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2018年 08月の記事 (5)

【小説】乳魔に手懐けられた勇者 前編

 石畳の敷かれた幅広の通りに軒を連ねる屋台の合間を赤ら顔の男達が行き交い、辻々で派手な化粧と衣装で身を飾った妖花が、艶然たる笑みを咲かせている。

 人いきれを嫌って酒場の扉を開けば、息をするだけで悪酔いしそうなくらいの酒精が芬々ふんぷんと鼻先にかぶさってくる。いい加減慣れはしたが、気分のいいものではない。客席に目をやると、円卓の一つでは小汚い衣服に身を纏った労働者が酒杯を片手にカードゲームに興じ、また別の卓では凶悪な得物を腰に下げた一団が金銀財宝を前に分け前の談義をしている。冒険者なのか、或いは盗賊か。どちらにしても関わり合いにはなりたくない類の連中である。

 ふと、カウンターに転じた視線が、性質の悪そうな壮年のバーテンダーのそれとぶつかった。もみあげまで繋がった濃いひげを蓄えたその口からお決まりの、ミルクは置いてないぜ(カウボーイは置いてあるのに、だ)、が飛び出す前にロイは回れ右して酒場から退散した。この聞き飽きた嘲弄に対して反応するのも馬鹿らしかった。

 通りに出て少し歩くと、扉の向こうからどっと笑い声が起こった。それだって、いかにもお決まりのパターンだった。

 冒険者が集う酒場は通念においても実際においても情報の宝庫である。この国にあると噂される光の宝玉の最後の一つの手がかりを得られるかもしれない。しかし、自分のような若輩者に対して非友好的な荒くれ達の態度を軟化させるためには、卑屈か、さもなくば少々乱暴な手続きを踏まなければならない場合がほとんどだと、少年は経験として知っていた。だが、今の気分は一暴れするにはくさくさし過ぎている。

「あら珍しい……可愛いボクちゃんね……こんなところに来ちゃダメじゃない。ママはどうしたのかしら?」

「迷子なんじゃないの? ねえ、ボクちゃん……今日は寒いわよ、お姉さん達がベッドで温めてあげましょうか?」

「それは言い考えね。添い寝して、ママみたいにおっぱい吸わせてあやしつけてあげるわよ♪」

 露出度の高いドレスで媚を振りまく女が、そのたわわな胸の果実を見せつけるように寄せて上げて、からかってくる。

 ロイはかっと赤らんだ顔を前に向け、そそくさと歩調を早めた。背中から女達のおかしそうな笑い声が追いかけてきた。

「うう……ああいうのは、苦手だなぁ……」

 長い旅の間に、ならずものや無頼漢を相手にするのは慣れてきたが、女にはなれない少年である。この歓楽街だって、情報集めをすると言い捨てて宿を飛び出してきたから、足を向けただけのこと。本来の目的を果たさない以上、早く宿に戻って、明日に備えるのが勇者としての、また、パーティのリーダーとしての正しい姿だろう。そう感じつつも、ロイは夜なお明るい街の中を漫ろ歩き続けた。

 千鳥足のお大尽をよけながら、ぼんやりと、宿を飛び出してきた時のことを考える。いつものようにパーティの最年長者と最年少者がいがみ合っていた。どうしてレイヴンはいちいちエドに突っかっていくのだろう。そしてエドはどうしてキツイ皮肉で反撃するのだろう。レイヴンはワービーストで人間基準では二十代前半の見た目をしているが、獣人は年の取り方が違い、実際は50を超えた武術の達人。一方のエドはエルフ族の貴族の名門、ペルルリーゼ家の7男で、年は冒険者としては若過ぎるとしばしば評されるロイより3つも下だが、その小さな体からは想像もつかない巨大な魔力を操る天才魔法使い。

 達人と天才、なるほど大袈裟な枕詞だが、二人ともそう評する他ないような、稀有の人材だった。

 しかし、それなのにというべきか、だからというべきか、二人はお互いに自分が出来ることが相手に全くできないことを、常々不満げに口にしていた。つまり、武闘家は魔法使いの体力のなさを、魔法使いは武闘家が呪文の一つとして使えないことをそれぞれ舌鋒鋭く非難するのである。

 肉弾戦担当と後方支援担当という、集団戦闘におけるそれぞれの役割を考えれば、双方の非難は幼稚でかつ的外れだ。持てるスキルを使って、足りない部分をカバーし合うのが、チームというものだろうに。

 そう言う意味のことを、言葉を変えて何度も言い聞かせたが、喧嘩はたびたび繰り返された。それで、フラストレーションがたまっていたのだろう。

 なぜわかってくれないのか。なぜ互いを認めないのか。戦い一つにも、全員の命がかかっている。エドと2つしか違わないのに、勇者というだけでリーダーを任された身にもなってくれ。僕の苦労を少しでも理解してくれ――蓄積した不満が爆発し、怒声と扉への八つ当たりとなって表れた。それは、つい一時間ほど前のことだった。

 声を張り上げて捲し立てるロイを見て、レイヴンも、エドも、ガーベラも、信じられないと言ったように目を丸くした。一しきり感情を露吐した後になって、ロイはしまったと臍を噛んだ。居た堪れなくなって、誤魔化すように宿を出た。そして、情報を求めるという言い訳を頼りに歓楽街にやってきた。

 愚かだと、冷静さを欠いた、リーダーにあるまじき稚拙で浅はかな爆発だったと、自責の念が消えない。苦労しているのは、ロイだけではないのだ。ガーベラ――パーティ唯一の女性で僧侶である彼女だって、仲裁役を買って出てくれた。二人きりになった時、相談に乗ってくれたこともあった。

 感情に手綱をつけて、しっかりと制御しなければならない。それが、大人になるということ、リーダーになるということ、勇者であるということだ。頭ではそう理解出来ても、心の靄はなかなか晴れてくれない。

 掌底たなそこを額に当て、長嘆息する。今の今、くよくよしているのだって、よくないことだ。さっさと宿に戻るべきだが、その気にはなれない。帰って、何を話せばいいのか、どんな言葉で切り出せばいいのか。わからない。いっそ、アルコールの霊験を借りようか。強い方ではないが、少しは勇気を得られるかもしれない。どこか、落ち着いて飲める店でもないものか――そう考え、キョロキョロと視線をあちこちへ向けながら、歩いていると、出し抜けに、顔面がむにゅっとしたクッションのようなものに埋もれた。その温かく柔らかな物体は、適度な反発力を持っていて、沈み込んだ顔はすぐにぽにょんと弾き返される。

「むわっ……!」

「きゃっ……!」

 弾力に押し返されたロイの間抜けな声と同時に、女の人の短い悲鳴が上がる。注意散漫のあまり、路地から出てきた誰かと鉢合わせしてしまったのだ。夜気に冷えた石畳の上に尻餅をついたロイは、反射的に謝ろうとした。

「ご、ごめんなさ――」

 だが、その語尾は驚きによって掠れた。ポカンと口を開けたまま、ロイはしばし固まった。視線は目の前の女性に釘付けになっていた。

 人がコミュニケーションをとる場合、最も意識するのは顔である。造作によって個体を識別し、表情によって感情をやりとりするためだ。だが、ロイが注視しているのは女性の顔ではない。そもそも、顔は見えなかった。路面に尻餅をついた少年の位置からは見えたのは、豊満過ぎる双丘だけだった。

(うわ、おっきいおっぱい……おっぱい、おっきい……)

 それは、今まで見たことも無いくらいに大きい――いや、その肉の果実は大きいとか豊かという範疇を越えた、爆乳としか言い表しようのない規格外のボリュームを備えていた。さらに、彼女が身に纏う臙脂色のロングドレスは、Vの字になった胸元が抉れるように開いた過激なくらいセクシーなものだった。衣服というよりも乳バンドと呼称する方が適切だろう。かろうじて乳輪を隠せてはいるけれど、布地の締め付けによって白い乳肉が緩やかにたわみ、あまりにも扇情的だ。そして、彼女の持ち物は見た目が素晴らしいだけではない。ビックリするほど柔らかさと張りを併せ持ったその最高の感触は、身を以て体験したばかりである。

「……ゴクッ」

 思わずロイは生唾を飲み込んでいた。見ているだけで、胸がドキドキする。男なら誰しも目を奪合われてしまうだろう、魅惑の結晶。それが、今、ゆっくりと落下してくる――
(さ、触ってみたい……)

 衝動に突き動かされるまま、ロイは近づいてくる乳房に右手を伸ばしかけた。

「ねえボク、大丈夫?」

「え……!? あ、あ、その……」

 突然の問いかけに、伸ばしかけた手を慌てて引っ込めた。緩くウェーブのかかったボリュームたっぷりの髪を腰まで伸ばした、どこか母性的な顔立ちの美女が、身を屈めてこちらを覗き込んできていた。思考停止に陥ったロイを気遣って声をかけてくれたのだ。不注意を咎めもせずに。

 ロイは、今自分が何をしようとしていたのか思い出し、顔がカッと熱くなるのを感じた。

「あ、えと……だ、大丈夫……です……」

 五秒ほど間を開けてから、ようやくへどもど答えた。焦りと恥ずかしさでごちゃごちゃになった頭では、それが精いっぱいだった。

「でも、坊やちょっとボーッ……ってなっちゃってたよ……転んだ拍子に、頭打ってたり、してないよね?」

 そう言ってお姉さんは頭を軽く撫でてきた。その僅かな動きにさえ、胸の巨大な果実はたゆんと弾む。初心な少年がますます泡を食ったのは言うまでもない。

「や! ちょ……だから、大丈夫……だから……!」

「うん。それだけ元気があれば、大丈夫そうだね」

 顔を真っ赤にしてジタジタと地面を掻いて後退った少年に、美女はくすりと口元を綻ばせた。

「でも、いつまでもそんなところに座ってたら、可愛いお尻が冷えちゃうわよ。はい」

「あ、ありがとうございます」

 どうにか平静を装い、差し出された右手を掴んで立ち上がった。美女はロンググローブを着けていたが、それは中指にひっかけるタイプのモノで、柔らかな手のひらに直接包まれた手がほのかに温かい。

(肌、スベスベだなぁ……ずっとこうして手を握っててほしい……)

 そんな心の声に応えるかのように、女はもう一方の手を甲の側に添えて、ロイの手を両手でそっと包み込むように握り直してきた。

 ドクン、と胸が高鳴った。包み込まれた手が、ジンジンと歓喜に痺れているようだった。ロイは再び言葉を失って、しばし目の前の優しげな美貌に見惚れた。美女は、そんなロイの様子に気が付かないで、申し訳なさそうに、

「本当にごめんなさいね、急に飛び出したりして……ケガが無くて幸い――あら?」

 いきなり、口元に手を当てて驚愕の声を上げた。

「このブレスレットって……もしかして、坊や……いいえ、あなたは勇者ロイ様では?」

 彼女は少年の手首に輝く腕輪をまじまじと見つめ、そう訊ねてきた。

「はい……そう、です……だけど、どうしてわかったの……?」

「だって、このブレスレットにはウルナ様の紋様が刻まれていますもの……これを身につけることが許されているのは、勇者様だけ……ちがいますか?」

「へえ、良くそんなこと知ってますね」

 ロイは感心したように眉を上げた。確かにその腕輪は、大地の女神ウルナを象徴する生と死の円環が精巧に意匠されているが、銅製のもので、一目見ただけではそんな凄い品だとは思えない造りなのである。それに、そもそもこの快楽の街で働く美女――おそらく、あの最も古くから続く職業に従事しているだろう美女――が女神の腕輪の存在を知っていることは意外も意外だった。

「だって……勇者様のことは噂や本を頼りに色々と調べましたから……」

「え?」

「年甲斐もない、はしたない女だと思われるかもしれませんが……その……わたくし、勇者様の……ふ、ファンなのです……」

 美女は年頃の娘が照れるように、赤らんだ頬を両手で押さえて顔を背けた。

「僕の……ファンって……お姉さんが?」

「ええ……小さな体で勇敢に魔物に立ち向かう……あなたのご活躍はこのディーナールの街にも届いていますよ。いつかお目にかかりたいと、夜毎の夢に見たものです」

「へ、へえ……そうなんだ……こんな遠くの街にまで……えへへ、なんか、照れちゃうな……」

 ロイは頭を掻き掻き、ヘラヘラと脂下がった笑みを零した。綺麗なお姉さん――しかも巨乳でスタイル抜群の――からの熱い憧憬の眼差しは、くさくさした気分を忘れさせてくれるほど心地の良い物だった。この勇者の実にだらしのない反応を、仲間の男二人が見たなら、きっと大いにからかわれたことだろう、もし、紅一点が見たなら、熱い肘鉄を脇腹に見舞われていたかもしれない。

「うふふ……そうだ……勇者様、これからお時間ございますか?」

「え?」

「ここで出会ったのも、何かの巡り合わせ……少なくとも、わたくしはそう感じるのです。ですから、もしこのあとのご予定が無いのなら、どこか落ち着ける場所で、お話したいのですが……」

 と、美女はロイの手をギュッと握って、顔を覗き込んで、おもねるような微笑で。

「ええと……その……」

 突然のお誘いに、ロイはどうしたものか判じかね、モゴモゴと答えた。すると、美女は少し残念そうな顔をして、

「もしかして、何か大事なご用の途中だったとか……?」

「いえ、特に何も……ただ、ブラブラしてただけですから……」

 ロイは少し躊躇ってから嘘を吐いた。宿に戻って仲間と顔を合わすには、もう少し時間が必要だろう。それに、こんな綺麗な人から誘われるなんて滅多にないことだ、勇者だって人間なのだし、たまには息抜きをしても、女神の瞋恚しんいを買うことはないだろう。

「うふ、それならよかった。では、こちらにいらしてください。近くにわたくしの行きつけの店がありますから」

 美女はロイの手を引いて、薄暗い路地の奥へと進んでいった。と、すぐに立ち止まって、

「ああ、申し訳ありません。わたくしとしたことが、舞い上がってしまっていたようで……まだ、名乗っておりませんでしたね。わたくしはフレイアと申します」

 手を握ったまま、軽く頭を下げた。

 フレイアに連れられて入った店は、表通りの安酒場とは打って変わって、小洒落ていて、落ち着いた雰囲気のバーだった。大人の世界、或いは隠れ家的、とでもいうのだろうか、テーブルにまばらに腰かけた客達は行儀よくそれぞれの酒かあるいは話し相手に向き合って、店中に胴間声を響かせるような手合いは一人としていなかった。

二人はカウンターに並んだ足の高い丸椅子に腰かけた。

 フレイアは勇者に興味があるらしく、あれやこれやと質問を浴びせてきた。しかし、それは会話の展開のためのもので、ほとんどの時間はロイが喋り、彼女は興味深そうに聞き入っているという状態だった。

 フレイアはいわゆる聞き上手という人種らしく、質問のしかたが的確で、相槌の呼吸も完璧、しかも話に聞き入っている時の、話者の言葉を頼りに、想像の世界へ意識を飛ばしているような、酒精と話しの両方に酔ったようなとろりとした眼差しが、ランプのほのかな明りの元、素晴らしく魅力的なのである。

 ロイは初対面の相手だというのに、気分よくペラペラと今までの冒険での驚きや感動、仲間への賞賛を口にした。フレイアに喜んでもらおうと一生懸命になっていた。長い旅の中で、こんなにも打ち解けて話せたのは、仲間以外では彼女が初めてだった。その内に話題は、今夜、歓楽街へ出てくるきっかけとなった、トラブル話へと移っていった。

「どうして、レイヴンとエドは喧嘩ばっかりするんだろう……この間なんて、街中で戦いを始めようとしちゃってさ……全く、間に立つ僕らの身にもなって欲しいよ……」

 長広舌に乾いた喉を湿すように、ロイは目の前のグラスを傾けた。その果実酒ベースのピンク色のカクテルは、フレイアの前に置かれたものと同一だった。酒の知識も飲み方もしらない少年は、薦められるまま同じものを頼んだのである。

「あらあら、勇者様も大変なのですね……まだお若いのに、リーダーとしての責務を果たそうとなさって……」

「あ、すいません……なんか、愚痴っぽくなっちゃって……変だな、関係ない人に、こんなこと話すべきじゃないってわかってるのに……」

 気恥ずかしそうに視線を落として、グラスの底を覗いた。このピンクのカクテルは、甘くて飲みやすいが、意外と度数が高そうだ。

「ふふ、構いませんよ。悩みというのは誰かに話すとスッキリしますから……いくらでもお話下さい」

「ありがとうございます、フレイアさん。だけど、僕は勇者だから……力の無い人たちに、頼られる存在だから……そんな風に誰かを頼っちゃ、いけないんです」

「勇者様……そう言う考え方は、立派だと思います、ですが――」

 フレイアは、ロイの手を優しく包み込むように両手で握った。

「全部自分で抱え込もうとしてはダメです……重い物を詰め込みすぎると、袋は破れます。心だって同じです。悩みを溜めこみすぎると、その重さで、いつか心の底に穴が空いてしまいます……」

 じっと顔を覗き込み、フレイアが語りかけてくる。嘘みたいに長いまつ毛に縁どられた、コバルトブルーの瞳が、熱っぽく潤んでいる。ぽってりとした唇は、ローズピンクの口紅で艶めいていて、言葉を紡ぐ度に、その隙間から真珠のように白い歯が垣間見えた。

(フレイアさん……近くで見ると、すごい、美人だな……)

 母性的でいながらも凄艶な美貌にロイはぼんやりと見惚れてしまう。

「袋はすぐに繕えますが、一度穴の開いた心は、そう簡単には回復しません……だから、穴の開く前に、ケアしてあげないとだめなのです……」

「そう、なのかな……?」

「そうなのです。ロイ様だって、勇者である前に、一人の人間でしょう? 自分に厳しくするばかりではいつか参ってしまいます……」

 手を握って、じっと眼を見つめながら、優しげな声音と口調で言い聞かせる。そんなフレイアの言葉が、ロイの耳からするりと入り込み、意識に溶けていく。

「そうなんだ……でも、だからって……どうしたらいいんだろう?」

「簡単なことですよ。心の殻を捨てて、思いっきり誰かに甘えるんです」

「でも、僕が甘えられる相手なんて……」

 ロイの脳裡に、ガーベラの聖女のような面差しが浮かぶ。彼女なら、屈託する自分をその胸に抱いて慰めてくれるかもしれない。だが、それは今以上に彼女に負担を強いるということだ。自分が潰れないために、別の誰かを潰してしまって、良いという道理はない。

「甘える相手がいないなら……わたくしでは如何でしょうか……?」

「えっ……!?」

 ぼんやりと逡巡していたロイは、突然の提案に飛び上るほど驚いた。フレイアはロイの手を握ったまま椅子をずらし、肩を寄せてきた。彼女自身の体臭と香水が混ざったものだろうか、少し甘ったるいような、けれど不快ではない芳しい香りが鼻腔をジンと痺れさせる。

「わたくしは、あなたを癒して差し上げたいのです。勇者様……今夜は、わたくしに甘えていただけませんか?」

 流石のロイにも、その言葉の意味するところは理解出来た。だが、どう返事をしていいのかは分からない。

「でも、えと……その……僕、そんなにお金持ってないんですが……」

「お金なんて頂きませんわ。確かにわたくしは日頃、それでお金を頂いておりますが、今夜は、わたくしがそうしたいのです。疲れてしまった勇者様を、癒してさしあげたいのです……この、自慢のおっぱいで……」

 そう言ってフレイアはキュッと脇を締め、自らのバストを強調した。セックスアピールの塊とも言うべき魅惑的な肉の果実が、ドレスの胸元の布地をパンパンに張りつめさせながら、互いに押し合い、媚を売るように揺れる。あまりに悩殺的な情景に、ロイは息を飲んで言葉を失った。男の本能なのか、視線が雪のように白い胸の谷間に、自然と吸い込まれてしまう。

「勇者様、おっぱいお好きですよね? 隠そうとしたって無駄です。話しをしている間、時々熱い視線を感じましたから」

「あ……その……ごめんなさい……」

 ロイは耳まで真っ赤にした顔を俯けて、モゴモゴと謝った。会話の途中、グラスを傾けたり、頬杖をついたりといった細かな動作をフレイアがする度に、過剰に開けた胸元から覗く豊満な乳肉が誘うように揺れるのだ。それをつい、ロイ少年は盗み見てしまっていた。何度も、何度も。男であれば目を奪われない方がおかしいが、そんなことは不躾の言い訳にならない。

 しかし、フレイアはニッコリと微笑して立ち上がり、

「怒ってるんじゃありません。男の人なら誰でも……わたくしのこの、大きいおっぱいに……見惚れてしまいますもの……勇者様も、わたくしのおっぱいの感触味わってみたいでしょう?」

 訊ねながら、後ろから覆いかぶさるようにして、ロイの体に自慢の胸を押し付けた。背面で柔らかくたわむ円やかな肉の感触は、あまりにも巨大で、量感の夥しく、ロイは全身を隈なくこの美女の妖艶な母性に取込まれてしまった心地して、赤面が一層の熱を帯びる。

「手で触れたり、もんでみたり、ほおずりしたり、してみたいのでしょう? 優しいおっぱいに、甘えたくありませんか?」

「あ、う……その……してみたい、です……」

 おっぱいの魔力に負け、ロイはとうとう欲望を口にしてしまった。

「ふふ……素直なお返事ですね……とっても、可愛いですよ……」

 フレイアは硬直する少年の首に後ろから手を回し、その肉厚な艶唇を耳元に寄せて、熱い息と共にうっとりと甘く、囁きかける。

「それじゃあ、上に行きましょうか……」

「え? 上って……何か、あるんですか?」

「ここの二階と三階のお部屋は簡易な休憩所になっているんです……仲良くなった男の人と女の人が、さっきから二階に上がっていってたの、気が付きませんでした?」

 つまりは、酒場と連れ込みが一体になった、曖昧宿というやつで。


 二階の部屋は意外にも清潔だった。上半分が漆喰で塗られた壁にはこれと言った装飾もなく、家具だって、ベッドの他には階下のバーにあっとものと同一のテーブルと椅子の2脚があるばかりだが、ベッドシーツは綺麗に洗濯され、ピンと皺なく伸びているし、床の上には塵一つ落ちていない。部屋を満たす空気が孕むのは饐すえた臭いでも埃の臭いでもなく、植物性の芳しい薫りで、不快さは一切感じられない。

 酒場の二階にある、セックスの為の部屋なんて、眉を顰めずにはいられない程不潔なのではないかというロイの予想は、いい意味で裏切られた。

「うふふ、綺麗で驚かれました?」

 室内灯に火をともしたフレイアが、室内の様子を珍しそうに見回すロイの心を読んだかのようにそう訊ねた。

「他人が使った後丸わかりな所でするのは、女も嫌なのです……こざっぱりしてて、あまり可愛らしい物が無いのがちょっと残念ですけど……」

「は、はい。そうですね……」

 どぎまぎと肯定したが、フレイアの言葉の半分も理解できていなかった。目の前でにこやかに微笑むグラマラスな美女とこれからすることを意識すると、平常でなど居られるはずは無かった。

「緊張されてますか? 女の人と、こういう所に来るのは、初めてですか?」

 フレイアが、肩に手を回して囁いてくる。ロイは黙って小さく頷いた。二つの問いの両方ともイエスだった。

「うふふ、可愛らしいですわ……勇者様っていうより、初心なボクちゃんって感じで……とってもわたくしの好みですわ……もしかして、キスもまだなのかしら?」

「は、はい……」

「うれしい……それじゃあ、ファーストキス……もらってもいいですか?」

「え……それって……フレイアさん、僕……まだ心の準備が――」

 うっとりと微笑しながら、フレイアはロイの赤面した顔を両手で挟み込み、少し上を向かせた。

 フレイアの方が、頭一つ分以上も背が高いため見下ろされる格好だ。だが、ロイは威圧感を全く覚えなかった。それどころか、その蠱惑的な青い瞳に見つめられていると、不思議な安心感が胸の内に満ちて、相手に全てを委ねたい気持ちにさえなってしまう。

「怖がらなくても大丈夫……わたくしが、全部してあげますから……勇者様はただ力を抜いて、されるがままになさってください……」

 柔和で妖艶なフレイアの美貌が、ゆっくりと近づいてくる――と、次の瞬間、ロイはぷるんとした瑞々しい感触に唇を奪われていた。

「んんっ……ん、あふうぅ……ん……」

 ぽってりと肉厚な唇が、唇とその周りの皮膚を優しく啄んでくる。柔らかく瑞々しい感触。興奮に熱を帯びた鼻息の産毛を撫でる感触。コロンと吐息の混ざった得も言われぬ香り。どれもが素晴らしく、気持ちが良い。

「んっ、んんんっ……!」

 快感に緩んだ唇と歯を割って、妖しく濡れそぼった舌が口内に侵入してきた。ナメクジを思わせるヌメヌメとした感触が舌にねっとりと絡み付いてくる。ざらついた粘膜が、唾液を潤滑油にして擦れ合う度に、頭の中に恍惚の火花が散った。

 さらに、フレイアは舌の根や口蓋をくすぐったり、歯茎を順繰りになぞったり、バリエーションに富んだ卑猥な、しかし優しい舌捌きを披露した。美女の卓越したテクニックの前に、少年はあっというまに夢見心地に浸らされた。

「ん、ふううぅ……んんぅ、んあ、んんん……」

 二人の身長差から、自然と流れ込んでくるドロっとした唾液を、ロイはまるで親からエサをもらうひな鳥のように何のためらいも無く喉を蠕動させて嚥下する。

「わたくしのヨダレ、おいしいですか? ん、んんっ……もっと飲ませてあげますね……」

 妖艶に微笑みながら、フレイアは咀嚼する時のように口をモゴモゴと動かした。唾液を溜めているのか――そう思った瞬間には、水飴のように糸を引く唾液の塊が垂らされていた。

「んふうぅ……ん、んんっ、んっ……」

 喉に絡み付く稠密な粘液を、溺れる程大量に口移しされ、ロイは慌てたように瞠目した。けれど、フレイアは狼狽する暇も与えてはくれず、唾液が溢れんばかりの口内を舌で優しく愛撫してくる。

 口いっぱいに広がる、濃厚な女の香りと粘膜の快美。唾液が撹拌されるヌチャヌチャという音は、脳内に直接響いてくるようだった。そのうちにロイは、拙いながらも舌をくねらせ、フレイアの舌使いに応えていた。

「ふふふっ……気持ちいいですか? あらあら……ココ、ガチガチじゃないですか……」

 フレイアの嫋たおやかな手が、ズボンの上からそっと少年の男を撫でた。ズボンをパンパンに張りつめさせるほどに隆起したそこへの不意打ちに、ロイは肩をビクッと跳ねさせ、勇者とは思えないほど切なげな喘ぎを爪弾いた。

「ひゃ……は、んはああぁ……」

「うっふふ、可愛い声……キスされながらここ触られると、凄いでしょう?」

「あ、ううぅ……き、気持ちいいです……も、もっと……触ってぇ……」

「あらあら、勇者様ったら……それじゃあ、今度は舌を出してみてください……もっと気持ちいいことしてあげますから」

 もっと気持ちいいこと。その魔法のようなワードに、少年は美女の言いなりになって、ピンク色の可憐な舌を可能な限り伸ばした。

「ふふ……イイ子ですね……じゃあ、舌……吸っちゃいますね……ん、ちゅう……」

「ん、んんんんっ……んんんっ……!」

 ローズピンクの艶やかな唇が、舌を捕えてちゅっ、と吸いついてきた。その想像を絶する甘美な吸引感に、ロイは目を白黒させた。ただちょっと舌を吸われただけなのに、脳が芯から痺れ、ゾクゾクとした官能の怖気が背骨の中心を走り抜けた。気持ち良過ぎて、口の中が溶けてしまいそうだ。

「んちゅ、ちゅうぅ……舌吸われるの、たまんないでしょ……んふふ、オチンチン……ピクンピクンって……反応してますよ……」

 片手で顎を押さえつけ、もう片方の手で股間を弄りながらの、濃厚過ぎる口付け。ズボンの上から指先で円を描くように亀頭をくすぐり、そうかと思えば逆手でサオをすりすりと扱き上げる。そんなフレイアの巧みな手技に、ただでさえ興奮に滾った若い雄が、我慢出来るはずは無かった。下半身にだんだんともどかしい熱を帯びてくる。

(あ、ああ……きもち、いい……もう、出しちゃいそう……)

 下腹部と口元から伝わってくる快感に夢中になりながら、ロイは腰から力を抜き、込み上げる射精衝動に身を任せた。が――

「んちゅ……はい、キスはここまで……」

 初めて会った二人がするにしては長すぎる口付けは、頂に登り詰める一歩手前で、無慈悲にも打ち切られた。同時にテントを撫でていた手も、引っ込んでしまう。

「え……!? そ、そんな……フレイアさぁん……」

 あと数秒続けてくれていたら、間違いなくイけたのに――ロイは、今にも泣きだしそうな顔つきで不満を訴えた。その甘ったれた子供みたいな膨れ面を見ても、誰も少年が勇者だとは信じないだろう。フレイアはくすくすと微笑みながら、唾液でベタベタになった少年の唇に人差し指を宛がった。

「そんな可愛い顔しても、ダーメ……気持ち良過ぎて、イっちゃいそうだったんでしょう?」

「うん……だから、その……」

「キスって言うのは、男女の睦言の挨拶なんですよ? 勇者様は、ただの挨拶だけでお漏らししちゃうんですか?」

 からかうような口調で言われ、ロイの中で膨らんだ羞恥心が劣情と拮抗した。

「あ、えと、その……そんなこと、しませんけど……僕は……」

「ですよね。それに、たったこれだけで漏らしちゃったら……この先愉しめませんよ? もっとじっくり、気持ちよくなりたいでしょう?」

「もっと……じっくり……」

 キスだけで骨抜きにされていたロイにとって、そのフレイアの言葉は、快楽を確約されたに等しかった。

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2064: Read Only Memories 良いゲームだった

「2064: Read Only Memories」はsteamとPS4で配信されているSFアドベンチャーゲームだ。公式で日本語化されている。

販売ページ

>2064AD、ネオサンフランシスコ。売れないジャーナリストとしての生活を送っていた主人公は世界初の自立思考型AIを持つチューリングという名前のROM(Relationship and Organizational Manager )の来訪を受ける。その奇妙なロボットと共に、テクノロジーと人間が融合した未来都市に隠された秘密を解き明かす中、多種多様な人々に出会い、困難を乗り越えていく。リードオンリーメモリーズはネオフランシスコという混沌とした都市を調査し、癖のある住人たちと交流しながら謎解きの旅へと誘う新しいサイバーパンクアドベンチャーである。
                           公式ゲーム紹介より引用

どのようなゲームか、というのは上記リンク先にある紹介を読めば理解できるだろう。
だから、私は自分がこのゲームにおいてどのような点を魅力的に感じたか、という部分について触れていこうと思う。
若干のネタバレを含んでいるので、気になる人は読まずに買ってどうぞ。

未来世界を見物して回ろう

このゲームは2064年の世界を自立思考型ロボットと共に散歩し、そこらじゅうを見て、調べて、世界に触れるという体験を提供してくれる。もちろん、ストーリーを通底する事件の解決という大きな目的は設定されているが、プレイヤーの感覚としては徹底して事件解決に奔走しているというよりは、様々なことをやってみている、と言う方が正確だろう。
ドットで描かれるレトロな未来のビジュアルや、音楽が素晴らしく、テキストもしゃれていたり、ジョークが隠されていたり、あらゆる場所にあるアイテムを使えたり、プレイヤーを飽きさせない。


うるせえよって言いたくなるよね。

現在の世界では見られない物や社会の構造やテクノロジー、一見雑然とした未来に至る歴史が存在しているが、これらについて重要なものもそうでないものも、ゲームの大半を一緒に過ごす相棒が講釈してくれるので安心だ。

多様性について

このゲームの舞台となるネオ・サンフランシスコにはにはハイブリッドと呼ばれる、遺伝子操作によって本来の人間とは異なる性質や姿を手に入れた人々や、脳とネットをリンクさせるサイバネティクス手術を受けた人間が数多く生活している。
さらに、そう言った人々を人間以下と差別し、人間本来の状態こそ正しいと主張する集団が存在し、一般論としてはハイブリッドは極端に危険視はされていないものの、やはり普通とは異なる存在であると認知されている。

セクシャリティも多様で、中間性を持つ者や、同性愛者、パートナーを持たない者が当然のように登場し、様々な繋がりの形―ー愛と置き換えてもよいかもしれないーーを提示している。

以上がこの2064の現実なのである。だが、全てのことに対して必ずしも好感を抱かなければならないというわけではない。何を感じるかはあなたの自由だからである。


迷惑な抗議団体についての発言。

キャラクターについて

猫のハイブリッドの弁護士、正義感の強い女刑事、スーパーハッカ―、裏家業から足を洗ったバーテンダー、人間至上主義団体のティーンエイジャーなど個性豊かなキャラクターが次々と現れ、物語に彩を与えてくれる。


ビジュアル付きのキャラクターは他にも数多く存在する。

しかし最も興味深いのは、プレイヤーのパートナーとなる自己学習し、自立的な思考と感情を有するロボット、チューリングだ。あらゆる情報をネットから拾い上げ、的確に整理することが出来るこの愛くるしい相棒は、あなたに様々な知識を教えてくれるだろう。しかし、彼はまだ生まれて間もない。知識はあっても知恵に乏しく、悩み、迷い、葛藤する彼―ーロボットに性別は存在しないがーーは、お勉強のよくできる、けれど経験に乏しい自我の成長過程にある子供を思い起こさせることだろう。


様々な顔をするチューリング(切り取りミス)


このセリフはとても素晴らしいと思う。

そんな彼を、導いてやるのがパートナーであるプレイヤーの役目の一つでもある(しかし、どのような選択を行うかは自由だ)。
登場するキャラクター達と最終的にどのような関係を築けるか。全てはプレイヤーにかかっている。決めるのはあなただ。そして、その結果を受け止めるのも。

とにかくやってみて欲しい

ゲームの性質やビジュアル等、とっつきにくい部分はあるし、好みは分かれるかもしれないが、物語全体を通して多様性や自由やモラルについてかなり慎重に、様々な視点を取り入れつつ描かれているびで、私としてはあらゆる人にこの2064を遊んで欲しい。
別のゲームの話題を出すのもはばかられることなのであるが、「Undertale」の多様な価値観を許容する部分を好ましいと思った人は楽しめるだろう。

朝の4時にクリアして、勢いで書いてしまった。そういう情熱を傾けられる、誰かに同じ体験をして欲しいという気分にばる、非常に楽しい、クリアするのが惜しいゲームだった。
次は「VA-11 Hall-A: Cyberpunk Bartender Action」をプレイしようと思う。

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せーら様にエッチなセリフを読んでもらおう♡ まとめ01

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せーら様にエッチなセリフを読んでもらおう まとめその1

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【小説】少年ヒーローの敗北~蜂女編~

 
 大勢の人でにぎわう休日の繁華街に、突如として異形の美女が出現した。

 しなやかな四肢と豊満な美巨乳を黄色と黒を基調としたボンデージでより扇情的に演出し、さらに長い一本鞭を手にした女王様ルックの艶やかな女は、蜂の女怪人「クイーン・ビー」。悪の組織「ドミナンス」によって生み出された女王蜂の女怪人である。

 蜂女は背中の羽で空を舞い、手にした強靭な鞭と毒針で、逃げ惑う人々を次々と襲った。休日の街は阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。蜂女の攻撃によって身動きのとれなくなった人間は、エナメルめいた黒のボディスーツ姿の女戦闘員達によって、秘密基地へ次々と拉致された。ドミナンスに囚われた男は奴○として、女は怪人の素体として、共に悲惨な運命を辿るのである。

 だが、悪あるところには必ず正義が存在する。

 人々の悲鳴に勝る蜂女の高笑いが繁華街に木霊した時、力の紋章が刻まれた赤い全身タイツに身を包み、黄色いスカーフをなびかせ、正義のヒーロー、姿を現した。強力な力を持つ少年ヒーローは20人からなる女戦闘員達をあっというまに蹴散らした。

 そして、部下を失い、怒り心頭の蜂女と正義の怒りに燃えるヒーローとの一騎打ちの火ぶたが切られた。


 人々が固唾を飲んで見守る中、レッドと蜂女の戦いが続く。

「あははははっ! 踊りなさい坊や! ステップを止めたら即座に血だるまにしてあげるわ♪  私のクィーン・ビュートでね♪」

「むっ、くうっ……!」

 嵐のように猛然と唸りを上げる鞭の威力に、飛び道具を持たないレッドは苦戦を強いられていた。リーチの差は歴然、攻撃をかわすだけでやっとだった。時折かわし切れずに被弾すると、焼けつくような鋭い痛みが皮膚の上を走った。エナジーが物質化したスーツの防御力があっても、直撃すれば危険だ。

 苦痛に顔が歪む。だが、少年ヒーローの瞳から光は失われていない。呼吸を読みながら、レッドは何かを狙っていた。そして、ついにその瞬間は訪れた。

「そんなっ!? 私の鞭が!」

 女怪人の美貌が驚愕に彩られる。レッドの手が唸りを上げる鞭を捕えたのである。

「ふんっ!」

 レッドは掴んだ鞭を全力で、引いた。

 そして、引き寄せた蜂女の腹部に、空手仕込みの足刀をめり込ませた。

 内臓への耐え難い痛打に、蜂女の体がくの字に折れ曲がる。

「ぐあっ……! このガキっ!」

 ダメージを受けながらも、クイーン・ビーは咄嗟に鞭を手放し、バックステップ、大きく間合いをあけようとした。が、レッドの踏込はそれよりも早かった。

 少年ヒーローは蜂女の顔面に狙いをつけ、エナジーを集中させた渾身の右拳をくりだした。これで決着――レッドは勝利を確信した。だが、勝利への欲求が、無意識に筋肉を硬くしていた。

「なっ!?」

 驚愕の声が飛び出した。クリーンヒットするはずだった拳は空を切っていた。そればかりか、明らかにダメージを負っていた敵の姿が目の前にあった。大きく張りのある胸が、体に触れるほどの距離だ。拳が届く前に、蜂女は自分から僅かに前に出ていた。弱った相手が踏み込むはずはないと考えていたレッドの虚をつく行動。抱きつくように体を預けることによりを、打撃を回避したのであった。

「ふふふ……はずれ……」

 内臓へのダメージに苦しんでいたはずの蜂女が笑みを浮かべる。と、次の瞬間レッドの下半身に激烈な痛みが走った。

「つぅっ……!」

 突然の激痛に視線を移すと、右の大腿に小指ほどの太さの針が深々と刺さっていた。それは蜂女の臀部から生えた蜂の腹部、柔軟に曲がったその先端に備わった強力な毒針だった。毒針の表面には鋭く細かな突起が鋸歯状に並んでおり、それが強靭なヒーロースーツを切り裂いたのであった。突き入れられた針の先端は、静脈を正確に捕えていた。

 蜂女の体内で生成された強力な毒が、レッドの身体に注入されていく。

 傷口が燃えるように熱くなる。さらに、その熱が徐々に全身へと伝播する。

「ぐっ……お前ぇっ!」

 無理矢理に毒針を引き抜くと、すぐさま蜂女の腹部目掛けて蹴りを見舞った。しかし、蜂女は持ち前の素早さでそれをかわすと、嘲笑うようにレッドの目の前を飛び回った。

 それを追うようにレッドも続けて攻撃を仕掛ける。ワンツーからのバックハンド、水月めがけ豪速の後ろ回し蹴りを放つ。だが、コンビネーションも寸での所で躱され、虚しく空を切る。毒針を刺された焦りと口元に愉悦を浮かべる蜂女に対するいら立ちが彼の体に必要以上の力を籠めさせていた。力んだ拳では宙を舞う虫を捕えることは出来ない。

「くっ……このっ、逃げ回って!」

 そう言いながら放つ拳も大きな音を立てて風を切るばかりだった。

 彼の体内に打ち込まれた毒は神経に作用する。空振りを重ねる毎にレッドの動きは徐々に鈍っていった。体が自分のものでないように言うことを聞かなくなり、だんだんと感覚も薄れ、スピードも風切音がはっきりと聞こえないほどに落ちてきた。

 それでも前へ出続ける。町を守るため孤軍奮闘。ヒーローとして戦うのをやめなかった。

「おほほほほほっ! だいぶ毒が効いてきたみたいね……そんな動きじゃハエが止まるわよ?」

「こいつ……! ばかにしてっ!」

 昂ぶる感情のままに発する怒声は、弱々しく迫力に欠けていた。そして、感情を源にしたカラ元気がいつまでも続くはずも無かった。

「あ……」

 拳が空を切ると同時に、レッドは前のめりに倒れ込んだ。ドサリ。硬いアスファルトが、全身に重たい衝撃を伝える。

 戦いの様子を見守る人々が諦めと、悪態と、悲痛と、悲しみと、心配の言葉を口にする。

「くそ……くそおぉ……!」

 力なき人の代わりに、自分が戦わなければいけない。レッドは気力を振り絞り戦おうとするが、アスファルトの上に、死んだ蛙のように這いつくばったまま、指一本動かせなかった。そんなレッドを勝ち誇った表情で見下すクイーン・ビー。

「ふっ……正義のヒーローも、女王様には敵わなかったわね……おほほほほほほっ……」

(体が動けない……意識が霞む……それでも、あきらめるわけには――)

 耳の奥で高慢な高笑いが響く。拡声器を通したようにぐわんぐわんとひずんだその笑い声は、少しずつ遠のいて――やがて少年の意識は深い昏睡の底に堕ちていった。

「うう……ん……ここは……?」

 目を覚ましたのは薄暗い洞窟の中だった。泥を固めたような独特な質感を持つ壁が四方を囲み、天井から一条の光がさしている。それによってできる影の付き方から、洞窟の構造は徳利状であろうことが伺えた。呼吸をすると、ひやりと涼しい空気が鼻腔に潜った。不思議なくらいに、何の臭いも感じなかった。

「地獄でも、天国でもないよな……? なら、ここはあいつの巣なのか……」

 少年はゆっくりと体を起こし、辺りを見回した。だが、視界に入るのは襞を帯びた茶色い泥の壁、壁、壁。近くの壁を叩いてみると、音はあまり響かなかった。泥を固めたものらしいが、特殊な加工が施されているのか、硬度が高く、厚みもかなりありそうだった。破壊という困難な選択肢はなるべく遠慮したい。

「だけど、急いでここを出なきゃ……」

 焦る心を鎮めながら天井に目を向ける。徳利状に壁の狭まった先に、ぽっかりと穴が空いていた。

「出入り口は、あそこしかなさそうだな……でも、このくらいの高さなら……」

 部屋の中心に立ち、天井の穴を見据えると、膝をぐっと折り曲げ力を溜めた。そして、籠めた力の全てを開放するように地面を思い切り蹴りつける――しかし、跳躍は予想よりもはるかに低い位置までしか届かなかった。

「え? あ……あれ!?」

 信じられないといった様子でレッドは目を丸くする。何度も跳躍を繰り返すが、しかし、まったく天井にある穴には届かない。

 力を失った。脳裏にそんな不安な考えがよぎる。

 と、その時、徳利状の洞窟内に高飛車な女の笑い声が響き渡った。

「おほほほほっ……いくら頑張っても無駄よ……少年ヒーローのボクちゃん」

 天井の穴からボンデージファッションの艶麗な美女が、背中の薄い羽をやかましく振動させて洞窟内に入ってきた。

 言うまでもなく少年ヒーローを敗北に追い込んだ、女怪人「クイーン・ビー」である。

「くっ、あの時の蜂女かっ!」

 レッドは咄嗟に蜂女に向き直り、重心の低い、空手式のファイティングポーズをとった。

「無駄って言ったじゃない……お馬鹿さん。坊やの力はそれに封じ込められているのだからねえ……」

 女王蜂のエナメルの手袋に包まれた指がレッドの首筋を指した。

「なに……これは……!?」

 そこで初めて少年は自らの首に取り付けられたリングに気付いた。両手で引っ張って外そうと試みるが、どれだけ力を籠めようとも掌に汗がにじむだけ、金属製の冷たい首輪はビクともしなかった。普段の力が出せれば、こんなもの、訳なく破壊できるはずなのに――レッドは蜂女の言葉が真実であると理解した。

「Dr. メイザースは本当に優秀ね……こんな小さな首輪が少年ヒーローのパワーを封じているのだから」

 感嘆を漏らしつつ、蜂女がレッドに歩み寄る。コツコツとヒールが床を踏む音が洞窟内に木霊する。

 蜂女との距離が縮まるにつれてレッドの恐怖心が大きくなっていく。

(に、逃げなきゃ……いや、逃げる、何処に? 抵抗しなくっちゃ……!)

 思考が混乱に包まれる。ピンチの時こそ冷静に、といつもなら考えていただろう。しかし、力を奪われ逃げ場もない。自分を生かした相手の意図も掴めない。焦りと恐れで体が押しつぶされそうだった。

「しぃっ!」

 蜂女が間合いに入った瞬間、体が意図せずに動いた。半歩踏み込んだ左ストレート。顔面目掛けて電光石火の突きを繰り出す。が、あっさりと手首を掴み取られてしまう。

 至極当然の結果だったろう。少年ヒーローの力は首に取り付けられた忌まわしい枷に封じられているのだから。

「ちいっ……この……!」

 腕を取られ焦ったレッドは苦し紛れに右拳を繰り出す。しかし、同じように手首を掴みあげられてしまう。

「うふふ……抵抗は無・駄。観念なさい、貧弱なボクちゃん……」

「くわっ……!?」

 両の手首をつかんだまま足を払われレッドは強引に押し倒された。受け身が取れず、硬い床に強か頭をぶつけてしまう。脳震盪。世界が歪む。

 もはや両者の形勢は明らかだった。まさに捕食者と被食者。レッドの表情が恐怖によって硬くなっていく。

「可愛い坊や……食べちゃいたいくらい……」

「くうぅ……は、離せ……」

「離すわけないじゃない……だって私、坊やのこと欲しくなっちゃったんだもの……」

「な……!」

 予想外の言葉に目を見開いて声を失う。そんなレッドのことなど気にすることなく蜂女は言葉をつづけた。

「優秀な戦士である坊やだもの、モノにしたくなるのは雌として当たり前のこと……たっぷり可愛がって……この世のものとは思えない素晴らしい快楽で、ヒーローだったことも、すべて忘れさせてあげる……そして、坊やを私の下僕に変えてあげる……」

「そんな……しもべって!?」

「ふふふ……そして、奴○にした坊やに、私の卵を産み付けて……考えただけでゾクゾクしちゃう……」

 うっとりとそう囁くと、クイーン・ビーは顔に舌を這わせてきた。生温かな舌が頬をぬるりと這い上っていく。ゾクゾクとした感覚が少年の背筋を駆け抜けた。

「ふざけるなっ! なんでそんなこと……」

 卵を産み付けるという言葉に怖気を覚え、じたばたと手足を振り暴れる。しかし、力を失った状態での抵抗は、あまりに虚しい。蜂女に軽く押さえつけられただけで、全く動けなくなってしまう。

「ふふ、弱い獲物ほど、よく暴れる……でも、すぐに素直にしてあげる……素直になれるよう、躾けてあげる……」

 蜂女は掴んでいた両手を少年の頭の上でまとめて押さえつけ、妖しい微笑を浮かべてペロリと舌なめずりをした。そして、そのまま顔をゆっくりと近づけ、口付けを迫る。

「やめろ……よせ……!」

 グロスを何重にも塗ったようにテラテラと艶めく魅惑的な赤い唇が、じりじりと近づいてくる。真珠のような歯が覗く唇の隙間から、くらくらするような甘い息――脳が痺れるような芳醇な香りを孕んだ息が吐きかけられる。

 少年は危険を感じ、とっさに首をひねって拒もうとしたが、空いた右手に顔面を掴まれ、柔らかな両頬をギュッと絞られ、強引に唇を奪われてしまった。

「ん……むぐっ……んん……」

 途端に唇を割って、滑った温かい軟体が口内に侵入してくる。ウネウネと蠢くそれが舌だと気付いた時には、もうすでに舌にねっとりと絡み付かれていた。粘膜同士が擦れ合う度に、チリチリとした官能の火花が脳内で散る。ファーストキスさえ未経験だった少年ヒーローは、あっという間に、女怪人の淫靡で巧みな舌使いに翻弄されていく。

「んんんっ……ふ、んんんっ……むううぅ……」

 舌をチュッと吸い上げられ、口腔内を蹂躙され、唇をしゃぶり尽くされる、濃厚すぎるキス、雄を貪り服従させる、女王の接吻。甘く痺れるような快感と共に、蕩けるような甘い吐息が口いっぱいに吹き込まれる。

(なんだ……これ、甘い……匂いが……)

 悩殺的なフェロモンによって徐々に体が犯されていく。うっとりとするような心地の中、幸福感がこみ上げてくる。思考力が霞んで、快感以外何も考えられなくなる……。とうとう、レッドは抵抗を止め、蜂女の口付けに応えて夢中で舌をくねらせ始めていた。

「んんっ……ふあ、んふっ……」

「はぁ、くちゅ、くちゅ、んん……ちゅ、ずずっ、ずずずっ」

 舌を強く甘く吸い上げられる。粘膜がこすれ絡み合う。快感美が脳内でスパークする。一つに繋がった軟体に添って伝わってくる、蜂蜜のように甘く濃厚な唾液。ごくりと喉を鳴らして飲み込むと蕩ける様な味が体に染みわたり、自然と表情が緩んでしまう。

「んふふふっ……私のフェロモン・キッスの味はいかが? 私に夢中になっちゃいそうでしょ……可愛いボクちゃん……」

「んは、あ……はぁっ、はぁっ、はぁっ……」

 少年ヒーローは快楽に酔いしれたような表情で蜂女をじっと見つめる。その肉棒は硬く勃起し、痛みを伴うほどにスーツを張らせていた。

「ふふ……もうこんなにして……まぁ、私が相手だもの……しょうがないわ。私の身体から発せられるクイーン・フェロモンは男を蠱惑する甘美な毒……普通の雄なら、吐息を吸うだけで私の……女王様の虜になるの……」

 雄の隆起を、蜂女の人差し指がスーツの上からそろりとなでる。途端に、少年は鼻にかかった嬌声を漏らし、身体をビクン跳ねさせた。

「あ、ふああぁ……は、んふぁ……」

 心地よい芳香に心身を犯されたレッドは最早ヒーローの仮面を保てなくなっていた。危うい多幸感に表情を蕩かした少年の様子を嬉しそうに眺めながら、蜂女は赤いスーツのテントを張った個所に手をかけた。

「やめ……ろぉ……」

 必死で抵抗の言葉を絞り出すが、体は快楽への期待で打ち震えてしまう。拘束が解かれ自由になった両腕も満足に動かすことができない。

「あれだけフェロモン注ぎ込まれて、まだそんな口がきけるのね……ますます気に入ったわ……」

 蜂女はレッドの反抗に声を弾ませながら、スーツの股間の部分を一息に破り裂いた。

 ―――ビリッ!
 破れたスーツの合間から隆起したペニスが露出した。赤く充血した尖端からはすでに先走りが滴り、空気に触れただけでびくびくと震える。

「うふふふふ……いやらしいお汁でぐしょぐしょ、とってもおいしそう」

 蜂女の赤い唇がぱっくりと割れる。唾液でぬめった粘膜の洞穴がレッドの肉棒に迫っていく。

「や、やめろぉ……あ、あ、ひあああぁ……」

 蜂女の口が亀頭をぱくっと含んできた。口腔内は肉棒を溶かさんばかりに熱く、滑っていた。粘膜のこすれ合う心地よい感覚が、じんわりとペニスを支配する。

 濃厚な雄の味を堪能するみたいにねっとりと舌が這い回り、先端からあふれ出る透明なエキスをずるずるといやらしい音を立てて啜りあげる。そのあまりに甘美な心地に、レッドの口から情けない喘ぎが止まらない。

「ああっ……んん、くぅっ」

「ずっ、ずずっ、んっ、はぁ、ん……」

 反応に気をよくしたのか蜂女は肉棒を喉奥まで咥え込んだ。喉の奥がきゅっと締まり、パンパンに張りつめた尖端部を優しく揉み解すように包み込む。

「ろお? とっれも、きもひいいれひょ? んじゅうるぅ……もっろかんじなさい……」

 さらに蜂女は、上目づかいでレッドの表情を観察しながら、首を大きく上下にふり、すぼめた唇でカリとサオをねっとりと扱き上げてくる。緩慢で大きなストロークが喉奥での亀頭愛撫と合わさり、強烈な快感となって作用する。脳内火花が散るような素晴らしい官能に、レッドは甘い喘ぎを上げて悶え狂った。

「んふふ……れる、んじゅ、ちゅうぅ……」

「ああっ、もうだめっ、でる、でるっ!」

 絶頂の悲鳴と共に背筋が反り返り、腹筋が波打つ。蜂女のフェラチオは下半身がドロドロに蕩けてしまいそうなほど心地よく、少しも我慢することすらできなかった。

「んっ……んんんっ……」

 脈動と共に放出される熱い迸りを、蜂女は喉の奥で受け止める。柔らかな喉肉が精液を嚥下しながら、亀頭をマッサージするように刺激してくる。その腰砕けの快感を味わいながら、レッドは最後の一滴まで精を搾り取られた。

「早すぎよ……ふぅ、もったいない……」

 顔を上げ、白濁と唾液で汚れた口元を手の甲で拭い、不満そうな声を漏らす蜂女。その冷たげな白い頬は薄紅色に紅潮しており、言葉とは裏腹な満足感が見て取れる。

「く、うううぅ……」

 射精後の倦怠的な陶酔と、敵に屈服させられた恥辱でレッドはぐったりと弛緩する。悔しくて恥ずかしい。なのになぜ、こんなに気持ちいいのだろう――
「ふふっ、今度はもうちょっと頑張ってね……次はもっとすごいことしたげるから……」

 そういうと、蜂女はレッドの足を持ち上げ、体を折り曲げてきた。突然のことに脱力していたレッドも身をよじって暴れるが、無駄の無駄だった。あっという間に、エビ固めの形で抑え込まれてしまう。

「全部丸見え……ふふふ……」

 蜂女がぬっと顔を近づける。薄く開かれた朱唇から吐き出された温かな息が、尻のあわいをむらむらと撫でる。そのくすぐったい感覚に、レッドの背筋をゾクゾクとした官能の怖気が鳥肌を立てながら走り抜けた。

「な……なにをするんですか……」

 ペニスや睾丸、肛門までもが、粘つくような好色の視線にさらされる。普段まったく目に触れない部分を見つめられ、気恥ずかしさに顔が赤らむ。

「なにって……今からお尻の穴、舐めてきれいに掃除するの……さっき言ったように、私の卵を産み付けるためにね……」

 ニヤニヤと妖しい笑みを浮かべ、蜂女は蟻の門渡りに、つつつ、と舌を這わせた。熱く滑った軟体が、性感帯に触れてくる、もどかしくじれったいような刺激に、レッドはびくりと肩を震わせる。

「そんな、ちょ……まって……!」

 卵を産み付けるという言葉に恐れの感情が甦り、体をゆすって逃げようとするがエビ固めで押さえ込まれてはそれもままならない。

「最初はむずむずするだけだけど、すぐに蕩けるほど気持ちよくなってくるから、安心して……」

 諭すように囁くと、蜂女は肛門の周りをレロレロと舐めまわし始めた。自分の知り得ぬ恥ずかしい部分を無理矢理さらけ出されるようで、レッドは恥ずかしさに声を上ずらせる。

「ひゃあっ! や、やめっ……」

 濡れそぼった舌先が皺の一本一本をなぞるように妖しく蠢き、唾液をしみこませながらその強張ったすぼまりを舐め解していく。

「れるれる……んふふ、いい味よ坊やのお尻……今から、ここを女よりも感じちゃう、淫乱なケツマンコに変えてあげるわね……」

「はぁ……う……や、やめろおぉ……」

 グイグイと穴の中心を押されると、口から甘い喘ぎが漏れる。甚だしい羞恥を味わっているにも関わらず、刺激を受けるたびに菊座は嬉しそうにヒクヒクと開閉を繰り返してしまう。

「れる、れるれるぅ……だいぶゆるくなってきたみたいね……挿入してくれって、誘ってるみたいよ……」

「そんな、わけないだろ……あううぅ」

「ほほほ……口ではそう言っても、こっちの穴はそう言っていないわよ……エッチな期待にひくついて、淫乱なオスマンコちゃんはね……そろそろ、ナカまでねっとりしゃぶりつくしてあげるわね……んふううぅ……」

 勝ち誇ったように笑うと、蜂女はその長い舌を直腸内に潜り込ませてきた。

「なんかっ、はいって……んんっ……」

 ぬるりと入り込んできた滑った感触に、レッドの表情が嫌悪感に彩られる。初めて味わう肛門への異物感に肌が泡立つ。異物を吐き出そうと括約筋がきゅっと収縮した。

「んふ、すぐに慣れてくるから……力を抜いて……私の舌を感じなさい……れるれるうぅ……」

 直腸内を押し広げるように、熱い軟体物が妖しくのたうつ。柔らかい舌で粘膜をかき混ぜられる度、快感とは認めたくない甘い感覚が腰に広がり、蜂女の言葉に従うように、筋肉が弛緩していく。

「あ、あああぁ……そんな、ひあぁ……」

 自身ですら一度も触れたことのない腸内粘膜を、ざらついた舌でねっとりと犯される。唾液を襞の隙間に染み込ませるような入念な舌使いによって、未開発のアナルの性感が少しずつ目覚めさせられていく。

「ひいいぃ……や、めてぇ……変だよぉ……」

「れる、れるれうぅ……変じゃないわ、それは気持ちいいの……アナルの快感を、素直に受け入れなさい……」

 蜂女の長い舌は直腸深くまで入り込み、いやらしい音を響かせながら内部を撹拌する。そのじわじわとした快楽刺激が腰全体に広がり、ペニスがピクピクと頭を振った。

「あらあら……こんなに大きく硬くして……このおちんちんも、一緒に可愛がってあげる……いっぱい声出しなさい……」

 黒い手袋に包まれたしなやかな指が肉棒に絡みつき、緩やかに扱き上げてくる。エナメル生地の艶々した質感が竿を擦過し、指の輪がエラの張った部分に引っかかる度に、痺れるような快感がペニスの芯を走った。

「あっ……そんな、されたらぁ……」

 アナルとペニス、二か所同時に行われる巧みな愛撫が相乗効果を生み出し、快感が弥増しに高まっていく。少年はただ甘い喘ぎを上げて翻弄されるばかりだった。

 蜂女の舌先が尻穴の奥を抉ってきた。途端、レッドは背を弓なりにそらせて悶えた。

「ひっ、なにこれ!? だめっ、こんなの知らなっ……」

「ふふふ……見つけたわよ、坊やの前立腺……男の快楽の壺よ……ここを弄ると、男はすぐに子種汁を出しちゃうの……」

「あ、あああぁ……そこだめぇ……ひいいぃ……腰、勝手に動いて……」

 未知の快楽に悶えるレッドを可笑しそうに眺めながら、蜂女はその禁断の性感帯を集中的ににじりあげてくる。体の奥底から妖しい快楽が怪しい快楽が全身を蝕むように広がって、気持ちよさの中に、思考が霞んで何も考えられなくなっていく。

「うふふ……男のくせに、お尻を舌でほじられてイくなんて……恥ずかしくないの……?」

 嘲るような口調で言うと、蜂女は尻のあわいに顔をぐっと押し付け、舌先を深々と突き入れた。瞬間、一層大きな快美がレッドの体に走った。ペニスの奥から、中から何かが押し出されてくるような感覚!
「ああっ、だめ……出る……出ちゃううう」

 突き抜けるような絶頂感とともに、白濁液が鈴口から溢れだした。勢いが無く、後ろから押し出されて漏れ出したような射精。今まで経験してきた放出とは異なる独特な射精感が、レッドの脳中に得も言われぬ陶酔を呼び起こす。

「お尻いじられながらおちんちん扱かれて漏らすなんて……恥ずかしいわね坊や……マゾっ気があるんじゃないかしら……ほほほほほ……」

「う……あ……そんなぁ……」

 あまりの恥辱にレッドは涙目で顔を赤らめた。

「うふ……照れちゃって可愛いわね……でもまだ終わりじゃないわよ。もっとケツ穴かき混ぜて、たっぷり唾を塗り込んで……いやらしいケツマンコに改造してあげる……」

 クイーン・ビーはそういうと再び肛門に舌を突き入れた。妖しく濡れそぼった舌が、唾液を刷り込みながら肉壁を擦りあげ、前立腺を強く押してくる。何度も繰り返されるいやらしい抽送に、レッドの声のトーンが上がっていく。

「もうそろそろかしら……」

 蜂女が舌を離したときには腸内は大量の唾液でてらてらとぬめっていた。執拗な舌愛撫で肛門は緩み切り、ぽっかりと口をあけている。空気が触れるだけで、唾液の塗られた部分にむず痒さを感じる。少年ヒーローは羞恥にもどかしそうな表情で淫乱女のように尻を揺すったが、その掻痒感は一向に収まることは無かった。

「ふふ、かわいいお尻をフリフリして……まるでおねだりしているみたいねえ……だ・け・ど……ちょっと我慢してね、坊や……すぐにまた、お尻気持ちよくしてあげるわ……」

 蜂女は妖しい笑みを浮かべると、抱えていた足を離し、レッドの上体を起こしてギュッと抱きしめてきた。大きく張りのある美乳が胸板にむにゅっ、と押し付けられる。スーツの上からでもその弾力に富んだ感触は素晴らしく、今までの責めですっかり蕩けた少年の表情は、さらに崩れていった。

「あ、あううぅ……」

「ボーっとしちゃって可愛いわ……唇、また食べてあげる……もっと私にメロメロになりなさい……フェロモン・キッス……」

 蜂女は自らの赤い唇に淫靡な舌を這わせると、少年の首に腕を回し、その可憐な唇を強奪した。

「う……ん……」

 妖しく滑った舌が唇を割り口腔内へ侵入してくる。舌と舌がねっとりともつれあい、粘膜が摩擦し合う痺れるような快感。男を恍惚に酔わせる甘い唾液、芳醇な香りの吐息がたっぷりと注ぎ込まれる。蜂女のフェロモンが、肉体の細胞の一つ一つにまで染みわたり、興奮がいやがうえにも高まっていく。激しく打つ心臓に送り出された血液が下半身に集まり、ペニスがグググッとこうべをもたげていく。

 蜂女は濃厚なキスを続けながら最大限に勃起した性器を指先でくすぐるように撫で上げ、愉悦の表情を浮かべた。

「ガチガチに勃起させて……素敵よ、坊や……ほら、見なさい。私のここ……」

 そういって自らの生殖器を指で拡げて見せつける。少年ヒーローを嫐り抜くことで、自らも欲情を高めたのだろう、その爛熟した秘唇はすでに多量の粘液で濡れそぼり、淫らな収縮に伴って、濃厚な雌の淫臭を吐き出していた。眼前に突き付けられたあまりに扇情的な光景に、少年は熱に浮かされたような表情で、ごくりとつばを飲み込んだ。

「うふふ……ヒーローのくせに女怪人の性器を食い入るようにみて、そんなに興奮して……恥ずかしくないのかしら?」

「あ、く……それは……」

 レッドの顔が羞恥に歪む。だが、その淫靡な肉の割れ目から目をそらすことができない。

「うふふ、淫乱ヒーローの坊や……そんなにここに入れてみたい……? 蜂の女怪人の極上おまんこで、犯されてみたい? ぐちゅぐちゅの肉でオチンチンじっくり締め付けて……快楽以外、何も考えられなくしてあげるわ……」

 淫裂から匂い立つ女の芳香がレッドの鼻粘膜を強く刺激する。陶酔感が脳内に満ち、頭がボーっとなってくる。思考力がだんだんと鈍くなり、ドロドロとした劣情が少年の胸の裡で膨らんでいく。

「あ……ああ……」

「答えは聞くまでもないようね……おほほほほ……」

 床に寝そべり大きく脚を広げ、両手を伸ばして少年を手招きするクイーン・ビー。色つやのいい唇が、豊かな美巨乳が、蜜濡れた粘膜が、女王蜂の肉体の全てが少年を魅了する。

「完全に私の虜にしてあげる……いらっしゃい……坊や」

 蜂女の誘惑の触手が、動物のように発情した少年ヒーローの心を絡め取る。レッドは息をあらげてふらふらと立ち上がり、まるで蜜に吸い寄せられる虫のように、腕を広げた蜂女の胸の中に倒れこんだ。

「うふふ……いいコね……」

 蜂女は腕を首に回し、その豊満な胸で少年の頭をむにゅ、と挟み込んだ。と、同時に長くしなやかな足で腰をガッチリとホールドし――
「うあ、はあぁ……入っちゃった……」

 腰を引き寄せられ、少年の未熟なオスの器官は、ぬかるんだ蜜壺にぬぷぬぷと呑み込まれてしまった。熱く滑った柔肉が、ペニス全体をグニグニと揉み解しながらスムーズに男を奥まで迎え入れ、ねっとりと包み込んでくる。最奥ではヒダの犇めく肉壁が亀頭を不規則に舐め回してきて、たまらない。ただ挿入しているだけなのに、腰がガクガクと震えるほどに感じてしまう。

「んっふふふ……どうかしら、私のナカの心地は……気持ちよくっておチンチン蕩けちゃいそうでしょう?」

「あ……うう……はぁ、んんっ……」

 問いかけられても、レッドは情けない喘ぎを上げて答えることしかできない。蜂女の蜜壺は、まさに魔性の快楽器官。壺全体がまるで意志を持った生き物のように蠢き続け、絶えず肉棒に快感を刻み込んでくる。

 さらに、顔をうずめさせられた美乳の谷間に籠った芳醇な女の媚香が、呼吸のたびに鼻腔粘膜から染み入り脳を犯してくる。素晴らしい恍惚感に頭がクラクラしてきた。この甘い毒を嗅いではいけない。理性では理解しつつも少年の本能は、匂いを嗅ぐのを止められなかった。

 柔軟な膣道がペニス全体を締め上げ、肉襞がヌメヌメと亀頭に絡みつく。精液を絞り出す機械のようなその躍動が腰砕けの快感を生み出し、気を緩めればたちまち果ててしまいそうだ。朦朧としながらも、レッドは必死で歯の根に力を込めた。

「あく、うううぅ……」

「あらあら……イくのを我慢しているのね……入れただけで出しちゃうのは恥ずかしいのかしら……? いいわ、無駄な努力を続けなさい……私とこんなにも深く繋がった状態で、いつまで射精せずにいられるかしら……おほほほほ……」

 嗜虐的に笑うと、蜂女は膣内をきゅっと締めつけてきた。最奥でヒダヒダの肉壁が四方から亀頭に押し寄せ、容赦ない快楽を与えてくる。

「あっ! ……ああっ! いひいいっ!」

 つま先まで痺れるような亀頭責めの快感に、蜂女に抱きしめられたまま少年は全身をビクビクと戦慄かせる。とてつもない放出欲求が腰の奥で渦を巻く。出したい。射精したい。ボーっとした頭に、欲望が泡のように浮かぶ。だが、それはいけない。女怪人と交わって、果ててしまうなんて絶対にダメだ。だがしかし、蜂女は絶対に雄を離すまいと腰を足でホールドしてきている。ペニスを引き抜くことさえ出来ない。魔性の快楽から、その果てに種付けから逃れることが出来ない――レッドにできたのは、ただ駄々っ子のように首を左右に振るだけだった。豊麗な胸の谷間でイヤイヤをする、哀れな少年ヒーローを優越感たっぷりのサディスティックな表情で眺め、蜂女は、その耳元に唇を寄せて妖しく囁きかけた。

「うふふ……必死に我慢しちゃって可愛いわね……卵管が、疼いてきちゃうじゃない……まだ子種はいただいてないけど……先にこっちの初めても、いただいちゃうわね……」

 蜂女の腰から生えた黒と黄色のストライプ模様の蟲の尻が、グググッと、鍵型に丸まっていく。その突端に備わった鋭い針がぱっくりと割れ、内部から粘液で絖光ったピンク色の不気味な管がずるりと突出した。卑猥な柔突起の犇めく肉筒は根元が太く先に行くほど細っており、ホースほどの太さの先端部には、ヒクヒクと収縮を繰り返す穴が存在していた。それこそが、蜂女の産卵管。男を孕ませ苗床にするための、生殖器官。昂ぶりと共に充血し勃起する、ペニスのようなその器官が少年ヒーローの無防備な肛門をロックオンし、ゆっくりと近づいていく――
「な、なに……やだ、やめ――ひああああぁ……」

 卵管に深々と肛門を貫かれ、レッドは背中しならせ叫びをあげた。粘液で滑った生硬な砲身が、前立腺を圧迫しゴリゴリと擦りあげる。圧倒的な快感刺激が脳天まで突き抜ける。まさに蜂の一刺し。卵管の強烈な一撃が、蜜壺の肉悦を必死で耐えていた少年ヒーローに無残にもトドメを刺した。

「いやああぁっ……あ、ああっ……でる……でちゃううぅ……!」

 パンパンになった風船を針で刺したように、絶頂感が一挙に爆発する。後ろからの押し出されるようにして、少年ヒーローのペニスからドクドクと精液が漏れ出し、蜂女の肉壺の奥に注ぎ込まれる。

「お尻に入れられていっちゃうなんて……変態にもほどがあるわねえ、坊や……前の戦いの時と、今と……2回もこれに止めを刺されちゃったわね……ほほほほほっ……」

 蜂女は優越感たっぷりに笑いながら昆虫様の尻をカクカクと前後させた。表面に卑猥な柔突起の犇めく卵管がアナルに何度も出し入れされる。後孔を突き込まれる度に、電気を流されたみたいに手足が痙攣し、短い喘ぎが喉の奥から溢れる。腸壁を、そして新たに目覚めさせられた禁断の性感帯をゴリゴリと蹂躙される激しい快感に、少年はあられもない声を上げて悶え狂った。

「ひあ、あ、あっ、やめっ、動かさないでぇ……お尻、ほじらないでぇ……それ抜いてっ! ぬいてぇっ!!」

「暴れちゃ、ダメよ……おとなしくなさい……ほら、坊やの大好きな、ねっとりキス……今度のは特濃よ……これでトドメを刺してあげる……フェロモン漬けにして、私の虜にしてあげる……フェロモン・キッス……」

 蜂女はレッドの顔を胸の谷間から引き揚げ、噛み付くようにその唇を奪った。

「んんっ……んっ、んふううぅっ……」

「んちゅ、れるれる……んはぁ、可愛いわ……んふううぅ……」

 唾液まみれの長い舌がヌルヌルと口腔内を蹂躙してくる。重なり合った唇を通して、危険なフェロモンを孕んだ甘い吐息と唾液を、たっぷりと注ぎ込まれる。鼻腔に広がる芳醇な香りによって、脳が犯されていく――
(ふああ……気持ち、いいよぉ……おちんちんも、アナルも……キスも……クイーンの、フェロモン……すごい……匂いで脳が、掻き回されて……脳が、脳が……と、溶けるううぅ……)

 だんだんと、少年の瞳が、麻薬を打たれたかのように、ドロンと濁り始めた。蕩けるような心地よさが心身に充溢し、理性が霞む。痺れるような官能の中に、苦しさや恐怖が和らいでいく。

(もう、僕……ダメになっちゃう……敵なのに、悪い奴なのに……女王様って、認識しちゃってる……ごめんなさい……みんな……ごめん、なさい……)

 度重なる口付けによって、女王蜂の特濃フェロモンはレッドの体の隅々、筋肉の一筋、血の一滴、細胞の一つ一つにまで、染み込んでいた。そんな状態でペニスを蜜壺に咥えこまれ、肛門を犯し抜かれ、甘美を極めたディープキスを味わわされては、いかにヒーローといえども、理性を保っていられるはずはなかった。むしろ、ここまで快楽責めに耐えてこられた鋼の精神力を、賞賛すべきだろう。

「んちゅ……ふふふ……おいしい唇ねえ……」

 蜂女が唇を離す。二人の間に、泡立った唾液が糸を引く。

「あ、あああぁ……もっと……ちゅう、もっとぉ……」

 犬のように舌を突出し、キスの続きをおねだりする、正義のヒーロー、ショタレッド。その表情は蕩けきり、瞳には美しい女王への忠誠と淫欲が入り混じった虚ろな光を湛えている。奴○の目という以外に例えようがなかった。少年の心の中で輝いていたヒーローとしてのプライドや矜持は、快楽と恍惚の中でドロドロに溶かされ、欠片も残っていない。正義のヒーローは、いや、正義のヒーロー“だった”少年は、最早完全にクイーン・ビーの虜になってしまっていた。

「ふふふ……征服完了……これであなたは私のモノよ……だけど、三度目のキスでやっとなんて、素晴らしい精神力ね……ふふ、だからこそ支配の快感もひとしお……ふふふ、おほほほほ……背筋にゾクゾクきちゃうわ……」

 トロトロになった少年ヒーローの顔を覗き込み、蜂女が愉悦を浮かべる。

 男を征服した女の悦びに満ちた表情は、あまりにも妖艶で、美しい。そのサディスティックな深い紫の瞳に見つめられるだけで、隷属を刷り込まれたレッドの心は、被虐の喚起に震えてしまう。

「私の可愛い……下僕ちゃん……坊やは私の言う事、ちゃんと聞けるわよね……」

「は、はい……」

「じゃあ、これからは、私のことを女王様と呼びなさい……尊崇と畏敬を込めて……ね」

「はい……じょ、女王様……女王様ぁ……」

 レッドは歓喜の涙を流しながら命令通りに女王様と繰り返した。女王様、女王様、蜂女への崇拝を込めてその甘美なワードを発音する度に、服従の悦びが快感の電流となって背骨の芯を走り抜ける。ゾクゾクとした感覚が首筋の毛をそそけ立たせ、脳内を甘く蕩かしていく。

「おほほほほほっ……いいわ、その表情……その声……あの生意気な少年ヒーローが私を女王様だなんて……最高の気分だわ……卵管も、生殖器も疼いちゃう……ほら、下僕ちゃん……もっと私を愉しませなさい!」

 蜂女は興奮に上ずった声でそう言うと、絡みつけた足を使って強○的にレッドに腰を振らせ始めた。ペニスの感触を堪能するかのようなゆっくりの動き。ヒダヒダの犇めく滑らかな粘膜にじゅるじゅると擦りあげられた少年のモノは、悦びをあらわにするようにビクビクと痙攣を開始し、そして。

「ふあ、あああぁ……女王様のおまんこ……き、きもち、いいいぃ……ひいいぃ……」

 あっという間に、レッドはエクスタシーを迎えていた。魂までも抜けてしまいそうな極上の快楽と共に、淫靡に蠕動する女王の名器の中に屈服の液体をドプドプと吐き出していく。

(ああ、なんて素晴らしいんだろう……女王様に……搾っていただいている……僕は、女王様に精液を捧げているんだ――)

 クイーン・ビーへ捧げる隷属の射精。それは、ヒーローとしての意地やプライドといった防壁がなくなった分、今までの何倍も何十倍も、快感だった。

「あらあら……もう出しちゃったの? 早いわねえ、これじゃあ、同時に後ろをズボズボ犯してあげたらどうなっちゃうのかしら……?」

 うっとりとそう囁くと、蜂女は肛門への抽送を再開した。粘液塗れの卵管がじゅぷじゅぷと音を立てながら、少年のアナルを蹂躙する。イボイボだらけの卑猥な雌根が腸壁をこそぐように大きく動き、前立腺を擦りあげる度に、むき出しの脳に直接触れられたような鮮烈な快楽がレッドを襲った。

「ああっ、うぁっ、ああっ、あっ、あっ……おうっ、おっ、おおおっ……」

 腰振りを強要されながらの後孔への突き込みに、喘ぎ声が止まらない。男の犯される快感と、女の犯される快感を、同時に味わっているようだった。前と後ろからの快感が体の中で結びつき、背筋を得も言われぬ快感が走り抜ける。その度びくびくと体内で踊る肉棒に蜂女は満足げな声を上げる。

「んふふふ……なかで、中でぴくん、ぴくんって動いて……お尻気持ちいいのね……こんな変態マゾがヒーローだったなんて、御笑い種ね……」

「はうううぅ……ご、ごめんなさいいぃ……変態マゾで、ごめんなさいぃ……あ、ああぁ……でも、気持ちいいよぉ……」

「ふふふ、ごめんなさいしながらケツマンコをヒクヒクさせて……救いようがない変態ねえ……いいわ……マゾヒーローのエッチなおケツマンコ……もっとズボズボ掘ってあげる……!」

 肛門を抉る快楽の楔がその速さを増す。通常なら痛み以外の何も感じないはずの暴力的なピストン。たが、新たな性感に目覚めた少年のアナルはその凌○行為に、身も蕩けるような快感を覚え、魂を飛ばしていく。

「あ……ああ、あ゛……おしりも、ちんちんも……き、きもちいいぃ……もう、だめぇ……いぐっ、でるっ!」

 前後からの強力な責めに耐え兼ね、レッドは張りつめた肉棒からドクドクと精液を迸らせた。

「またイっちゃったのね……はしたないボクちゃん……そんなに出したいのなら、精液タンクが空になるまで搾り尽くしてあげる……」

「はうううぅ……あ、ああぁ……しゅごおい……こんなの、らめぇ……精液、止まんないよぉ……」

 肉壁が忙しく蠢き脈動するペニスをグニグニと搾り上げ、卵管はいやらしくうねって前立腺を的確に刺激してくる。前から後ろから、甘美な責めで射精を促され、レッドは自分の血も肉も内臓も心も魂も全てが精液になって放出されていくような感覚に囚われながら、連続して絶頂に達した。

「ん……んん……はぁ、すごい……すごいよぉ……女王様ぁ……」

 レッドは甘えきった声を出して、蜂女の乳房に顔を埋めてそのシルクのように滑らかな肌をペロペロと舐めまわした。肌に浮いた汗が舌の上でとろけ、得も言われぬ甘美な味が口中に広がる。

「あらあら……敵の女怪人の汗を悦んで舐めるなんて……なんて変態なヒーローかしら……ふふ、お仕置きに、もっと激しく責めてあげるわ」

 嗜虐心に火が付いたのだろう、蜂女は腰を激しくくねらせ始めた。

 蜂女の性器の中は精液と愛液で溢れてドロドロになっていた。まるで、ぬるま湯に浸けられているような心地よさ、柔らかく滑った肉壁にシェイクされると、肉棒が溶けてしまうような錯覚に陥ってしまう。

「そんなっ、はげし……女王様ぁ……ああっ、でるっ、ま、また、またイく、イっちゃうよぉ……!」

 雄を絶頂へと追い上げる激しい動きに、レッドは一息に昇天させられた。爪先をぴんと伸ばし、腰をガクガクと震わせ、蜂女の体内に服従の白い液体を捧げた。

「おほほほほっ……熱いのが、中で溢れてるわ……もっとお出しなさい……もっと女王様に子種を捧げるのよ!」

 射精の最中も膣内はポンプのように蠢き、貪欲に精液を吸い上げていく。過敏な肉棒をグニグニと揉み解され、締め上げられ、扱き上げられる。そしてさらに、肛門へ絶え間なく撃ち込まれる、快楽の毒針。全身に駆け巡る、この世のモノとは思えない、魔性の悦楽にレッドはあられもない声を上げて悶絶した。


 ややあって――
 蜂女はようやく腰の動きと、肛門への抽送も停止させた。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、んんっ……」

 レッドは大きく息をつき、夢心地で天を仰ぐ。長い射精を終え体が心地よい倦怠感が全身を包んでいる。

「んふふ……そろそろ全部に受精したかしら……」

 蜂女は妖艶な笑みを浮かべると、レッドの耳元にそっと囁きかけた。

「下僕ちゃん……お疲れ様……ここまでよく頑張ったわね……とっても、偉いわよ……だから、頑張ったご褒美を上げるわ……ご褒美、欲しいでしょ?」

「ごほ、うび……ほ、欲しい……ご褒美、ください……女王様ぁ……」

 涙と鼻水とよだれでぐちゃぐちゃの表情に、奴○らしい卑屈な笑みを浮かべて、レッドは媚びた声音でおねだりをする。魅惑の鎖に心を絡め取られた少年はクイーン・ビーから与えられるものならば、素晴らしいものに違いないと、頭からそう信じているのである。

「ふふ、従順でイイコね……だけど、このご褒美は気持ち良過ぎて少し苦しいかもしれないから、私の胸に甘えてなさい……悩殺のフェロモンをたっぷり嗅いで、恍惚に浸っていなさい……」

 そう言うと蜂女はレッドの首に手を回し、その顔を胸の谷間に押し付けた。

「ふあ、ああぁ……女王様ぁ……おっぱい、気持ちいいですぅ……」

 柔らかく張りのある美乳に両頬をむっちりと挟み込まれ、レッドは甘えきった声で喜悦をあらわにした。

「いい匂い……女王様の……匂い……ふあ、あああ……脳味噌とろけちゃううぅ……」

 鼻をヒクヒクと膨らませて、谷間に籠った女王の薫香を肺一杯に吸い込む。芳醇な雌の香りが鼻腔粘膜から染み込み、心がさらに深い恍惚に堕ちていく。レッドは蜂女の美乳に甘えながら、その濃厚な香りにどっぷりと酔いしれた。

「おほほ……エッチな坊や……もっと私の胸に甘えなさい……さあ、最高のご褒美を産み付けてあげるからね……」

 耳元でうっとりと囁くと蜂女はつながったままの卵管を、直腸のさらに奥深くに潜り込ませた。

「んっ……んんんっ……」

 蜂女が息むような声を上げると同時に、卵管が不気味な脈動を開始した。昆虫の尻と管とのつなぎ目がぽっこりと膨らんだかと思うと、肉筒の蠕動に合わせてその膨らみが尖端の方へと移っていく。

「ふあああぁ……なんか、はいってくるぅ……」

 不気味な膨らみが、肛門をグググッと押し拡げ、腸内へと到達した。と、次の瞬間、卵管の尖端から、ドロドロとしたゲル状の粘液とともに直径10センチ程度の紡錘形の卵が、直腸内に吐き出された。暖かい粘体に包まれた物体が、レッドの前立腺を圧迫しながら次々と体の奥へと侵入していく。強烈な異物感にレッドは顔を歪めるが、同時にぬめった妖しい快感が彼を襲い、ペニスはびくびくと嬉しそうに跳ねた。

「ああ……男に卵を産み付けるこの征服感……最高よ……男が女に精液を注ぎ込むのってこんな感じなんでしょうね……」

「あぅ、ああ……あっ、はぁ、はぁ、んっ……」

 一つ、また一つと卵が注入される毎に少年は女のような喘ぎを漏らした。

 卵と共に注ぎ込まれる恍惚作用を持った甘美な毒液が粘膜から染み入り、レッドの肉体を狂わせているのだった。それだけではない、鼻腔から侵入する悩殺のフェロモンによって、心に芽生えた忠誠心が悦びと共に急速に成長させていた。

「ふあ、ああぁ……卵、産みつけられて……苗床……ふあぁ……うれしいよぉ……」

 支配される悦びと被虐の官能がいやが上にも高まり、少年は魂のレベルでこのおぞましい異形の産卵行為を、素晴らしいご褒美だと認識してしまっていた。

 身も心も蕩けそうな陶酔感に、苦しさが溶け出し、快感がどこまでも高まっていく。そして、とうとう――
「あ、だめ……出ちゃう……お尻に産卵されて……イっちゃううぅ……」

 少年ヒーローは無様にも、直腸に卵を産み付けられながら絶頂に達していた。全身をブルブルと震わせながら、マゾヒスティックな放出の快楽に酔い痴れる。

「おケツマンコに卵産み付けられるの、気持ちいい? こんなにいっぱい精液洩らしちゃって……恥ずかしくないの、ヒーローの坊や?」

 あえてヒーローと言い聞かせてレッドの被虐心を煽りながら、蜂女は淫らに腰をくねらせ始めた。内部で犇めく肉ヒダがサオや亀頭を舐め回し、膣洞全体が貪るようにペニスを吸い上げる。

「いま、うごいちゃ、ダメェ……女王様ぁ……あ、ひいいいぃ……だめぇ……気持ち良すぎて、狂っちゃうよぉ……」

 前と後ろから犯し抜かれながら、少年は涙を流して悦びに酔いしれる。ヒーローである自分が怪人にいいように嫐られているという屈辱感も、肛門に卵管を捻じ込まれ卵を注ぎ込まれる恥辱感も、今の彼には全てが快楽だった

「んんっ……ふううぅ……これで、最後ね……」

 少年ヒーローの体内に全ての卵を産み付けた蜂女は、少年の肛門から卵管をするりと抜き去った。

「あう、あうううぅ……」

 異物が抜け出た後も、肛門は広がったままでヒクヒクと収縮を繰り返していた。レッドが腹筋を波打たせて苦しげな呼吸を繰り返す度に、その拡張された雄穴から、卵と共に注入された粘度の高い毒液がドロリと溢れた。

「とってもよかったわよ、坊や……」

 蜂女は紅潮したレッドの頬をそっと撫で、脱力しきった彼の体を仰向けで寝かせた。立てた膝を大きく左右に開いた、あられもない格好だ。だが、恥ずかしさを感じる余裕は今のレッドには無い。体内からの圧迫感と腹部の重みでそれどころではなかった。直腸に産み付けられた卵は16を数えていた。息をするたびに粘膜に保護されたヌルヌルの卵が腸内で蠢く。その感触が辛く、苦しい。けれどただ苦しいだけでは無く、意識が蕩けるような虚脱的な心地よさも感じていた。

「じゃあ……お尻にフタをしないとね……」

 蜂女はそう言うと這うように身をかがめてレッドの股間に顔を近づけた。熱い鼻息が敏感な部分をむらむらとなぞる。くすぐったさに菊座がきゅっと窄まった。

「な……なにを……? ひゃあっ!」

 突然訪れた新たな刺激にレッドの声が弾む。

 蜂女が肛門に舌を這わせたのだった。口内に溜めた唾液を肛門から溢れる毒液に絡めるように菊穴を舐り回す。やがて、ぴちゃぴちゃと耳障りな音を立てながら混ざり合う二つの液体は、生硬なしこりを生じ始めた。

「くぅ……なに……これぇ……!?」

 しこりは、はっきりとした硬度を誇示するまでに至り、最後には肛門をすっぽりと塞ぐ栓となった。

 入口付近に形を成した異物感。薄黄色の蝋細工のようなそれをレッドは反射的に体外に押し出そうといきんだが、どれだけ力を込めても抜けることはなかった。

「ふふ、どんなに力を込めてもこの栓は抜けないわよ……安心なさい、ただの栓だから……」

 蜂女はゆっくりと立ち上がると、レッドの顔の方に屈み込んだ。そして、紅潮した少年の頬にねっとりと舌を這わせながら、妖しく囁く。

「卵は一週間ほどでかえるから、あんまり動いちゃダメよ。坊やは従順な下僕なんだから、女王様の言うこと……ちゃんと聞けるわよね?」

「あ、う……はい、わかりました……女王様……」

「うふふ、イイ子ね……ちゅ……」

 柔らかい唇が触れた額からくすぐったさと心地よさが広がる。うっすらと心地よさを感じながら、レッドの意識がだんだん薄らいでいく。

「卵が孵る時は気が狂っちゃうくらい気持ちいいから。楽しみにしていなさい……ふふ、うふふふふ……」

 蜂女が邪悪に顔を歪め、妖しく艶やかに笑う。背筋をゾクゾクさせる女王の高笑いを聞きながら、レッド意識は沈む。ヒーローとしての正義感も、新たに目覚めた服従の悦びも、肉欲への醜い渇望も、堕落することへの破滅的な快感も、あらゆる全てが一つに溶け、混ざり、混沌に沈んでいく。

「あら……気を失ったの……情けないわね、ふふふ……坊やのお尻からたくさんの蜂女の幼体が這い出してくる光景……想像しただけでゾクゾクしちゃうわ……」

 醜悪な想像に疼きだした淫裂を長い指でまさぐりながら、蜂女はレッドの頬にベロリと舌を這わせた。

「苗床ちゃん、マゾヒーローちゃん……わたしの、従順なる下僕ちゃん……これからも、女王様を愉しませなさい……おほほほほっ……おーっほっほっほっほ……」

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8月。ルーターが苦しいよぉ苦しいよぉと悲鳴を上げる傍らで、セミがうるさく、暑い。

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爆乳少女と女子会の日常


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さて、その爆乳少女の続編「爆乳少女最後のお遊び(仮題)」の先行体験版(挿絵無しエロシーン1)を載せるんですが、最初に有料コンテンツ化しないと言っていた山葵、100円以上支援者限定にしようかなと思ってます。
実は金銭的にちょっと今のペースで書いてたら厳しいことになるかもしれないので、万が一に備えて、金銭的に余裕を持ちたいなと。

形式はPDFでDLしてご利用いただく他このページでも読めます。

一応先行なので、来月の頭には、今回発表のものと同じものを全体公開するつもりでいます。タイトルも変更あるかもしれません。
また、イラストが挿入された長めの体験版も準備出来次第、DLsiteやci-enやpixivで読めるようにするつもりでいます。

いち早く見たいナ、しゃーないな、という方はご支援お願います。もちろん今月だけでもいいし、DLポイントでも支払えるので。(出来れば100円じゃなくてもうちょっと多めに支援してくれるとウレチイ……)

内容についてですが、今回は卒業を前にした聖蘭と女子会に危機が訪れます。
女子会VS大人、という構造のお話で、前回の女子VS男子と違い―ー体験版のシーンの竿役は少年ですが―ー責任ある大人の男性がマゾに堕とされるシーンがメインですので、小さな女の子に快楽で負けたい、または、大人なのにおっぱいに逆らえない、そういう描写が好きな方はご期待ください。

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