「神獣の森」
こうひー 著
「ぐあっ・・・!つ、強い・・・!!」
速く、そして力強い鞭の一撃に、兵士の剣はあえなく地面に転がった。
隣国の監視のために、王都より国境付近へ派遣された兵団があった。
その兵団に一兵卒として組み込まれた男は、ふとしたことから隊よりはぐれ彷徨っていた。
剣技の訓練は一通り受けていたが、山歩きは素人同然の町育ちである。
いつしか男は、人の気配のカケラもない森の奥深くへと迷い込んでいった。
そこが地元の人間が「神獣の森」と呼び恐れ近づかない領域であることなど、知る由もない・・・。
やがて少し開けた場所へ出ると、男を待ち構えていたかのように武装した人影が待ち受けていた。
鈍く光る歩兵鎧を纏い、鞭を構えて立ちはだかる姿に、男はとっさに身構えた。
相手は自分の身長をはるかに凌ぐ大柄な体格をしていたが、丸みを帯びた体つきは女性のものであった。
奇妙なことに、鎧の下には獣の皮が全身くまなく覆い、さらには獣を思わせる風貌の面を被っていた。
(スカンクの毛皮だと?――土地の蛮族か?いや、違う!これは――)
被り物などで無く、武装した獣人――スカンク女であるとしか、判断のしようが無かった。
(コイツは一体!?)
相手をゆっくりと観察できたのはそこまでだった。
スカンクの女戦士は男に迫ると、鞭で地面を打ち鳴らしつつ言った。
「何人も、この森を抜けることは適わない」と。
女にしてはやや低めの、冷徹な意思を感じさせる声だった。
目の前のスカンク女が言語を操る事は分かったが、その全身に張り詰める殺気は会話でこの場を切り抜けることが不可能であることを
男に確信させていた。
男が剣を抜くのと、スカンク女の鞭が唸りを上げるのは同時だった。
スカンク女はその巨体に見合わぬ俊敏さで、軽快に立ち回っては鞭を振るってゆく。
男の剣撃はまるで当たらず、女の速く鋭い蛇のような攻撃に、次第に体力を奪われていった。
決着が着くのにそう時間はかからなかった。
「あぐっ!」
やがて男自身が地面に転がる事になった。
体力は使い果たし、息切れを起こしていた。
鞭の当たった箇所は、表面はおろか内部の筋肉までも叩きのめされたかのようであった。
男の戦意は喪失していた。
気がつけば、スカンク女は男の体を跨ぐようにして見下ろしていた。
「うぅ・・・た、頼む、助けてくれ・・・!」
得体の知れない獣人相手に通じるものか分からなかったが、男は本能的に命乞いを試みた。
「・・・・・・・・・・・・」
スカンク女は何も言わず、男に背中を向けた。
女の豊満な下半身が張り出して、男に影を落とす。
(た・・・助かったのか・・・?)
男が安堵しかけたその時、巨大な影が覆いかぶさってきた。
「う・・・お・・・!?」
男の目前に迫った、巨大な尻。
白黒の毛皮に覆われた、大きく、かつ密度の高い肉塊。
圧倒的な双球の陰に、紫がかった肛門が顔を覗かせている。
(――そうか、こいつ俺に屁を・・・)
肉弾戦で叩きのめしただけでは飽き足らず、スカンクらしく放屁を浴びせて、敗北を知らしめようというのだろう。
男はそう判断した。
最も、スカンクのそれは厳密には屁では無く毒液のようなものだと、どこかで聞いたような気がしたが、目の前にいるものはただのスカンクではない。
屁か毒液か知らないが、果たしてどちらを繰り出してくるものか・・・。
だが、今の男にとってはどうでも良かった。
屁でも何でも嗅がされて、それで命が助かるのなら上等。
「分かったよ・・・俺の負けだ、さっさとやれよ」
覚悟を決めて、男は促した。
男の視線が、肩越しにそれを見下ろしていたスカンク女の、冷たく鋭い視線と一瞬絡み合う。
だがすぐにスカンク女がより深く腰を屈めたため、男の視界は巨大な尻が占めるのみとなった。
ボフゥッ!!
スカンク女の肛門は一瞬のうちに拡張し、男の鼻先にガスの塊を吐き出した。
思わず顔をしかめて息を止めるが、そのまま凌ぎ切るには気体の量はあまりに大きく、男を包み込んでいた。
恐る恐る、息を吸い込む男。だが次の瞬間・・・
「ひ ぐっ! んぎゃああああああああああああああああああ~~~~~~~~~~~!!」
強烈な、あまりに強烈な悪臭。
濃厚すぎる、屁臭。
男はたまらず絶叫し、鼻を押さえてのた打ち回る。
ブブッ!ブボボォッ!!
「んがっ!あがああああああああ~~~~~~!!」
2発目のガスが放たれ、男を包み込む悪臭がさらに濃度を増す。
「がひぃっ!っがひぃぃ!!
くせぇ!くせひぇええぇ!!」
錯乱した甲虫のように、ジタバタと暴れる男。
とうに覚悟など吹き飛び、残りの体力を振り絞って、ほうほうの体でスカンク女の尻の前から逃げ去ろうとする。
「・・・・・・・・・」
スカンク女は、そのままの体勢で、鞭を持った腕を振るう。
鞭の先が、ひゅん、と音を立てて、まるで生き物のように男の足首に絡みついた。
足をとられて突っ伏した男は、伏したままずる、ずると後方に引きずられていく。
「ぐへっ!?・・・あぁ・・・ひぃぃ・・・!!」
引き戻された先で男が振り向いて仰向けになると、またも巨大な尻が目前にそびえ立ち、そして咆哮する。
ボボブゥゥッッ!!
「んぎゃ~~~~~~ああああ~~~~~~~~~!!」
再度、屁臭に包まれ、引き攣り絶叫する男。
目に涙を浮かべ、口の端に泡が飛んでいる。
そんな男に、無慈悲な言葉が投げかけられる。
「何人も、この森から出ることは適わない・・・」
スカンク女が、暴れる男をものともせずに厳かに言い放つと、その冷たい声に男は心の底から凍てつく思いがした。
「むはぁっ!た、たす・・・」
男が再び命乞いをしようとしたその時、
ぷぅっ しゅうぅ~~~~~~~~~~~~~~~っ
「おぐゅっ!?・・・あが・・・かはっ」
静かに、だがひときわ濃厚に放たれた、おぞましい臭気。
まともに吸い込んだ男はビクンビクンと痙攣し、仰向けのまま崩れ落ち、力なく手足を投げ出した。
この期に及んでも男は気を失うこともできず、息を乱して悶えていた。
スカンク女は、苦しみ悶える男の上半身に尻を降ろしていった。
その尻は、男が両腕を広げても抱えきれないほど巨大なものであった。
投げ出された男の腕は、それぞれスカンク女の左右の尻の肉に埋もれ、動かせなくなった。
そして男の顔は、深い尻割れの中へと沈んでいった。
「んぐうぅぅ~~~~!?」
腰を下ろしたスカンク女の豊満な尻の下で、男は何が起こったのかもわからずに呻いていた。
弱った体でどんなに暴れても、毛皮に覆われた巨大な肉塊の下から抜け出すことは不可能であった。
むしろ暴れることによって、男の顔が巨尻の谷間の奥底へと咥え込まれてさえいた。
「んぐぅ~っ!・・・ごふっ!げふっ!」
獣の体臭のようであり、女の肌のそれにも感じられる、野生的な臭いが濃くなり、男はむせ返っていた。
再三にわたって放たれた屁臭の残り香が、男の力を弱めていた。
不意に、男を圧迫していた重みが消えた。
スカンク女がかすかに腰を浮かし、男の顔の上から、腰のほうへと移っていた。
そして再び、ゆっくりと腰を沈めると、ゆっくりと前後左右に揺さぶりだした。
「うぅ・・・?」
重量感のある、柔らかい巨尻が揺れるたび、男の股間に快感が走った。
「う・・・ふあぁ・・・!!」
スカンク女の腰はさらに動きを強めながら、男の下半身のみならず上半身のほうへと侵食していく。
豊満な巨尻が揺れるたび、男の体も共に揺さぶられた。
スカンク女の腰が行き来するたび、男の意識も共に夢と現の間を行き来した。
やがて蠢き踊る巨尻は、その舞台を再び男の顔の上へと戻していった。
滑らかな体毛の肌触り、柔らかな肉の重み 獣と女の臭いが、男の顔を包み込む。
それらの快感と、かすかな屁臭の残り香が男の意識をあいまいにさせる。
巨尻の下で、男は無防備に呼吸する――。
ぷす ぷすぅぅ
「うぇ・・・ひぎゃうぅ!!」
快感に我を忘れていた男の意識が、強烈な屁臭の直撃により覚醒を強いられる。
悶える男に構わず、スカンク女は巨尻を揺さぶり続ける。
ぶすっ ぶすすす ぶすっ
ぐりっ ぐりっ
スカンク女は巨尻を揺さぶって男の顔面を蹂躙するのみならず、凶悪な放屁を添えて、男に天国と地獄を同時に味わわせた。
ぷすすす ぷすぅう
ぐりっ ぐりっ
「へぎゃ!・・・ふぎゃあぁ!!」
尻がぷすぷすと吐息を放ちつつ揺れるたび、男の狂乱の表情が見え隠れした。
そして苦悶とも嬌声ともつかぬ声を上げて、ガスの噴出音と共演するのであった。
「へひ・・・へひひ・・・」
やがてスカンク女が尻を上げると、笑ったような顔で、だらしの無い声を漏らす、
もはや正気を保っていない男の姿があった。
スカンク女はそれを一瞥すると、再び尻を男の顔の上に戻す。
深く座り、ゆっくりと男の顔を、自らの巨尻の深淵に沈めていった。
スカンク女は、男に最後の言葉を告げた。
「・・・眠れ。」
ブブブオオオオオオオオッ!!ブッブブブッシュ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!
「!!!ンぁ~~~~~~~~~―――ァァァ~~~~~~~~~~~!!――――」
巨尻に埋もれて、ただでさえくぐもった男の断末魔の叫びは、これまでにない膨大な放屁ガスの爆裂音に掻き消されてしまった。
やがてガスは立ち込める黄色の靄となり、哀れな犠牲者とその上に君臨する女帝の姿を包み隠していった。
靄が完全にそれらを包み隠す寸前、男の断末魔を押し殺すかのように、ぐっと力み、さらに尻を押し沈めるスカンク女の巨体と、
ブブシュウウッ!!
という噴出音に合わせて、全身をビクンッ と引き攣らせる男の姿があった。
靄が晴れたとき、スカンク女の巨体は既に姿を消していた。
後に残されたのは、彼女が座っていた周辺の枯れ死んだ草むらと、
その中央に転がった、全身黄色く変色し、笑ったような狂乱の表情を貼り付けて事切れた男の骸のみであった。
END