ひろゆきの本
ひろゆきの『1%の努力』という本を読みました。思ってたより面白かったし参考になることもたくさん書かれてはいたんですが、「ひろゆきみたいな人が増えたらやばいな」とも思いました。
働かないアリはひろゆきなのか
まず「働かないアリであれ」ということが書いてあるのですが、人間社会とアリの社会は違いますし、アリの生態についても誤解があるような気がします。
「働きアリ」と「働かないアリ」に明確な区別はなく、場合によって入れ替わることが知られています。働かないアリは全体の2割程度で維持されており、働きアリが疲れて休みだすと働かないアリが動き出して仕事を補います。2割を常に休ませておくことで労働が絶えないシステムを維持していると考えられます。人間社会よりもゆるいローテーションみたいなものでしょうか。わかってしまうと「あ、そういうこと」って感じですよね。
んで、ひろゆきはその仕組みをハックして「ずっと働かないアリでいましょう」と言ってるわけです。それってどうなんでしょう。アリもずっと働かない「ひろゆきアリ」が混じってたら迷惑なんじゃないでしょうか。
それってフリーライドってこと?
以前はスーパーに行くと割り箸・スプーン・小さな調味料などは無料で置いてありましたが、最近はほとんど撤去されています。銀行と郵便局も無料の封筒を置かなくなりました。まとめて持っていく人が増えてしまったからと言われています。
ひろゆきは「社会の余裕がなくなるとモラルが維持できなくなる」「そのうち公衆トイレもペーパーを置かなくなるでしょう」と言っていて、そういう先見は流石だなと思います。そして「僕も大学のトイレットペーパーを持ち帰ってましたからね」と続いていて、本当にどうしょうもねえなこいつ……と笑いました。
ひろゆきやホリエモンは「お金がなくても生きていける」ということをよく言っていますが、まあそうやってなんでもフリーライドしちゃえばいいって考え方なら、確かにどうとでもなるだろうとは思います。まっとうに生きてる人たちには迷惑な気もしますが。
Winnyと2ちゃんねるは違う
何より文句を言いたくなるのがこれですね。2ちゃんねるが裁判で大変になった件に関して、Winny事件やライブドア事件を並べて「包丁は何も悪くない」「法整備されてなかったので理不尽な敗訴をした」とひろゆきは語っています。
Winnyの金子氏は無罪判決が確定しているので、法的に問題はなかった、何も悪くなかったというのは今や論ずるまでもないでしょう。ライブドア事件もいろいろな意見はありますが、ホリエモンは受刑して償っていますので、今更どうこう言うこともないと思います。
2ちゃんねるが敗訴しまくったのは「ウェブサイトの管理者には責任がある」というシンプルな理由です。今見てもその判決にさして問題があるとは思えません。今現在のSNSも悪質なデマや誹謗中傷を放置しておけば問題となります。Meta社は有名人のなりすまし被害などを放置してるので訴訟を起こされそうになっています。
古きを知るインターネットユーザーは「2ちゃんねるは間違っていた部分もある。再び同様の騒動を起こすべきではない」と考えている人も少なくないのではないでしょうか。昔からひろゆきを知っている人ほど、ひろゆきの評価が辛辣な理由はこういうところにあります。
1%の命題
というわけで、いろいろ思うところのある本ではありますが、異なる考え方を知れるということは興味深いです。「ひろゆきってなんなんですか」と思ってる人は、その著作をいくつか読んでみるのもいいでしょう。
ひろゆきは都会の貧困と氷河期世代が生み出した魔物なのではないか、と私は思いました。「働かないアリ」思考の人が増えたら社会の維持は困難になるでしょう。ひろゆきに共感する人が多くいるのだとしたら、今後の社会の命題のようにも思われます。
しかしながら、おそらくはひろゆきのようなタイプは百人に一人もいない、1%に満たないでしょうし、多様性としてそのような人間も必要かもしれません。彼を必要としている会社や組織もあるのは事実であろうと思います。