ビターチョコレート10
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おかげさまでマニアックな小説を書き続けることができています。
Visa、MasterCardがDLsiteで使えなってからというもの売り上げがもの凄い勢いで減り、更にはインボイス制度で印税率も下がり、このままでは廃業も視野に考えている今日この頃です。
なんとかしたいと思いますけど、こればかりは個人の力では歯が立たないですね。
さて、水曜日です。
調子が悪いときでも腐らずにこのブログを更新していきたいと思います。
少しでも楽しんでくれている人がいたら嬉しいです!
♥4章目 下校中に、我慢できなくて
「ふう」
熱を帯びた吐息とともに、パタンと本を閉じたのはひなぎくだ。
文庫サイズのファンタジー小説を読み終えて顔を上げると、視界に入ってきたのは黄金色に染まった図書室。
どうやらずいぶんと長いあいだ読書に集中していたらしい。
だけど心地いい読後感もすぐに『続編が気になる』という欲求へと変わっていく。
「つづき、気になる終わり方だったなー」
呟きながら、読み終わった文庫本をカバンにしまうと席を立つ。
ちなみにひなぎくはいつも図書館に入り浸っているので、司書の先生もひなぎくが私物の本を持ち込んで読んでいるのは知っているから、このへんは顔パスだ。
ひなぎくは学校を出ると、ちょっと遠回りになるけど駅前の本屋へと寄り道していくことにするのだった。
☆
ひなぎくが愛用している本屋は、一言で言い表すのならば『街の本屋さん』といった店構えの小さな本屋だった。
大型書店のような品揃えはないけど、マニアックな品揃えが気に入っている。
注文すればちょっと時間はかかるけど、だいたいの本は入荷するし。だけど雑誌だけは出版社にも在庫がなくなってしまうから、欲しいときに買っていって欲しい……だ、そうだ。
「ふう……涼しい」
小さな書店のなかに入ると、エアコンが効いた爽やかな空気が心地いい。
駅前の騒然とした雑踏が嘘のように、店内は静まりかえっていた。
40坪ほどの書店内には本棚が整然と並び、壁も本棚になっている。
お客さんは……、夕方のこの時間だというのにひなぎくの他には何人かが雑誌を立ち読みしているくらいだった。
いつもお店はがらがらで空いているので、利用している立場としてはいつ潰れないかちょっと心配だ。
(まずは女性誌、それからせっかく夏だし、アウトドアとかどうかな? ゆるいキャンプとか流行ってるみたいだし)
なんとなく本屋の巡回ルートを決めると、なにか興味が湧くものはないかと本を捲りながら物色していく。
こんな感じで気になった本をお小遣いの範囲で積んでいき、最後にお目当ての小説を探そうとし――、
その時だった。
ぐるるるるるっ。
「えっ、ちょ……!?」
突然込み上げてきた腹痛に、ひなぎくは戸惑ってしまう。
最後に出したのは1週間前のことだから、あともう1週間は出てこないと思っていたのに。
だけどその計算はどうやら誤りだったようだ。
(うそ……、お腹、痛くなってきてる……!)
きゅるるるるっ、
こぽっ、こぽぽっ。
だが異変は、腹痛だけでは収まってはくれない。
ぷっ、ぷぴゅ……っ。
「ぁっ、ぁぁ!」
――やだ、ちょっと出ちゃった。
だけどそのことを顔に出すわけにも、ましてや口に出すことなどできるはずがない。
しかもこの小さな本屋には客用のトイレがない。
(早く、早く本を買って、帰らないと……!)
ぷりゅっ、ぷぴゅる……っ。
最後の一冊。
それは目的のファンタジー小説でもある。
お目当ての本を棚刺しから見つけると、2,3冊の雑誌とともにレジに持っていく。
レジでいつも暇そうに店番をしている店長に本を渡すと、見るも鮮やかな手つきでカバーを掛けてくれた。
会計を済ませて、本をカバンの中に入れて、店を出――
ぷぴゅるっ!
「ああっ!」
お店から出ようとしたところで、再び肛門からネバッとしたものを漏らしてしまう。
どうやらお腹の機嫌はかなり悪いらしい。
本屋の効きすぎた冷房のせいだろうか?
それとも本屋に漂っている、独特な雰囲気のせいだろうか?
本屋に入ると、なぜかお腹が痛くなることがある――、それはひなぎくの困った体質の1つだった。
痛くなるときと、ならないときがあるから余計にたちが悪い。
だけど、ここまでお腹が痛くなることは初めてだった。
平然とした顔で、書店を出る。
(えっ、と……ここから一番近いトイレは……、そこの、公園の……公衆トイレ!)
脳内メモのから一番近いトイレを呼び出して、そこまでの道をシミュレート。
ここから歩いて3分。
大丈夫。
それくらいだったらお腹の調子は保ってくれそうだ。
(臭い、バレませんように……!)
ぬちゃ、ぬちゃ、ぬちゃ。
一歩進むごとに、かすかにおもらししてしまった下痢がショーツのなかで暴れ回る。
ショーツのお尻のところには、茶色い染みができあがっていることだろう。スカートのおかげで隠せてはいるけど。
だけど臭いまではごまかしようがない。
一刻も早く、公衆トイレに駆け込まなければ。
いや、駆け込みたいけど、あんまり切羽詰まってるところは見られたくないから、できるだけゆっくりと……!
(はやく、はやく、はやく……!)
ぶぴゅっ。ぴゅるるっ。
信号の向こう側にはお目当ての公園。
あとはこの信号が青になれば、公衆トイレに駆け込むことができる。
(ああッ、まだ、駄目……!)
ぶりっ! ぶりぶりぶりっ!
最初のころよりも、明らかに固形物が混じってきているものを漏らしてしまう。
ショーツが、じわり、じわりと重たくなってくる。
(はやくっ、はやくっ、信号、青になって……!!)
ブリブリブリッ!
取り返しのつかない量が肛門から勝手に溢れ出してくる。
背筋をピーンと伸ばして信号待ちをしているというのに、プリッとした脂が乗ったお尻では、もう止められなくなっている。
ここまで読んでくれてありがとうございました!
少しでも楽しんでくれている人がいたら嬉しいです。
この小説は同人誌「ビターチョコレート」に掲載されているものです。
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