有坂総一郎 2023/04/23 12:00

海上トラック

海上トラック

先だって報道されたJR貨物と船会社の共同保有内航コンテナ船の話だけれども、史実戦時中では戦標船1E/2E型相当になる。

内海/拠点間航路用に建造された戦標船1E/2E型だけれど、「このはと」世界で大量に配備すると逆に鉄道省の貨物列車運行に打撃を与えるんじゃないだろうか?

そういう可能性を考えてみている。

実際、戦時中に戦標船E型は大型のA/B型よりも遙かに建造され、目的外の南方航路にまで投入された。また、496隻が計画され、468隻が起工し、463隻が竣工している。114隻のA/B型に比べても5倍近い大所帯だ。

当然、そうなると「このはと」世界でも重宝する存在として大量建造することになるだろう。

総トン数900t、載貨重量1350t程度

貨物列車の載貨重量は概ね、650t程度。よく950t/1100t/1300tとか言われるがこれは牽引重量/牽引定数であり、貨車の重量も含めての数字であって、貨物そのものの数字ではない。

よって、戦標船E型は概ね貨物列車2本分となる。

例えば、夕張炭田から製鉄用の石炭を輸送することを考えると、夕張→苫小牧/室蘭は鉄道輸送が合理的であり、室蘭の製鉄所で使う分は鉄道輸送で十分。

しかし、筑豊炭田→阪神地区の製鉄所と考えると山陽本線/弾丸列車を使うよりも戦標船E型を用いた方が効率的であるわけだ。

特に重量物である鉱石や石炭などの原料輸送は船舶輸送こそ最良なのは言うまでもない。

だが、「このはと」世界は史実と違い、コンテナ輸送を大々的に実施している。史実でもコンテナ輸送はあったが、細々としたモノで戦時廃止されてしまっている。

ドアtoドアこそ最大のメリットであるコンテナ輸送は定時性、高速輸送が確保出来る鉄道輸送こそ最適なのだ。更に言えば、トラック輸送こそ最大便益を確保出来る。尤もトラック輸送の場合、大量輸送には適さないから拠点間で少量輸送こそが最大能率になる。

それを船舶輸送に転換するというのは、そこまでメリットを提示出来るのかという部分だ。

確かに船舶輸送の最大メリットは貨物列車数本分をまとめて一気に輸送出来ることだ。特に島国である日本の場合、大消費地の多くは港湾から至近にあることから船舶輸送におけるメリットを享受しやすいといえる。

ただし、積み替えという手間があり、更に速度的に遅いという問題が横たわっている。

鉄道貨物輸送は最高速度100km/hで運行出来る(しかも標準軌化しているから更に高速化可能、米帝様は130-150km近い最高速度)が、船舶輸送は概ね10-20kt程度で18-35km/h程度なのだ。

しかし、低速であるが、輸送単位が大きいことで輸送単価は激安と言っても良い。しかも、海上ではほぼ定速運行可能で燃料消費は鉄道輸送に比べて雲泥の差がある。

そういった事情を考えると特に単価の安い製品を生産地から大消費地へ鉄道輸送ではなく船舶輸送するというメリットが大きいかも知れない。特に道路事情が良い場所なら港湾まで鉄道輸送せずにトラック輸送してしまって、遠隔消費地までは船舶輸送という手段の方が合理的だと言える。

だが、関東みたいに縦深がある地域の場合、貨物駅までトラック輸送、貨物駅から横浜港などは鉄道輸送、その後は船舶輸送という方法になるか。その場合、輸送コストが安くても載せ替えの手間を惜しんで鉄道輸送のままとするかも知れないが。

そうなると内航船に大量に戦標船E型サイズは必要ないのかも知れないなと思う部分もある。

しかし、四国や北海道みたいに本州とトンネルとかで接続出来ない地域の輸送単位を向上するには効果的だから局地的な需要はそれでも生まれることになりそうだなぁ。

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