猪熊夜離 2022/04/12 23:07

ライザリン・シュタウトが嘆くのをやめ部族の生活に染まるまで

Skebで書いてたやつ。完成しました。4万文字弱です。

ようこそ、おちんぽ至上主義の村へ

「ガハッ! ゲホッ、ゴホッ……ふぅぅ……」

 喉に詰まった水と空気をいっぺんに吐き出す。再び異物が気道を塞がないよう誰かが身体を横向きにしてくれた。止まっていた時間の分も取り戻すかのように、ライザは荒い呼吸を繰り返す。

 ゼハゼハと喉を鳴らしながら目を開ける。すぐ傍に輝く金髪が広がっていた。黄金の波の根本に向かって視線を走らせる。

「クラウディア」

 眠ったように動かない友人の名を呼ぶ。実際には声が掠れ、なんと喋ってるか自分以外には分からない有様だった。

 クラウディアの身体を跨いで男の人が彼女の心臓に手を当てる。

「ZSDYMGAQBK」

 男が何かを叫んだ。聞き覚えのない言葉だった。

 ライザとクラウディアは二十人ほどに囲まれていた。みんな一様に裸だ。男も女も腰蓑で局部を隠した以外は浅黒い肌を晒している。男の上半身には太陽を模したと思しき入れ墨が入っている。女は鳥がモチーフと思われる入れ墨の入ってる者と入ってない者がいた。年配の女ほど入れ墨が入ってる割合は高いように見える。

「ZGVKIH」

 再び男が何かを叫びクラウディアの心臓を押す。重ねた両手で一定のリズムを刻む。グッグッと力強く押された少女の胸が凹んだ。

 子供のころ湖で溺れた男を助けるため、村の大人が同じようにしていた。その時は確か、溺れた人は心臓が止まっていた。

 ぞくっと全身に悪寒が走った。濡れた身体が冷えたばかりが原因ではない。意識を失う直前、自分たちに何が起きたか思い出したのだ。

 ライザリン・シュタウト、村のみんなからはライザと呼ばれている。普通の田舎にある、普通の村で暮らす、平凡な女の子。どこにでもある人生、誰とも違わない存在、他のみんなと同じように生まれた村で大人になり、結婚相手を見つけ、子供を産んで育てる。そんな人生が待ってると思っていた。

 五十年先まで未来が見通せると思っていたライザの人生は、錬金術との出会いによって変わった。

 錬金術は人生に彩りをくれた。見慣れた代わり映えしない景色と思っていた故郷の村は、錬金術師の目で見直すと素材の宝庫だった。新しい調合の組み合わせを探してライザは錬金術にのめり込んだ。

 だがライザは前のめりになりすぎてたらしい。錬金術の材料を手に入れるため、森へ一人で採取に出かけた。普段はレント、タオという幼馴染の男の子も一緒だが、今日は二人とも用事があって別行動だった。

 お母さんには、一人で遠出するのは危ないと言われたけど、ライザは一刻も早く素材を集めて錬金術の勉強がしたかった。

 一人で歩いていたライザをクラウディアが追いかけてきてくれた。

 クラウディアは行商を営んでいるお父さんと一緒に旅をしている子で、村に滞在中にライザたちと知り合った。腰まである長い金髪が綺麗な女の子。三人よりも所作が洗練されていて、都会の雰囲気を感じさせる。

 お洒落で、綺麗で、お人形さんみたい。それでいて頑固で意外と度胸がある一面も持っている。

 そのクラウディアが、いまライザの目の前で死にかけている。

 馬乗りになった男が必死に胸骨を圧迫する。血の気が引いて真っ青な友人の顔をライザは祈るように見つめた。

 お願い起きて。あたしの我が儘に付き合わせてクラウディアが死んじゃうなんて駄目だよ。

 森に入った二人は魔物に襲われた。いつもより少ない人数で応戦しながら逃げ惑った。レントとタオ不在の影響は大きかった。如何に男の子たちが普段、女である自分の安全を気にかけてくれていたかが分かった。

 逃げながらクラウディアが崖から足を踏み外してしまった。助けようとライザも手を伸ばすが、足下が崩れて二人とも崖下の川に転落。激しい流れに飲み込まれた。

 魔物からは逃げられたが自力で岸に泳ぎ着くことはできず、意識がないまま流されて現在に至る。

「クラウディア! ねえ起きて。起きてよ、クラウディア」

 必死の呼びかけが通じたのか。ライザの声に導かれるようにして、クラウディアの口から水が吐き出される。

「ゴホッ! おぉ、はっ、はっ」

 周りの集団からも喜びの声があがる。使ってる言語が違うようで何と言ってるかは分からないが、明るい笑顔を浮かべ近くの人間と抱き合う姿は言葉の壁を越えて感情が伝わってくる。

 ここはどこなんだろう。この人たちはいったい。

 生命の危機が去って精神的に落ち着いてきたため、やっとライザは自分たちを取り巻く環境に目が向いた。

 寝てる間にどこまで流されたのか、男たちは見たことのない部族だった。外部との付き合いを断ち、独自の文明や言語を発達させてきたのかも知れない。

「あたし、ライザって言います。この子はクラウディア。助けてくれてありがとうございました」

 ライザは身振り手振りを交え、ゆっくり一言ずつ発音し、謝意を伝えた。言葉の通じなさがもどかしい。ちゃんとお礼を言いたいのに。

「は~い、どいて~~。流れてきた女の子はどこ?」

 朗らかな女の声がした。

 人垣の向こうから人の良さそうな女が近づいてくる。その肌は白く、髪は金色。浅黒い肌と黒髪の部族の中で異質だった。何より彼女はライザも知っている言葉を話していた。

「この子たちか」女は人垣を割って最前列に歩み出る。大きく膨らんだ腹が重そうだ。「まだ見たところ十六、七といったところだね。怖い思いをしてつらかったろう。まずは身体を休めるといいよ」

 ざっと二人の様子を見て女は言う。彼女の腹には鳥の入れ墨が入っていた。

「あなたは」

 ライザが疑問を口にすると、女は混乱する少女を宥めるように言った。

「私の名前はミリアンマ。ミリーでいいよ。もともとは私も、あなたたちと同じ、外から流れ着いた人間さ」

 ミリーと名乗った女は手を打ち鳴らし、辺りの男たちに指示を飛ばす。流暢に部族の言葉を使いこなしている。村での生活は長そうだ。

「ひとまず私の家に運ぶよ。そっちのお嬢さんは自分で歩けないようだから荷車を持ってきてもらおう。いいね」

 是非もなかった。





 部族の住まいは、木を組み合わせてできた骨組みに藁を敷いた簡素な造りで、そのぶん材料さえあれば完成までは早いとミリーは説明した。

「そのうち二人の家も村の男衆に建てさせるよ」

 家の中心にあるリビングとダイニングを兼ねた広い空間に座り、ライザはミリーと向き合う。まだ本調子でないクラウディアは客間に寝かせてもらった。

「この村は川の中州に作られているんだ。いくつかの部族が争っていた時代の名残で、当時は自然を利用した守りだったんだね。周囲を川に囲まれている関係で雨期は外に出られない。船はあるけど川の流れが速すぎて操作できないのさ」

「困ります。すぐにでも家に帰らなきゃいけないのに」

 こんなことになるとは思っていなかったので、家には書き置き一つ残していない。

 急に年ごろの娘が消えたら両親は心配するだろう。

「そうは言ってもこればっかりはね。自然のことだから」

 ミリーの声音は同情的だが諦めろと告げていた。

「どれくらいで雨期が明けますか」

「そうだね。例年なら二ヶ月、早ければ一ヶ月半といったところか」

「二ヶ月」自分で口にして絶望的な気分になる。「もっと早く船を出してもらうことはできませんか。お願いします」

 土下座するライザ。ミリーは居心地悪そうに目を逸らす。

「親御さんに心配掛けたくない気持ちは分かるけど、急流に船を出すのは危険なんだ。転覆して流されたら村の者も命が危ない。酷な言い方だけど、お嬢さんは村の男に自分のために死んでくれと言えるかい、もし言うとして彼らに命を懸けるに見合う対価を用意できる?」

「それは……」

 言えるはずがない。十七の小娘でも、それが如何に我が儘で自分勝手か分かる。

 ヘタすれば村人の心証を悪くして、雨期が終わるまでの生活が針の筵に座る思いだ。

「ライザ」奥の部屋からクラウディアの声がした。

「そこにいるのライザ」

「クラウディア!」

 名前を呼び返すと奥からヨタヨタと人の歩く気配が近づいてきた。壁の影からひょっこりクラウディアの顔が覗く。見知らぬ場所で目覚め不安だったのだろう。未だ蒼白な顔はライザの姿に弱々しくも安堵の笑みを浮かべた。

「クラウディア聞いて」

 ライザはミリーから聞いた話をクラウディアにも言って聞かせる。彼女は頷きながら無言で聞いていたが、川の水が引くまで二ヶ月は帰れないと聞かされると、さすがに目を見開き「そんなに」と呟いた。

 クラウディアの驚きはライザよりも強い。彼女は父親の商売についてラーゼンボーデン村に立ち寄った旅人である。二ヶ月も安否不明なら父親は他の土地に行ってしまうかもしれない。

「可愛そうだけど私たちにはどうもしてやれないんだ。滞在中は不自由ないよう持て成すから許して欲しい」

 不平不満を言っても帰れない現実は変わらない。二ヶ月この村で過ごさなければならない。じわじわ足下から押し寄せる現実感に、ライザは鼻の奥がツーンとしてくる。鼻の刺激に触発されたか大きな目から涙がこぼれ落ちた。

「ライザ、泣かないで」

 そう言うクラウディアの目も潤んでいた。

「クラウディアこそ」

 泣いても事態は好転しない、みっともない姿を見せるだけだと思いながら、二人は流れ落ちる涙を止められない。

 涙は溢れた感情の逃がし場所だ。持ち続けるのが難しい重い荷物を余所へ移してくれる。泣いてるうち憐憫の情が強くなり、どんどん気分が沈み込んでしまう者もいるが、ライザは与えられた試練に負けない強い心の持ち主だった。

 ひとしきり泣くと気持ちを切り替える。

「よしっ!」と己の両頬を平手で張った。「泣いてるばかりじゃ駄目だよね。村でお世話になるなら受け入れてもらえるよう頑張らないと。助けてもらったお礼もしたいし」

「そうね。ライザの言うとおりね」

 クラウディアも涙を拭って顔を上げた。

「ライザもクラウディアも強いね。私が村に流れ着いたとき、あなたたちより十歳近く歳を取ってたけど、現実を受け入れるまで一週間はかかったものだよ」

 もし自分たちが強く見えるなら、冒険の経験が生かされてるのかも知れない。





 ミリーに案内されてライザとクラウディアは村を見て回った。

「あそこが水汲み場。飲み水は川から汲んで使うことになってる。慣れないうちは一度沸かしてから飲んだほうがいいだろうね。あそこは村の交流所。各家庭で持ち寄った物を物々交換したりしてる。外から持ち込まれた物は重宝がられるから、二人も何か出してみるといい」

 彼女は村の施設を指さしながら歩を進める。大きなお腹で大変そうだが、ミリーに言うと「五人目だものね、もう慣れたよ」と言われた。お腹に彫られた鳥モチーフの入れ墨。その足下に入ってる線は大地を表すと共に、いままで子供を何人身籠もったかのマークでもあるのだそう。

「この村の人たちは、子供は神様が聖なる鳥を介して夫婦に授けてくれるものだと思ってる。私らの世界でもコウノトリがって言うだろ」

「村の人と結婚したんですか」ライザが聞く。

「そうだよ。私も川の氾濫に巻き込まれて村に流れ着いたクチでね、水が引くのを待ってるうちに旦那と知り合って気づいたら、そういうことをする関係になってたってこと」

 ライザとて子作りの何たるかが分からないほど子供ではない。そういうことをする関係と言われ、ミリーが村の男性と肌を重ねる姿を想像してしまう。彼女の容姿は自分たちに近いものだから連想ゲームで、もし私たちも滞在中に村の男の人と、そういうことをする関係になったらという考えが頭をよぎった。

 隣を歩くクラウディアも想像したらしい。白い肌に朱が差していた。

 村の狭い交友関係で男の子を意識したことはなかった。同年代の男の子はみんな小さいころからの知り合いで、感覚的には兄弟に近い。兄弟とそんなことをしたいとは思わないだろう。しかし、この村に住んでいる男性はライザの知らない男の人たちで、しかも筋肉質で屈強な身体を腰蓑一枚で隠しただけの姿で歩いているのだ。

 それに、この村の男の人たちは、みんな大きいのだ。……おちんちんが。たまに腰蓑からハミ出している。肌と同じ浅黒い肉の塊が。

 ライザが見たことある男性器は幼いころ風呂に入れてもらった父親のモノだけだ。うんと小さいころは川遊びで濡れた服を乾かすため、男の子と裸で焚き火に当たったこともあるが、十年以上前の話。

 分別がつく年齢になってから見る男性器は、言葉で言い表せない卑猥な形をしていた。大きさも記憶にある父親のモノより倍はある。お父さんのおちんちんと全然違う。お父さんのは、もっとヒョロッとしてたのに、ここの人たちのおちんちんは獲物を丸呑みした蛇のように胴体がパンパンで、頭の部分は巨大な蜂に刺されたように膨らんでいた。頭と胴の繋ぎ目にあるくびれもハッキリしてる。意識しないようにしても、擦れ違う男たちの股間に目が引き寄せられてしまう。

 みんな大きさも形も違うんだ。一本として同じおちんちんはない。こんなに個性があるモノだったんだね。ということは、エッチした感触ってみんな違うのかな、気持ちいいおちんちんと気持ちよくないおちんちんがあったり? やっぱり大きいほうが気持ちいい? だけど大きすぎても痛そうだな。

「あっちは村で耕してる共同の畑がある」

 ミリーの声でライザは我に返る。いけない、案内してくれてるのだから、真面目に聞かないと。おちんちんのことを考えてる場合じゃない。

「部族間で争う時代が長かった反動なのかね、統一されてからは争いを好まず、共有できるものは共有する文化になったようだ。畑で採れたものは家族の人数や年齢を基に公平に分配される。子供も村の宝として全員で育てる。チビ助どもを託児所で預かってもらえて大助かりさ。このお腹じゃヤンチャ坊主どもを叱るのも楽じゃないんでね」

 ミリーは愛おしそうに身重のお腹を撫でさすった。

 次に三人が向かったのは鍛錬場と呼ばれる広場だった。

 鍛錬場というのだから武器の扱いを習ったり、身体を鍛えたりしてるのだろうと予想したが、ライザたちの前には全然違う光景が広がっている。

 鍛錬場に集まった村の男たちは腰蓑を脱ぎ、逞しい男性器を露出させていた。ある者は吊された植物繊維の袋にチンポを突き刺し、前後にカクカクと腰を振ったり、根本まで挿入したまま腰を左右にグリグリと振ったりしている。

「な、何なんですか、この場所は!」

 赤面するライザの質問にミリーは口角を上げて頷く。

「私も初めて見たときは驚いたよ。ここは男たちがチンポを鍛える場所なんだ。あそこで砂袋を突いてるのは、腰の前後運動に必要な筋肉を鍛えるためさ。根本まで埋めてグリグリ抉るようにしてるのは、いっちばん奥に突き刺したまま女の子宮を虐めるトレーニング。ちなみに、ライザとクラウディアは処女かい?」

「しょっ……そ、そんなことしたことありません」

「私もです」

「それじゃ覚えとくんだね」男性経験の先輩としてミリーは二人にアドバイスする。「男の人のチンポを奥まで入れられて、先っぽの太いところで子宮を転がされると女は頭真っ白になって、ぶっ飛んじまうほど気持ちいいんだ。もっとしてって自分から相手の腰に脚を絡めて、下からヘコヘコおまんこを擦りつけるくらいね」

 歯に衣着せぬと表現するのも生やさしいミリーの言葉。中イキ経験者による生々しいセックスレクチャーに、十七の処女二人はお互いの顔も見られず俯いてしまう。顔を合わせると相手がチンポで奥深くまで貫かれ、メス顔ではしたなく子宮責めおねだりしてる姿を想像してしまうからだ。

「あっちの木は村のご神木だ。大地のエネルギーを吸い上げ、たっぷり蓄えてるとされる」

 ミリーが指さした先には、大人が手を繋いでも一周するまで二十人は必要そうな巨木がある。村の象徴とも呼べるありがたい巨木の周りに集まった男たちは、勃起を何度も叩きつけていた。

 男たちの動きには迷いも怯えもない。チンポの皮が破れ、表面に傷がつき、血が滲んできても怯まずご神木に勃起を叩きつける。

「痛くないのかな」

「そりゃ痛いさ」クラウディアの疑問にミリーが答える。「だけど痛いからって怯むような男は、この村じゃ生きていけない。ご神木に鍛えてもらうことでチンポに大自然のパワーが宿り、子を成しやすくなると信じているんだ」

「本当なんですか」

 ライザが驚くとミリーは首を横に振る。

「私ら外から来た者には眉唾な話だが、だからって他人の信仰を否定する理由にはならないだろ。ここに住んでる人間は昔っから、そういう価値観で生きてるんだから」

 すっかり村の生活に馴染み、村の人になってるミリーでも、幼少期に擦り込まれた価値観は易々と更新されないものらしい。彼女の根底にある考え方は、未だ自分たちと共通する点があるとライザは感じた。

 ミリーは少し声を落とす。「まあ|挿入《いれ》られる側の感触で言うと、ああやってチンポに擦り傷ができたり、打撲したりして治ると、表面に小さな凹凸が残るんだ。普通にしてると分からないんだけど、入れられた時その凹凸が|膣内《なか》で引っ掛かって気持ちいいんだ」

 あっはっはっ! とミリーは豪快に笑う。

 元から明け透けな性格だったのか、村に長く滞在するうち性的なものに抵抗なくなったのか、彼女の言い様は淑女の恥じらいからは無縁だった。ライザとて自分を乙女や淑女と思ったことはない。それでも性的な事柄は公の場で口にするものでないし、まして女が往来でチンポだのおまんこだの言うのは慎みがないという教育は受けてきた。

 自分でそうなのだから、お嬢様然としたクラウディアなどまして目の前の光景に怖じ気づいてるだろう、ライザは友人のほうに目をやる。しかし予想に反してクラウディアは鍛錬場に熱っぽい視線を送る。ねっとり絡みつくような金髪お嬢様の視線を追いかけた先には、細身で精悍な身体付きをした部族の青年がいた。年齢はライザ、クラウディアと同じ程度に見える。

 青年は砂袋に向かって腰を律動させていたが、やがてイチモツを引き抜いて表面についた砂を払う。引き抜く動作が長々と続き、まだ先っぽが見えないの、まだ出てこないの、どれだけ長いのとライザは目を丸くした。

 やっとこさ引き抜かれた青年のチンポは槍のように長く、先が鋭利に尖っていた。女の強情な媚肉をこじ開け、子宮口までの道を開拓してしまう力強さがあった。

「クラウディア?」

 友人の異変が怖くなったライザは話しかける。

 はっと我に返ってクラウディアがライザを見る。「ごめんなさい。私ったら、ぼーっとして」

「大丈夫? まだ体調が戻ってないなら帰ろうか?」

 そうではない。ライザも気づいている。クラウディアは青年のチンポに見蕩れていたのだ。彼の逞しいイチモツが放つオスのフェロモンに当てられ発情した。あのチンポで犯される自分を想像していたに違いない。だけどライザは目の前の出来事を見て見ぬ振りする。

 まさか、クラウディアがそんなこと、男の人のおちんちんに魅せられるなんて。

「ここにいる男たちは特定の相手がいない独身だよ。気に入った相手がいるなら話してみるといい。といっても言葉が通じないから無理か」

 他意はなさそうにミリーが言う。真意は気に入ったチンポがあれば自分たちから誘ってみな、である。

「あれは何をしてるんですか」

 話題を変えようとライザは鍛錬所の端にある大瓶を指さした。広場に入ってきた男は、まず大瓶から備え付けの椀で中の液体を一杯飲む。牛乳のように白濁した液体の正体が気になった。

「あれは村秘伝の強壮剤……まあ分かりやすく言えば勃起薬だ」

「勃起薬!」

 勃起という単語を口にする恥ずかしさも忘れてライザが驚く。クラウディアも口を押さえ、息を呑んだ。

「砂袋に突っ込んだり、木に叩きつけたり、想像しただけで痛いのは分かるだろ。痛いのが好きっていう人間も中にはいるが、大抵の男は痛いだけで気持ちよくないと萎えるんだ。せっかく勃起させたチンポが小さくなるんだよ。そこで勃起薬の出番だ」

 ミリーが説明する間も二人、三人と鍛錬場に来た男が白濁液を飲む。すると彼らの股間で見る間に陰茎が膨らむ。腰蓑から突き出す立派な勃起に成長した。男たちは腰蓑を脱ぎ捨て鍛錬に向かう。

「あのクスリを飲むと立ち所に勃起する。しかも効果は半日も続くんだ。夜の生活でも使うからね。ここの男たちとのセックスは一晩中続くよ。何回射精してもクスリが効いてるうちは萎まないんだ。物足りないってことはないだろう」

 鍛錬場で使われるクスリはもう一種類ある、とミリーは別な大瓶を指す。

 こちらの瓶では男たちが手を入れ、中からドロッとした粘性の物質を取り出していた。どうするのか見ていると、男たちはネバネバを鍛錬で傷ついたチンポに塗る。滲みるのか少し顔を顰めた。

「あっちの瓶に入ってるのは傷薬と媚薬の混ざった物だ」

「媚薬って何ですか」

「ライザは媚薬も知らないのか。本当に|初心《うぶ》なんだね。それに比べてクラウディアは顔を真っ赤にさせて、上品な娘のほうが案外むっつりなのかね」

「そんな、私……」

「媚薬っていうのはセックスが気持ちよくなるクスリさ。セックスしたくなって、したくなって、いざセックスしてもらったら頭が馬鹿になるくらい気持ち良くなるクスリ、それが媚薬だよ」

 ミリーの説明でライザの頬がカッと熱を帯びる。エッチなことがしたくなって、凄く気持ちよくなっちゃうクスリ? そんなものがあるの。ひょっとして錬金術でも作れたり?

「女のおまんこが気持ちよくなると濡れてくるのは二人も知ってるだろ。日ごろからチンポに媚薬を塗り込んでおくと、濡れたおまんこに擦りつけてる間に染みこんだ媚薬成分が溶け出して、身体が火照って止まらなくなるのさ」

「ミリーさんは使ったことあるんですか」クラウディアが尋ねる。

「もちろん。私が五人も子供を産むくらいセックス好きになったのはどうしてだと思う?」

 そんなこと聞かれても答えられない。ライザとクラウディアは答えが分かっていても口を閉ざした。

 ミリーは少女たちが答えられないのを予期していたように続ける。

「この村の男たちはチンポの逞しさで序列が決まるんだ。いくら力が強くても、武器の扱いが上手くても、チンポが貧弱な男は尊敬されない。だから皆こぞってチンポを鍛えに来る。貧弱チンポじゃ嫁の来手もないからね。そんな男たちがだよ、勃起薬で強○的に半日勃起しっぱなしにした状態で、休まずおまんこを突いてくるんだ。数え切れないくらい子宮口をノックして、一突き毎に俺の子を孕めって呪文のように唱える。濡れてくるとチンポからは媚薬が溶け出す。気持ちよくなればなるほど気持ちよくなるのループ」

 ミリーは二人の反応を窺って言葉を切る。ライザは逞しい勃起がこの女性を○す場面を想像した。男に抱かれた記憶を思い出しながら、うっとりと表情を綻ばせる様子から幸せな体験なのだろうと察する。

「私ね、元いた街では恋人がいたしセックスもしたことあるけど、こんなにいいもんだとは思わなかったんだ。この村に来て初めて快楽漬けとか快楽地獄とかいう言葉が本当にあるんだと知ったよ。あんなことを一晩中、それも一週間、二週間続けられたら女は内側から変わるよ」

 ミリーの言葉は体験に裏打ちされた確信が込められていた。

「ライザ」

 クラウディアが肘の辺りを突いてくる。

「どうしたの」

「あの人、さっきからライザのことを見てる」

 促されて鍛錬場に目を向ける。なるほど、確かに全裸の青年がこちらを見ていた。腕も脚も丸太のように太い筋肉質な青年。単純な腕っ節で言うなら、これまでライザが見た人間で最も強そうなのはレントの父親で傭兵崩れのザムエルだったが、青年の筋骨隆々とした肉体はザムエルが小さく見える。

「あれは村一番の勇者と言われてる男だよ。腕っ節は強いし、槍の扱いも上手いし、何よりチンポがデカい」

 ミリーの言葉に誘われてライザの視線が青年の顔から下りる。腰の中心で大蛇のような巨根が鎌首をもたげていた。サイズ自慢の男ばかり集う村の中でも、彼のイチモツは頭一つ抜けている。あんなモノを|挿入《いれ》られて女は無事で済むのか、気持ちいいなんてあるのか、○問じゃないのか。いつの間にか男のチンポで犯されたときのことを想像してる自分に気がつき、ライザは慌てて頭を振った。

「恐らくライザのことを気に入ったんだね」

「村一番の勇者なのに誰も相手がいないんですか」

「特定の相手はね。自分と結婚してくれと言い寄る女は多いが、あいつが誰も選ばないのさ」

 村中の女を袖にした青年が自分を見初めた。自分の中の|女《メス》な部分が優越感をくすぐられた。

「いつまでもチンポばかり見て時間を潰してられないよ。他にも案内したい所があるんだ」

 そう言ってミリーは鍛錬場から離れる。彼女の後をライザ、クラウディアもついて歩く。

 ライザが視線を感じて振り返ると、まだ青年はこちらを見ていた。その横にはクラウディアが気にしていた細身の青年も立つ。クラウディアも後ろを振り返り、彼と視線を絡ませ合った。


 後にライザ、クラウディアとも、この日のことを振り返って運命の出会いだったのだと思う。一目で自分の番になる人間を見定めたのだ。

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