デジ同人のピコりを回避する方法(小説編2・オノマトペの使い方)
今回は、オノマトペは便利だけど、間違って使ったり、たくさん使いすぎると逆効果だというお話です。
オノマトペはとても便利なものである反面、注意して使わないと意味が分からない文章になってしまいます。
書き手にとっては既に脳内にそのシーンができあがっているので問題ないでしょうが、読者は文章を通じてしかそのシーンを思い浮かべることができないのです。
書き手が文章描写をしっかりしないと、どのような滑稽なことになるのか?
と、いうことを説明したいと思います。
・例文
ぶるぶるぶるっ。
私は寒さを紛らわせるために走り出した。
とても簡単な例文ですが、この文章には致命的なミスがあります。
今回はそれを説明していくことにしましょう。
オノマトペにあたる部分は「ぶるぶるぶるっ」です。
このオノマトペが一体なにを表すのか?
賢明な読者の方なら、寒くて震えているのでは? と想像するかも知れません。
しかしこの文章には、寒くて震えているとは、そして身体のどこが震えているのか、どこにも書かれていないのです。
この文章を解読してみることにしましょう。
オノマトペを使う際には、その直後に、その擬音が発生した理由を説明することが重要だと説明しました。
説明とは、もの凄く簡単に説明すると『する』『やる』『立つ』『斬る』『逸らす』などの動詞です。
ずっぱぁぁぁぁぁ! 勢いよく剣で『斬る』。
きぃん! 飛んできた弾丸を剣で『逸らす』。
など、バトルシーンでは定番かと思います。
簡単な文章でも、オノマトペと動詞が連動していることが分かるかと思います。
以上を踏まえた上で、この例文を読み解いていくと……、
『ぶるぶるぶるっ』の直後にある説明(動詞))は、『走り出す』となっています。
つまり、簡単に噛み砕くと、
私はぶるぶるぶるっと、走り出す。
と、言うことになってしまうのです。
これではちょっとなんのことか分からなくなってしまいますね。
書き手にしてみれば、もう既に脳内に周囲の景色までもができあがっているわけですから問題ないのでしょうが、読み手にとっては文章から読み取るしかないわけです。
つまり、ぶるぶるぶるっと、走り出すのは、寒さをまぎらわせるためだ、と。
……想像してみてください。
ぶるぶるぶるっと、痙攣しながら走って、必死になって寒さを堪えている『私』を。
……シャブ中、かな?
また、動詞を『紛らわせる』として読み解こうとしても、そもそも『ぶるぶるぶるっ』というオノマトペには『身体を震わせる』という説明がどこにも書かれていないので、手首足首をぶるぶると震わせているのか、首を左右に振っているのかも分からない状況です。
なのでどう足掻いても、意味があやふやな文章になってしまうのです。
さて、この例文を簡単に手直ししてみることにしましょう。
・例文
ぶるぶるぶるっ。
私は寒さを紛らわせるために走り出した。
↓
・例文(改)
ぶるぶるぶるっ。
私は寒さを紛らわせるために大きく一つ身震いする。
早朝の人気の無いグラウンドを駆け出すと、ブルマを穿いて剥き出しな太もものあいだを、冬の澄み切った寒風が吹き抜けていく。
……こんな感じでいかがでしょうか。
これで一応は『ぶるぶるぶる』に係る動詞は『身震いする』になるわけです。
『身震い』を辞書で引いてみると、寒さ・怒り・恐怖・感動などによって、身体が自然と震え動くこと、とあります。
ですから、これで一応文章としては意味が通じるということになりました。
……しかし。
ここからは完全に好みの問題ですが、意味は通じても、これが効果的なオノマトペであるか? と、いうことを考えたときに、この例文(改)は疑問符をつけざるを得ません。
オノマトペとは、その擬音を強調したいとき、ここぞというときに使うべきです。
ぶるぶるぶるっ、というのは寒さを強調しようと使ったと思われますが、しかし例文(改)では、オノマトペを削っても意味が通じる文章になっているかと思います。五感は大事です。
『ぐいっ』『ぶるぶるぶるっ』『もじもじもじっ』など、日々多くの擬音を見かけますが、たくさん使いすぎると効果が薄れます。ここぞというときに使いましょう。
そもそも『もじもじもじ』は辞書に載っていませんし。『もじもじ』なら載っていますが。
常に辞書を引きながら小説を書きましょう。
さて、まとめますと、オノマトペを使うときは、
・直後の動詞でしっかりオノマトペを受け止めてあげよう。そうしてあげないと意味不明な文章になってしまうぞ。
・ここぞというときに使いましょう。あんまり使うと効果が薄れるぞ。
この点に注意してみましょう。
簡単ですが、オノマトペを使うときの注意点でした。