Blooming Blue 2020/04/11 22:26

『夕焼け色の寄る辺』お礼と補足

こんにちは、同人音声サークル『Blooming Blue』の蘭華です。

 この度は『夕焼け色の寄る辺』をお買い上げいただき、本当にありがとうございます。初めてシナリオを書いて音声編集を行ったので、色々と拙い部分もあったかとは思いますが、まず興味を持っていただけたことをとても嬉しく感じています。
 作品をお買い上げ下さった方々をはじめ、声優様、イラストレーター様、相談に乗ってくれた友人達には本当に感謝を申し上げます。

 この記事ではストーリーや九渡瀬累についての補足、制作における話をします。サークルの中の人間が透けて見えるのが苦手な方や、本編以上の情報は必要ないという方はご注意ください。いわゆる自創作への語りです。
 あくまでも私が勝手に考えてただけなので、内容に関してご自身で持たれてるイメージがある方はぜひそちらを大切にしていただければ……と思います。



〇ストーリーについて

 「些細なことをきっかけに取り返しがつかなくなった事象への遣る瀬無さ」「叶わないとわかりつつも望んでしまう切実な思い」をテーマに作りました。

 全体のストーリーとしては

貴方は九渡瀬が好きなことを隠したまま本人に恋愛相談をする。けれど自分ではない他の男(よく一緒にいる男友達)を好きだと勘違いした九渡瀬は、自分が必要とされなくなる/側にいられなくなることへの恐怖や焦りから貴方を襲ってしまう(トラック3まで)

その後しばらく(夏休みの間)監禁生活を続け、貴方が口にした『好きだったのはお兄ちゃん』という言葉でやっと誤解が解けるものの、すでに手遅れと言っても過言ではない状況だった

 みたいな感じで考えていました。喋り言葉だけでストーリーを伝えるのって難しいですね……


 作中以前の九渡瀬ですが、

【貴方と出会う前】
 元々の気質が優しく穏やかだったため、周囲の大人へ怒りをぶつけるのではなく自分がいい子になる(我慢する)ことで誰かに必要としてもらおうとした。寂しさや悲しさをずっと一人で抱えていた。

【貴方と出会ってから地元にいる時】
 貴方の一番近くにいるのも一番頼られているのも自分という自信があったため、情緒が不安定になることもなく完璧に「穏やかで優しい頼れるお兄ちゃん」をやれていた。無意識に貴方はずっと側にいてくれると思い込んでいた。

【進学して距離が離れてから】
 貴方が側にいない事の寂しさや地元にいたときほど頼られていないことへの不安が強く表れ、次第に不眠気味に(大学一~三年生)。
 貴方が同じ大学に通い始めこれで元通りだと安心したのもつかの間、新しく世界を広げ忙しくも充実した生活を送る貴方を見て、置いていかれるような、必要とされなくなるような恐怖を感じて焦りはじめる。

 そこに恋愛相談を持ちかけられてグラグラだった情緒が完全に決壊する(トラック2)……みたいな感じで考えていました。



〇九渡瀬累について

【両親】
 互いにそこまでの愛情は無いが子供ができたからという理由でとりあえず結婚+二人とも仕事がしたかった+子の人格を尊重できない子育てに向いてないタイプの人間……という良くない条件が重なっていて、勢いでの夫婦生活は次第に破綻、最終的にどちらも親権を押し付けあう形で離婚(話し合いの末、母親が家といくらかのお金をもらうことを条件に九渡瀬の親権を引き受けた)した、という設定です。
 離婚後の母親は、中断されてしまったキャリアを取り戻すように仕事に打ち込み、九渡瀬に対して愛情を注ぐことはありませんでした。衣食住とその他一人暮らしの費用等の金銭的な支援は行っていますが、本当に義務を果たしているだけで愛情は一切ありません。表面化しづらいタイプの育児放棄です。九渡瀬が貴方のいる地元を離れて遠くの大学へ進学した理由も母親との確執にあります。

【交友関係】
 何でもできて人当たりも良い(ように振る舞っていた)ので基本的に人から好かれやすく、大学でも特に浮くことなくそれなりにやっていました。「俺、全然友達いないからわかんないや」(トラック4)の発言は実際に友達がいないわけではなく、とにかく貴方のことで頭がいっぱいでそれ以外に興味が持てなかったことに由来します。あの人とはよく喋るけど相手のことをわざわざ友達だとは認識していない、対人のリソースのほぼ全てを貴方に使用している……みたいな感じです。
 あとこれは出せなかった設定ですが、九渡瀬には一年生のときからよく一緒に授業を受けたりご飯を食べたりする友人(九渡瀬本人がどう思ってるかは置いておき)がいます。九渡瀬に勉強(というより過去問の答え)を教わる代わりに、彼が大学に行けなくなるほど情緒が不安定な時には出席やレジュメの工面をする……という持ちつ持たれつな関係を築いています。いつか表に出せたらいいな。


 元々「雰囲気は穏やかで優しいけれど中身は過激で愛が重い人間」「唯一の何かを支えにギリギリ生きている人間」が好きで、そういう「好き」を合わせて生まれたのが九渡瀬累です。
 『くわたせ るい(kuwatase rui)』という名前は『救われたい(sukuwaretai)』のアナグラムです。周囲の大人から「いらない」と言われ、誰かに必要とされたくて、誰かの何かになりたくて、唯一優しさや居場所与えてくれた貴方を何より大切に思って好きになって依存して、それでも自分の落ち度で全部めちゃくちゃにしてしまって、後悔するけれど諦めることはできなくて……と、どうにも人生が不器用で上手くいかない彼ですが、いつか貴方によって救われて欲しいなと思い考えました。

 終盤の九渡瀬には「これ以上側にいても傷つけるだけなのに、絶対に離れたくない」「自分が起こした不都合な現実を認めたくない」「貴方の側にいたい、大切にしたい」という、両立し難い感情と葛藤が表れてたらいいなと思います。いろんな感情と思いと気持ちの狭間で悩んで苦しんでグズグズになってそれでも何とか生きているのが人間だと思ってるので、そういう人間味が……出ていたら……嬉しい……

 彼はハイスペックで何でもできるというより、(必要とされるために)そう見せてきただけの人間です。勉強もスポーツも料理も最初から上手にできたわけではなく、努力してできるようになりました。ただ、努力すれば大抵のことは人並みかそれ以上にできるタイプでもあるので、その点では生まれつき恵まれた才能を持っていたと言えるかもしれません。貴方にお願いされたら「側を離れること」以外なら大体できると思います。


以下考えるのが楽しかったプロフィール(本当に知らなくても何の支障もない)です。
誕生日:2月16日
身長:180cmあるかないか
好きな色:紺、黒、白などシンプルで落ち着いた色
好きな食べ物:シチュー、甘いもの(和菓子より洋菓子)
苦手な食べ物:生もの、極端に奇抜な見た目をしたもの
貴方の身体で好きな部位:唇、胸、太ももなど柔らかい部分



 死ぬまでに音声作品を作りたいな~と漠然と考えていたのですが、一月くらいに突然死の恐怖を感じた(別に何かあったわけではない)のとここでやらなきゃ一生作らないなと思い制作に本腰を入れはじめ、色々な方のご協力の下で完成に辿り着きました。死に関しては時世が時世なので普通に今もちょっと怖いです、皆様もどうかお気を付けください。

 わかりにくいかつ微妙な演技指示が入っている台本を穏やかで柔らかい声で演じてくださった麻生修也様、九渡瀬の頼れる優しいお兄ちゃんっぽい姿を具現化し綺麗な夕焼けが目を惹くイラストを描いてくださった七瀬ほづみ様には本当に感謝しております。声からは感情の機微が伝わるしイラストはめちゃくちゃ綺麗で少し切なくて、九渡瀬の「怒鳴らない」「垂れ目でうっすらクマがある」という私のこだわりも忠実に再現してもらえて本当に嬉しい……

 感情の整理が上手くできずに葛藤してもがき続け、苦しい中で「それでも」と望んでしまう人間の切実さ、そして愛の重い人間は信頼ができる。そういう感覚や詰め込んだ好きが少しでも伝わっていれば、何よりこの作品を楽しんでもらえていたらとても嬉しいです。いつになるかはわからないけれどまた何か作りたいとは思っているので、その際は何卒よろしくお願いします。
 以上、本当にありがとうございました。

最新の記事

月別アーカイブ

限定特典から探す

記事を検索