ヒロイン工学研究所 2020/05/24 20:29

アンケートの活かし方について

多数意見であることは重要じゃない

以前アンケートの活かし方について質問を頂いたことがあったのですが、この問題は前から一度自分なりにまとめておこうと思っていたことでもあったので、この機会に変態趣味に関する考察と合わせて記事にしました。

ヒロイン工学研究所では新作の企画をするときや内容を細かく検討するときに必ず今まで実施したアンケートの回答を精読することにしていますが、これは決して多数意見に従うということではありません。

A,B,C,Dの中で一番好きなものは何ですか?という質問で仮にBが最も多くの票を得たとしても、それだけで「よしじゃあBで行こう」ということにはなることはあまりありません。

理由は、
「何かの得票数が高いということだけがわかっても実際には具体的な制作の指針は立たない」
からです。

多数意見は実態に迫るほど多数じゃなくなる

わかりやすく解説するために「スカトロ」という極端なシチュを例にとって考えてみます。
スカトロは糞や尿などの排泄物をテーマにしたシチュエーションに付けられるタグですが、実際にスカトロに興奮する人たちの心理を詳しく観察すると、そこには二つの全然異質な傾向性が見えてきます。

一つは解放型です。
文明社会では人前での糞尿の排泄は社会的にタブー視されていますが、そうした強力な抑圧が解き放たれて、社会の良識的な秩序が糞尿の奔流によって破壊される光景に興奮や解放感を覚えるタイプです。
おそらく幼児的な心理が強く影響しているタイプだと思われるので、このタイプの読者に対して表現に訴求性を持たせるためには「うんち」や「おしっこ」そのものがもつインパクトが重要になります。
オノマトペ的に表現すれば、
「ぶりぶりぶりィィィ――ッ!」
「じょぼぼぼぼぉッッ!」
といったような止めようのない破壊的奔流のイメージがポイントになってくると思います。

もう一つは羞恥型です。
この場合は逆に、タブーを破壊する解放感ではなく、タブーを犯してしまった文明人が心理的に苛まれること=羞恥にサディズムまたはマゾヒズム的な興奮を覚えます。
ぶっ壊すことに単純に快感を覚える解放型とは対照的に、羞恥型の興奮は複雑かつ倒錯的です。羞恥型は文明人的価値観が人一倍強いがゆえに、人前での排泄行為に屈辱を感じ取りますが、その屈辱が逆に興奮を生みます。
訴求性をもたせるための表現のポイントは排泄物そのものがもつ力ではなく、矛盾や葛藤に晒される良識的な心理の方です。排泄行為をド派手に演出する場合も、目的はあくまでもそんなことをしてしまったヒロインの心理的ダメージを描くことの方にあります。


さて、本題に戻ります。
もし仮にアンケートの結果、見たいシチュエーションのトップが「スカトロ」になった場合、どんな作品を作るべきなのでしょうか?
答えは、
「アンケートの結果からはわからない」
です。

解放型に喜ばれる作品を作れば、羞恥型からは「うんちが見たいわけじゃない」と言われ、羞恥型に喜ばれる作品を作れば「もっとうんちを描け」と言われてしまう可能性があります。

これは
「多数意見であることは具体的な指針を与えてくれない」
だけではなく、
「多数意見を実態に即して細分化すると全く異質なグループに分かれてしまう場合、最初の結果を単純に多数意見として扱っていいのか?」
という問題でもあります。

解放型と羞恥型は対照的ですが決して無関係ではなく、実際の嗜好の中では相互に入り組んでいたりする場合もあります。では、どんな風に入り組んでおり、どんな表現が効果的なのでしょうか?それも「見たいシチュエーションの一位はスカトロ」という結果からは何もわかりません。

「スカトロが人気だったのでスカトロ作品を作ったのにあまりウケなかった」みたいなことが起きる原因はこういうところにあると思われます。なお、話を分かりやすくするためにスカトロという極端な例を取りましたが、これはどんな属性タグに関しても多かれ少なかれ言えることで、ヒロイン工学研究所が関係しているジャンルで言えば「リョナ」などがそうです。

選択回答の扱い

では、どうすればいいのか?アンケートは結局あまり役に立たないのか?と言うとそんなことは決してなくて、この場合の問題はむしろ「回答結果を見ても参考にならないようなアンケート」を作ってしまったことにあります。
例えば「スカトロ」として一括されている嗜好タグの中に実際にはかなり異なるグループが存在することを知っていれば、アンケートを設計する段階で、他の質問を設けて回答者が解放型なのか羞恥型なのかを推測できるように設計しておけばいいわけです。
ただ、このようにより詳しい嗜好の実態に迫れば迫るほど最初に圧倒的多数派に見えていたグループは細分化されていくので、制作の指針を立てるのに役立つレベルの具体的な嗜好タイプが見えてくる段階では圧倒的多数派など存在しなくなっていきます。

こうした理由からヒロイン工学研究所では一部の例外的なケースをのぞいて選択回答における多数意見は重視していません。制作に直接役立つ情報は断然記述回答の方にあるので、むしろ「この人の意見は興味深いが、この人はどういう嗜好タイプなんだろう?」という順番でその回答者の選択回答をチェックするというアプローチが一般的です。

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