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2022年 08月の記事 (6)

ヒロイン工学研究所 2022/08/19 21:35

コンティニュー画面の魅力について考える

「敗姫処分 No.2 add'l」に収録する映像作品として格闘ゲーム風コンティニュー画面を制作することになったという話は先日アップした制作後記の中で書きましたが、その制作過程で色々と勉強になったので備忘録用に記事にしておきたいと思います。

過去作品を研究

リョナ・ヒロピン嗜好のある方なら、対戦格闘ゲームやアクションゲームのコンティニュー画面で昂奮したことがあるんじゃないかと思います。そのほとんどは、戦闘不能になったヒロインがハァハァしているだけの単純なアニメーションのループなのですが、そこにはバトル中に体験する興奮とは違う独特の魅力があります。
こうしたシンプルに見えて味わいのある映像作品には目立たない小さな仕掛けや工夫が満載なので、自分で制作する前にまずはそこを解明しようと思い、主に90年代頃の作品を中心にコンティニュー画面の資料をネットで収集し研究しました。

場面転換の意義

まず重要なのは、コンティニュー画面がバトルやアクションが行われる通常のゲーム画面から一度場面転換して始まる独自の形式をもっているという点です。
これには例外もあって、例えばベルトスクロール型アクションゲームではプレイヤーが全滅したときに場面が転換しないままコンティニューのカウントダウンが始まるようなタイプ(例:メタルスラッグ)もあります。おそらくこれはゲームを中断させないための配慮だと思われます。
しかし、ヒロピン的に魅力的なのはやはり一度暗転したりしてそれまでのゲーム画面から転換しコンティニュー専用の画面に移行するタイプです。場面が転換しないタイプのコンティニューは全滅してもすぐにその場から再開できるので、プレイヤーの意識はバトルモードを維持できますが、バトルやアクションのフィールドから一度強○退場させられる場面転換型では意識が一度クールダウンし、そのことが戦闘不能になったことを印象付けます。
多くのコンティニュー画面はちょっと薄暗く、そこではさっきまでとは違いヒロインを操作することが出来ません。それはまさに地下の牢獄に拘束されてしまったような感覚です。つまり場面転換型コンティニュー画面というのは、さっきまでパワフルな戦うヒロインだった存在がプレイヤーがコンティニューしてくれるのを待つだけの弱い存在に転落したことを印象付ける効果をもっているわけです。
なお、対戦格闘ゲームにおいてはコンティニュー画面の前に会話シーンが入ることがあります。多くの作品では勝者の弁が一方的に発せられるだけですが、例えば「DEAD DANCE」のように勝ち誇る勝者の台詞に続き敗者の絶望的な台詞が入るような凝ったものもあります。また、多くの作品ではここで「ヒロインの負け顔」が表示され、敗北感がより視覚的にドラマチックに演出されます。ゲーム設計として考えるとテンポの問題もあるので一概にどれが良いとは言えませんが、敗北感の演出という意味では、「非場面転換型<場面転換してコンティニュー<場面転換して会話画面になりその後にコンティニュー」の順に豪華になると言えます。



BGM、SE以外のリズム的要素

格ゲー風のコンティニュー映像を制作する上で最初から決めていたのは、BGM、SEは使わないということでした。理由は簡単で、映像と音響の関係について勉強をする時間がなかったからです。下手に合成して完成度を落とすぐらいなら最初から音響なしでも成立するような映像を作ろうと思いました。
音響なしでもカットのタイミングや被写体の動き、カメラワークなどを通じて映像にリズムを作ることは可能です。他にも格ゲー風映像ならば、会話シーンの文字表示スピードやカウントダウンのペースなどでもリズムを調整できます。
こうしたほとんど目立たないような要素の微調整を重ねていくことで生まれるリズムは意識レベルで捉えにくい分だけ無意識レベルに訴えかける力をもっており、この作業は作品のコンセプトと深く結びつきながらクオリティーを左右するとても重要なものだとわかりました。
コンティニュー画面を通じて生まれるヒロピン感が「目まぐるしく転落していく過程」なのか「ゆっくりと絶望の奈落に堕ちていく過程」なのかといったコンセプトの問題は、主にこうした無意識レベルに刷り込まれるリズム的要素によって決まってきます。



シーン化によりドラマチックさを演出

ヒロピン嗜好に訴えるコンティニュー画面にはドラマチックさがあります。まずは「ヒロインが負けてしまった」という事実、それに続き「ヒロインは再び立ち上がって戦えるのか、それともこのまま敗者として消えていくのか」という二者択一の切迫感が高まり、そして最後には再起がかなわずヒロインが完全敗北(ゲームオーバー)したことがはっきりと印象付けられます。
もっとも簡略化されたケースでは、これらの段階はカウントダウンの数字と「GAME OVER」の文字表示だけで表現されます。ここにヒロインの負け顔や、ハァハァと苦し気な息をするアニメーションなどが加わるとさらにドラマチックさが増すわけですが、もっともドラマチックなコンティニュー画面はこの過程全体を一つのシーンとして描き出します。

このタイプの代表作は「ファイナルファイト2」です。

https://www.youtube.com/watch?v=DO9b1d4dung
まずプレイヤーのマキが全滅するとバトル画面から暗転してコンティニュー画面に転換します。そこに映し出されるのは地下を思わせる薄暗い空間に荒縄で両手を縛られて吊るされるマキの姿です。ここで敗北と戦闘不能の事実が「敵に捕まって監禁された」という状況描写を通じてよりドラマチックに印象付けられます。
そしてコンティニューのカウントが始まりますが、それと同時に下から水が迫ってきます。単に監禁された状況描写とともにカウントダウンが表示されるのではなく、タイムリミットの切迫が水責めのシーンとして描かれるわけです。カウントダウンと水位上昇が対応していることはすぐにわかるので、プレイヤーはカウントがゼロになったときに水位が顔まで達してマキが溺死する運命を予感します。カウントダウンというデジタルな表現を水位上昇というアナログな表現と対応させることで切迫感がより直感的になるだけではなく、「このままじゃ死ぬ」という意味付与までされてさらに強化されます。また、水位上昇と連動してヒクヒク動くマキのアニメーションのピッチが上がるので、それにより「迫りくる溺死に対する恐怖」が伝わってきます。
「表示された数字が減っていきゼロになるとゲームオーバーになる」というシステムをそのまま表現しただけの簡略化されたコンティニュー画面と比較すると、「ファイナルファイト2」のコンティニュー画面はこのシステムを「捕まって水責めされ死が迫っている」というシーンに置き換えることで一連の展開を意味をもったドラマに変換しています。この「意味をもったドラマの中で体験する焦燥感や切迫感」こそヒロピン嗜好にとっては何よりも重要なのです。ヒロピン視点から考えた場合、コンティニュー画面の魅力はコンティニューのカウントダウンというゲームシステムをいかにドラマチックに見せるかのギミックアイデア(例えばカウントダウンと水責めの水位上昇を対応させる)にかかっていると言えると思います。

ゲームオーバー=完全敗北の刻印

カウントダウンの焦燥感、切迫感は数字がゼロになったときに絶頂に達して、そこでゲームオーバーが確定すると、今度は一転してカタルシス性の放心と虚無感が広がります。この緊張と弛緩の関係は性的なオルガズム現象と似ていると言えるかもしれません。
「ファイナルファイト2」ではこの瞬間、映画のストップモーションのように動きが停止し画面が白黒に変わります。これは精彩と活動性を失う=死の暗喩として直感的に機能する演出ですが、これを「写真になる」という意味で捉えることも可能だと思います。言わば「その姿が既成事実として記憶に刻印される」というイメージです。カッコよく活躍していたヒロインも最終的には無残に完全敗北した姿で永久保存されてしまう、そんなフェティッシュな魅力をもった演出だと言えます。
具体的にどのようなゲームオーバー演出が効果的かは一概には言えませんが、コンティニュー画面が本質的に焦燥感を煽る性格のものであることから考えれば、それに続くゲームオーバー画面はさらなる焦燥感や興奮を煽るようなものよりもカタルシス的な性格をもったものが相応しいと言えるような気がします。

習作の紹介

過去のゲーム作品を研究した後、同人作品に収録する動画の制作に入る前に手元の自作絵を素材にして習作を作りました。せっかくなのでここで紹介しておきます。

対戦格闘ゲームの会話画面風の動画の習作です。
この動画の制作を通じて文字表示のスピードのわずかな違いで印象が変わることを知りました。


コンティニュー画面からゲームオーバー画面までの習作です。
見てわかるように完全に「ファイナルファイト2」をリスペクトして作った作品です。カウントダウンの切迫感をアナログ化するギミック(「ファイナルファイト2」では水位上昇)として接近してくる触手の群れを使っています。また、コンティニュー画面開始時にレンズブラーをかけることで場面転換した感じを出しています。


宣伝

今回の研究成果を詰め込んだ格闘ゲーム風コンティニュー動画が収録された「敗姫処分 No.2 add'l」はDLsiteにて販売中です。
⇒作品ページへ

ヒロイン工学研究所 2022/08/16 20:56

【定期活動報告・8月前半】

【同人活動】
新作同人作品「敗姫処分 No.2 add'l」が公開されました。
⇒作品ページへ

【お仕事/受注制作】
3件進行中。

【スキルアップ関連】
比喩証言について勉強していました。

【pixiv】
1件更新
⇒pixivページへ

【ブログ等】
「敗姫処分 No.2 add'l」進捗報告_7
「敗姫処分 No.2 add'l」制作後記_1
「敗姫処分 No.2 add'l」制作後記_2

【お題制作】
更新なし。
「マイナーキャラ限定お題募集」企画はこちら⇒回答フォームへ

【その他】
詩や小説のテクニックを漫画のテクニックに転用する方法について考えていました。

【コメント】
新作同人が無事公開され、ひとまず安心しております。少し休んだあとで、同人制作中に待っていただいていた依頼などに着手していくつもりです。

ヒロイン工学研究所 2022/08/07 23:44

「敗姫処分 No.2 add'l」制作後記_2

⇒後記その1へ

リクエストをもとに漫画制作

具体的なリョナシーンのアイデアを多数いただき、それをもとに本編とは異なるラストシーンの漫画を2編制作することにした話は前回の記事で書きました。
この漫画制作でまず最初に着手したのが盛り込めそうなアイデアをピックアップして並べていく作業です。次に箇条書きされたシーンのアイデアを何度も読み、それらを繋げていく構成の素案を考えました。このときに、頂いたアイデアのタイプが、打撃や締め技などの直接的な肉体破壊系のリョナシーンと剣による斬撃をメインにしたリョナシーンとに大別できそうだと気付きました。
そこで「打撃系・サブミッション系」メインと「斬撃系」メインの2パターンの敗北シーンを漫画で描くことに決めました。


ちょっとネタバレをすると、このページの後に「ボコボコにされて敗北」と「ズタズタにされて敗北」のルートに分岐するという形式になっております。
本編の制作では構成上の制約から描きたかったシーンでも捨てなければならないことが多かったので、こうして対案的なシーンを描けるというのは作者からしてもとても魅力的な制作だと思いました。

格ゲー風映像

今回アンケートで頂いたアイデアの中で特に秀逸だったのが「格ゲー風のコンティニュー画面が見たい」というものでした。たしかにこれは格闘ゲームを元ネタにした二次創作ならではの発想で、しかもそれほど難しいアニメーション技術も要求されないので今の自分のスキルでも制作可能だと思いました。
しかし高度な技術がなくても作れる作品ほど「作ることは出来たが、何となくショボいものになった」という結果になりがちなので、そうならないように過去のゲーム作品のコンティニュー画面やゲームオーバー画面の映像を見まくって演出と映像編集の研究をする一方で、手元にある素材を使って習作の映像を作ったりしました。
この研究と試作の過程が個人的にとても面白かったので、そのときに得た教訓を備忘録として後日記事にしたいと思っています。
【追記】
コンティニュー画面の魅力について記事にしました。
⇒記事へ移動

⇒作品ページへ

ヒロイン工学研究所 2022/08/07 23:44

「敗姫処分 No.2 add'l」制作後記_1

初めてのadd'l版制作

読者アンケートを参考にしつつ構成した追加シーン集をadd'l(アディショナル)版として出すという試みはすでに「バッドエンドシミュレーション」シリーズで何度もやってきましたが、「敗姫処分」シリーズではこれが初となります。
戦うヒロインのピンチと敗北を描くことをテーマにしている「敗姫処分」では敗北後の陵○が描かれることがないので、アンケートでも「その後の陵○シーンまで描いてほしい」という声を多数いただきました。しかし、その一方で、リョナとヒロピンのみに特化している点を評価する方も多く、「本編にエロ要素を入れないでほしい」という声も頂いておりました。
そこで折衷案として考え出されたのが、本編ではあくまでもピンチと敗北をメインとして、読者アンケートで寄せられた意見を参考に追加シーン集を制作してその中で陵○シーンを補完するという方法でした。

結局根強いリョナ人気

このように当初はエロ要素を補完する意味も込めて制作が決定した「敗姫処分 add'l」だったわけですが、実際に具体的な検討に入ると意外なことに気付きました。追加シーンへの要望の中にもリョナシーンに対する要望が結構多いのです。しかし、よく考えてみればこれは当然のことで、エロ要素無しの純粋リョナ漫画だとわかっていて購入してくれる人たちはやはりリョナを求めるわけです。さらに興味深いことに、エロシーンに対する要望よりもリョナシーンに対する要望の方が詳細で具体的になる傾向があるように思えました。本編でまったく描かれなかった陵○シーンよりも本編で描かれたリョナシーンの方が本編での描写が呼び水となって対案を考える思考が刺激されるからなのかもしれません。
こうした本編に対する対案的なアイデアの数々は作者にとっても魅力的でした。そこで要望のあったシーンから取捨選択して本編とは異なる完全敗北のラストシーンを漫画形式で2編(それぞれ14ページ、合計28ページ)制作しました。

是非アンケートに御協力を!

結果的に今作ではリョナ要素を漫画でエロ要素をイラストで主に表現することになりました(映像はどちらかと言うとヒロピン趣味)が、この構成と配分で良かったのかどうかは正直まだわかりません。「本編とは異なるタイプのリョナシーンをさらに見ることが出来て満足」と感じる人もいれば、「エロシーンの補完がまだ不十分」と感じる人もいると思います。
どんなバランスが最適かは皆様の御意見を参考にしながらこれから検討していくつもりなので、是非読者アンケートに御協力をお願いいたします。
⇒読者アンケート回答ページへ
ちなみにエロシーンを漫画形式で描かなかった理由は単純にエロ漫画というものをちゃんと描いたことがないからなので、その辺のネックは今後の修行次第で克服できるかもしれません。

⇒後記その2へ

⇒作品ページへ

ヒロイン工学研究所 2022/08/05 20:57

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