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ウルトラヒロインの記事 (43)

もに太 2021/01/30 22:09

【小説】風雷神姫[前編]

・ pixivに投稿したものと同じ内容です。
後編は明日1/31に投稿予定です。挿絵1枚(200プラン)と一緒に投稿予定ですが、もし明日中に投稿できなければ後日この記事に後編を追加させていただきます。
2/07追記:200プランに中編本文と挿絵1枚を投稿しました。当初前編後編の二部構成でしたが三部構成し変更したため、後編は挿絵を追加で描けたら2月の記事で投稿したいと考えております。
───────

風雷神姫[前編]

風寺 響(ふうじ なる)は、最近よく同じ夢を見る。
今宵も気が付くと、もやのかかった白い世界に立っていた。

(……また、この夢……)

ここはどうやら森の中らしく、木の葉がサワサワと揺れる音がする。

─と、木の葉の音ではない誰かの声が聞こえた。

しかし、それはおぼろげで、はっきりと聞き取ることが出来ない。

いつもなら、ここで目が覚める。
特に、ストーリー性のない夢だ。

ところが、今日はいつまで経っても目が覚める気配がない。代わりに、頭の中に映像が流れ込んできた。

青く長い髪を一つに結った、銀色の体の女性が怪獣と戦っている。漆黒の足で蹴りを放ち、怪獣が怯むとすかさず電撃を放つ。怪獣は倒れ、爆散した。

響は、その女性が、最近出現し始めた怪獣達を退治している謎の巨人だと気付いた。

巨人の周りに再び怪獣が現れる。それも数体。彼女は険しい表情を浮かべている。

その横顔に、見覚えがあった。

(あれは……メイ?)

何故、今まで気付かなかったのか。誰もメイだと気付かないように、不思議な力で意識を逸らされていたのか。

突如、映像が途切れた。何かの声も聞こえない。

あとに残ったのは 焦燥感

─行かなくちゃ

そう思った瞬間、突風が吹き荒れる。
響は強風に飛ばされ─ベッドから飛び起きたのだった。


「お母さーん!行ってくるねー!」

行ってらっしゃーい、と、居間からの返事を聞き届け、雷門 鳴(メイ)は家を出発した。ハイキングウェアに身を包み、背中にはリュックサック。手にしたバケツの中にはごみ袋、トング、雑巾などの掃除グッズ。彼女の目的は、近所の裏山の散策兼ごみ拾いである。
道中、メイは周囲に人が居ないことを確認すると、自身の中に宿る雷の化身─ウルトラエクレールに話し掛けた。

「久しぶりの裏山だね、エクレール」
『……そうですね』

雷神の平坦な声がメイの中で響く。

「雑巾も持って来たし、エクレールの石碑もピカピカにしたげるからね。あ、雑巾は新品未使用だから安心して!」
『……ありがとうございます』

メイの言う石碑とは、遠い昔の人々が、エクレールを祀って建てたもので、メイと一体化するまではエクレールの依り代だった。メイは石碑から自身へとエクレールの在り処が変わっても、エクレールと昔の人々を尊び、石碑を大切に扱っている。
言うなれば、石碑の元へ向かうということはエクレールにとって実家に帰るようなものだが、その声色は明らかに憂いを含んでいた。

『メイ……貴女の心遣いはとても嬉しいです。ですが、連日の戦闘で貴方は心身ともに疲弊しているはず。自宅で休息を取った方が……』

ここ最近、メイとエクレールが行動を共にするようになった当初に比べ、怪獣の出現頻度が日に日に増している。エクレールの力は強大だが、やはりその分、エクレールへの変身は、人間であるメイの体と精神に負荷を掛ける。適度な休息が取れれば問題ないが、今はそれもままならない状況だった。

「うーん……確かにちょっと疲れはあるけど、散策疲れで変身できない~なんて事にならないようにするから、大丈夫!」

メイが明るく答えるが、それを聞いたエクレールが静かに怒りの気配を滲ませた。

『メイ、私が最も恐れているのは、そのような事ではありません』

エクレールがメイに対して怒りの感情抱くことなど初めてに等しい。メイは一瞬驚いたものの、申し訳なさそうに苦笑いを浮かべた。

「……分かってるよ。でもね、山で自然に囲まれるのは落ち着くし、わたしにとって必要なことなの」
『……』
「心配してくれてありがと、エクレール。散策も掃除もほどほどで切り上げるし。帰ったらちゃんと休むから、本当に大丈夫だよ」

エクレールはメイの事を大切に想っている。だからこそ、メイの調子を気に掛けるし、メイが自身をエクレールの依り代でしかないと言っているような発言は、例え冗談でもエクレールの怒りを買う。
メイはそれを十分に分かっていた。

『……わかりました。メイの楽しみを邪魔するような事を言ってしまい、すみませんでした』

相変わらず平坦な声。しかし、言い過ぎたと後悔している気配を隠せていない。

「ううん!そんなことないよ。あ、でも……わたし、夢中になると周りが見えなくなるから、その時は遠慮なく叱ってね!」

メイの言葉に、エクレールが微かに笑った。

『わかりました。その時は遠慮なく、本気で叱ります。覚悟してください』
「ひゃっ、言わなきゃ良かったかな!?」


山の入り口付近でのゴミ拾いを終え、メイは石碑のある山の奥深くへ歩き出す。地元の人間も滅多に立ち入らないような山奥でうっそうと生い茂る草木の中を一人で歩くことは、自然が好きだと言えども少女にとっては心細いこと。今まで気軽に散策できないでいた。しかし、今は一心同体の頼もしい相棒がいる。メイは葉っぱにいるシャクトリムシや、ヒラヒラ飛んでいる蝶などをキャッチアンドリリースしたり、見たことのない植物をハンドブックで調べたりと、散策を大いに楽しみ、エクレールに叱られてからやっと目的地に辿り着いた。

「最初に来た時も思ったけど、ここは空気が違うっていうか、なんか神聖な場所って感じがするね」

そこには、メイとエクレールが最後に訪れた時と何ら変わらず、ただ静かに建っている石碑があった。風化により刻まれた文字は読めないほどに掠れ、更に、メイが初めて訪れた際に石碑を見落として倒した時に少々欠けてしまったため、見た目はボロボロである。しかしそれでも、メイが立て直して磨き、周囲の雑草を刈って手入れをした甲斐もあり、石碑は厳かな雰囲気を纏っていた。
メイは歩み寄り、石碑に落ちている枯れ葉を払う。

「最近来れてなかったから、やっぱりちょっと汚れてるね。水汲んで来なきゃ」

メイはその辺に荷物を降ろし、バケツを手にして近くの沼に向かった。
鬱蒼と茂る草木に囲まれた小さな沼に到着したメイ。しゃがんで水面を覗くと、川魚が気持ち良さそうに泳いでいる。

「魚がいっぱいいるー!。うーん……ゆっくり眺めたいけど、ちょっと到着に時間がかかっちゃったから急がなくちゃ……ん?」

バケツに水を汲もうと身を乗り出したその時、対岸の沼の茂みに二つの赤い発光物が見えた。怪しく揺らめくそれは、まるで人魂のようだ。

「ねえエクレール、あれ何だろう……?」

好奇心を駆り立てられ近付いてみようかと思ったが、エクレールの声がそれを制した。

『メイ、今すぐにあの光から目を離し、ここから離れてください』
「え?」

相棒からの突然の指示に一瞬戸惑ったが、次の瞬間、メイは自身の異変に気付いた。

(か、体が動かない……!?)

その場に縫い付けられたように身動きが取れなくなっていた。赤い光から目を離すことも出来ない。すると、赤い光から何かが流れ出た。

「何あれ……カプセル……?」

それは、透明なカプセルだった。ちょうど人間が中に入れるくらいの大きさである。

「えっ、なんかこっちに来るんだけど!?」

カプセルは水面を滑るようにメイの方へ向かっている。逃げなければと焦るが、体が言うことを聞かない。そして……

「きゃあ!?」

カプセルはメイに接触すると、そのままメイを内部へ取り入れてしまった。

「と、閉じ込められちゃった……やだ!出してよー!!」

ありったけの力で内側からカプセルを叩くが、びくともしない。しかも騒ぐメイにお構い無しで、カプセルはもと来た道をスイーッと引き返し始めた。

「わーん!!やだー!!」
『メイ、落ち着いてください。これは怪獣の仕業です。変身して私と交代してください』

パニック状態のメイだったが、エクレールの呼び掛けにハッと我に返る。

「そっか!うん、よしっ、変し……あ、ちょっと待って!」
『?』
「ねえエクレール……よく考えたら今のわたし……カプモンボールに入ってるカプモンみたいじゃない……!?」

カプセルモンスター、ちぢめてカプモン。
巷で大人気、メイもお気に入りのゲームである。

『……確かにそうですね。まるでゲットされるかされないかの瀬戸際にいる野生カプモンのようです』
「でしょー!? あぁ……まさかこんな体験ができるなんて!怪獣はゲットしたわたしを手持ちに加えてあちこち旅をしたりするのかしら……!」
『非常に興味深いお話ですが、残念ながらゲットされたあかつきには手持ちカプモンではなくボックス(食糧庫)行きになるかと思われます』
「…………」
『どうしますか、メイ。もう少しカプセルに留まりますか?』
「……お……ぉおお願いエクレールッ!! 脱出してーッ!!」
『承知しました』

メイの体が光りを放ち、バチバチと電気が迸る。カプセルが木っ端微塵に砕け、中から飛び出したのは、メイを依り代とする雷の化身、ウルトラエクレール。
エクレールは沼の真上に飛び、赤い発光体を見据えて構えを取る。

「出てきてもらいましょうか」

手から光弾─スパークショットを発射。その全てが発光体に着弾し、小爆発と水飛沫が上がった。

「ギィアアアッ!!」

雄叫びと共に、水飛沫の中から巨大怪獣がその姿を現した。がま口財布のような大きな口、瞼のない赤い目。二足歩行だが、どこか蛙を思わせる風貌だった。
宙に浮くエクレールを視界に捉えた蛙怪獣は狩りの邪魔をされた怒りを露する。大きな口をガバッと開け、火炎攻撃を繰り出してきた。

「!」

エクレールは宙返りをするように火炎を回避。そのまま大蛙の背後へと降り立った。

「はぁ!」

沼に着地するや否や、エクレールは速攻で回し蹴りを放つ。漆黒のブーツに包まれた脚が怪獣の頭を直撃。さらに勢いのまま振り向きざまにもう一撃食らわせた。

「ギ……ィ…ッ」

頭を揺らされ、意識を飛ばした大蛙の体がぐらりと傾き、沼に倒れた。

パワー勝負を不得手とするエクレールだが、急所を的確に打つハイスピードの攻撃はパワー不足を補って余る。

「決めます」

エクレールは全身からバチバチと電撃を迸らせ、必殺技の構えをとる。しかしその時、視界の端で沼から何かが跳ねた。

「!……」

その正体を確認したエクレールは放電を中止する。視界の先にいたのは、水面下で泳ぐ淡水魚。見渡せば、亀や水鳥、他にも生き物の姿が見える。沼の中で放電すれば、感電するのはこの蛙怪獣だけではないだろう。

「……彼らを巻き込んでしまっては、メイに顔向けできませんね」

エクレールは自身の本質たる電撃を使った攻撃が出来ないという不利を悟る。しかし本人は気付いていないが、その表情は穏やかだった。

「ギィ……ギャオオェ!!!」

意識を取り戻した大蛙が咆哮と共に立ち上がり、エクレールに襲い掛かる。

「!」

こちらに突っ込んで来る勢いを利用して突進を受け流す。すかさず電気エネルギーを用いて手に磁力を集中し、地中から砂鉄を収集してアイアンスピアを生成して構えた。
蛙怪獣が振り向いて大口を開ける。すると、メイを捕らえたものと同じカプセルが次々と吐き出され、エクレールへ飛来する。

「カプセルの正体はあなたの吐く泡……そうやって大昔にも人間をさらっていましたね」

遥か遠い昔、人々の祈りによって生まれたエクレールは、人々を恐怖に陥れる怪獣達を裁きの雷で封印した。この怪獣も、その内の一体だ。

エクレールはアイアンスピアでカプセルを全てを叩き落とすと、スピア持つ手を体ごと大きく後ろに引き、狙いを定めた。そして、

「─やあっ!」

掛け声と共にアイアンスピアを投擲。
ヒュン!と空を切ってスピアは一直線に飛び、蛙怪獣の分厚い胴体を貫いた。

「ギッ……オアアアァ!!?」

動きを止めた蛙怪獣。その隙にエクレールは両腕にエネルギーを集中し、L字型に組む。

「レクティウム光線!」

眩い光線が発射され、大蛙に直撃。大小の爆発を起こし、蛙怪獣は爆散した。


「……さて」

怪獣の最期を見届け、エクレールは稲妻と化して霧散する。その足元には、目を閉じたメイが静かに立っていた。次の瞬間には大きな目がパチッと開かれ、んんー!と体を伸ばす。

「お疲れさま、エクレール!変身後の記憶は……あ、共有済みだね。……そっか、正体は蛙?の怪獣だったんだ」
『はい』

メイはエクレールの返事を聞きながら沼のほとりにしゃがむと、淡水魚の群れを嬉しそうに眺めた。

「沼の生き物も無事で良かった。守ってくれてありがとうね」
『いえ。……巻き込むまで既の所でしたが』
「うふふ、確かにぎりぎり!でもあそこで踏みとどまるのはさすがエクレール!」
「ありがとうございます」

和やかに戦いのあとの会話を楽しむ少女と雷神。


─しかし、平和な時間は唐突に終わりを告げた。

メイのスマホからブザー音がけたたましく鳴り響く。

「な、なんだろ?……ええ!?」

メイがスマホの画面を確認すると、「○○地区に怪獣出現」の文字。

「エ、エクレール……また怪獣だって……」
『…………』
「うー……しかもちょっと遠い……今から戻って最寄り駅行ってたら時間が……エクレール、ここで変身して怪獣の所まで飛んでもらっていい?」
『時間を置かずに再変身することはメイの心身に多大な負荷をかけます。可能な限り現地へ向かい、それから……』
「それじゃ被害が広がっちゃうよ!わたしは大丈夫だから、お願い!」
『……分かりました』

メイの体が眩い稲妻をまとい、再び雷雲の化身、ウルトラエクレールへと変身する。

「…………」

エクレールは険しい表情で空を睨み、新たな脅威の元へ飛び立って行った。

────
ということで前編でした。
後編、まだ直したいところが色々ありますがキリがないので明日の投稿目指します。

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風雷神姫[中編]本文と挿絵(1枚)。エクが首を絞められてます。

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もに太 2020/11/26 03:05

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もに太 2020/11/22 22:01

【完成】囚われのフィニ


フィニちゃんの磔ピンチ絵完成です。SSも書けたので載せておきます。名無しのオリジナル宇宙人が登場します。ノゾナ星人といい、私が書くオリジナル星人はなんかアホっぽくなってしまう。駆け足で書いたので色々不安ですが大目にみてやってください…。

囚われのフィニ

敵宇宙人を追い、フィニとリアンが辿り着いたのは地球だった。

「やっと追い付いたですぅ!」
「もう逃げられへんで!覚悟しいや!」

町中に降り立った宇宙人を挟み撃ちにするようにして、二人は着地する。追い詰められたはずの宇宙人は、薄ら笑いを浮かべていた。

「覚悟するのは貴様らのほうだ。ふん!」

掛け声と共に宇宙人が二人に分裂した。

「うわ、厄介やな……フィニ、援護頼むで!」
「はいですぅ!」

リアンが駆け出し、エネルギーをリング状にしてをまとわせた片腕を大きく後ろに引く。

「ラトスラッシュ!」

腕を振り抜き、鋭利な刃を回転させる光輪を飛ばす。しかし敵は散開して回避した。

「くくく、何処を狙っている」
「うっさい!」

二人の侵略星人はリアンを翻弄する。リアンは格闘で応戦するが、敵はなかなかリアンに隙を見せない。

「そぉらっ!」
「うあっ!」

一人から飛び蹴りを食らってしまう。リアンがバランスを崩すと、もう一人が背後に迫る。

「後ろがガラ空きだウルトラレディ!」
「チィッ!」
「させないですぅ!ディフェンスウォール!」

敵の攻撃が直撃する寸前、フィニの遠隔バリアがリアンを守る。

「メディカルレイ!」

続けて放たれた回復光線が、リアンのダメージを取り除く。

「サンキュー、フィニ!」

フィニが作ったチャンスを、リアンは逃さない。エネルギーを両腕にまとい、十字に交差させる。

「カンサシウム光線!」

高出力の破壊エネルギーが分裂宇宙人の片割れに直撃した。

「ぐおああ!!」

そのまま呆気なく爆散。リアンはすかさずもう片方に向き直る。

「よっしゃ、あとはアンタだけや!」
「くっ!こうもあっさりと……だが、今のでエネルギーを消費しているな?もう迂闊に大技は……!」
「ドートンボリバー水流!」

話を無視し、リアンが両手を合わせる。掛け声と共に発射されたのは水流。敵星人は頭から水を被るが、ダメージはほとんどない。

「……はっ、やはりこの程度の技で精一杯のようだな!」

禍々しいエネルギーを手に収束させ、放水を続けるリアンに放とうとした、その時、

「メディカルフロスト!」

フィニが、合わせた両手から冷却ガスを噴射。ずぶ濡れの侵略星人は瞬く間に凍りつき、身動きが取れなくなった。

「な……にぃ……っ」
「このまま押しきるですぅ!」

フィニが再び防御壁を展開。それを両手で押し出した。

「ウォールアタック!」

本来防御に使われるディフェンスウォール。その強固なエネルギー壁を相手にぶつけることで物理的なダメージを与える、フィニにとって唯一と言っていい攻撃技だ

「ぐああッ!」

氷漬けの状態では避けることは叶わない。迫る壁が直撃し、敵星人は爆散した。

「よっしゃあ!これで……って、まだおる!?」

なんと、分身がもう一人、距離を開けてリアンとフィニを見据えていた。

「……フンッ!」

クローン星人は黒い光弾を連射。弾道には、逃げ惑う人々の姿があった。

「守るですぅ!ディフェンスウォール!」

フィニが慌ててシールドを展開し、事なきを得る。追撃に備えて構えるが、侵略星人は予想に反し、フィニとリアンに背を向けて逃走を開始した。

「なっ……待たんかいこらぁ!」

リアンが後を追う。フィニも駆け出そうとした、その時、

─ドシュッ!

「あう!?」

背後から首に衝撃を受け、一瞬で視界が暗転する。次の瞬間には頬に冷たい地面の感触を覚え、フィニは自分が不意打ちに倒れたことを悟る。

「う……うぅ……」
「ったく……レッドタイプのオマケだと思って甘く見てたが、思ったより面倒なことしてくれるじゃないか。ま、分裂の繰り返しで力が分散して弱くなっちまってる今の俺でも一撃で倒せるのは助かったぜ」
(フィニとリアンちゃんを引き離す罠だったですね……リアンちゃんに知らせを……ウルトラサイン、を……)

気力を振り絞るも、フィニの意識はここで途切れた。

「……ん……う……」

フィニが目を覚ます。だが、完全な覚醒には至らない。何故なら、彼女のエネルギーは既にクローン星人によって吸収され、生命を維持できる最低限の量しか残されていないからだ。
目を開ける気力すら奪われた状態だが、ここが地球ではないことは分かった。おそらく生命体のいない小惑星といったところか。

(体が……動かないですぅ……)

両手首と足首に太い鎖がガッチリと巻かれ、体を十字型に固定されている。いわゆる磔だ。逃れることは到底不可能だろう。
加えて、凄まじい倦怠感がフィニを襲う。一体何をされたのか、体に嫌な感触が残っていた。

(……フィニが捕まっていたら、みんなに迷惑がかかるです……早く脱出を……)

自責の念に駆られるフィニ。そんな彼女を嘲笑うかのように、下衆な笑い声が二つ、近付いて来た。当然、彼女を捕らえた分裂星人達だ。

「一時はどうなることかと肝を冷やしたが、思わぬ収穫だぜ。それにしても、あのオレンジ髪のウルトラレディのキレ顔は傑作だっな。返せ返せ~!って、必死過ぎるだろ。このブルータイプがそんなに大事かよ」
「いいじゃねーか。コイツを人質にしておけば、ウルトラレディも迂闊には手出し出来ないってこった。あの微乳ウルトラレディも磔にして売り飛ばしてやろうぜ」
「なら、このブルータイプと抱き合わせにしないとだな。需要無さそうだし」

言いたい放題の彼らに、今のフィニは反論を飛ばすことも出来ない。

(リアンちゃん……メリアちゃん……ごめんなさいです……)

脳裏に浮かぶ、友の顔。自分だけが売り飛ばされるのならまだマシだ。しかし、大事な仲間を巻き込んでしまうことだけは、あってはならない。己の無力さに、フィニの閉じられた目から涙が溢れる。
その時、侵略星人たちの無駄話を遮るように、分身の一人が持っていた小型の映像端末のブザーが鳴り響いた。

「どれどれ。未確認飛行物体が接近中……お、やっぱあのオレンジ髪だ。サクッと捕まえてオークションに出品だぜ」
(リアンちゃん……来ちゃダメです……)

恐れていたことが起ころうとしている。
しかし、

「……ん?おい、もう一人いるぞ。長い銀髪で胸がデカくて……うおっ、すげぇ美人。あ、カメラ破壊された」
(長い、銀髪……?)
「いいねぇ。まとめて捕まえてやる。こっちには人質がいるからな。チョロいもんよ」
(まさか……メリアちゃん、と……)

……小一時間後、フィニは無事に救出され、クローン星人達は残らず倒されたのだった。

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もに太 2020/11/16 00:11

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もに太 2020/10/25 10:56

【カラーラフ】ウルトラオラージュ&??


ウルトラオラージュと変身者のラフです。完成したら小説と一緒にpixivでも公開する予定ですが、来年になる可能性が高いのでチラッと先行公開…。簡単なプロフィールと、作成中の小説から一部セリフを抜粋して載せてみたので、彼女たちのキャラが何となく把握できる…かも?

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