美少女との生活/33
「よろしくお願いいたします」
貴久はびっくりしたが、すぐに、彼女と同じように床に座って、同じように頭を下げた。
「懸命に努めます」
なんか間違ったような気もするが、セックス前に頭を下げられた経験など無かったので、もしも間違っていたとしても許してもらいたいものである。そう思っていると、顔を上げた美咲が、ぷっと噴き出した。
「わたしたち、二人で何やってるんでしょう」
「おれが聞きたいよ」
貴久が言うと、美咲はさらに、あはは、と楽しそうに笑った。
その声を聞いていると、貴久は緊張がほぐれるのを感じた。もしかしたら、こちらの緊張をほぐすために、彼女はおどけてみせたのだろうか。もしもそうだとしたら、こちらが気を使うよりも、彼女に余計に気を使わせていることになってしまって、大人として、大変情けない事態となってしまう。
貴久は、こっから仕切り直しだ、とは力まなかった。むしろ、力を抜くことにした。自分にはできることしかできないのだという真理を再認識した格好である。
――よし……。
「おいで、美咲ちゃん」
貴久は、立ち上がると、彼女に向かって手を差し伸べた。
「はい……」
重ねられた少女の手は、華奢で柔らかい。
その手を少し引くようにした貴久は、彼女を腕の中に迎えた。
「愛しているよ、美咲ちゃん」
彼女の目を見て、貴久ははっきりと言った。
大げさな言葉であることは分かっていたが、彼女の処女をもらい受けるのである、そのくらいのことを言ったところで構わないだろうし、逆に言えば、そういうことが言えないのだとしたら、処女をもらい受ける資格も無いと言えるのではないだろうか。
そんなことまで、貴久は考えたわけではない。
むしろ、何も考えずに、するりと出てきた言葉に過ぎなかった。
美咲は、目を大きく見開いた。そうして、
「わたしも……わたしも愛しています」
言うと、その目をそっと閉じた。
貴久は自分の顔を彼女の顔に近づけると、ゆっくりと、そのピンク色の弓を合わせたような可憐な唇に口づけた。久しぶりのキスが、20歳も年下の少女とのものなのだから、感慨もひとしおである。軽くだけ口づけた後に、ふっと唇を離すと、美咲は目を開いた。貴久は瞠目した。少女の目が濡れているではないか。
「美咲ちゃん……?」
やっぱり嫌だったのだろうか。
心配になった貴久が口を開く前に、まるでこちらの気持ちが伝わったかのように美咲は、首を横に振った。
「嬉しいんです。貴久さんとファーストキスができて」