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ヒロイン工学研究所 2022/12/02 20:40

【AI活用】キャラデザ再現過程・春麗編

AI画像生成で春麗のイメージに近付けていく

今回は特定のキャラのAI画像を入手するために出力を重ねながら理想のイメージに近付けていく過程を紹介します。
以前記事にも書いた通り、世界的にある程度有名なキャラクターはAIがキャラクター名とキャラクターデザインをセットで認識しているので、キャラクターデザインを詳細にプロンプトで指定していくよりも直接キャラクター名を入力してしまった方が早い場合が多いです。
ただし、キャラクター名からそのキャラクターデザインを再現する精度はキャラごとに違い、名前のみではあまりイメージ通り再現されない場合もあり、その場合は工夫と努力を重ねていく必要があります。
ちなみにスーパーガールのような世界的に(特に英語圏で)有名なヒロインは「胸の真ん中に赤いSの字があって…」などと細かく指定しなくても、かなり正確なデザインで出力されてきます。

今回挑戦するのは春麗です。
春麗は世界的にもかなり有名なキャラなので、AIもちゃんとキャラ名とデザインをセットで認識しています。ただし、最初から完璧に再現してくれるほど精度は高くありません。
こちらが最初に出力した画像。


精度が低い理由はおそらく知名度の低さではなく、公式にも複数の異なったヴァージョンのデザインが存在しているせいだと思われます。この画像も複数のヴァージョンがキメラ的に合成されているようにも見えます。
※ちなみに背中から尻尾がたくさん生えてしまった原因はプロンプトに関係ないワードが混入していたせいだと後に判明しました。なぜか不可解なものが出力され続ける場合はまずプロンプトを確認しましょう。

イメージを近付けていく過程

今回は再現度のあまり高くないキャラ画像を公式イメージに近付けていく過程を紹介します。しかし、作業工程は単純にして地道です。その時点で一番イメージに近付いている絵をお手本となる元絵にしてAIにそこから類似のヴァリエーションを複数枚出力させ、その中から少しでも理想イメージに近付いた画像を再度新たな元絵にして同様の作業を繰り返していきます。
このアプローチは一気に理想に近付くときもあれば、少しずつしか理想に近付いていかないときもあります。また、一部は理想に近付いていくのに他の一部は徐々に理想から遠のいていくといった困った症状が出る場合もあり、ゴールまでの過程は決して平坦な道を同じペースで進むようにはいきません。

今回は進化していく画像を要所要所で保存したので、備忘録も兼ねてその過程を記録しておきます。

まずこちらが先ほども紹介したスタート地点となった第一世代の画像です。


AIが「春麗」というキャラを認識していることは一目瞭然ですが、デザインの再現性は低いです。ここからスタートして先ほど紹介した作業を地道に何度も何度も繰り返します。そして最終的に私がゴールと判断した画像がこちらです。

パッと見た感じではかなり良い出来ですが、細部までよく見ると公式デザインの完璧な再現ではないことに気付きます。例えば、手首に装着しているはずの突起付きのアイテムがありません。
現時点ではAIに完璧にデザインを再現させることは不可能ではないにしても、特別のアプローチと努力が必要であるとわかっていたので、今回のゴールは少し甘めに設定してあり、「手描きでちょっと加筆修正すれば完璧になる」というラインに到達した時点で終了としました。

では、実際に画像が進化していく過程を動画で見ていきましょう。目安として画像には番号が付けてありますが、実際の世代数ではありません。動画ではゴールの数字が25になっていますが、実際の世代数はおそらく50前後だったんじゃないかと思います。また、そこにたどり着くまでに生成された画像(その大半は次世代に継承されずに消えていった)は、ちゃんとは数えていませんが、1500枚は優に超えていると思います。


マッチョ化する腕、赤くなるタイツ

次に進化の過程の紆余曲折を見ていきたいと思います。


これは4の段階の絵ですが、この時点で「右腕右脚を上げて構える」というゴールまで継承される基本ポーズが確定しているのがわかります。一方で、シニョンなどは形成されておらず、下半身のコスも少し違います。また脚はまだ生脚のようで、ブーツも履いていません。

7の段階でようやくシニョンとブーツが形成され、下半身のコスも徐々にイメージに近付いてきました。その一方で、何やら腕にマッチョ化の兆候が表れ始めています。

15の段階でようやくシニョンがリボン付きのそれらしいものになり、脚にもタイツが現れています。肩のコスの形状もイメージに近いものになりました。特に指定したわけでもないのに、コスの生地の質感とシワが良い感じです。
ところがこの後、変な症状が出て来ます。

17の段階を見ると腕のマッチョ化が再発した上に、肩のコスの形状は退化してイメージから遠のいています。また、タイツの色がなぜかどんどん赤くなっていきます。
この辺からはプロンプトで「細い腕」と指定したり、腕が細くなった画像を新しいお手本に設定したりと、色々と調整を繰り返して腕のマッチョ化を何とか抑えながら進めました。しかし、油断すると腕はすぐに再びマッチョ化するし、タイツはどんどん赤くなるしで、終盤はイメージに近付ける作業とイメージから遠のく傾向を抑える作業の同時進行になり、一進一退の連続になりました。
後で考えるとプロンプト内にある「Street Fighter」というワードがマッチョ化を引き起こしていたのかもしれません。

こうした悪戦苦闘の中で妥協の必要性を痛感したので、結局、腕の太さやタイツの色はレタッチで修正することにして、終盤はむしろ顔の方を重視して調整することにしました。25の画像に到達した時点で今回のAIでの作業はここまでとして、最後の締めくくりとしてそれまでに生成された画像の中から良いとこ取りをした合成をこちらで作成して26の画像にしました。

まとめ:現在のAIの不備を補うためにレタッチは必須

今回はAIがキャラとして認識しているキャラを公式デザインのイメージに近付けていく過程を紹介しましたが、はっきりと言えるのは、少なくとも現時点では「AI画像生成は楽じゃない」ということです。
基本的に時間がかかる上に、泥沼化したときに解決する方法が確立されていないので、想定外の時間を費やしたあげくに上手くいかない可能性だってあります。

また、イメージに近付くために要する時間と労力は一般的に言ってイメージが理想に近付いてくればくるほどどんどん大きくなります。ポーカーを例にすれば、手札がロイヤルストレートフラッシュに近付けば近付くほど欲しいカードが限定されて来て、そのカードがやって来る確率が小さくなるのと同じで、大雑把にイメージが良い方向に向かえばOKだった序盤とはまったく異なり、終盤になると「あそこの部分がもう少しこうなればいいのに!」という具体的な期待を込めてガチャを回すので、見事それが実現される可能性も小さくなっていきます。
ちなみに手描きで修正できるスキルさえあれば、ある程度イメージに近付いた時点でそこをゴールにすることができるので、終盤にひたすらガチャを回し続けるこの無間地獄が免除されます。実際に経験したことがある人はわかると思いますが、この差は絶大です。つまりレタッチ出来る人とそうでない人とではAIの便利さに致命的な差があるということです。AIの登場によって「描ける人と描けない人の差がなくなった」といった意見を最近よく目にしますが、現状ではやはり描ける人の方がはるかにAIを使うときに有利です。

機会があれば今回成案として得られた画像をさらにレタッチして一つの作品に仕上げてみたいです。また、毎年恒例の迎春用春麗春画をAI画像を下絵にして描いてみるのも面白いかもしれません。

ヒロイン工学研究所 2022/11/10 21:30

【AI活用】複数のパーツを合成する

今回は複数のパーツを合成して一枚のイラストを作成する方法を試してみたいと思います。

実はこの方法、すでに紹介した実験の中でも試しています。


このナコルルの絵では背景と短刀が別途出力したAI画像の合成ですし、

このジュピターの絵では背景がそうです。

今回は背景や小物ではなく近景のキャラクターを合成してみたいと思います。

合成の利点

AI絵をパーツに分けて合成する利点については前回の記事でも少し触れましたが、現在私が使っているAI画像生成は基本的にガチャを回すたびに全要素が変わってしまうので、ある程度その幅を調整することが出来たとしても、やはり同時に全ての要素がイメージ通りになる瞬間というのはなかなかやって来ません。しかし、AI画像をパーツに分けてこちらで合成することが出来れば、全パーツが同時に成功するようなそんな奇跡の一瞬に賭けてガチャを回し続けることなどしなくても、上手くいったパーツさえゲット出来ればいいので、各パーツが上手くいくまでガチャを回せばいいわけです。
スロットで「777」がそろうまで頑張るのではなく、左と真ん中と右に一回でも「7」が出たらそれを合成して「777」にしてしまうようなことです。

もっとも基本的な方法は近景と背景を分けて後から合成するやり方です。
これによって近景がいじりやすくなるので構図やポージングを再構成することが可能になります。また、背景を簡単に差し替えられるので、シチュエーション作りがしやすくなります。

巨大ヒロインVS触手怪獣

今回挑戦するのは「ヒロイン」と「陵○役」という近景のキャラ二体を別々に出力して合成する方法です。

ちょうど「マイナーキャラ限定お題募集企画」でユリアンやウルトラウーマンベスなどの巨大ヒロインが巨大怪獣に犯される絵を描いてほしいという依頼が入っていたので、そのための習作も兼ねて、今回は「巨大ヒロイン」と「触手怪獣」をAIに出力させて、合成していきたいと思います。

まずは巨大ヒロインから。基本となるプロンプトは「female Ultraman」というワードで出力しています。

紆余曲折ありましたが、最終的に行きついたのはこんな感じです。
両腕を上にあげているポーズは拘束を連想させますし、突き出たバストはそこに触手が絡んで乳責めしている光景が目に浮かびます。
合成によって陵○シチュが作りやすそうなヒロイン絵の素材が手に入ったので、今度はそれに合うような触手怪獣をAIに作らせます。
画面左側から迫り、触手を伸ばす様子をイメージしながら簡単な下絵を入力し、出力させた結果がこちら。

ヒロインに比べると比較的簡単にイメージに近いものが出来ました。キャラ部分のみを切り取って使う予定なので、簡単に切り取れるように背景は白一色になるよう誘導しました。

これで近景を構成する巨大ヒロインと触手怪獣は準備出来ました。あとは背景ですが、今回は巨大ヒロインを生成する過程で使えそうなものがたまたま出来てしまったので、背景はそれを流用することにしました。
すべてのパーツを合成して再構成した結果がこちらになります。

触手はコピペして増やしたり変形したりしながらヒロインに絡ませました。
パーツ分けした素材を合成しただけですが、触手陵○絵のテイストは十分出ていると思います。あとはヒロインのデザインを調整したり、勃起乳首を描き足したり、汁感を増量したりして、色調補正処理をして完成です。

まとめ

キャラを合成して絵を作るという今回の試みはまずまず成功だったと思います。
ポイントとしては、「どう合成するかを考えながら素材となるパーツを生成する」ことに尽きるので、この方法を採用する人は日頃からそういう意識でAI画像を見るクセを付けておいた方が良さそうです。

ただ、今回の絵が上手くいったのは、それが触手絵だったからというのはあります。触手は関節がないためにポージングをほとんど自由自在に操作することが可能で、そのために非常に絵作りが容易です。関節をもった人間同士の絡み合いをパーツの合成で作る場合はもっと難しいか、別の課題が出てくる可能性もあります。

また、今回のヒロインはオリジナルだったので、二次創作のときのように公式設定に合わせてデザインを修正する作業というものが必要なかったわけですが、ここには別の問題があります。それはこのように生成されたオリジナルヒロインをまったく一から作り直す別の絵でAIに再現させることは非常に難しいということです。
有名な版権キャラならAIはキャラ名とデザインを不安定ながらもセットで認識していますが、オリジナルのキャラの場合は言葉でデザインを指定する必要があります。この方法でイメージ通りのデザインを出力させるには相当プロンプトを工夫した上でなおかつ偶然の一致に賭けてガチャを回し続けるしかありません。

こうした問題については、また別の機会に別の制作に挑戦しながら考えてみたいと思います。

ヒロイン工学研究所 2022/11/06 21:28

【AI活用】AI絵を加工してヒロピン絵を作成

AI絵を加工してヒロピン絵を作成

前回ナコルルのイラストを作成したときと同じ方法で今度はヒロピン絵を作成してみました。いよいよ自分の分野でAIがどれくらい使えるかの検証です。

前回との違いはAI絵を加工する過程でテーマそのものを変えてしまうことです。前回のナコルルはAI絵も加工後の完成品もどちらもナコルルの可愛さを表現するためのキャラクター画的なものでしたが、今回の実験ではノーマル絵を加工して少しエロい要素のあるヒロピン絵に変えてみたいと思います。

AIによる画像生成サービスでは「不適切な画像」と判断したものを自動的に排除するものが多いので、エロやグロ画像生成OKのAIを利用する場合をのぞけば、不適切と判断されそうな要素は魔改造で事後的に盛り込むしかありません。
今回作るのは単なるヒロピン絵ですが、健全なノーマル絵をエロ絵に改造する場合も課題は同じなので応用できると思います。

セーラージュピターをAIに出力させる

さて、今回作るのはセーラージュピターのヒロピン絵です。
前回のナコルルと同じように、まずは「Sailor Jupiter」をAIが正しく認識しているかを確認するところから始めます。

デザインはやや不安定ですが、「水兵と木星」を出力したりすることなく、ちゃんとキャラとして認識はしているようです。
プロンプトを工夫したり、出力を繰り返したりしながら、上の画像のように何パターンかそろえてみました。これは普通のイラスト作成の工程で言うと、ラフスケッチを描きながら構想を練る段階にあたると言えます。

次に出力された画像の中からヒロピン絵の下絵になりそうなものを選びます。
AIによる不適切判定を回避するためにどれも健全なノーマル絵としてのプロンプトで出力していますが、ちょっと改造すればヒロピンシチュに使えそうです。
左の絵は勇ましい戦闘シーンをイメージさせる絵ですが、群がる触手に絡め取られそうになっているシーンに改造できそうです。
中央の絵はキックをしている絵ですが、表情さえ変えれば吹っ飛ばされて壁に激突している絵に見えそうです。
右の絵は「sleeping」というプロンプトが功を奏して、このままでもやられて横たわるヒロピン絵に見えます。

今回は少しエロ要素も入れたいので左の絵を下絵にして触手に捕らわれるヒロピン絵にしたいと思います。

近景と背景を分離

使う画像が決まったら、まずは近景のキャラと背景を分離します。


これは改造するときに各パーツをいじりやすくするためですが、そもそも改造することを前提にAIに画像を生成させるときは最初から近景と背景は分離するつもりで考えた方が合理的です。
AIが出力する画像では「近景はイメージ通り上手くいったが、背景がおかしい」ということが頻繁に起きるので、両者が同時にイメージ通りなるまで出力を繰り返すと、途方もない時間がかかってしまいます。
完成品レベルまでAIに出力させようとする場合には、「すべての部分が同時に上手くいっている奇跡の1枚」を出力させるために様々なテクニックを駆使しなければならないのですが、改造できるスキルがあればこの奇跡をパーツの合成によって捏造できます。

デザインを訂正し触手と背景を加える

前回のナコルルに比べると今回のセーラージュピターはキャラクターデザインが間違っている部分が多いので、それを修正していきます。ついでに触手に囲まれた状況にマッチする背景もAIに出力させ合成し、簡単ですがジュピターに絡み付く触手も描き加えました。

これで一気に仕上がりのイメージが見えてきました。通常のイラスト作成で言えばカラーラフの段階に当たります。このぐらいのレベルの仕上がり予想図を比較的短時間で速成できるのはなかなか凄いことだと思いました。ただし下絵の出力までが難航した場合にはそれも帳消しになってしまうので、イメージ通りに出力させるためのプロンプト研究は欠かせません。

ここまで進めてきて一つわかったことがあります。
現状ではAIがキャラクターデザインを完璧に再現して出力することは、そのキャラクターが世界的に有名でなおかつデザインがシンプルである場合をのぞけばほぼ絶望的です。したがって二次創作においては加筆修正が必須となります。そのため、絵としては魅力的でも加筆修正するのが難しいようなAI絵は下絵に向きません。改造することを前提にAI画像生成を使うときは「改造しやすさ」をつねに念頭に入れておく必要があります。

例えば一番右の絵は唯一額にサークレットらしきものが形成されているので、他の二つに比べればより正確なキャラクターデザインに近付いているとも評価できますが、結局サークレットの形状がまったく違うので描き直さなければいけません。そうなると、一回消さなければならず、「改造しやすさ」という観点から言えばむしろサークレットが形成されていない方が下絵としては使いやすいわけです。
このようにAIに出力させるのが「完成品」なのか「下絵」なのかによって、出力結果に対する評価も変わってきます。

とりあえず完成

仕上がりイメージが固まってきたので、あとは細部を加筆したり、表情を描き直したりしていきます。そして出来上がったのがこちら。


直すべきところはまだたくさんあるので、厳密に言えば完成ではないのですが、今回の目的は実験なのでこれで十分です。今後あらためて加筆や色調補正などの処理を加えてちゃんと完成させたり、差分を作ったりするかもしれません。そのときは追記として掲載したいと思います。

なお、今の作業環境ではAIに高解像度の画像を出力させることが出来ないので、多少修正処理はしたものの細部を見ると画像の荒さが残っているところがあります。AIに高解像度の画像を出力させるためには相当ハイスペックな環境が必要になるらしいので、この解像度問題は今後も避けて通れない課題となりそうです。

まとめ

今回の実験でわかったポイントをまとめると以下のようになります。

・ノーマル絵から加工後を想像する
・近景と背景は分ける
・キャラデザは大部分描き直す必要がある
・改造しやすいものを下絵にする
・画像の荒さを補正する必要がある

今回の制作で感じたのは、この手法はなかなか使えると同時に楽しいということです。しかし、その楽しさはゼロからイラストを描くときの楽しさとは少し違っていて、創造というよりは加工や改造の楽しさです。食材を見てどんな料理にするかあれこれ考える感覚にも似ているかもしれません。
実用面で言えばやはりカラーラフの完成予想図をかなり短時間で作れるという点が魅力的です。時間がかからない分だけ複数の案を用意することも可能なので、構想を練ったり打ち合わせのときなどに使えそうです。

ヒロイン工学研究所 2022/11/03 20:41

【AI活用】AI絵を加工してイラスト作成

AI絵を加工して作品を制作してみる

今回はAIが出力した絵を加工して作品を制作する方法を実験してみたいと思います。ちょうどナコルルの習作を描こうと思っていたところだったので、ナコルルを作ることにします。

AIはナコルルを知っているか?

まずシンプルに「Nakoruru」というプロンプトで出力してみます。
ある程度有名なキャラになるとAIはデザインをかなり正確なレベルで認識しているので、デザインの特徴を細かく指定するよりもキャラ名を入れた方が手っ取り早い場合が多いです。


例えばこの絵は以前AIに作らせたスーパーガール(レタッチ無し)ですが、キャラ名で指定しただけで、キャラクターデザインに関する指定は一切しておりません。

ではナコルルはどうでしょうか…

こちらが「Nakoruru」というワードのみで出力された絵の一部です。
スーパーガールと比べてキャラの認識の精度はかなり低いと言わざるを得ませんが、まあ、第一段階の出力なので仕方ありません。さっきのスーパーガールの絵も出力されてきた絵の中から良いものを選んで、それを元絵にしてさらにイメージに近付けるための出力を繰り返すという工程を何段階も経て得られたものなので、序盤での不安定さは問題ありません。

むしろこれらの絵を見て希望がもてました。
それはほとんどの絵が以下のような特徴を備えていたからです。

・東洋系美少女
・黒髪ストレートロング
・赤と白を基調としたコス
・赤いリボンらしき要素
・90年代~00年代風のタッチ

「Nakoruru」というワードの意味が分かっていなかったら、そもそもこんな絵は出て来ません。これは精度は低いながらもAIがナコルルをちゃんと認識していることの証拠です。

「Nakoruru」というプロンプトが有効だということがわかったので、あとはよりイメージに近い絵を元絵に設定して、そこから変異型を出力させてさらにイメージに近付けていくという手順を繰り返します。
今回は第一世代の絵の中から


この絵を元絵として選びました。

ナコルルに近付けていく

AIはナコルルを認識しているらしいので、プロンプトに「Nakoruru」が入っている限りは不安定ながらもそちらに近付いていく傾向をもっています。
ただ、どうやらはっきりと認識しているわけでもないようで、出力されるイメージにはかなりバラつきがあります。その中から少しでもイメージに近いものを新たな元絵に設定することでイメージのブレを小さくしていきます。


こちらが第三世代ぐらいの出力です。
第一世代に比べると、コスの白い部分と赤い部分の分け方が正解に近付き、肩部分の構造も出来始めています。また頭部にカチューシャが登場しています。

この工程をさらに続けます。そして最終的に得られたのがこの出力です。


多分第五世代ぐらいだったと思います。
肩部分が退化してしまったり、カチューシャがリボン化してしまったりと、部分的にはむしろ遠のいてしまったところもありますが、全体の完成度はかなり良いところまで来ました。
特に指示したわけでもないのに脇フェチ要素もちゃんと入っています。ナコルルを認識しているAIは意外とポイントがわかっているのかもしれません。

AIを使ってさらに完成度を上げていくためには、プロンプトを工夫しながらここからかなりの試行錯誤を重ねていく必要があるのですが、今回は手描きで加工することが前提なのでこれで十分だと判断しました。

手描きで加工していく

ここからは手描きの加工作業です。
ですが、せっかくなので、加工過程でも少しAIを活用してみました。
AIに作らせたのは、ナコルルに握らせる「短刀」と背景用の「針葉樹林が広がる北国っぽい風景」です。AIに作らせたこれらの素材を下絵に合成し、その上から加筆修正を加え、さらに色調補正やグロー効果などの処理をします。
そして完成したのがこちら。


主な加筆修正作業は以下の通りです。

・目の描き込みと微調整
・鼻と口は描き直し
・前髪の描き直し
・髪艶の描き足し
・リボンの描き足し
・肩部分の描き直し
・腕の太さ調整
・襟ラインの描き直し
・手甲と指の描き直し
・短刀の描き込みと微調整
・服のしわと陰の描き込み
・帯部分の描き直し
・背景の画像処理
・色調補正やグロー効果などの処理

あらためて確認してみると、いじっていない部分はほとんどありません。

まとめ

感触としては結構上手くいった方だと思います。労力もそこまではかかりませんでした。
しかし、加筆前後を比較するとわかるように、相当量こっちで描いているので、圧倒的な省力化が実現したとは言えません。

一番の問題は同レベルの成功が常に約束されているわけではないということ。
やってみたけど上手くいかなくて泥沼化する場合、作業量はさらに膨らみ、それが一線を越えれば「最初から自分で描けば良かった」ということになります。
また、以前似た方法を試して上手くいかなかったときに痛感したのですが、AI絵を加筆修正する作業が難航して泥沼化すると、何と言うか他人の尻拭いをしているような気分になり、やはり「最初から自分で描けば良かった」という気持ちになります。

成功率を上げればいいのですが、このやり方で成功しやすいタイプの絵とそうでないタイプの絵というのがおそらくあるので、成功しやすいタイプの絵ばかりを描く結果、作風がマンネリ化する危険があります。

・省力化は限定的
・失敗する可能性もあり、失敗すると作業量がむしろ増える
・成功するタイプの作品に偏ると作風がマンネリ化する

今回感じた難点をまとめると、以上のようになりますが、経験を積めばある程度は改善するかもしれません。

最後にAI絵を下絵に加工する制作方法の利点ですが、それは「自分には無いセンスが注入できる」ということだと思いました。
今回の作品も大部分加筆修正しているとはいえ、やはり元絵のエッセンスは残るので、いつもの自分とは少し違う感じの作品になり、そこがとても新鮮で楽しかったです。
自分とは違うセンスが入った作品の制作にたずさわることはそのセンスを身に着けることにもつながるので、そういった意味では思わぬ収穫が得られるかもしれません。

制作過程の比較動画

ヒロイン工学研究所 2022/09/11 21:19

140字キャプションの可能性

140字の文学

文章の練習も兼ねて140字以内で自作絵にキャプションを付けてみることにしたのですが、実際にやってみるとなかなか難しく、試行錯誤しながらちょっと研究していました。

まず最初に「なぜ上限を140字にしたのか?」についてですが、これはTwitterでのコンテンツ化を企画していたからというのが一番の理由なのですが、それとは別に、短文の表現力の可能性について以前から関心があったからでもあります。
https://twitter.com/heroinekougaku/status/1568221853315141633

実際にやってみると、140字以内でワンシーンの味わいを表現するのはとても難しく、即興的にサラサラと書くというようにはいかず、基本となるコンセプトを決め、そのために描くべきポイントを絞り、効果的な構成を模索し…という非常に構築的なアプローチとなりました。
もともとこの試みは文章力を養うつもりで始めたことで、そのときは文章力=描写力のように考えていましたが、むしろ情景全体の中から核となる一部をトリミングしてそこから構成するという編集力こそがまず重要なのだと痛感しました。


俳句添削とグルメ記事

140字以内のキャプションを書くために参考にしたものが二つあって、一つは「俳句添削」、もう一つは「グルメ記事のキャプション」です。

俳句というといかにも即興的な印象がありますが、実際には最初の印象をラフに詠んだ原句から完成した成句になるまでは非常に綿密な推敲作業が加わっていることが多く、その過程をまとめた本がとても参考になりました。
17字で情景世界を伝えるためには、ポイントを絞り、効果的に構成し、一語一語を精選する緻密な工程が不可欠であり、このテクニックの多くはそのまま短文作成にも活用できると思いました。

一方、雑誌のグルメ記事に掲載されているキャプションも非常に参考になりました。
通常こうした記事では料理の写真の近くに70~120字程度のキャプションが付いているのですが、こうした文章は料理のある点にピンポイントで焦点を当てることで読者がその魅力をイメージするよう促す機能を担っており、「画像とセットで欲望を刺激する短文」という意味で私が作ろうとしているものと共通しています。
当初はファッションや観光など色々なジャンルの記事のキャプションを参照していましたが、やはりエロと親和性があるグルメ記事がもっとも役に立ちました。ちなみにいくつかの雑誌のグルメ記事を読みましたが、今回の目的に一番合致していると感じたのは「東京カレンダー」のグルメ記事のキャプションでした。プロの料理人などをターゲットにした専門雑誌などではイメージ喚起よりも正確な情報提供が優先される傾向があり、あまり参考になりませんでした。ただ、このことで、具体的記述が読者にとって「イメージ」になるケースと「情報」になるケースがあることを知り、新しい興味関心が湧きました。


漢詩が参考になるかも

140字で何かを表現するための構成術、ということを考えていたときに、頭に浮かんだのが漢詩です。試しにネット上にある絶句と律詩の形式の有名な詩の現代語訳をコピペして字数を調べたところ、(同じ詩でも訳し方によってかなり字数に幅が出ますが)大体絶句は70~110ぐらい、律詩は180~230ぐらい(五言と七言の違いは翻訳を経由すると字数上あまり顕著な差を生まないようです)といった感じでした。
そこで「140字でどれぐらいのものが表現できるか?」「それを効果的に構成するにはどうしたらいいか?」という問題は漢詩の絶句を研究すると参考になるんじゃないかと期待しています。


キャプションという形式

今回の試みは単なる短文作成ではなく、自作絵にキャプションを付けるというものなので、その点についても考えてみました。

キャプションのテキストは必ず画像とセットにして、テキストと画像が相互に影響し合う関係において鑑賞されるものなので、作成するときにも画像との関係を考える必要があります。ここが言葉の力だけで効果を生もうとする小説などの執筆と違うところです。

キャプションにおける記述には大きく分けて二つのタイプがあります。それは画像に「描かれていることを書く」記述と「描かれていないことを書く」記述です。

描かれていることを書く記述

例えば、磔になったヒロインの周囲を敵兵が囲んでいるシーンの絵の場合、「磔」や「囲まれている」という事実は絵を見ればわかることなので、これを記述することは、その事実を強調したり、鑑賞者の視線を記述したポイントに誘導する効果を持ちます。こうした記述は絵を鑑賞するポイントや順番を教えるガイド役みたいなものです。
この鑑賞の順番の指示という性格は映画のカットに類似した効果をもちます。磔にされたヒロインのカットの次にそれを取り囲む敵兵たちのカットを繋ぐのか、それとも逆にするのかによって、同じ映像素材を使っていても別の味わいをもった映像が生まれますが、これと同じことをキャプションは記述の順番によって行っていると言えます。

描かれていないことを書く記述

画像に示されていることを書くことが強調と誘導という鑑賞のガイド的な機能をもつのに対して、画像に示されていないことを書くことは、画像の世界を補充して豊かにしつつ、画像を起点にして読者が想像力を働かせるように促します。
例えば先ほどの磔シーンの絵で、ヒロインの視線の先に何があるかが描かれていない場合、キャプションでそれを記述することによってシーンに対する解釈が変わり、画像から受ける印象も変わります。
磔のヒロインの視線の先にあるものが、「見渡す限りの敵の大軍勢」なのか、それとも「百人ほどの敵兵の向こうで悲しみ嘆きながら処刑を見守る市民たち」なのかによってシーンのニュアンスはかなり変わりますが、こうしたニュアンスはキャプションの記述によって生まれ、画像に投影されることになります。

画像に描かれていないものを言葉で添えることによって画像のニュアンスを変えてしまうという手法は、「この写真でボケて」といったお笑いの大喜利でも使われます。こうした遊びを知っている方にはわかると思いますが、言葉を後付けすることによる画像の印象操作は非常に強力であると同時に、かなり突飛な発想の言葉でも印象操作に成功するほど自由度が高いです。キャプションがもつ可能性の大部分はこのタイプの記述で何を書くかにかかっていると言えます。


「描かれていること」は画像内容によって限定されていますが、「描かれていないこと」はほぼ無限定です。そのため網羅的に列挙することは出来ないのですが、いくつかの典型例を紹介しておきます。

・そのシーンの前に何があったか(例:どのようにして捕まったのかなど)
・そのシーンの後に何があるのか(例:これから公開処刑されるなど)
・アングルなどの関係で描かれていないもの(例:後姿のキャラの表情など)
・画角の外にあるもの(例:遠くから心配そうに見つめる人々など)
・触覚や臭覚などに関する情報
・登場キャラの台詞や心理



習作

以上のような研究と並行して、「マイナーキャラ限定お題募集」企画で描いた永瀬綾の絵に140字以内のキャプションを付けた習作を作成しました。

4枚の差分により構成された絵なので、キャプションも4つ作りました。差分展開とキャプション構成の関係についてはこれからもっと研究していくつもりです。やはり前述の漢詩などが参考になるんじゃないかと思っています。
また絵の中に埋め込むとなるとレイアウトの問題も重要になりますが、これについてはまだちゃんと研究していません。
今回は「姐御肌蹂躙」のように差分が展開しても変化しないタイトルのようなものを表示して、その言葉とデザインによって展開する差分劇の中に一貫したコンセプトを提示する手法を試しました。

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