猪熊夜離 2023/03/12 04:34

真夏の海で美女を嵌めてハメちゃうマジックミラー号(アルクェイド・ブリュンスタッド/月姫)

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 こんなときだけは元気なんだから。アルクェイド・ブリュンスタッドは驚きと感心がミックスした表情で遠野志貴を見上げる。彼女の恋人は今、アルクェイドを悦ばせるため、必死になって腰を振っていた。

 志貴の手がアルクェイドの腰を掴み、自分の方へ引き寄せる。突くというよりも彼女の膣奥に押し付けるようにして志貴は動く。

 アルクェイドは長い脚を彼の腰に回す。彼女は志貴の背中で両足首をしっかりロックすると、下のポジションから妖艶に腰をくねらせた。

「アルクェイド!」

「これやってあげると志貴はすぐ射精するのよね。そんなに気持ちいいのこれ?」

 射精欲の限界に達した志貴は、ソロパートを演奏中のギターリストのように表情を歪め、もう少しだけ長くこの快感を味わおうとする。

 気持ちいいけど射精したくないと我慢する恋人の顔がかわいく思えたアルクェイドは、もっと彼に意地悪したくなった彼女は前後左右に腰を振る。

「あぁぁ~~~」

 アルクェイドは彼女の濡れた肉筒を、あらゆる角度から志貴のチンポに擦りつけた。そうすると彼はたまらない快感に身を震わせつつ息を漏らす。

「情けないわね。もう降参なの? 元気なのは最初だけ?」

「偉そうに言うけど、今日は俺よりアルクェイドの方がたくさんイッてるじゃないか」

 志貴の言葉はまったくもって正しかった。彼は今晩すでに四回射精しているが、アルクェイドはそれよりも遥かに多くイッている。彼女の内部は今日の総仕上げとばかり特大の絶頂に向かって突き進んでいた。

「意地悪なこと言うのね」

「アルクェイドの膣内すごく柔らかくなってるし、どんどん濡れてきてる。そうやって腰をくねらせられると本当にもう保たないかも」

「いっぱいイカせてあげる。私、志貴が射精してるときの顔好きよ。かわいい」

「意地悪」

 二人の情熱はもはや抑えがたいほど燃え上がっている。

 志貴の手がアルクェイドの両頬を掴む。彼が唇を重ねてくると、アルクェイドの方からも僅かに顎を突き出して応じた。二人は触れ合う角度を変えながら何度も唇を押し付け合う。

 志貴のキスから自分への愛と情熱を感じ、アルクェイドは体の芯から震えるほどの高揚を味わう。

 彼の指が光り輝く金髪を掻き分けアルクェイドの頭を掴む。彼女の方からも彼の首に腕を回した。

 二人の唇が離れても志貴は相変わらず熱っぽい視線を恋人に向ける。今日これが恐らく最後の交わりになる。最後にどんなことを求められるのだろうか。アルクェイドは頬を赤く染め、次の出来事への期待に胸を躍らせた。

 志貴が再びキスをする。だが今度は唇には軽く触れるだけ。すぐに彼はアルクェイドの首筋に舌を這わせる。そして軽く甘噛みした。

 痛気持ちいい感覚にアルクェイドの呼吸は浅く速くなる。志貴の体から発せられる温もりを感じながら、二人はしばらく抱擁を楽しんだ。激しく動いて肉欲を求めるだけではない、お互いの親密さを再確認するような穏やかな交わりを楽しむ。

 やがて二人は体を離し、再び快楽の階段を駆け上がるためスパートを掛けた。

 志貴は再び正常位で大きく動き始めた。ロングストロークと小刻みな動きを交えながらアルクェイドを雌悦へと追い詰めていく。

 アルクェイドは悦びに体を震わせながら快感の声を上げた。彼女の息がどんどん短くなっていくにつれて、志貴の腰もどんどん加速していく。彼の突き込みは硬く、深く、今まで以上に愛しい女の熱くドロドロと蕩けた場所を力強く穿った。その快感の並が次々に押し寄せてきて、アルクェイドはオーガズムの寸前まで追い詰められたのを感じる。

 真祖の姫君は今、自分と志貴の息遣いにだけ集中している。それ以外の音は聞こえない。彼が腰を一突きするたび自分たちの欲望が激しくなっていくのを感じた。

 二人の欲望は止めどもなく膨らみ続ける。アルクェイドは己の体が熱を持ち、頬は紅潮し、快感が川のように体内を駆け巡っていくのが分かった。心臓が早鐘を打つ。全身に広がった性感は爆発しそうなほど膨らんだ。筋肉が緊張し、呼吸はますます荒く、浅くなる。

「ああああ! イイッ! もっときてぇ! めちゃくちゃにしてぇ!」

 アルクェイドはプライドの高い女性である。普段の彼女ならもっと激しく私を犯してなど絶対に言わない。だが志貴とのセックスでイキそうになっているときだけは話が別だ。このときだけ彼女は、恋人のオスの魅力に負けたくなる。

 彼女が求めると志貴は彼に可能な全力の動きで応じた。二人の下腹部は容赦なく打ち合わされる。志貴の男根が搔き出した愛液でアルクェイドは肛門まで濡らした。

 志貴は自分の快感が高まっていくのを感じながら、両手で彼女の腰を強く掴み、力いっぱい突き刺した。子宮口をトンと突いてやった衝撃に反応してアルクェイドの肉筒が締め上げてくると、彼は深い悦びのうめき声を上げた。

 アルクェイドも快感に咽び泣く声を上げ、二人は同時に達した。

「はっ、ああっ! ああああぁぁあぁ!」

 すべての体力を使い果たした志貴は彼女の体に倒れ込み、汗で濡れ光る恋人の首に顔を埋めた。どちらも呼吸を整えるまでは言葉が出てこなかった。だが言葉は必要なかった。ただ抱き合ったまま、二人は満たされた時間を過ごした。

「普段は貧弱なのにベッドの上でだけはオラオラなんだから」

 先に回復したアルクェイドは、志貴のベッドヤクザぶりを呆れたように指摘する。

「仕方ないだろ。それだけアルクェイドに魅了されてるんだから」

 アルクェイドは思わず顔を赤らめて微笑み返した。

「セックスばかりじゃなく口説き文句も上手になったのね」

「おかげさまでね」

「今週末だけど予定どおり海に行けるのよね?」

 彼女は己の不利を悟って話題を変えた。

「もちろん。楽しみにしているよ」

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  ソフトボール坂居こと坂居俊樹がAV男優になって三年。学生時代レスリングで全国大会にも出場した肉体派男優は、女の体を軽々と扱うマッチョセックスに定評があった。

 身長一九〇センチ、体重一二〇キロの坂居と組めば、大半の女優は画面の中で子供のように映る。男の大きさや強さを象徴する坂居の活躍は、同性は元より、強い男に抱き潰されるようなセックスがしてみたい女性からも好評だった。

 今、彼は真夏のビーチにいた。

 人でごった返すビーチは大勢の海水浴客がひしめき合っている。彼らは布面積で言えば下着姿も同然の格好で歩いていた。

「晴れてよかったね監督。撮影延期しなくて済みそうだ」

 坂居は傍らに立つ男に声をかけた。中肉中背でどこにでもいそうな四〇代の男性だった。坂居をプロレスラーのような体型と呼ぶなら、彼の横に立つ男はどこにでもいる普通のおじさんである。

「天気予報は晴れだったのに先週まさかの大雨だったもんな。二週連続で延期にならなくて良かった」

 監督と呼ばれた男は夏の日差しに目を細め、ビーチを歩く水着美女たちに視線を向けたまま坂居に答えた。彼の名前はロドリゲス安藤。すでに業界歴も二〇年に達しようかというAV監督である。

 映像系の専門学校を卒業した後に小さな制作会社に就職。そこが数年で倒産して無職になった後、再就職した会社がAVの制作会社だったのだ。望んだ仕事ではなかった。成り行きで入った業界だった。しかし現在では、これこそ自分の天職だと思っている。

 安藤も大方の男性と同じくエロいことや可愛い女性は大好きだし、彼女たちを綺麗に撮ることに苦心する時間が好きだ。苦労の甲斐あってか彼の作品は業界内からもファンからも、女優を魅力的に見せる術に長けていると好評だ。

「これはという女の子はいました?」

「今のところいないね。そっちこそどうだ? よさそうな女の子は見つかったか?」

「まだですね」

 坂居はそう言いつつ、周囲を見回した。浜辺には夏の開放感に浮かれ、乳や尻を揺らして歩く女がたくさんいる。中にはビキニ姿の若い娘もいた。どの娘がいいか、なんて考える必要もなかった。全員いい女だ。だがいくら坂居がオス力を持て余したアルファオスだとしても、この浜辺にいる美女を全員抱くのはさすがに難しい。それに今回はナンパものAVに出演してくれる素人娘を物色している最中なのだ。撮影に使える時間を考えれば一〇人も二〇人もお持ち帰りというわけにはいかない。厳選に厳選を重ねる必要があった。

「それより監督の目から見てどうです、今回の企画」

「ん? ああ、悪くないと思うぞ。浜辺で見つけた女の子をマジックミラー号に連れ込んでマッサージして……まあ新規性や独自性があるかと言われたら困るが夏の定番だろ。お約束みたいな企画もたまになら悪くはない」

 安藤は坂居をAV業界に引っ張り込んだ張本人にして、彼をスター男優に押し上げた仕掛人でもあった。

 格闘技オタクの安藤はプロだけでなくアマチュアの試合も幅広く観戦していたため、レスリング時代から坂居のことを知っていたのだ。

 安藤から見て坂居は一目で強いオスと分かる筋骨隆々としたヘビー級レスラーの体格に、意外とかわいい系のベビーフェイスが乗っかった逸材だった。この男をAV業界に引っ張り込めばマッチョ系男優の分野で一〇年は天下が取れるとインスピレーションが働いた。

 その直感を信じて行動した結果、今や坂居はアダルトビデオ界において欠かせない人気AV男優になっている。もちろん体格やパワフルなセックスのインパクトも大きいが、一番の理由は彼が生来持っている人間的魅力によるものだろう。

 長身でガッシリした青年だが気性は穏やかで笑顔が多く、声も柔らかでメロディアスな響きを伴う。女優との間に信頼関係を築くことが大事なAV男優という仕事において、彼の対人コミュニケーションの柔らかさは見た目の威圧感を和らげる大きな武器だった。

 穏やかで優しい性格で聞き上手である点も評判が良かった。街中で女の子に話しかける企画でも、坂居は優しい笑顔で話を聞き、女の子たちの緊張を和らげる。彼が街に繰り出すナンパものでは、最初は坂居の体格に驚き、軽く恐怖していた女の子の表情が彼と話しているうちに柔らかくなっていく変化も見どころの一つに挙げられた。

 もっとも、坂居は己の性格がレスラーとしては大成を邪魔したとも自己分析している。

 競技者としての坂居は優しすぎたのだ。もちろん坂居とて試合に出れば勝ちたい、負けたくないくらいは思う。だがトップを目指すためにはそれだけでは足りない。彼には自分が一番になる、邪魔する人間は力づくで倒そうとするほどの闘争心はなかった。

 大学卒業後もレスリングを続けるか迷っていた坂居に「君の体格を活かせばAV界のマッチョ系男優でトップになれる」と誘いを掛けたのが安藤だった。

 坂居は自分がアスリート向きのメンタルではないことに同意した。また、恵まれた体格を活かせば、業界の内外が注目する存在になれるという安藤の言葉にも心を動かされた。

 坂居に対しては「体格の割にかわいい顔をしている。もっと厳しい顔つきじゃないとキャラに合ってないのでは?」と指摘する声もあった。だが安藤は坂居のベビーフェイスや生来の優しさこそ彼の武器だと思っていた。

 安藤が坂居に求めたのは二面性だった。S男やM女が求めるマッチョの激しいズコバコセックスだけではなく、彼なら無尽蔵のスタミナと気遣いで女主人に仕える男娼の如く女優を悦ばせることも可能ではないかと考えたのだ。

 ファンの間では腕力やチンポの大きさを誇示する路線を黒坂居、優しさで女性を包む路線を白坂居と呼ぶことがある。

 この路線にも業界内部からは「最初のうちだけでも、どちらかに絞ったほうが良いのでは?」と異なるキャラクターが一人の役者の中に混在することを危惧する声があった。しかし安藤には独自の業界分析で勝算があった。

 今やアダルトビデオは男だけが観るものではない。如何にして女性人気を獲得するかも重要な時代だ。

 彼は坂居を女性にとっての理想的な大型犬にプロデュースしたのだ。体が大きくて力は強いけど気持ちは優しく、主人には忠実な犬だ。

 黒坂居の路線で彼の強さや本気になったときの怖さを見せたあと、白坂居の路線では一転して親密になった特定の女性には全力で尽くす姿を見せる。そのギャップによって女性たちは自分も坂居のような大型犬が欲しいと思うようになった。

 単純な売上という点では、男性の優位性を示すような黒坂居路線のビデオのほうが売れているが、白坂居路線には熱狂的な固定ファンがついている。

 今回の撮影も坂居が女性を気持ちよくしてあげる白路線だった。

「海に着いたばかりで体調が悪いから一緒に遊べないって、なにやってるのよもう!」

 浜辺を眺めていると、どこからかそんな声が聞こえた気がした。周囲を見回すと水着姿の女の子が何人もいて、その中の一人が木陰に座り込む男の子に声をかけている。カップルだろうか? どちらもまだ若い。二十歳には届いていないように見える。

「ごめんアルクェイド。本当にダメなんだ……」

「そんなに具合悪いの?」

 心配そうな顔で少年に付き添う金髪の美少女。どうやら彼女はあの少年を看病しているようだ。少年の容態を尋ねる少女の表情はまるで自分のことのように真剣だ。

「少し休めば良くなるかもしれない。悪いけどしばらくここで休ませてくれないか?」

「わかったわ」

 ごめん、と少年は死人のように青白い顔で言った。

「軟弱な彼氏だな」

 二人の様子を見ていた安藤が言った。

「これしきの日差しで女の子に悲しい思いをさせるなんてさ」

「そうは言っても今日はたしかに暑いですよ。車の中はエアコン大丈夫なんでしょうね」

「さっき様子を見てきた時はひんやりしてた。激しく動くには最適な温度だったな」

「ならいいですけど」

 それより、と坂居は少女の顔に目を向けたまま安藤に囁く。

「あの女の子なんてどうです? 滅多に見ない美少女ですよ」

「奇遇だな。俺も同じことを考えてた」

 少年の言葉から察するに少女の名前はアルクェイドらしい。

 美しい顔に魅力的な体型。今はそれを惜しげもなく晒す白ビキニを来ていた。二人の脇を通り過ぎる男たちはアルクェイドを見つめ、彼女の背中や腰の紐を解きたい衝動と必死に戦っている。

「サイズ分かりますか?」

「俺のスカウターによればスリーサイズは上から八八センチ、五五センチ、八五センチだな」

「さすが監督。相変わらずの観察眼ですね」

 安藤は満更でもなさそうに鼻を鳴らした。

 坂居はアルクェイドの全身を舐めるように見つめる。久しぶりだった。この女を抱きたいと強く渇望するのは。

 女優のビジュアルレベルが表の芸能界レベルまで上がっていると言われる昨今のAV業界。坂居もアイドルや女優顔負けの美女を何人も抱いてきた。実際に何人かは元アイドルの肩書を持っていた。しかし今、アルクェイドという少女を見た瞬間、それらの記憶は遠い過去のものとなった。

 ただ彼女だけを抱きたい。

 ……いいや、違う。

 彼女を征服したい。彼女を屈服させて自分のものにしたいという強烈な乾きが生まれた。

 レスリング時代でも、ここまで特定の相手に勝ちたいと思うことはなかった。坂居は自分でもコントロールできない感情に戸惑う。これは、この感情は何だ? どうしてこれほどまでの激情が俺の中に渦巻くのだろう?

「どうかしたか?」

「なんでもないです」

「主演男優がヤリたいと言ってるんだ。今回はあの娘にマジックミラー号に乗ってもらおう」

 表面上は冷静を装っていたが、坂居は安藤の言葉で小躍りしそうだった。頭のなかではすでに、あの美少女を如何にして快楽漬けにして、撮影後も関係を続けるか考えていた。

「せっかく海まで来たんだからアルクェイド一人だけでも砂浜を歩いてきなよ。俺も回復したら追いかけるから」と少年は言った。

 それは坂居が待ち望んでいた一言だった。

「いいアイディアだ」

 アルクェイドは迷っているようだったが、やがて意を決し、少年のそばを離れた。自分のせいでアルクェイドも楽しめないのは申し訳ないと言った彼の言葉が効いたようだ。一緒にいても少年はアルクェイドの優しさを引け目に感じてしまうだろう。

「今がチャンスだ」

 安藤が促すよりも早く坂居は動き出していた。

「俺は撮影の準備をしておく。お前は上手く誘えよ」

 言われるまでもなく。坂居は心の中で返事しながらアルクェイドの背中を追いかけた。

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