レモネードオアシス 2022/04/01 08:54

満員電車は動かない1

新年度になりました。
新生活や新しい仕事、新しい学校など、たくさんの変化があって大変かと思います。

少しでもこのブログが憩いの場になりますように。


目次

満員電車は動かない(カテゴリー)

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登場人物

・東和香(あずま のどか)

 小柄なJK2年生。
 黒髪をおさげにしている。
 制服はセーラー服。
 白の靴下。
 ローファー。

・牛乳を飲むと、たまにお腹の具合が悪くなってしまうことがある。
 絶対に悪くなるわけではない。
 たまに悪くなるから、余計にたちが悪いとも言える。

・通学するときは、毎朝満員電車に乗っている。
 乗っている時間は十五分ほど。
 だからあまり苦ではない。

・駅まで歩いて20分。
 健康的に毎朝歩くことになる。
 駅から学校までは歩いて5分強。

・家は閑静な住宅街にある一軒家。
 木造二階建て。
 自室は二階の西側。



東和香~満員電車は動かない~1

 朝の満員電車。
 背伸びするように吊革に掴まっているのは、一人の少女。

 少女の名前を、東和香(あずま 和香)という。

 小柄な少女だ。
 年の頃は思春期を迎えた中学二年。
 それでも背伸びするようにつり革に掴まっているのは、和香なりに大人になっているつもりなのだろう。
 華奢な身体を白と紺色を基調としたセーラー服に包み、胸元には赤のスカーフ。
 紺色のスカートは、きっちりと生活指導の範囲内で膝小僧までガードしている。
 胸のあたりまで伸ばした黒髪をおさげにしているから、どことなく野暮ったい印象を受ける少女だった。

(桜、綺麗に咲いてるなー。お花見したら楽しそう)

 和香は、車窓を流れていく風景を見ながら、ぼんやりとそんなことを考えていた。
 最初は大変だと思っていた満員電車だけど、もう二年目となれば慣れたものだ。
 それに学校までは15分間という短い時間だし。

 毎朝のように眺めている車窓の風景は少しずつ移ろい、いまでは満開の桜を咲かせていた。
 和香は、季節の移ろいが大好きだった。
 ……少し、年寄り臭いかもしれないけど。

(花筏、って言うんだよね)

 線路を沿うようにして流れる川には桜の花びらがびっしりと浮かんでいて、いくつもの花筏が浮かんでいた。
 もしもあの筏に乗ることができたなら、どんなに素敵なことだろう。
 きっと海まで行けるに違いない。

(気持ちいいだろうなー)

 空想ごっこは嫌いではない。
 むしろ、和香はよく本を読むほうだし、空想は大好きだった。
 だから満員電車に乗っているこの瞬間も、和香は空想の世界に浸っていた。
 ……だが。

 ギュルル……。

「えっ」

 下腹部から鳴り響くのは、久しく忘れていた感覚。
 和香はセーラー服の上からお腹を押さえる。
 和香のお腹は、固くぱんぱんに張っていた。
 それもそのはず、和香の小さな身体には、一週間分ものうんちが詰まっているのだ。

(ううっ、一週間分に……、きたぁ……っ)

 ギュルルルルルル……ッ。

 お腹から茶色い不協和音が鳴り響く。
 だがその音も電車が走る音にかき消されて誰の耳にも届かない。

(犯人は……牛乳……?)

 きゅるる……ごぽぽっ!

 急に具合が悪くなった犯人は、すぐに思い当たる。
 たぶん、朝ご飯のときに飲んだ牛乳に違いなかった。
 和香は、牛乳を飲むとたまにお腹を壊してしまうことがあるのだ。
 いつも壊すわけではなくて、たまに壊すのだから余計にたちが悪い。
 油断した時に限って具合が悪くなってしまうのだ。

(電車から降りたら、駅のおトイレに寄っていこう……)

 学校のおトイレでうんちをするのは、なんとなく恥ずかしいし。
 満員電車に揺られながら、絶対にトイレに行こうと誓う。
 幸いなことに、あと5分くらいで学校の最寄り駅に着く。
 余裕を持って登校しているから、たとえ駅でうんちをしても遅刻はしないはずだ。

(それにしても……寒すぎるよ……)

 ぎゅるるっ!
 ごろごろごろ……っ。

 お腹から響く不協和音に和香は顔を歪める。
 お腹が痛いのは当然のことだけど、この電車はエアコンが効きすぎて寒い気がする。
 お腹や足が冷え切っていて、和香を更に責め立ててくるようでもあった。

(うー、早く駅に着いてくれないかなー)

 ゴロロロロ……ゴポッ!

 だんだんと腹痛が強くなってくる。
 駅のトイレ、並んでなければいいけど。
 流れる景色を眺めながら、そんなことを考えていると、

(やだ。お腹痛い、痛い、痛い……っ)

 ごろごろごろ!
 ごぽぽっ!

 腸が蠢動するかのような腹痛の波が襲いかかってくる。
 和香は脂汗を流しながらその波を耐えることになった。
 腹痛は、不幸中の幸いか、すぐに治まってくれる。

 だけどまだ油断はできない。
 腹痛というものには波がある。
 一つ目の波を越えても、第二波、第三波と襲いかかってくるものだ。
 しかも、その波は越えるたびに大きくなっていく。

(お願い……早く、着いて……)

 ごろろろ……。

 お腹の不協和音を堪えていると、少しずつ電車のスピードが落ちてくる。
 駅までもう少しだ。

(やっと、うんちできる……)

 和香は人知れずにホッと一息。
 ホームに降り立ったら、目の前には階段がくるようにしている。
 だから改札口のトイレにはすぐに向かうことができるだろう。

 ……だが。

 キキィー!
 けたたましく鳴り響くのは、電車のブレーキ。
 なんだかいつもよりもブレーキのタイミングが早いような気がする。
 それに、ちょっとというか、かなり急なブレーキだ。
 満員電車に乗ってる人たちの何人かが急なブレーキによろめいていた。
 背伸びして吊革に掴まっている和香もよろめいてしまう。

「うっ、ううー!」

 ぎゅるるるる!

 反射的にお腹に力が入ってしまい、いまにも漏らしてしまいそうになる。
 一瞬出てしまったかと思ったほどだ。


満員電車は動かない2につづく!

楽しんでもらえたら嬉しいです。

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