ぽに犬/ponidog 2024/08/31 21:29

WitchLibra 1-1 導入

1話。『土地神』

1-1

黒天君は黒嶺山(くろみねやま)の頂きに居を構える祟り神である。
「ふはは! 喰らえ天剣! 今年の僕は一味ちがうぞ」
「そうか」
「ぐああー」

「あらま。今年の黒天様は派手にやられてますなあ」「んだんだ」
そして毎年の秋祭りに天将に討伐されては次の年の豊作を約束するのだ。

以上! あらましおわり!

「あらまし終わりじゃないっ!!!」
「まあまあ。黒天君さま村人から感謝の大根漬けが奉納されてますよ」
「く~~!!」

むんず!ばりぼり!!

「今年も上手にできてて腹立たしい」
「いいことでございますな」
黒天君は死霊系の祟り神なので腐敗に属する漬物や発酵食品は大変上手にできるのだ。
麓の村人からは「黒天さま」として親しまれている。
黒嶺山の漬物は名物として大評判である。最近はチーズなども作り始めた。

「あーもーやだー。今年はなにあれ、最後唐竹割り(真っ二つ)だよ?!僕じゃなかったら死んでるよ!」
派手に死んだけど!

「天剣もやっちゃった、って顔してましたな。『こんなに弱いとは思わなかった。すまない』とか言ってました。」
「~~~!!!」

ばりぼり!!
大根を2本め行った。
従者がお茶を出す。

「いい加減そろそろ勝ちたい。天剣をぎゃふんと言わせたい。」
「無理でございましょうな。昔はもう少し勝負になってましたが、年々修行の差がでてますな」
「もう少し慰めようって気にならない? さっきから全否定で会話返してるよね??」
「そうは言われても祟り神の眷属ですからなあ。
そうそう、天剣から手紙と贈り物を預かってますよ」
「はよ言え。・・・。馬鹿らしい。魔法を使える死霊を一体従者として貸してくれ、だそうだ。
ご丁寧に従者につける支配の指輪付きだ。僕をぜんぜん信用してないな。」
「祟り神ですからなあ・・・。」
「で。魔物の従者なんか連れて天剣は何をするんだ?」
「天剣は天将とはいえ剣士ですからな。火を起こすのも火打ち石ですよ、彼。気軽に使える雑用がほしいのでしょう。」
「天剣も大変だねえ。待てよ。良いこと思いついたぞ」
「・・・行動を開始する前にお伺いしても?」
「後で、後で!」
「また仙力の無駄遣いをしはじめた!!!」

天剣に勝つ為にと毎回仙力(EXP)を無駄に消費しているのである。恒例である。
この浪費癖が天剣との差の一因である。

・・・
・・・
・・・

「どうよ!!!」
「お見事でございます、お嬢様。・・・何のおつもりです?」
「僕が魔法を使える死霊になりすますのさ! 最後はこの2枚のよくわからない札を額に貼って完成だ。」
「コケー!」(←3本足の黒い鶏の声)
「うまそうな鶏。」
「喰うな。若干無理があった土地神からのクラスチェンジ先も完璧。がっつり仙力を消費した魔導書が鶏になって自動的にフォローしてくれる。(※早口)
クラスチェンジ先の魔物がする自然な行動補正はもちろんのこと、僕が普段使わないような魔術も滞りなく使えるってわけよ。こいつは僕の半身みたいなものだ。」
「思い切りがよすぎる」

土地神が魔物という規格に収まるのは大男が宅配ダンボールの中に膝を抱えて入るようなものだ。それを大きく力を分離させて幼稚園児がダンボールをハウスにするぐらいの感じでクラスチェンジを成したのだ。

※普通やらない。

「なんとまあ、存在変化(クラスチェンジ)と行動補正の術式。
仮にも土地神のはしくれが下等な魔物に存在変化やっちゃうとは。
で、その浅はかさで高名なあなたは何を企んでるのです?」
「ふふん。この化けた死霊司書はなんとLVドレインが使える!
天剣の仙力(EXP)を吸って僕に加算するってわけだ。どうだ、完璧だろう?」
「お嬢様。Lvドレインを使える死霊は多々ありますが、その死霊司書の取説は読みましたか?
無難に土地神並の力を持つ吸血鬼貴族や死霊王などがあったでしょうに。」
「? 僕は本が好きだ。司書の真似事も学生時代したことがある。(※図書委員)
専門知識も行動補正の術式もあるし問題ないだろう? さてここから本番だ。」
偽物の支配の指輪を取り出す。
「これに別途用意した術式でスーパーぱわーなチートを・・・」

バーン! 
唐突に偽物の支配の指輪が砕け散った。
「え? 何事?!」

ひゅん!すぽ!

「? あ!」
「あ」
「ちょ、ちょっと待って、これなに?!」
「本物の支配の指輪ですな。なるほど、天剣はお嬢様がなにか仕込む前に発動するように仕掛けていたと。不正は破壊して、さらに懲罰とばかりにお嬢様の弱点に食い込むように入ってる。普通の魔物なら首輪とかに変化したのでしょうな。」
「か、感心してる場合?! というか僕の弱点ってそこ?! ちょ、ちょ、ちょ! これまずい、だめだって! い、痛い! 穴開けてる! 穴開けてる!!」

床に倒れ込んで悶える黒天君。
従者は哀れみに満ちた目で告げた。

「正直に天剣に話して許しを請うべきでは? さすがの天剣もこれは予想してないかと。
いやあ、ドン引きですわ。はい、お薬塗って。」
「し、支配の指輪の解呪って事は・・・」
「目視と触られる事はお覚悟を。まあ、つまらぬ事を企てた罰でしょう」
「いっそ、殺してくれ。だいたい、なんでこんな下着なのさ、これ」
※クラスチェンジした魔物の服装は術式で指定されている。
どろんっと化けたので着替えを確認してなかった。

「取説に書いてますでしょう? 魔法学校の性欲処理用途の死霊と。
勉学に邪魔な性欲を完璧に処理して、ついで魔導書の管理修繕も担うクラスでございます。」

「か、完璧痴女じゃないか!!! 僕の陰気かつ清純イメージがぶちこわしだ!!」

黒天君は知り合いの前だけ威勢がいいが基本は陰キャラである。
超人見知りである。

「公開プロフには身長、3サイズはおろかオナニーの頻度や内容まで書かれてますな。愛用のバイブの名前とサイズすらあります。」
「ごふぅ!!(吐血」

名前が匿名化されてるのだけが幸いである。

「さすがの私もこれはちょっと。・・・いっそ正体がバレないように努力なされては?」
「・・・そうする。バレたら死んでやる・・・」

さっきからずっと涙目である。

「これを機会に普段身だしなみをさぼってるから整えましょう。」
「人前に出る時は頑張ってますぅ!」
「年1ぐらいでは?」

ぶつくさ言いながらも従者に手伝ってもらって化粧。病的な目の隈も消して印象を変化。
それから仙気を使ってくせ毛を黒髪ロングのストレートに。
「胸もそれ止めましょう。ばれますよ」
「ぐっ・・・!」
渋る黒天君を押し切って普段邪魔だからと押さえつけてる胸を解放して本来の大きさに戻した。
プロフの3サイズは本来のサイズなので、普段通りだと怪しまれてそこから黒天君とバレる可能性があるからだ。

「手元の本が読みづらいから嫌なんだよ、これ。あれ??? 手元が見える」
「どんよりした目がぱっちりになった事で千里眼が強化されてますな。」
「へえ。ほう、ほう」
鏡の前でくるくると回る黒天君。
乳房の重さは仙気で下から支えれば楽だ。

「いやあ、悪くないですな。お嬢様」
「素直に可愛いって言え」

ついで下腹部をどうにかしようとしたが、クラスチェンジの指定衣装である事と支配の指輪の複合の為か失敗した。

「うう・・・ここは毛をもっさりさせて諸々を隠そうと思ったのに」
「お嬢様は無毛ですからな・・・。おまけに常人の倍以上のモリマンときてる」
「ぜったいドン引きされる・・・。」
過去、下着の膨らみで男と間違えられたほどのモリマンである。

「・・・下着だけでもどうにかならない? というか、スカート履けない?」

股間部分が穴空いててマッサージパール付きのエロ下着だ。
紐が食い込んで超絶モリマンを余計に強調している。

「履けますが、取説ではなんとも容赦ない仕様が書かれてますよ。」
「・・・ひどい!」

スカートは履けるには履けるが、どうにも都合の悪いことに周囲の性欲に反応して消えるらしい。
クラス補正を自動でする禍々しい黒い鶏が憎い。ちなみに自身の半身なので消せない。
いや消せるには消せるが無理やり消したら魔物になる時に移動させた土地神としての力が消失して回収できない。8割ぐらいの力が移動してる。

「魔物は衣装が限られますからな。諦めましょう」
「取説、先に読んでおけばよかった」
「ああ、そうそう。体臭も変えておきましょう。最近、糠臭いですぞ」
「ヌカ。そういう事は正直、さっさと言って欲しかった!!! なに、さっきの試合中もヌカの匂いしてたってこと?」
「天剣はお漬物が大好きだと言うので問題ないかと。」
「あるわ!!」

黒天君はおばあちゃんちの匂いがする女であった。
仙力を大きく使い、徹底的に消臭した。
ほんと、涙目である。

従者が慰めた。
「お嬢様。天剣は高潔な方です。解呪も目隠しして行うことを同意するでしょう。
まあ、少々せんしてぃぶな場所を触られますが医者に触れられたと思えば我慢できるでしょう」
「うう・・・。バレたら死のう。黒嶺山ごと爆破爆散しよう・・・」
「待て」


はじめて従者が血相を変えた。

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