美少女との生活/32
夕食をつつがなく終えたあとは、いよいよ覚悟を決める時間になった。この時間まで覚悟が決まっていなかったのかと言えば、情けないことこの上無いけれど、覚悟うんぬんというよりも何よりも、まずは現実感が無いことが問題だった。
この期に及んでも、自分の娘ほどの女の子と体を交えるということが、とても現実に起こっていることだとは思えない。そういう動画は見たことがあるけれど、それは動画だから見られるわけであって、本当に我が身に起こることだと思ったことなど一度も無かった。当たり前。それが本当に起こるのである。
――いや、本当なのか?
これが私的などっきりということはないだろうか。美咲の冗談である。大人の男をたぶらかしたい年なのかもしれない。そんな年が女性にあるのかどうか分からないが、そもそも、貴久は女性ではないので、そのあたりのことは知る由も無い。
もしも冗談だとしたら、
――その方がいいかもしれない。
と思ってしまった自分を、貴久は大いに恥じた。
これこそ覚悟が座っていない証拠である。いくら現実離れしているとは言え、だからと言って、現実逃避してもどうしようもない。
よし、と覚悟を決めた友作は、まずはシャワーを浴びることにした。そうして、身を清めたあとに、美咲に向かって、
「寝室で待っているから、準備ができたらいらっしゃい」
と声をかけた。色気の無いことこの上無いけれど、格好をつけてもしょうがない。人間には、できることとできないことがあるということは、これまでの人生の中で貴久が学んだ、数少ない真実の一つだった。
パジャマを身につけて、寝室に入った貴久は、ベッドの上に腰かけて、美咲を待った。随分と長い時間が過ぎた気がした。あまりに長く感じすぎて、美咲は来ないのではないかと思った。気が変わったのである。きっとそうだと思って時間を見ると、10分しか経っていなかった。カラスだったらそのくらいでもいいかもしれないけれど、年頃の女の子が身を清めるには、全然足りなかっただろう。それから、さらに20分ほど経った。それはほとんど永遠にも感じられる時間だった。
ドアにノックの音がして応えると、入ってきた美咲の姿に、貴久はどきりとした。彼女は、下着姿だった。ブラジャーとショーツだけを身につけた姿で、そのプロポーションのよいラインを惜しげもなくさらしていた。
少女は、貴久の前まで、まるでヴァージンロードの上ででもあるかのようにしずしずと歩いてくると、腰を下ろして床に膝をつき、正座して、深々と頭を下げた。