界で一番信頼できる男だ』って、常々申しています」
「本当ですか? 信じられないな」

 貴久は彼女と話していると、心に弾みを覚えた。
 これは、友人が好きになるのも無理は無いと思われた。

「お体は大丈夫ですか?」
「ええ、まだ3ヶ月なので」
「そうですか」

 二人が初対面を行っている隣で、父と娘の一週間ぶりの対面が行われていた。

「や、やあ、美咲。調子はどう?」
「毎日楽しく暮らさせてもらっているよ。貴久さんは、お父さんと真逆の人だから」
「そ、そうか。それはよかった。何か不自由なことはないか?」
「無いよ。それに、わたしのことより、景子さんのことをきちんと気にかけてあげてね。何だったら、わたしのこともう忘れてくれてもいいから」
「な、何を言っているんだ。娘のことを忘れるなんてできるわけないだろ!」
「じゃあ、時々思い出すみたいな感じでいいよ。3ヶ月にいっぺんくらい、『そう言えば、美咲、どうしているかなー』みたいな。で、思い出して、でも、何もしない」
「何もしない?」
「そう、電話もメールもしない。そうして、わたしも同じような感じで、お父さん、どうしているかなーって思い出しながらも、まあ、便りが無いのはいい知らせだからってことで、何もしないの。ね、それでどう?」
「いや、そんな『取引成立』みたいな言い方されてもな。まだ怒っているのか、美咲?」
「深く傷つけられた感じかな。これはもう一生トラウマになって残ると思うのよ、うん」
「い、一生?」
「そう。だから、もうわたしたち二人は、互いのことを遠くから見守るような感じで行こうよ。時が二人の間を修復してくれるのを淡く期待しながら、ね?」

 娘の言葉に父はがっくりとうなだれた。
 どうやら、スーツ姿に涙している余裕はなかったようである。
 美咲は、継母に向かうと、

「景子さん」

 と心から嬉しそうに声をかけた。
 継母は、苦笑した。

「わたしの旦那様を、あまりいじめないでね、美咲ちゃん」
「わたしがいじめた分、景子さんが慰めてあげてください」
「でも、可哀想じゃないの」
「いいんですよ、父はもうそろそろ子離れしないと」
「美咲ちゃんのことを心から愛しているのよ」
「父からの愛はもういいんです。わたしにとっては、出がらしのお茶ですよ」
「愛は与えた分だけ薄まったりはしないと思うけど」
「だとしたら、わたし、父のこと愛していないのかもしれません。だって、薄まってますもん」
「また、そんなこと言って」
「本当ですよ。それより、父に何かされたらすぐに言ってくださいね。わたしは、120%、景子さんの味方ですから」

 そうしていると、二人は、まるで仲の良い姉妹のように見えた。

「おれは、いい娘を持ったよな?」

 友人が、げっそりとした声で言ってくるのに対して、

「それは間違いないな」

 と貴久は応えたあと、「旧交」を温めるのはそれくらいにした方がいいことを、みなに伝えた。

 式の時間が近づいている。

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官能物語 2021/07/29 12:00

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官能物語 2021/07/27 21:00

美少女のいる生活/25

 それから、1週間ほどが経った。この間、貴久は昼は普通に仕事をして、朝と夜は美咲と一緒に過ごすという生活を続けたわけだが、一緒に過ごしているうちに、何ごとか気に障ることも出てくるだろうと思っていたけれど、そんなことは全く無かった。それどころか、まるで長年連れ添った夫婦ででもあるかのように息はぴったりである。

「無理してるんじゃないか、美咲ちゃん?」
「えっ、何ですか?」

 夕食時である。
 美咲は、箸で冷ややっこのかけらを口に運ぼうとしたところで、止めた。

「とりあえず、それ食べて」
「はい……食べました」
「生活のペースをおれに合わせようとしてないか?」
「全然してません」
「やっぱりそうか…………ん? してない?」
「わたし、貴久さんに合わせようなんてこれっぽっちもしてませんよ。伸び伸び暮らさせてもらっています」
「いや、でも、そんなことはないだろう。おれの面倒を色々と見てくれているわけだから」
「貴久さんの『面倒』なんて、全然見てませんよ。だって貴久さん、全部自分でやってくださるじゃないですか。面倒っていうのは、仕事以外何にもしなくて、家に帰ってくれば、部屋がきちんと片付いていて、洗濯が為されていて、食事の用意もできていて当然っていう顔をしている父のような人間を見るときに使う言葉です」
「でも、おれもきみのお父さんと同じようなものだと思うけど」
「そんなことないです。食べ終わったら片付けて食器を洗ってくださるし、服は脱ぎっぱなしになさらないし、お風呂やトイレだって――食べているときに失礼します――掃除してくださるでしょ」
「うーん……いや、美咲ちゃんが無理してなければそれでいいんだけどさ」
「わたし、無理しているように見えますか?」
「見え……ないけど、女の子はウソをつくものだから」
「それ、炎上する発言ですよ」
「つぶやく気は無いよ」
「わたし、本当に自由にさせてもらっていますよ。家にいたときよりも、ずっと開放的な気分で暮らしています」
「そうか……ならいいんだけど」

 食べ終わってから、しばらくテレビを見たり、互いに本など読んだりしていると、いつもの時間がやってくる。

「じゃあ、そろそろ寝ましょうか、貴久さん」
「そうだな」

 貴久は、リラックスできる少女と暮らす時間の中で、この時間だけは、多少緊張を覚えた。表面上は冷静にしているけれども、心の中はそれほど冷静なわけではない。貴久は、彼女と一緒に自室に行くと、先にベッドに入って身を横たえて、彼女を迎えた。

「ふふっ」

 と楽しそうな声を出して、腕の中に入ってくる少女は、まだまだ大人とは言えないまでも、子どもとは全く言えない体つきを備えているのである。

「これより広いベッドもいいかもしれないけど、わたしはこのくらいでもいいですよ」

 そう言うと、彼女は足を絡めるようにしてきた。
 しなやかな太ももの感触が貴久の体の奥を熱くする。

「明日はよろしくお願いします」
「きみのお父さんはともかくとしても景子さんに会えるのが楽しみだよ」
「好きになっちゃダメですよ。一応、父の大事な人ですから」
 
 翌日は彼女の入学式で、式には彼女の父と継母も来ることになっていた。
 もちろん、貴久も出席する。

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