『ラヂオの時間(1997)』 感想
魑魅魍魎が跋扈する現場
わがままな役者、八方美人でその場のノリや都合でコロコロ意見を変える上の人たち、整合性を取るだけにいる目立ちたがりの便利屋ゴーストライター…。
そんなろくでもないラジオドラマの現場で、自分の書いたホンが目の前でボロボロにされていく新人脚本家。
コミカルな体裁は取っていますが、モノを作る現場にいる人間にはかなり精神をゴリゴリ持って行かれる作品です。
この終わらせ方はズルいよなあw
でもラストシーン、このラジオを聞いていたトラックの運ちゃん(渡辺謙)が感動し、トラックのまま放送局に乗り込み、反目しあっていたディレクター(唐沢寿明)とプロデューサー(西村雅彦)に泣きながら握手を求めるのですが、これはずるいよなあ(笑)。
例えボロボロになった作品でも、誰か一人でもそれに感動してくれたり喜んでくれたりしたら、この仕事はやめられないんですから。
伝説の音効さん
個人的に思い入れがあるのは伝説の音効さん伊織万作(藤村俊二)。業界に嫌気が差したのか、はたまた周囲から古臭いと追い出されたのか、今では放送局の守衛をしています。
次々と変わるホンに音効が間に合わず、ディレクターが頼みに行くのですが、最初のうちこそ嫌がっていたものの、職人魂に火が付き始めて中盤からは嬉々として参加し始めるのが面白かった。
「花火の音が必要なんです!」の声に、打ち上げの「ヒュ~」を笛で、雑誌で頭を叩いて花火の炸裂音、火花が散り落ちていく「パラパラパラ…」は服を揺らして(守衛服だからパチパチいうものが色々ついている)一人で作り上げるその姿は圧巻でした。
私はメンタルがもちませんでした
モノを作る時には誰にも邪魔されないで一人でじっくりと作る。
わたしはそんなタイプだったので、このような現場からは逃げてしまいました。
あのまま続けていたら体が持たなかったので、天秤にかければ今の選択は間違っていなかったでしょう。
ただ、確かにあの頃は、楽しいときも多かったよなあとか思い返したりはします。