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官能物語 2021/08/02 10:00

美少女のいる生活/27

 式は滞りなく終わった。

 貴久は式の間、感極まって涙する友人の隣で、いよいよ二三日後が、美咲との約束の日だったわけだが、どうにも実感が湧かなかった。しかし、20歳以上離れた少女の処女を奪うというのだから、そんな実感湧く方がおかしかったと言える。

「何、変な目で見てるんだよ」

 友人が涙に濡れた目を向けてきた。

「見てない。お前がおれの方を見たんだ」
「いや、見てただろ、おれのこと」
「おっさんの泣き顔見て何が面白いんだよ……まあ、笑えるっちゃ笑えるけどな」
「お前には娘がいないから、そういうことが言えるんだよ」
「それは仕方ないだろ。おれのせいじゃない」
「ああ……なんで、よりによってこんなおっさんのことが好きなんだ、美咲は……」
「なあ? おっさん冥利に尽きるよな」
「ちょっと黙っててくれないか、我が子の晴れ舞台にひたらせてくれ」
「お前から話しかけてきたんだよ」

 そのあと、四人で近くのレストランで昼食を済ませると、

「美咲がどういうところで暮らしているのか見てみたい」

 と友人が言い出した。父親としては、もっともだし、友人の妻も、

「わたしも見せていただきたいです」

 と言い出したので、見られて困るものがあるわけでもなし、二人をマンションに案内することにした。

「狭いところだけど」

 と前置きして友人夫婦を部屋に上げると、友人の方は絶句したようだった。少しして、

「こ、こんなところに、美咲は住んでいるのか?」

 呆然としたていのまま、ぼそりと言った。

「不服か?」
「不服かって……満足するわけないだろ。もうちょっといいところに住んでいると思ってたぞ」
「駅に近いし、生活用品は徒歩15分以内で何でも揃うし、セキュリティもしっかりしているし、何も不満は無いけどな」
「狭い、狭すぎる!」
「そりゃ、お前が住んでいるところに比べたら狭いさ。まあ、でも、都心なんだからこんなもんだろ」
「……ギャンブルとかやってないだろうな?」
「何だって?」
「そこそこ高給取りのハズだろう。何に使っているんだよ?」
「株と投資信託」
「引っ越し費用は出してやるから、引っ越せ」
「その必要があったら、美咲ちゃんと相談して、そうするさ」
「おれはこんなところに住まわせるために、美咲を来させたわけじゃないぞ!」
「その割には、あらかじめおれの部屋を見に来なかったじゃないか」
「お前を信用してたんだよ」
「都合のいい言葉だな」
 
 二人で言い合っているところに、美咲が割って入った。

「お父さん!」
「は、はい?」
「貴久さんに失礼なこと言わないで! お父さんのこと元から嫌いだけど、もっと嫌いになるからね!」
「お、おい、元から嫌いだったっていうのは初耳だぞ」
「言ってないもん」
「お父さん、ショックだぞ」
「耐えて」
「耐えられんだろ、そんなの」
「そんなことは、どうでもいいの!」
「いや、よくないだろ」
「いいから! 貴久さんを侮辱するっていうことは、わたしを侮辱するってことになるからね。そうして、娘を侮辱するっていうことは、その父親である自分を侮辱することになるってことを分かりなさい!」
「いや、後半は分かるけど、前半は違うだろ。どうして、こいつを侮辱することが、美咲を侮辱することになるんだ」
「どうしてもこうしても、そうなるの! わたしは、この部屋で満足っていうか、ここに住まわせてもらって、すごく幸せなんだから。その幸せを壊そうとするなら、容赦しないからね!」
「ううっ、すでに容赦ないのに。これ以上、何をする気なんだ……」

 しょんぼりとした友人の肩に、その妻が手を置いた。

「美咲ちゃんが幸せだっていうなら、それが一番でしょう?」
「それはそうだけど……でも、こんなところだったなんて。まるでウサギ小屋じゃないか……」

 失礼なヤツだなと貴久は思ったが、確かに広いとは言えないので、そう言われてもしょうがない。

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官能物語 2021/08/01 12:00

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官能物語 2021/07/31 12:00

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官能物語 2021/07/30 12:00

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官能物語 2021/07/30 10:00

美少女のいる生活/26

 入学式の朝が明けた。
 この日は平日だったが、貴久はあらかじめ休みを取っておいた。

「どうですか……何か変じゃありませんか?」

 朝食をバナナとコーヒーだけで済ませた貴久は、それに加えてサラダとハムエッグとトーストを食べた美咲が、スーツ姿で現われるのを見た。

「変どころか、よく似合っているよ」
「スーツってあまり着たことないので」
「お父さんが涙ぐむな、成長した娘の姿を見て」
「それ、無視してもいいですか?」
「いや、ダメだろ、何か一声かけてやらないと」
「面倒くさいです」
「じゃあ、おれがやろう」
「お願いします」

 入学式にふさわしい青々とした空の下、会場へと向かうと、待ち合わせた大学門前で、見覚えのあるむさくるしい中年男と、見覚えの無い爽やかな顔立ちの若い女性が立っていた。

「まさしく美女と野獣だな」

 貴久が友人に声をかけると、

「第一声がそれかよ」

 と彼は嫌な顔をした。

「しょうがないだろ、そう見えるんだから」
「『妻』を紹介させてもらってもいいか?」

 二人の近くで、クスクスと軽やかな笑声を立てていた女性は、ショートカットの清楚な風貌である。

「景子と申します。お噂はかねがね窺っています」
「どうせ悪口ばっかりでしょう。全部それひっくり返して聞いてくださいね」
「夫は、『世界で一番信頼できる男だ』って、常々申しています」
「本当ですか? 信じられないな」

 貴久は彼女と話していると、心に弾みを覚えた。
 これは、友人が好きになるのも無理は無いと思われた。

「お体は大丈夫ですか?」
「ええ、まだ3ヶ月なので」
「そうですか」

 二人が初対面を行っている隣で、父と娘の一週間ぶりの対面が行われていた。

「や、やあ、美咲。調子はどう?」
「毎日楽しく暮らさせてもらっているよ。貴久さんは、お父さんと真逆の人だから」
「そ、そうか。それはよかった。何か不自由なことはないか?」
「無いよ。それに、わたしのことより、景子さんのことをきちんと気にかけてあげてね。何だったら、わたしのこともう忘れてくれてもいいから」
「な、何を言っているんだ。娘のことを忘れるなんてできるわけないだろ!」
「じゃあ、時々思い出すみたいな感じでいいよ。3ヶ月にいっぺんくらい、『そう言えば、美咲、どうしているかなー』みたいな。で、思い出して、でも、何もしない」
「何もしない?」
「そう、電話もメールもしない。そうして、わたしも同じような感じで、お父さん、どうしているかなーって思い出しながらも、まあ、便りが無いのはいい知らせだからってことで、何もしないの。ね、それでどう?」
「いや、そんな『取引成立』みたいな言い方されてもな。まだ怒っているのか、美咲?」
「深く傷つけられた感じかな。これはもう一生トラウマになって残ると思うのよ、うん」
「い、一生?」
「そう。だから、もうわたしたち二人は、互いのことを遠くから見守るような感じで行こうよ。時が二人の間を修復してくれるのを淡く期待しながら、ね?」

 娘の言葉に父はがっくりとうなだれた。
 どうやら、スーツ姿に涙している余裕はなかったようである。
 美咲は、継母に向かうと、

「景子さん」

 と心から嬉しそうに声をかけた。
 継母は、苦笑した。

「わたしの旦那様を、あまりいじめないでね、美咲ちゃん」
「わたしがいじめた分、景子さんが慰めてあげてください」
「でも、可哀想じゃないの」
「いいんですよ、父はもうそろそろ子離れしないと」
「美咲ちゃんのことを心から愛しているのよ」
「父からの愛はもういいんです。わたしにとっては、出がらしのお茶ですよ」
「愛は与えた分だけ薄まったりはしないと思うけど」
「だとしたら、わたし、父のこと愛していないのかもしれません。だって、薄まってますもん」
「また、そんなこと言って」
「本当ですよ。それより、父に何かされたらすぐに言ってくださいね。わたしは、120%、景子さんの味方ですから」

 そうしていると、二人は、まるで仲の良い姉妹のように見えた。

「おれは、いい娘を持ったよな?」

 友人が、げっそりとした声で言ってくるのに対して、

「それは間違いないな」

 と貴久は応えたあと、「旧交」を温めるのはそれくらいにした方がいいことを、みなに伝えた。

 式の時間が近づいている。

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