猪熊夜離 2022/08/20 14:41

堕ちた空の女王(イカロス/そらのおとしもの)

原作:そらのおとしもの

キャラ:イカロス

シチュ:智樹の家で勉強会をすることになったメンバー。その準備のため買い出し班と掃除班で分かれることに。掃除を担当するイカロスと風音日和は智樹の部屋でエロ本を見つける。ほぼ掃除は終わっていたこともあり二人は本を開く。

イカロスは淡々と日和はドギマギしながら読んでいるとエロゲの広告が載ったページを開いたところで、シナプスのカードが発動して二人はよくあるファンタジーエロゲの世界に飛ばされてしまう。


プロローグ

 九州のとある地方に存在する空美町は人口七千人ばかりの小さな町だ。これといった名物もなく、あるものといえば畑を耕すおばちゃんの笑顔と樹齢四百年を越える大きな桜の木くらい。しかし一見どこにでもある長閑な田舎町には、とんでもない秘密が隠されている。

 それは空にあるシナプスという天上世界との関わり。たとえば目下、桜井智樹の部屋を掃除している羽の生えた少女イカロスは、シナプスで生み出された戦略エンジェロイドという兵器である。かつてシナプスの命令で人間が住む地上世界を破壊したこともある彼女だが、現在は智樹や他のエンジェロイドと共に静かに暮らしている。

 そのイカロスはただいま智樹の部屋を掃除中である。学校の試験期間が近づいているため空美中学校の生徒たちで集まり勉強会を開くことになったのだ。会場には大人数で集まっても支障ない場所として両親が海外に居る智樹の家が選ばれた。

 参加者は部屋の掃除班と買い出し班に分かれて準備することになった。くじ引きの結果、掃除班になったのがイカロスと風音日和。

 日和は腰まで届く長い黒髪を後ろで一本に結った少女。溢れ出すスケベ心で女子から蛇蝎の如く嫌われている智樹を、いつも楽しそうに生きていて羨ましいと好意的に見る少し変わった少女である。

 純情でスケベなことに免疫がない日和は、ちょっとしたことでも顔を赤らめてしまう。今も智樹の部屋で彼のお宝コレクションを前に赤面していた。

「桜井くん、こういう女の人が好きなんだ……」

 掃除も終盤ほぼ終わりかけたころ日和は、智樹が押し入れの中に隠していたエロ本の数々を偶然にも見つけてしまった。初めは見るつもりなかったが、想い人が普段どんな女性でエッチなことを考えているのか気になってしまい好奇心を抑えられなかった。

 ちゃぶ台に本を広げ、しげしげ眺めているといつの間にかイカロスもやって来て、二人で|智樹《マスター》の好きな女の子のタイプを勉強する会が始まってしまった。

 男の人にエッチな妄想をしてもらうためだろう。本に載っている女の人たちは裸や着ていても下着程度の服装。大きな胸やお尻を強調したポーズで挑発的な目線をカメラに向けている。

 ついつい日和は自分の胸を見下ろし、次いで隣のイカロスと比べてしまう。日和の名誉のために言っておくと彼女とて胸囲八十二センチと中学生にしては『ある』ほうだ。だが本に載ってる女性たちは男好きする肉体美を職業にしてるプロであり、イカロスもまた美しく造られた存在である。

「大丈夫ですか日和さん」

 自分が原因とは思わないイカロスが日和に尋ねる。気落ちして見える日和を純粋に心配してくれたのだろう。

「ううん、何でもないの」

 日和が答えるとイカロスは僅かに首を傾げた。

 二人が読み進めると途中でゲームの広告ページが挟まれていた。雑誌の経営では大事なスポンサー様の宣伝である。いわゆるエロゲーの新作宣伝のようだ。ありがちなファンタジーエロゲ。剣と魔法の世界で美女たちとエッチなことができると書いてある。

(こういうゲーム、桜井くんもやるのかな)

 広告の内容に興味を持った日和の手が止まる。ゲームのプレイ画面を写した写真では、ボロボロの服を着せられた少女が異形の怪物に前後から挟まれ、穴という穴を犯されていた。

 荒々しいセックス描写から日和が目を離せなくなっていると視界の端で何かが光った。光源はイカロスが持っているカードのようだった。

「なに?」

 イカロスのカードが不思議な現象を引き起こすことは日和も知っていた。彼女が智樹のために何かを案じて発動させたのではとまず考えた。しかし見るとイカロスも慌てているようだ。感情表現に乏しい彼女だが、今は顔に「こんなはずでは」と書いてある。

「日和さん」

 イカロスが手を伸ばしてくる。何かが起きても自分のそばにいれば安全と彼女なりの判断があったのだろう。しかし、イカロスの手が日和に触れるよりも先にカードは閃光弾のような光を放ち、部屋を真っ白く染め上げた。

 光が収まったとき二人の姿はどこにもなかった。

「ただいまイカロス、風音さん」

「アルファ、帰ったわよ」

 智樹とニンフが家の中に呼びかけながら廊下を歩いてくる。答える声はない。

「出かけてるのかな」

 あまり深く考えず智樹は言った。他の面々もイカロスと日和は少し外に出ているだけですぐに帰ってくると楽観視していた。

 しかし、そのころイカロスと日和は……。

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