LIMITED研究所 2023/07/15 17:03

【ひろがるスカイプリキュア】あげはちゃんってご両親と確執のある女の子なのかな?


最近,「ひろがるスカイプリキュア」のあげはちゃんにすっかりベタ惚れてしまい暇さえあれば彼女のことを考えてしまっている筆者なのですが,劇中の描写を見てると「アレ?もしかして?」と思うことがあったのでちょっとした記事としてまとめて行こうと思います.

結論から言ってしまうとタイトルの通りで,あげはちゃんはご両親とあまり上手くいってないコなのではないかという話をしていきます.また,「ヒロプリのテーマ」とか「つばさくんがバディとして設定されている理由」なんかを根拠になぜそう考えられるのかを掘り下げて行きたいと思います.




聖あげはちゃんとは?

8月8日生まれ,18歳,血液型はB,誕生石はペリドット,ラッキーカラーはベイビーピンク,最近のブームはwikipediaですら書くのをサボるくらい長い名前のパフェ

「サイキョ―の保育士」 を目指す専門学生


異常に大人びたキャラ造形

「実際の18歳こんな大人ちゃうやろ」と誰もが思ってしまうほど他のプリキュア3人と比べて明確に大人として描かれます.初心者マークのついたハマーを乗り回し,気が利いて頼りになるギャルお姉さんですが,世話焼きなトコロもありそれがバディのツバサくんに鬱陶しがられることも.

今回の記事はこの大人びた性格の理由が彼女の両親との確執が原因なのではないかという話になります.


「大人のウソ」が得意な女の子

初登場の回の時点からアゲハちゃんは他の3人を気遣うために,ウソというか自分を隠すことが出来る人として描かれてきました.

ソラちゃんとましろんがスカイランドやプリキュアのことがバレずに済んだことを安堵する様子を見せたとき,笑顔を見せてそれ以上追及しなかったり,

お別れの夜にソラちゃんとましろんが二人きりになれるようにわざと怪獣のイビキを披露したり,

ほぼ初対面な上,不機嫌なツバサくんとの登山でイヤな顔一つせずに付き合ってくれたり

異常なまでに「大人のウソ」を駆使して3人を支えてくれます(精神年齢オーバー30かっていう).


そんな彼女が思わず顔に出てしまうほどのことが,次に話す19話のとある会話の中に隠されていたように見えてなりません.


明らかにおかしな反応を見せた19話

19話にてツバサくんに
「世話焼きなカンジ,誰かに似てると思ったら,父さん母さんに似てるんだ」

と言われた時,一瞬顔を曇らせます.

その後に「3人ともご両親と離れ離れだから世話を焼きたくなってしまう」と彼女は答えるため,一見他の3人の苦労を思って顔を曇らせたように見える演出になっているのですが,

このシーンが自分が抱える両親との確執をはぐらかしたように見え,今後の展開の伏線となっているのではないでしょうか.



おそらくこういう背景があるのでは


ここからは完全に想像の域を出ないですが一応こんなことがあったのではないかと思うことを描いていきます.

仕事で忙しいご両親に構ってもらえない環境で育った

お母さんの仕事の都合でソラシド市から引っ越したことが語られていますが詳細については不明です.ですがわざわざ「仕事の都合で」という設定が与えられている以上何となくその部分が彼女のバックグラウンドに影を落としている可能性は十分に考えられます.

お父さんがいらっしゃるのかどうかは分かりませんが,ツバサ君の「父さん母さんに似てる」発言からお父さんの存在もなにかしら関係していると思われます.

自分で自分の世話をする術が身に着いていった

世話焼きだったり家事が得意なことも,子供のころから全部自分でやっていたからだとすれば説明が着きます.

両親に心配をかけないために気を遣う性格になった

いつまでも自分が子供のままだと仕事で忙しい親御さんに迷惑かけてしまうため,子供としての部分を歳不相応に隠したり,周りを気遣うためのウソが処世術として身に着いていってしまったことも考えられます.



作品のテーマやツバサくんとの対比構造から見るあげはちゃんという人物

ここからは劇中の描写では無くヒロプリのテーマやお話の対比構造などから,なぜ「あげはちゃん両親と上手くいってない説」が言えてしまうのか喋っていきたいと思います.

おそらくヒロプリのテーマの一つである「疑似家族」

映画とか漫画にはよく「疑似家族モノ」というジャンルがあります.諸々の事情により家族を失ったり,一緒に暮らしていなかったり,居場所のない人々が血の繋がっていない誰かと生活を共にすることで安住の地や心のゆとり,本当の家族や自分自身と向き合うための気付きを得ていく様子が描かれていく作品が該当します.

「ヒロプリ」は間違いなくテーマの一つとしてこの疑似家族を意識していると考えられます.特に今作で意識されているのは安住の地としての疑似家族というよりは,いつかは終わってしまうことが決まっている,それぞれの巣立ちの時までの仮住まいとしての疑似家族です.ヒロプリの場合巧妙なのが,エルちゃんという赤ちゃんが核となっていることです.彼女の成長,もしくは本当の親御さんの元への帰還が疑似家族の実質的なタイムリミットとして設定されることで,あくまで期限付きの関係であることが協調されています.

これに関しては13話のヨヨさんや,21話のツバサくんの発言などからも想像がつきます.

この疑似家族という設定はそれぞれのメンバーにとってどのような機能を果たしていくのでしょうか.

ソラちゃんましろんにとっての疑似家族

おそらくソラちゃんましろんの二人にとっては自分自身と向き合うための関係であると考えられます.

幼いころから修行に明け暮れていたソラちゃんは初めてましろんという友達が出来たことで「本当の強さって何だろう,ヒーローって何だろう」みたいなことを学んでいきます.

片やましろんは誇れるものが何も無いことがコンプレックスでしたが,主にソラちゃんとの交流がきっかけで自分でも気づかなかった一面を発見していくコとして描かれています.

この二人にとって疑似家族がどういう意味合いを持つかについては23話までの時点で十分すぎるくらいに描かれているので文章に起こすまでも無いのですが

目指す目標や自己実現のためにお互いに足りないものに気付かせてくれる関係であると言えます.

恐らくあげはちゃんとツバサくんについても同じような構造のお話が展開されていくと考えられるのですが,ソラちゃんましろんと明確に違う部分は確実にそれぞれの本当の家族との関係が大きな比重で介在してくるという点でしょう.

過保護に育てられたツバサくんとバディであることの意味


あげはちゃんの今後を語る前に,彼女にとって欠かせない存在であろうツバサくんの描かれ方について整理してみたいと思います.

夢を持ったきっかけはお父さん

プ二バード族であることから自力で飛ぶことが出来ない彼は,航空力学の力があれば飛ぶことが出来ると考えている男の子です.ですが彼が自力で飛ぶ起爆剤となったのは,お勉強では無くお父さんと同じ思いを胸に抱いていたからであることに気付きます.

「どうやって飛んだのかって言われても,父さん,ただ必死だったとしか...」

もちろん直接的にはプリキュアの力を借りて飛ぶことが出来たわけですが,その力を得ることが出来たのは紛れもなく飛べないハズのお父さんがツバサくんを助けるために飛んだ時と同じように大切な人を守りたいという思いがあったからでしょう.

自分の力で飛ぶこと=自立

という両親から離れて自分自身の力だけで生きていくことのメタファーとも取れるツバサくんの夢ですが,この夢を叶えたい理由や飛ぶことを何に活かしていきたいかについて掘り下げていけば行くほど根底にはご両親に対する思いがあることが分かります.

自立≠誰にも頼らないこと


彼が人間の姿で初登場した8,9話に渡って,エルちゃんが「つかまり立ち」をしようとして失敗したところをツバサくんが支えてあげるというシーンが何度も描写されます.
単純にツバサくんのエルちゃんに対する思いを描いているシーンではあるのですが,
「成長したからといってすぐに誰かに頼らず何かが出来るようになるわけではない」ということを象徴したシーンと解釈することもできます.

それはツバサくんにとっても同じことですね.彼は自分がもう大人になったと思っているが為に過保護な両親から逃げるように疑似家族生活に参加,そこで航空力学を研究すれば自力で空が跳べるようになると考えていました.ですが結局空を飛ぶきっかけを作ってくれたのはお父さんから無意識に学んでいた思いでした.

エルちゃんが読んで字のごとく「自立」に失敗したとき,とっさに支えてあげるという行動が,自分だけでどうにかできることばかりではないこと,誰かから学んだり助けてもらうことも大切であることに彼自身が潜在的に気付いていたことの表れだったわけです.

この気付きが後に19話において何でもかんでも自分で抱え込みたがるあげはちゃんに人に頼ることの大切さを説いてあげることにも繋がったのではないでしょうか.


あげはちゃんだけご両親との関係が描かれないのは不自然

これまでのツバサくんの描かれ方や19話での反応などから,あげはちゃんツバサくんも他二人と同じように,とりわけお互いのご両親との関係がフィ―チャーされた形で対比されて描かれることはほぼ間違いないと思います.

また,他の3人が夢を抱くようになった理由は描かれているにもかかわらず,今のところ彼女だけ保育士を目指す理由が語られないのも不自然です.

恐らく今後ツバサくん同様にあげはちゃんが「サイキョ―の保育士」を目指す理由についても,基をたどればご両親の存在が関係していることが明らかになっていくのではないでしょうか.




保育士=子供に寂しい思いをさせないための職業


保育士とはご両親が働きに出ている子供たちを親の代わりに面倒をみるための職業です.先ほど述べたあげはちゃんの背景についての予想が正しいとすれば,

「自分と同じように寂しい思いをする子供たちを増やしたくない」

という思いから保育士を目指すようになったとすれば,過保護に育てられたツバサくんとの対比関係的にも辻褄が合います.


今後の二人の関係の描かれ方

19話では一度ツバサくんからあげはさんに対して頼ることの重要性を教えてあげる展開が描かれましたが,もちろんツバサくんから一方的に気付きを与える関係ではありません.

11話ではどうしても感情を露わにしてしまうツバサくんがあげはちゃんから「言葉にせずとも相手を信頼し察してあげること」の重要性を学ぶ回なんかもありましたし,ソラちゃんましろんがパズルのピースのようにお互いに欠けているものを埋め合う関係であるように,この二人もいい影響を与え合う関係として描かれることと思われます.

これまで整理したことから簡単に予想するならば

あげは→つばさ
「本当の意味で大人になるとはどういうことなのか」

つばさ→あげは
「上手くいってないの家族との向き合い方」

というようなことを気付かせ合う展開が待っているのではないでしょうか.無論まだ二人とも「本当の大人」とか「家族とどう向き合えば」なんてこと分かっちゃいないと思いますが,自分自身が課題を乗り越えていく様子を見せあうことで,人のふり見てなんとやらで間接的に教え合って成長していくのかなぁなんて考えたりしてます.



あげはちゃんはご両親との不仲をどうやって乗り越えていくのか

あげはちゃんはどうやってご両親と向き合っていくのでしょうか.同じような悩みを抱えていたと思われるほか作品の登場人物とその描かれ方から「まあこれ以外ないわな」っていう解決法を予想していきます.


「 デリシャスパーティ♡プリキュア」の芙羽ここね

元も子もないことを言うと同じような悩みを抱えていたというよりは,あげはちゃん自体がほぼここねちゃん亜種のようなキャラだと思うので,彼女が劇中で抱えていたボールドーナツをきっかけとしたご両親とのわだかまりのお話と同じようなエピソードを後半かけて引っ張って描いていくものと考えられます.

ここねちゃんは幼いころご両親にボールドーナツをねだり買ってもらえなかった出来事が原因となり,自分の要望や思っていることをご両親に素直に言ってしまうことを「わががまな行為」と認識してしまったことで,以来ご両親と微妙な関係が続いていた女の子です.

ここねちゃんとご両親の関係においてネックだったのが「仕事で忙しい両親がそんな小さなことを覚えているわけがない」と思い込んでいたことです.このせいで歩み寄りの機会はここねちゃんが中学生になるまで失われ,ご両親に甘えた経験が幼少期以来ないままでした.


「フリクリ」のニナモリ

プリキュアとは関係ないのですが「フリクリ」というアニメに出てくるニナモリという女の子もとある部分であげはちゃんによく似た人物です.彼女はウソをつくことが大人の処世術 だと思っている女の子です.ニナモリが主役として描かれていた「フリクリ」3話では

「大人のふりしてウソばっかついてると,バレた時ヤバイ」

ということがテーマとして描かれています.彼女のお父さんは舞台となるマバセ市の市長でありながら秘書との浮気が世間にバレて,娘であるエリもそのとばっちりで周りから腫れもの扱いを受けます.ですが彼女はその心の内を周りに隠し,

「大したことありませんから」
「親は親,私は私ですから」
「お父さんが逮捕されても,お母さんと離婚しても,私には関係ないですから」


と平生を気取り,大人が食べるのもキツイ激辛の「星の王子様ニューヨークへ行くカレー」を涼しい顔してパクつきます.

ですがその内心ではご両親の離婚には断固反対であり,自分が主役を務める学芸会の劇にご両親を招待し,それをきっかけとして仲直りさせることを画策していました.

しかし肝心の劇の主役も集計をすり替えるというウソを利用して獲得した物だったため,後にそれがバレたとき大惨事が起きてしまいます.



ご両親と腹を割って話し合う以外の解決方法は無い

どちらのキャラもご両親とのビミョーな関係を修復するために取った解決方法はしっかりとご両親と話し合うことでした.

ここねちゃんがご両親は覚えていないと思っていたボールドーナツのエピソードは,実はここねちゃんのご両親の方がずっと気に病んでいたことが明かされ,ご両親の方が歩み寄りのきっかけを作ってくれたことによって関係が修復されました.

ニナモリの方は伊達メガネ(気になる男の子の気を引くためのウソ)のクダリがラストにあったため3話の時点で成長は描かれませんでしたが,後の最終話で泣きわめきながら離婚しない様にご両親に懇願していたことが言及され,正直に話すことの大切さを学んでいたようです.

あげはちゃんとご両親の間にどういった問題が生じているのかは23話の時点で全く明かされていませんが,どういった問題があるにせよご両親の前では一度大人を演じることをやめ,正直にわだかまりについて思っていることを話し合う以外に解決方法は無いのではないでしょうか.

デパプリ23話のここねちゃんのエピソードは主にお母さんの視点から歩み寄る姿が描かれ,テレビの前の子供たちの後ろで見ている親御さんたちに対して,「将来こういう問題がお子さんとの間に生じたとき,是非親御さんの方から歩み寄ってあげてほしい」というメッセージが込められているように見える回でした.

題材は同じでもあげはちゃんの方ではどういった描かれ方をするのか今から本当に楽しみです.




さいごに

劇中で一切言及されていないし,本当に今後描かれるのかすら分からないことに関して長々と喋ってしまいました.この辺のことを話し出すと「ピーマンも関係してんのかなぁ」とか「ロープウェイで神妙な表情してたからそれもトラウマだったりするのかなぁ」とか考えちゃったりするのですがキリがないのでこの辺にしときます.


子供のころに些細なことでわだかまりが生じてしまい,子供が大人と呼べる年齢になるまでその距離感のまま来てしまった親子って本当にずっとよそよそしい関係のままだったりします.

「お互い『大人』になったんだからさっさと言いたいこと言って解決すればいいのに」と思われるかもしれないですが,子供が小さいころにできてしまった心のトゲというものは,言いたいことを言い合える良き関係性を維持してらっしゃる方々には見えないほどに根深く刺さっているものです.

今後疑似家族兼バディという設定を活かし,お互いに家族との向き合い方や自立についてどういった気付きを与えていくのか,そして同じような問題を抱えるテレビの前のお友達(大きい連中も含む)にどういうメッセージを届けてくれるのか,今後もあげはちゃんとツバサくんから目が離せません.