【予告】寝取らせで気持ちよくなるはずないと言ってた妻のガチイキ音声で鬱勃起する旦那
今週末を予定
宮園家のリビングに時計の秒針が奏でる、コッチ、コッチ、コッチという機械音だけが響く。規則正しく時を刻む一定のリズムは人を深い思考に誘う。ダイニングテーブルに肘をつき、両手を顔の前で合わせて祈るポーズの宮園邦彦は、ここにいない妻のことを考えた。
予定では十八時に帰ってくるはずだが既に二十時を回っている。帰りが遅くなる連絡はない。
妻になにかあったのだろうか。結婚三年目の愛妻・舞歌の安否を気づかう。それは身勝手な話だと知りながら。なにかあったのかって? なにか起こすために妻を他の男と出かけさせたんじゃないか。
出がけに見せた舞歌の後ろ姿がよみがえる。彼女は尻を撫でようとする男の手をつねっていた。あくまで自分たちは邦彦のしょうもない性的嗜好に付き合うだけで、本物の恋人や夫婦じゃないのだから馴れ馴れしくするなと説教する舞歌の怒った顔。彼女の剣幕に高校の後輩だった|土井瞳哉《どいとうや》は、恐れおののきながら大袈裟に謝った。
二人の力関係が垣間見られるやり取りに邦彦はほっとした。これなら主導権は舞歌にある。彼女がうまいこと彼をコントロールしてくれるはずだ。そう思っていた。浅はかだったのでは?
彼が大人しく舞歌の尻に敷かれていたのは、そこが他人から見られる往来だからであり、彼女の夫である自分がいたからで、密室に二人きりの状況なら男の腕力に物を言わせることだって可能だ。
「舞歌」
ぽそりと邦彦が名前を呼んだとき、タイミングを見計らったかのように玄関で鍵の回る音がした。
居ても立っても居られず邦彦は玄関に駈け出す。
「ただいま」
「あっ、お帰り」
心配していた夫とは対照的な妻の何の気ない挨拶に邦彦のほうが面食らった。
妻の舞歌はセミロングの黒髪に整った顔立ちをしており、吊り目気味で意志の強さを感じさせる。十代の一時期やんちゃしていた時期もあったらしいが、現在は仕事と主婦業を両立させる素晴らしい妻だ。常々、邦彦は彼女と結婚できたことが、自分の人生で最大の幸運だと思っている。
性格は男っぽいところもあり物事に執着せず、竹を割ったような思考の持ち主。いまも気を揉む邦彦に対して、舞歌は普段と変わらず振る舞っている。
舞歌は玄関に靴を揃えて脱ぐと「ちょっと退いて」と言いながら邦彦の横をすり抜け、洗面所で手を洗い出す。
「どうだった?」
「シテきたよ」
当たり前でしょと言わんばかりの舞歌に対して、邦彦はリアクションの薄さに眉をひそめる。それだけか。もっと他に言うことがあるんじゃないか。だって夫じゃない男に抱かれてきたんだぞ。
「よかった?」
「まあまあかな」
舞歌はコップに水を汲んでうがいする。ガラガラガラと喉で水を泡立て、ペッと吐き出す動作を三回繰り返した。その間に邦彦は追加の質問をせず、じっと黙って彼女が話し始めることを期待して待った。
「思ったよりはよかったよ。でもAVや漫画みたく『あ~ん、おちんちん大きい、旦那よりすごーい』とはならなかった。相手が瞳哉じゃ気も抜けるしね」
「そっか。遅かったから心配したよ」
「あいつしつけーんだよ。あたしが全然イカないから今度こそイカせますつって何度も、何度も入れてきて、いい加減うぜぇから最後の一回、最後の一回って土下座する頭踏んづけてやった」
ラブホテルの一室で妻が土下座する男の頭を踏んでいる。非日常的な光景を想像して邦彦は小さく笑いを漏らす。
「お疲れ様。今日はどうする? お風呂沸いてるし、ご飯も用意あるけど」
「パス。風呂は入ってきたし、メシより眠い。あいつに付き合わされてクタクタ」
そっかと答える邦彦の目を、じっと舞歌が見つめてくる。心に抱えた後ろめたさを見透かす視線が突き刺さる。彼女の瞳に囚われて邦彦は目が逸らせないでいた。
「後悔してる? 自分の女を他の男に抱かせたこと」
「ちょっとだけ」
「だから言ったじゃん」
舞歌は呆れたと溜め息をつく。
「後悔するくらいなら最初からさせんなよな」
「ごめん」
彼女の言うとおりで邦彦はシンプルな謝罪の言葉しか出てこない。
「あたしは寝るけど一緒に行く?」
「僕はもう少し起きてるよ」
「そっ。お休み」
「舞歌」
邦彦は自分の前を横切り、寝室のほうへ歩く妻に声を掛けた。
「もしまた今日みたいなことしたいって言ったらどうする」
舞歌の足が止まる。彼女は振り返らない。表情が窺い知れない状態でなにかを考えている。
「してもいいよ。どうしてもって邦彦が頼むなら」
「相手は? また土井くんでいいかな」
「適当な相手を探してヤバい性癖持ちや変なおじさんが来るよりは、あいつのほうがマシかな」
消去法で選べばそうなる、と言う彼女の言い分を、どこか言い訳がましく感じてしまう。本心で言ってるのだろうか。それとも土井くんとのセックスは、次回を期待させるくらいよかったのか。
「お休み」
今度こそ話はお終いとばかりに言って彼女は寝室に消えた。
再び一人になった邦彦がリビングに戻ると、テーブルの上に置きっぱなしだったスマホが鳴る。拾い上げて画面を見る。相手は予想したとおり瞳哉だった。
お約束していたものです。前後の余計な部分は取り除いてプレイ部分だけ残しました。
メッセージに添えられたリンクをタップする。
『んちゅ、ちゅ、んぅ、ぴちゃ、んはぁ……ん、ぁちゅ、んん……』
スピーカーから水っぽい音が聞こえてくる。なんの音か気づいて邦彦は慌ててトレイに駆け込んだ。ドアを施錠してズボンの尻ポケットから引っ張り出したイヤホンをスマホに挿す。音漏れしてないことを確かめてから両耳に嵌める。
音声データの再生は続いていて、土井の話し声がする。
『うほぉっ、おっ♥ ほっ♥ 舞歌さんの口あったけぇ。俺のチンポ美味いッスか。相変わらず優しい尽くすタイプのフェラするんスね。もっとチンポ引っこ抜くえげつないしゃぶり方しそうなのに』
『くだらねえこと言ってないで早く勃たせろ。お前のデカいから顎が疲れんだよ』
『覚えてますか。高校ンとき罰ゲームで舞歌さんがフェラ抜きしてくれたこと。俺まだ童貞だったから人生初フェラだったんスよ。十年ぶりにチンポ咥えてもらえて感激ッス!』
『忘れろ!』
頭を殴られたような衝撃があった。二人の距離が妙に近いとは思ったが、まさか過去に性的な接触があったとは。