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官能小説の記事 (47)

官能物語 2021/08/04 14:00

美少女のいる生活/28

 広いとは言えないかもしれないが、都心で2LDKは、独身者にとっては狭いとは言えない。実際、もてあましているくらいだったのだ。とはいえ、確かに2人で住むとすると、もうちょっとは広いところでもいいのかもしれない。

 親友とその妻を駅まで送っていったあとに、美咲に提案すると、

「必要無いです。広いところに住めば、物が増えるだけですよ。わたしは、大好きな貴久さん以外に、何も要りません」

 彼女が微笑みながら言った。

「あ、ありがとう」
「どういたしまして」
「ところで、お父さんは、おれたちの関係性に気がついているのかな?」
「どうでしょう。分かるけど、分かりたくないっていう気持ちなんじゃないですか?」
「なるほど」
「でも、景子さんには話しておきました。貴久さんのことが好きで、結婚したいと思っているっていうこと」
「感じのいい人だったな」
「好きになっちゃダメですよ。人妻なんですから」
「了解」
「でも、いい人です。あんなにいい人がお父さんと出会っちゃうんですから、世も末ですね」
「きみは、ちょっとお父さんに対して厳しすぎるんじゃないか? 彼はおれの親友でもあるんだぞ」
「でも、本当に昔から口うるさかったんですよ。わたしの好きにしていいって言いながらも、事あるごとに、ある方向――自分の理想の女性像――にわたしを誘導しようとするんです」
「お母さんの役割もこなそうとしていたんじゃないのかな」
「一人で二役なんていうことはできないですよ。できないことは、無理にやらない方がいいんです。早めに、景子さんみたいな人を見つけていればよかったんですよ」
「お父さんは、きみのお母さんを深く愛していたんだよ」
「貴久さんは、お母さんと親しかったんですか?」
「おれの元カノなんだ」
「ええっ!」
「失礼」
「そういう冗談はやめてください!」
「了解。でも、こういうところにも慣れてもらわないとな。一緒に暮らすわけだから、おれの素のところもちょっとは見てもらわないといけない」
「悪ぶっても、貴久さんがいい人だっていうことは分かります」
「そうかな」
「はい。だから好きになりました」

 貴久はこの短い会話の間に、彼女は何度、「好き」という言葉を言ってくれただろうかと考えた。二回、それとも三回? それに対するに、貴久も好意をあらわにした方がいいだろうと思って、

「おれも、美咲ちゃんのことが好きだよ」

 その通りにすると、美咲は頬を染めた。
 言葉にしてみると、貴久はずっとその言葉が、すっきりと胸に響くのを感じた。
 確かに、このほんの1週間前に同居を始めたに過ぎない少女のことが好きなのだと、貴久は自覚せざるを得なかった。

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官能物語 2021/08/02 10:00

美少女のいる生活/27

 式は滞りなく終わった。

 貴久は式の間、感極まって涙する友人の隣で、いよいよ二三日後が、美咲との約束の日だったわけだが、どうにも実感が湧かなかった。しかし、20歳以上離れた少女の処女を奪うというのだから、そんな実感湧く方がおかしかったと言える。

「何、変な目で見てるんだよ」

 友人が涙に濡れた目を向けてきた。

「見てない。お前がおれの方を見たんだ」
「いや、見てただろ、おれのこと」
「おっさんの泣き顔見て何が面白いんだよ……まあ、笑えるっちゃ笑えるけどな」
「お前には娘がいないから、そういうことが言えるんだよ」
「それは仕方ないだろ。おれのせいじゃない」
「ああ……なんで、よりによってこんなおっさんのことが好きなんだ、美咲は……」
「なあ? おっさん冥利に尽きるよな」
「ちょっと黙っててくれないか、我が子の晴れ舞台にひたらせてくれ」
「お前から話しかけてきたんだよ」

 そのあと、四人で近くのレストランで昼食を済ませると、

「美咲がどういうところで暮らしているのか見てみたい」

 と友人が言い出した。父親としては、もっともだし、友人の妻も、

「わたしも見せていただきたいです」

 と言い出したので、見られて困るものがあるわけでもなし、二人をマンションに案内することにした。

「狭いところだけど」

 と前置きして友人夫婦を部屋に上げると、友人の方は絶句したようだった。少しして、

「こ、こんなところに、美咲は住んでいるのか?」

 呆然としたていのまま、ぼそりと言った。

「不服か?」
「不服かって……満足するわけないだろ。もうちょっといいところに住んでいると思ってたぞ」
「駅に近いし、生活用品は徒歩15分以内で何でも揃うし、セキュリティもしっかりしているし、何も不満は無いけどな」
「狭い、狭すぎる!」
「そりゃ、お前が住んでいるところに比べたら狭いさ。まあ、でも、都心なんだからこんなもんだろ」
「……ギャンブルとかやってないだろうな?」
「何だって?」
「そこそこ高給取りのハズだろう。何に使っているんだよ?」
「株と投資信託」
「引っ越し費用は出してやるから、引っ越せ」
「その必要があったら、美咲ちゃんと相談して、そうするさ」
「おれはこんなところに住まわせるために、美咲を来させたわけじゃないぞ!」
「その割には、あらかじめおれの部屋を見に来なかったじゃないか」
「お前を信用してたんだよ」
「都合のいい言葉だな」
 
 二人で言い合っているところに、美咲が割って入った。

「お父さん!」
「は、はい?」
「貴久さんに失礼なこと言わないで! お父さんのこと元から嫌いだけど、もっと嫌いになるからね!」
「お、おい、元から嫌いだったっていうのは初耳だぞ」
「言ってないもん」
「お父さん、ショックだぞ」
「耐えて」
「耐えられんだろ、そんなの」
「そんなことは、どうでもいいの!」
「いや、よくないだろ」
「いいから! 貴久さんを侮辱するっていうことは、わたしを侮辱するってことになるからね。そうして、娘を侮辱するっていうことは、その父親である自分を侮辱することになるってことを分かりなさい!」
「いや、後半は分かるけど、前半は違うだろ。どうして、こいつを侮辱することが、美咲を侮辱することになるんだ」
「どうしてもこうしても、そうなるの! わたしは、この部屋で満足っていうか、ここに住まわせてもらって、すごく幸せなんだから。その幸せを壊そうとするなら、容赦しないからね!」
「ううっ、すでに容赦ないのに。これ以上、何をする気なんだ……」

 しょんぼりとした友人の肩に、その妻が手を置いた。

「美咲ちゃんが幸せだっていうなら、それが一番でしょう?」
「それはそうだけど……でも、こんなところだったなんて。まるでウサギ小屋じゃないか……」

 失礼なヤツだなと貴久は思ったが、確かに広いとは言えないので、そう言われてもしょうがない。

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官能物語 2021/07/30 10:00

美少女のいる生活/26

 入学式の朝が明けた。
 この日は平日だったが、貴久はあらかじめ休みを取っておいた。

「どうですか……何か変じゃありませんか?」

 朝食をバナナとコーヒーだけで済ませた貴久は、それに加えてサラダとハムエッグとトーストを食べた美咲が、スーツ姿で現われるのを見た。

「変どころか、よく似合っているよ」
「スーツってあまり着たことないので」
「お父さんが涙ぐむな、成長した娘の姿を見て」
「それ、無視してもいいですか?」
「いや、ダメだろ、何か一声かけてやらないと」
「面倒くさいです」
「じゃあ、おれがやろう」
「お願いします」

 入学式にふさわしい青々とした空の下、会場へと向かうと、待ち合わせた大学門前で、見覚えのあるむさくるしい中年男と、見覚えの無い爽やかな顔立ちの若い女性が立っていた。

「まさしく美女と野獣だな」

 貴久が友人に声をかけると、

「第一声がそれかよ」

 と彼は嫌な顔をした。

「しょうがないだろ、そう見えるんだから」
「『妻』を紹介させてもらってもいいか?」

 二人の近くで、クスクスと軽やかな笑声を立てていた女性は、ショートカットの清楚な風貌である。

「景子と申します。お噂はかねがね窺っています」
「どうせ悪口ばっかりでしょう。全部それひっくり返して聞いてくださいね」
「夫は、『世界で一番信頼できる男だ』って、常々申しています」
「本当ですか? 信じられないな」

 貴久は彼女と話していると、心に弾みを覚えた。
 これは、友人が好きになるのも無理は無いと思われた。

「お体は大丈夫ですか?」
「ええ、まだ3ヶ月なので」
「そうですか」

 二人が初対面を行っている隣で、父と娘の一週間ぶりの対面が行われていた。

「や、やあ、美咲。調子はどう?」
「毎日楽しく暮らさせてもらっているよ。貴久さんは、お父さんと真逆の人だから」
「そ、そうか。それはよかった。何か不自由なことはないか?」
「無いよ。それに、わたしのことより、景子さんのことをきちんと気にかけてあげてね。何だったら、わたしのこともう忘れてくれてもいいから」
「な、何を言っているんだ。娘のことを忘れるなんてできるわけないだろ!」
「じゃあ、時々思い出すみたいな感じでいいよ。3ヶ月にいっぺんくらい、『そう言えば、美咲、どうしているかなー』みたいな。で、思い出して、でも、何もしない」
「何もしない?」
「そう、電話もメールもしない。そうして、わたしも同じような感じで、お父さん、どうしているかなーって思い出しながらも、まあ、便りが無いのはいい知らせだからってことで、何もしないの。ね、それでどう?」
「いや、そんな『取引成立』みたいな言い方されてもな。まだ怒っているのか、美咲?」
「深く傷つけられた感じかな。これはもう一生トラウマになって残ると思うのよ、うん」
「い、一生?」
「そう。だから、もうわたしたち二人は、互いのことを遠くから見守るような感じで行こうよ。時が二人の間を修復してくれるのを淡く期待しながら、ね?」

 娘の言葉に父はがっくりとうなだれた。
 どうやら、スーツ姿に涙している余裕はなかったようである。
 美咲は、継母に向かうと、

「景子さん」

 と心から嬉しそうに声をかけた。
 継母は、苦笑した。

「わたしの旦那様を、あまりいじめないでね、美咲ちゃん」
「わたしがいじめた分、景子さんが慰めてあげてください」
「でも、可哀想じゃないの」
「いいんですよ、父はもうそろそろ子離れしないと」
「美咲ちゃんのことを心から愛しているのよ」
「父からの愛はもういいんです。わたしにとっては、出がらしのお茶ですよ」
「愛は与えた分だけ薄まったりはしないと思うけど」
「だとしたら、わたし、父のこと愛していないのかもしれません。だって、薄まってますもん」
「また、そんなこと言って」
「本当ですよ。それより、父に何かされたらすぐに言ってくださいね。わたしは、120%、景子さんの味方ですから」

 そうしていると、二人は、まるで仲の良い姉妹のように見えた。

「おれは、いい娘を持ったよな?」

 友人が、げっそりとした声で言ってくるのに対して、

「それは間違いないな」

 と貴久は応えたあと、「旧交」を温めるのはそれくらいにした方がいいことを、みなに伝えた。

 式の時間が近づいている。

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官能物語 2021/07/27 21:00

美少女のいる生活/25

 それから、1週間ほどが経った。この間、貴久は昼は普通に仕事をして、朝と夜は美咲と一緒に過ごすという生活を続けたわけだが、一緒に過ごしているうちに、何ごとか気に障ることも出てくるだろうと思っていたけれど、そんなことは全く無かった。それどころか、まるで長年連れ添った夫婦ででもあるかのように息はぴったりである。

「無理してるんじゃないか、美咲ちゃん?」
「えっ、何ですか?」

 夕食時である。
 美咲は、箸で冷ややっこのかけらを口に運ぼうとしたところで、止めた。

「とりあえず、それ食べて」
「はい……食べました」
「生活のペースをおれに合わせようとしてないか?」
「全然してません」
「やっぱりそうか…………ん? してない?」
「わたし、貴久さんに合わせようなんてこれっぽっちもしてませんよ。伸び伸び暮らさせてもらっています」
「いや、でも、そんなことはないだろう。おれの面倒を色々と見てくれているわけだから」
「貴久さんの『面倒』なんて、全然見てませんよ。だって貴久さん、全部自分でやってくださるじゃないですか。面倒っていうのは、仕事以外何にもしなくて、家に帰ってくれば、部屋がきちんと片付いていて、洗濯が為されていて、食事の用意もできていて当然っていう顔をしている父のような人間を見るときに使う言葉です」
「でも、おれもきみのお父さんと同じようなものだと思うけど」
「そんなことないです。食べ終わったら片付けて食器を洗ってくださるし、服は脱ぎっぱなしになさらないし、お風呂やトイレだって――食べているときに失礼します――掃除してくださるでしょ」
「うーん……いや、美咲ちゃんが無理してなければそれでいいんだけどさ」
「わたし、無理しているように見えますか?」
「見え……ないけど、女の子はウソをつくものだから」
「それ、炎上する発言ですよ」
「つぶやく気は無いよ」
「わたし、本当に自由にさせてもらっていますよ。家にいたときよりも、ずっと開放的な気分で暮らしています」
「そうか……ならいいんだけど」

 食べ終わってから、しばらくテレビを見たり、互いに本など読んだりしていると、いつもの時間がやってくる。

「じゃあ、そろそろ寝ましょうか、貴久さん」
「そうだな」

 貴久は、リラックスできる少女と暮らす時間の中で、この時間だけは、多少緊張を覚えた。表面上は冷静にしているけれども、心の中はそれほど冷静なわけではない。貴久は、彼女と一緒に自室に行くと、先にベッドに入って身を横たえて、彼女を迎えた。

「ふふっ」

 と楽しそうな声を出して、腕の中に入ってくる少女は、まだまだ大人とは言えないまでも、子どもとは全く言えない体つきを備えているのである。

「これより広いベッドもいいかもしれないけど、わたしはこのくらいでもいいですよ」

 そう言うと、彼女は足を絡めるようにしてきた。
 しなやかな太ももの感触が貴久の体の奥を熱くする。

「明日はよろしくお願いします」
「きみのお父さんはともかくとしても景子さんに会えるのが楽しみだよ」
「好きになっちゃダメですよ。一応、父の大事な人ですから」
 
 翌日は彼女の入学式で、式には彼女の父と継母も来ることになっていた。
 もちろん、貴久も出席する。

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官能物語 2021/07/25 10:00

美少女のいる生活/24

 約束した時間までに家に戻ると、

「お帰りなさい!」

 パタパタと近寄ってきた美咲が、薄手のパジャマ姿である。

「今日、色々荷物が届いたんです」

 そう言われた貴久が、彼女の部屋を見に行くと、「色々」と届いた割には、部屋の中はがらんとしていて、あまり変わらなかった。

「クロゼットの中に入れてありますから」
「何が来たの」
「主に服と下着ですね」
「やっぱりベッドがいるな。あと机」
「ベッドはいりません」
「布団派だから?」
「それもありますけど……わたし、昨晩みたいに、貴久さんと一緒に寝させてもらったらダメですか?」
「えっ、これからずっと?」
「はい」
「じゃあ、よっぽどベッドがいるな」
「え……」
「あれじゃちょっと狭いだろ。もう少し大きなやつに買い替えよう」
「いいんですか!?」
「約束の週末まで、おれを襲わないという約束をしてくれたらな」
「お、襲ったりしません!」
「本当に?」
「……多分」
「次の休みにベッドを見に行こう」
「はい!」

 貴久は、先にシャワーを浴びてすっきりとしたあとに、用意された夕飯を食べた。リクエストに応じてくれた純和風のメニューは、体に優しいものである。その中の一品をすすりながら、貴久は言った。

「しじみの味噌汁とは豪勢だな」
「わかめとお豆腐にしようかなって思ったんですけど、冷凍しじみっていうのが売ってて、そもそもお買い得な上に半額のセール中だったので、つい買っちゃいました」
「ああ、そうだ、そうだ。その買い物なんだけど、今日の分はあとで返すから。あと、そのうち、美咲ちゃん用のクレジットカードが届くから、身の回り品はそれで決済するようにしてくれ」
「えっ、でも、それって、貴久さんの口座から落ちるんじゃないですか?」
「そうだよ」
「そんなのいけません。わたし、自分の生活費は自分で払いますから」
「それは絶対にダメだ。二人で生活するために必要なものは、おれが払う。そのくらいの甲斐性はある。これに関しては議論は無しだ」
「……分かりました」
「おれたちいずれ結婚するなら、家計管理は美咲ちゃんに一任するから、その予行演習だと思えばいいんじゃないかな」
「あっ……はい!」

 貴久は、今日、婚約者がいるということを会社で伝えたというエピソードを話した。そうして、帰りに、それを全く信じていない女性の同僚に飲みに誘われたことも話した。

「その人、綺麗な人ですか?」
「美咲ちゃんほどじゃないよ」
「ひえっ」
「何だよ、ひえって」
「何でもないです、驚いただけです。そういうことよくあるんですか?」
「たまにね」
「全部断ってください!」
「了解」

 貴久は、その日も美咲とベッドを共にした。美咲からは芳香が漂って、まるで、花を抱いて寝ているようだと、貴久は思いながら眠りについた。

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