八卦鏡 2021/07/01 00:00

幽霊水晶


〈場所〉
その山奥にある鉱山の入り口は、錆びた鉄格子で塞がれていた。
色褪せた警告の立て札には、立ち入り禁止の文字が掠れて読める。

〈過去〉
かつて、ここは水晶鉱山として、盛んに採掘が行われていた。
しかし、明治時代にこの鉱山は閉鎖され、立ち入り禁止区域になった。
その明確な理由は不明で、人々の間で様々な憶測が飛び交った。
かつて、この山の地下深くには、単眼の巨人が封印されていた。
採掘で地下深く掘り進めるうちに、その巨人の封印が解かれた。
そんな、民間伝承も広まったが、時代に流され消え去った。

〈現在〉
そして、今錆びた鉄格子を開けて中に入る人影があった。
その姿は女性で、炭鉱夫には見えない派手な服装だった。

〈水晶〉
懐中電灯の光が、空気が淀んだ坑道を照らし出す。
靴音を響かせ先に進む女性の首元には水晶のペンダント。
彼女は水晶マニアで、様々な水晶を集めるのが趣味だった。
紫水晶、黄水晶、紅水晶、煙水晶、黒水晶、緑水晶、青水晶。
当然、有名な水晶はほとんど集めて持っている。
針金入り水晶、ススキ入り水晶、草入り水晶、水入り水晶。
変わり種の水晶も多く所持している。
今、彼女は新たな変わり種の水晶を求めて坑道を進んでいた。

〈逸品〉
幽霊水晶と呼ばれる水晶が存在する。
水晶内部に三角形のフードのようなものが見える水晶だ。
その水晶は、ファントムクォーツとも呼ばれている。
三角形のフードの中に、青い瞳のようなものがある水晶もある。
ブルーアイズファントムと呼ばれ、希少価値が高い水晶だ。

〈彼女〉
彼女は都会では有名な占い師だった。
もちろん、自分には霊力がないのは知っている。
そんな力があるなら、ブルーアイズファントムの場所を占う。
もともと、水晶玉の冷たい感触が好きで始めた趣味だった。
しかし、霊力はないが聞き上手な性格から彼女は成功した。

〈伝承〉
彼女はかつて水晶鉱山だったこの場所の伝承を調べた。
この場所には、青い単眼の巨人が封印されているらしい。
もちろん、彼女も本物の単眼の巨人がいるとは思っていない。
しかし、伝承には何らかの元ネタが存在するはずだ。
それは、ブルーアイズファントムの事ではないかと推測した。

〈頓挫〉
彼女の不安と期待が混ざり合った探索は、早くも頓挫した。
坑道が崩れてそこから先には進めないのだ。
坑道を塞ぐ岩に直径40cmほどの隙間があった。
彼女は諦めきれず、その隙間から奥をのぞき込んだ。

〈青光〉
暗闇の中にぼんやりと輝く青い光が見えた。
まさか、ブルーアイズファントム?
その神秘的な青い光に、彼女は激しく興奮した。
しかし、冷静に考えれば水晶のはずはなかった。
水晶は暗闇の中で発光したりはしないのだ。

〈単眼〉
その青い光は、彼女がのぞき込む隙間へと向ってくる。
彼女の頭にどこかで、逃げなければという思考が浮かぶ。
しかし、彼女は魅入られたように、青い光から目を逸らせない。
やがて、青い光は隙間から出てその姿を現した。
それは、巨大な黒い目玉で瞳が青く発光していた。
目玉には青色の複数の管があり、岩の隙間へと伸びていた。

〈催○〉
彼女はその場に仰向けになり、青く光る瞳を見詰めていた。
全身がさざ波のように繰り返す多幸感に満たされていた。
青く光る瞳は、彼女を観察するように空中で揺らめいている。

〈封印〉
岩の隙間の奥には、灰色の皮膚の筋肉質な巨人の身体があった。
その首から青い管状の筋肉を伸ばして、目玉を隙間の外へと出していた。
かつて、巨大で怪力だった肉体は退化し、目の前の岩すら破壊できない。

〈本能〉
この場で朽ち果てるのを待つしかない退化した単眼の巨人。
単眼の巨人に残されているのは、生殖本能のみであった。
岩の向こうに現れた人間の女で、子孫を残せないか思案する。

〈視姦〉
彼女は派手なデザインの衣服をぎこちなく脱ぎ始める。
占い師の神秘さを出す為の特注品で、複雑な構造の衣装だ。
衣装の前のボタンを全て外し、黒いパンストとショーツを下げる。
彼女の股間の女性器が、暗く淀んだ廃坑の空気に晒される。
彼女の陰毛に覆われた陰部に、青く光る瞳が近付く。
彼女は人差し指と中指で、陰部をくっぱりと開いた。
青く光る瞳は、彼女の陰部を隅々まで調べるように視姦する。
彼女はどうしてこのような状況になっているのか、分からなかった。
ただ、止め処ない多幸感が、彼女の理性を完全に麻痺させていた。

〈新聞〉
新聞の片隅に、都心で有名な占い師が行方不明との記事が書かれてあった。

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