美少女との生活/29
そして、Xデーはいとも呆気なくやって来たのだった。その週の週末、土曜日の朝を美咲と同じベッドの中で迎えた貴久は、今日のスケジューリングを考えていた。今日は朝から一緒にどこかに出かけて、夕食を取って、そのあと、今腕の中にいる可憐な子と結ばれることになっている。とても正気の沙汰ではないように思われた。そんなことあるはずがないと思っても、今から12時間くらいしたら、そんなことになるのだった。そこで、貴久は、
――あ、コンドームがない。
避妊具のことについて、気がついた。一番大事なものがないではないか。これがなければ、いざシようと思ったときにできないという最悪の事態に陥ってしまう。やはり、これは現実感を持っていないということのあらわれだった。しかし、気がついてしまえば何ということもない、あとは忘れなければいいだけの話で、コンビニや薬局でそっと買えばいい。
それにしても、コンドームが無いとは、一体いつからシていないのかと言えば、前の彼女と別れてからである。そのときからだから……もう相当年数シていないことになる。特にシたいとも思わなかったのは、それだけ性欲が少ないからだろうかと思わないのでもないが、美咲が来る前はよくポルノ動画を見ながら抜いていたので、少ないというわけでもなかった。
それなのに、恋人を作らなかったのは以前の彼女のことを引きずっているからという理由が立ってまだしも、風俗にも行かなかったのは、そんなものにはまってしまったらマズいと思っていたからである。恋人を持たない分、貴久は資産形成に注力しており、それを台無しにしたくなかったからだった。そのおかげで、美咲を迎えることができた。まあ、とにかく久しぶりだったので、
――できるのか……?
と思わないでもない。まさかできないことはないと思うし、やり方はいたってシンプルなのだが、あるいは、もしかして、「入らない」などということは無いだろうか。これまでそれを経験したことがあるのは童貞の時だけだったが、もしも入らなかったら、これは大問題である。
貴久は急に緊張してくるのを覚えた。貴久にとっては、何十回目かのそれでも、美咲にとっては初めてなのだった。最高の経験にしてあげないといけない。しかし、その自信は無い。
こんなことなら、きちんと調べておくべきだった。処女とするときの作法を。そんなものがあるのかどうか分からないけれど、情報社会である、おそらくは何かしらはあるだろう。しかし、その日の朝ではいかにも遅い。遅すぎる。こうなったら、ぶっつけ本番で行くしかなかった。せめては、できるだけ痛い思いをさせないようにしようと、それだけを貴久は心に決めた。
「おはようございますぅ……」
美咲が目を開いて言った。
「おはよう」
「あの……今日はよろしくお願いします」
「努めます」
真面目な声を出すと、美咲は微笑んだようである。