ヒロイン工学研究所 2022/12/02 20:40

【AI活用】キャラデザ再現過程・春麗編

AI画像生成で春麗のイメージに近付けていく

今回は特定のキャラのAI画像を入手するために出力を重ねながら理想のイメージに近付けていく過程を紹介します。
以前記事にも書いた通り、世界的にある程度有名なキャラクターはAIがキャラクター名とキャラクターデザインをセットで認識しているので、キャラクターデザインを詳細にプロンプトで指定していくよりも直接キャラクター名を入力してしまった方が早い場合が多いです。
ただし、キャラクター名からそのキャラクターデザインを再現する精度はキャラごとに違い、名前のみではあまりイメージ通り再現されない場合もあり、その場合は工夫と努力を重ねていく必要があります。
ちなみにスーパーガールのような世界的に(特に英語圏で)有名なヒロインは「胸の真ん中に赤いSの字があって…」などと細かく指定しなくても、かなり正確なデザインで出力されてきます。

今回挑戦するのは春麗です。
春麗は世界的にもかなり有名なキャラなので、AIもちゃんとキャラ名とデザインをセットで認識しています。ただし、最初から完璧に再現してくれるほど精度は高くありません。
こちらが最初に出力した画像。


精度が低い理由はおそらく知名度の低さではなく、公式にも複数の異なったヴァージョンのデザインが存在しているせいだと思われます。この画像も複数のヴァージョンがキメラ的に合成されているようにも見えます。
※ちなみに背中から尻尾がたくさん生えてしまった原因はプロンプトに関係ないワードが混入していたせいだと後に判明しました。なぜか不可解なものが出力され続ける場合はまずプロンプトを確認しましょう。

イメージを近付けていく過程

今回は再現度のあまり高くないキャラ画像を公式イメージに近付けていく過程を紹介します。しかし、作業工程は単純にして地道です。その時点で一番イメージに近付いている絵をお手本となる元絵にしてAIにそこから類似のヴァリエーションを複数枚出力させ、その中から少しでも理想イメージに近付いた画像を再度新たな元絵にして同様の作業を繰り返していきます。
このアプローチは一気に理想に近付くときもあれば、少しずつしか理想に近付いていかないときもあります。また、一部は理想に近付いていくのに他の一部は徐々に理想から遠のいていくといった困った症状が出る場合もあり、ゴールまでの過程は決して平坦な道を同じペースで進むようにはいきません。

今回は進化していく画像を要所要所で保存したので、備忘録も兼ねてその過程を記録しておきます。

まずこちらが先ほども紹介したスタート地点となった第一世代の画像です。


AIが「春麗」というキャラを認識していることは一目瞭然ですが、デザインの再現性は低いです。ここからスタートして先ほど紹介した作業を地道に何度も何度も繰り返します。そして最終的に私がゴールと判断した画像がこちらです。

パッと見た感じではかなり良い出来ですが、細部までよく見ると公式デザインの完璧な再現ではないことに気付きます。例えば、手首に装着しているはずの突起付きのアイテムがありません。
現時点ではAIに完璧にデザインを再現させることは不可能ではないにしても、特別のアプローチと努力が必要であるとわかっていたので、今回のゴールは少し甘めに設定してあり、「手描きでちょっと加筆修正すれば完璧になる」というラインに到達した時点で終了としました。

では、実際に画像が進化していく過程を動画で見ていきましょう。目安として画像には番号が付けてありますが、実際の世代数ではありません。動画ではゴールの数字が25になっていますが、実際の世代数はおそらく50前後だったんじゃないかと思います。また、そこにたどり着くまでに生成された画像(その大半は次世代に継承されずに消えていった)は、ちゃんとは数えていませんが、1500枚は優に超えていると思います。


マッチョ化する腕、赤くなるタイツ

次に進化の過程の紆余曲折を見ていきたいと思います。


これは4の段階の絵ですが、この時点で「右腕右脚を上げて構える」というゴールまで継承される基本ポーズが確定しているのがわかります。一方で、シニョンなどは形成されておらず、下半身のコスも少し違います。また脚はまだ生脚のようで、ブーツも履いていません。

7の段階でようやくシニョンとブーツが形成され、下半身のコスも徐々にイメージに近付いてきました。その一方で、何やら腕にマッチョ化の兆候が表れ始めています。

15の段階でようやくシニョンがリボン付きのそれらしいものになり、脚にもタイツが現れています。肩のコスの形状もイメージに近いものになりました。特に指定したわけでもないのに、コスの生地の質感とシワが良い感じです。
ところがこの後、変な症状が出て来ます。

17の段階を見ると腕のマッチョ化が再発した上に、肩のコスの形状は退化してイメージから遠のいています。また、タイツの色がなぜかどんどん赤くなっていきます。
この辺からはプロンプトで「細い腕」と指定したり、腕が細くなった画像を新しいお手本に設定したりと、色々と調整を繰り返して腕のマッチョ化を何とか抑えながら進めました。しかし、油断すると腕はすぐに再びマッチョ化するし、タイツはどんどん赤くなるしで、終盤はイメージに近付ける作業とイメージから遠のく傾向を抑える作業の同時進行になり、一進一退の連続になりました。
後で考えるとプロンプト内にある「Street Fighter」というワードがマッチョ化を引き起こしていたのかもしれません。

こうした悪戦苦闘の中で妥協の必要性を痛感したので、結局、腕の太さやタイツの色はレタッチで修正することにして、終盤はむしろ顔の方を重視して調整することにしました。25の画像に到達した時点で今回のAIでの作業はここまでとして、最後の締めくくりとしてそれまでに生成された画像の中から良いとこ取りをした合成をこちらで作成して26の画像にしました。

まとめ:現在のAIの不備を補うためにレタッチは必須

今回はAIがキャラとして認識しているキャラを公式デザインのイメージに近付けていく過程を紹介しましたが、はっきりと言えるのは、少なくとも現時点では「AI画像生成は楽じゃない」ということです。
基本的に時間がかかる上に、泥沼化したときに解決する方法が確立されていないので、想定外の時間を費やしたあげくに上手くいかない可能性だってあります。

また、イメージに近付くために要する時間と労力は一般的に言ってイメージが理想に近付いてくればくるほどどんどん大きくなります。ポーカーを例にすれば、手札がロイヤルストレートフラッシュに近付けば近付くほど欲しいカードが限定されて来て、そのカードがやって来る確率が小さくなるのと同じで、大雑把にイメージが良い方向に向かえばOKだった序盤とはまったく異なり、終盤になると「あそこの部分がもう少しこうなればいいのに!」という具体的な期待を込めてガチャを回すので、見事それが実現される可能性も小さくなっていきます。
ちなみに手描きで修正できるスキルさえあれば、ある程度イメージに近付いた時点でそこをゴールにすることができるので、終盤にひたすらガチャを回し続けるこの無間地獄が免除されます。実際に経験したことがある人はわかると思いますが、この差は絶大です。つまりレタッチ出来る人とそうでない人とではAIの便利さに致命的な差があるということです。AIの登場によって「描ける人と描けない人の差がなくなった」といった意見を最近よく目にしますが、現状ではやはり描ける人の方がはるかにAIを使うときに有利です。

機会があれば今回成案として得られた画像をさらにレタッチして一つの作品に仕上げてみたいです。また、毎年恒例の迎春用春麗春画をAI画像を下絵にして描いてみるのも面白いかもしれません。

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