春ノ辻 2022/03/03 20:49

【18禁SS】そして僕は彼女の亡骸に接吻をする。

ある八月の、蝉が劈くような音色で共鳴しあう朝。
僕は、一体の死体を見つけた。

森林公園の奥深く、あまり人の出入りのない寂れた池の水面に彼女はぷかりと浮かび上がっている。
水は澄み切っていて、その底には何か得体の知れない物が潜んでいるようにも思われた。
僕はしばらくの間、彼女の死骸を眺めていた。そうして、ただシンプルに「綺麗だ」と思った。

すでに青白く変色した肌は、水にぬれていることで透き通ってるようにも見えてどこか非現実的だ。
ちょうど、彼女の体が水の流れのままに僕の足元近くまで漂ってくる。
そこで僕は、なんとなしに彼女の着ていた美羅臼の襟元を掴むとゆっくりと引き上げた。

――やはり、死んでいる。

顔を見る限り外傷はない。けれど眠るような安らかな表情だった。
その姿は、すでに死んでいるとは思えないほど穏やかで美しい。
けれど、確かに彼女の肌は青白く…唇は青紫色に変色していた。
ふいに、僕の中で奇妙な感覚が生まれる。それは今まで経験したことのない不思議な感情だった。

彼女をこのままずっと見ていたい、そして…目の前に眠る彼女の氷のように冷たく青紫に染まった唇に…接吻をしたい。そんな衝動が僕の全身を駆け巡る。
先ほどまで鬱陶しいと思っていた蝉の声さえ、どうでもよく思えるほど僕の頭の中は彼女に支配されていた。

彼女の唇は冷たいけれど、まだ柔らかさはそのままでその唇をなぞる僕の指は次第に青白い頬へと伸びていく。

「…本当に、死んでいるんだよね?」

お互いの鼻先が触れあいそうなまでに距離が縮まった、その時。
僕は大きく目を見開いた。彼女の瞼が、ぱちりと開いたのだ。

「そう、私は死んでいるの」彼女は、はっきりとそう言った。

それから、まるで何事もなかったかのように再び瞳を閉じる。
しかし、彼女の口元は少しだけ緩んで見えた。

僕は、自分の身に何が起こったのか分からずしばらく呆然としていたが、やがて我に帰ると音もたてずにそっと唇を重ねた。
それがおかしいことだとは、微塵も思わなかった。
ただ、吸い寄せられるかのように。

それから僕らは、唇が離れたと思えばまた寄せ合って…何度も何度も接吻をした。
時折絡まる彼女の舌は、やはり冷たくて…でもなぜかとても心地よいものだ。
彼女の唇から零れる吐息が次第に熱を帯びてくる。
気付けば、彼女の体を抱きかかえるようにして夢中で接吻を交わしていた。

いつの間にか、彼女に触れている僕の体も火照っていて…… 気がつけば、辺り一面は燃えるような赤い夕焼けに包まれていた。

「あなたは私と幽婚を結んだの。だから、あなたも一緒に」

ほのかに熱を帯びた彼女の声が、僕の耳元でそう囁く。

「幽婚」

それは、どこかで聞いたことがあるような名称だと思ったけれど、僕はもうどうでもよかった。

異様なまでに赤い空も、いつの間にか鳴きやんでいた蝉の声も、死んでいるはずの目の前の現実も。
すべて、些細なことに思えた。

指を絡め、足を絡め、彼女の青白い肌に口づけを落としていく。
その度に彼女の体はぴくりと跳ね上がり、艶めかしい声が上がる。

彼女の肌に舌を這わせるたびに、味わったことのないような痺れと興奮を覚えた。
肌が透けるほど濡れぼそった彼女のブラウスをたくし上げると柔く豊満な胸が小さく揺れる。
僕は堪らずそれにしゃぶりつくように貪りついた。

小さく喘ぐ彼女の胸の突起に舌を這わせながら、僕は自分の下半身の異変に気づく。
ズボンを押し上げて痛いくらいに勃起しているのだ。
それに気付いた瞬間、僕の理性は一瞬にして蒸発する。

ベルトに手をかけ外す手間さえもどかしくて、チャックを下げた途端下着ごと一気に脱ぎ捨てる。
そしてそのまま、彼女のスカートの中に手を差し入れた。

ぬるりと湿った感触が僕の手を濡らす。
僕は彼女の体を反転させると、腰を持ち上げた。けれど彼女が抵抗することなどなかった。

僕の目の前には、真っ白な割れ目があった。
その中心からは、透明な液体が溢れ出し太股を伝って地面に流れ落ちていく。
僕はそれを舐めとると、躊躇うことなく顔を近づけていった。
彼女のそこは、驚くほど甘く感じられた。

「ひとつに…なりましょう」

僕はその言葉に応えるかのように、夢中で蕩け切った彼女の割れ目にしゃぶりついた。
卑猥なほど汚らしい音を立てて彼女の蜜を吸い上げると、青白い肢体が大きくのけぞる。
その反動で、僕の顔に押し付けられた秘部がくちゅりと音を立てた。

それから僕は彼女の中に指を入れると激しく掻き乱すと、その度に彼女は甲高い声で鳴いた。
僕も限界だった。
僕は、はち切れんばかりに大きく膨らんだ自分のものを彼女のそこへあてがうと、ゆっくりと挿入していく。
まるで待ち望んでいたかのように、ずぶずふと飲み込まれていく。

中はとても温かくて、優しく包み込まれるようであった。
そして、彼女のお腹の中は想像を超えるほど異様に熱かった。
あまりの気持ちよさにすぐに果ててしまいそうになるが、なんとか堪えてゆっくり抜き差しを繰り返す。

彼女の中は、まるでまだ生きているのではないかと錯覚してしまうほど生々しく脈打ち、吸い付いてくる。
徐々に早くなっていく僕の動きに合わせて、彼女の息遣いが荒くなる。
その表情を目にしているだけで、僕のものは更に硬くなっていった。
そして、ついにその時が訪れる。

彼女の一番奥深くまで突き刺したと同時に、僕の精液は勢いよく放出された。
僕の射精と共に、彼女の体が激しく痙攣して…… 彼女の体が、次第に青白く発光し始める。

その光景を見て、僕は次第に緩やかな眠りへと誘われる。
彼女が光の粒となり、空へのぼっていくのを見送るとそこで僕の意識はプツリと途絶えた。

***

ある八月の朝。
僕は、そんな夢をよく見る。
相変わらず今日も蝉たちは変わらず共鳴しあっている。
けれど僕は、そんなことは気にも留めずゆっくりと体を起こした。

そして、隣で静かに眠る青白い彼女の唇に触れるだけの接吻をする。
何度も、何度も、何度も。
けれど、彼女の瞼も唇も開くことはなかった。
それはそうだ。だって彼女はもう死んでいるのだから。
それでも僕は、飽きることなく彼女の唇を食むように味わう。

ただ静かに、僕は彼女の亡骸に接吻をするのだ。

そして僕は彼女の亡骸に接吻をする。

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