ヒロイン工学研究所 2020/07/04 20:45

「雰囲気のある文章」を書くにはどうすればいいか?

最近、ずっと考えていることがあって、それは、
「雰囲気のある文章って、どうすれば書けるのだろう?」
という実に素朴な疑問です。

自分が表現したいものを矢継ぎ早に押し売りするようなガツガツした文章ではなく、抑制が効いた落ち着いたトーンでありながら、それでいて飽きさせず、作品世界の雰囲気を一瞬でふわっと広げて、読む者の意識をそこへゆっくりと引き入れていくような…そんな文章は、一体どうすれば書けるようになるのでしょうか?


そもそも「雰囲気がある」とは何なのか?

まずわかっていることは、「この言葉を使えば雰囲気のある文章になるよ」という言葉や表現など存在しないということです。というよりも、はっきり言ってこの発想は、「雰囲気のある」というゴールから真逆の発想です。

それは「雰囲気のある人」というのを考えてみればわかります。
ある特定の言動をすれば、誰でも「雰囲気のある人」になれるのでしょうか?
そんな発想の人がその仕込んだ言葉を吐いて、「どうだ?俺、雰囲気あるだろう?」みたいなドヤ顔をしていたら、むしろ馬鹿に見えてしまいます。

そう考えると「雰囲気のある」というのはまさに、
「どの要素が効果を生み出しているのかが特定できない」
というところにこそ本質があると言えそうです。
つまり「雰囲気」とは、
「単一では決定的な力を持たない要素の複合から醸成されるもの」
ということになります。
この場合の「醸成」というのは、「じわる」という言葉のニュアンスに少し似ています。


アプローチの発想を転換する

「どうすれば雰囲気のある文章を書けるようになるか?」という問いかけは、「こうすればいい」という答えを暗に求めてしまいます。ところが「雰囲気」とは、そうしたはっきりとした答えが見つからないところにこそ発生するものなので、このアプローチを続ける限りは何も得られません。

そこで、急いて秘訣の法則性を知ろうとするような発想を転換して、
「雰囲気のある文章がどのようなメカニズムでその雰囲気を醸成しているかを個別に研究していく」
という地道なケーススタディを重ねていく姿勢で取り組む必要があります。
もう少し研究対象を具体的に言うと、
「全体を通じてある効果が出ているのに、個々の構成要素を見ると、その効果を直接生み出すような言葉が見当たらないタイプの文章」
を収集して、一つ一つ精査して研究していくわけです。

このアプローチはいかにも骨が折れるように見えますが、実際にやることは、文章を堪能することと大差ないので、文学に興味があったり、文章の微妙なニュアンスの違いを楽しむ人にとっては趣味の一環として行えるものだと思います。

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