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2021年 06月の記事 (7)

月島奏 / ChildMaid 2021/06/30 19:00

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月島奏 / ChildMaid 2021/06/29 19:00

恋してイジめて姪っ子さまっ!#01-2

有り触れた風景…そしてまた、いつもの誤解?

 四方を校舎に囲まれた中庭には、昼時の静けさを掻き消す怒声が響き渡っていた。
 先程まで優雅に昼食を取っていた生徒たちの姿はどこにもない。残されたのは、怯えた様子で尻餅をつく気弱そうな一年生男子と、彼をこんな姿に追いやった上級生だけだ。
 二年の俺は、見ず知らずの後輩である彼を庇う形で、問題の上級生の前に立ちはだかっていた。
「で、どうなんスか? これ以上続けようって言うなら、俺も容赦しませんが」
 既に配下の二年生は俺が蹴散らしていた。皆、対峙する俺たちの様子を窺っている。
「ぁん? テメェ、なに粋がってやがんだ、あんな雑魚どもとオレ様を一緒にしてんじゃねぇぞコラッ!」
(くっ、ヤル気か…面倒くせぇ)
 コイツの噂は、予てから聞かされていた。
 特別進学コースと比べて質の低い生徒が寄り集まるクラスであるせいか、学園の治安を乱すような連中も、中には存在する。そんな輩を束ねているのが、今、目の前にいるこの男だ。
「この野郎、後悔させてやるぜ!」
 下卑た笑いを浮かべながら、懐から得物を取り出した。
「テメェ――」
 凶悪な光を湛えるソイツに、背筋が凍る。
(本気で、いくしかねぇのか…)
 内心でつぶやき、臨戦態勢を取る。
互いの間に緊迫した空気が流れた、その矢先――
 ピピーッという、鼓膜を劈くような笛の音に、我を取り戻した。
「そこっ、何をやっているの!? そのまま動くんじゃないわよ!!」
(げっ、秋本か!)
 相変わらず、首からぶら下げた喧しい笛の音にも負けないぐらいデカい声だった。
 窓から顔を覗かせた彼女は、そこが三階でなければすぐにでも飛びかかってきそうな勢いで、身を乗り出している。
 こちらが固まっているのを確認すると、上半身を校舎内へと戻した。直後、猛ダッシュで廊下を駆け抜けて行く姿が、疎らに開く窓越しに窺えた。
「クソッ、運の良い野郎だ。次はタダじゃおかねぇぞっ、覚えてろよ!」
 今やテンプレともなったお決まりの台詞を吐き捨てると、そいつは足早に校舎内――現在、猛ダッシュでこちらに向かっている少女と鉢合わせない方角――へと駆けて行く。
「ほらよ、これ、お前の財布だろ?」
「あっ、ありがと…ございます」
 一年とはいえ、噂はそれなりに知っているのだろう。俺の助けを借りて難を逃れたものの、逆に何かを要求されるのではないかと怯えているらしい。
「前から揺すられてたのか? そういうのはな、最初が肝心なんだよ。一度でも言うことを聞けば、ああいう連中は――」
「こらぁあああああ!あんたって奴はもうっ、そんなひ弱そうな一年生相手にして、なに脅しなんてかけてんのよ!」
「人聞きの悪いこと言ってんじゃねぇよ。で、今更何の用ですか?」
 彼女は俺の姿になど目もくれず、被害に遭っていた一年生の手にした財布だけを見て、全てを判断しようとしているらしい。
「そう、そういうこと。これは立派な犯罪行為です。場合によっては、外部の機関にも連絡する必要があります」
「なんだよ、外部の機関ってのは。それよりも、随分と遅い到着でしたな、風紀委員長殿」
 肩口までの長さに切りそろえられた髪型に、何がそんなに気に食わないのか、常に不機嫌を溜め込んだような鋭い目付き、左腕の腕章と、何の意味があるのか首から下げた笛。
 コイツこそ、我が校を牛耳っている風紀委員長の秋本沙夜、俺が長年想い続けてきた女の子…なのに俺に対する評価は。
「騒ぎの元凶のくせに、良くもまぁ、そんな口を利けたものねぇ」
「おいおい、本当に何も見てなかったんだなお前は。良いか? よく聞けよ、俺はだな、この一年生が、連日お騒がせ中の安西にカネを巻き上げられそうになった挙句、ボコられているところを助けてやってだな――」
「安西貞太君っていうのは、確かあなたに次ぐ不良グループの頭で」
「逆だろ逆! 俺のが下の学年なんだぞっ。それに不良でも頭でも番長でもなくてだなっ」
「はいはい、事情は後程じっくりと伺います。とにかく二人とも、委員会室に来てもらいますからね」
 沙夜は、この場での話は済んだとばかりに被害者である一年生男子の肩に手をかけて、中庭と校内を繋ぐ出入り口へと足早に歩いて行く。
 同時に俺も、他の風紀委員によって両腕を掴まれたまま委員会室へと連行される。正に行政システムの縮図というべきだろうか、横暴な権力を彷彿とさせるような組織だよ、風紀委員って連中は。
「いつものことだとは思うがな、聞かれたところで言うことは何も変わらねぇぞ。俺は何も悪くないし、その一年だって困ってるだろ。そんなことより、ああいう風紀の乱れをどうにかしたらどうだ? 遅いんだよ対応が! そんなことだから学生が自分たちの身を守るために力を行使しなけりゃならねぇんだ!」
 矢継ぎ早な俺の言葉に、沙夜の肩がピクりと震える。
 一瞬、挑発的な態度でビビらせてしまったのではないかと焦ってしまったが、次に発せられた彼女の言葉は、意外なものだった。
「あたしだって、分かってるわよ。そんなことぐらい…」
 気丈に接していながらも、どこか覚束ない。
 そんな心細そうな華奢な後ろ姿を目にした瞬間、俺の脳裏に、ある日の光景が蘇る。
 進学以前から成績優秀で、学園内でも一目置かれる立場であった沙夜は、素行の悪い学生たちから付け狙われることも珍しくなかった。
 間違っていることを堂々と指摘するクラス委員として、子供の頃から疎まれていたのだろう。
 どんなに不満をぶつけられても、陰口を叩かれても、自分の信じる道を突き進む、そんな不器用な少女は、下種な輩にとっては恰好の獲物だったのかも知れない。
 それを象徴する事件が、過去にもあった。それは、俺と沙夜の間で暗黙の了解であるかのようにひた隠しにしている出来事だが、俺にとっては、しばしば記憶の引き出しから取り出しては鑑賞している、決して忘れられない記憶なんだ。

中○部二年の夏、昼休みに起こった悲劇

「早く、こっちです!」
 鬼気迫る様子の新入生が案内する先へと、沙夜は駆け付けた。
 彼の表情、焦り具合、どれを取っても演技とは思えなかったのだろう。疑う気持ちなど、微塵も持ち合わせていなかったんだ。
「その男子はどこにいるの!?……って、ここって、ぇええ!?///」
 彼女が驚いたのも無理はない。連れて来られたのは、普通の女生徒であれば決して近付くことのない場所、男子トイレだったからだ。
「でも、私は――」
「お願いします、緊急事態なんですっ!」
 思えば、彼にとっては本当に緊急事態だったのだろう。嘘偽りの無い、訴えるような眼差しや、気弱そうな印象は、信用するに足るものだったのだ。
 困っている下級生が、自分に助けを求めている。彼女にとって、断る理由などない。
(そ、そうよ沙夜、恥ずかしがっている場合ではないわ!)
「分かったわ」
 こうして、沙夜は下級生の導く先へと足を踏み入れることとなった。
「どこに…いるのかしら?」
 普段、彼女たちが使っている個室だけが並ぶ場所とは明らかに異なる。一瞬だが、困惑を覚えたことだろう。
 個室の反対側、向かって左手に、小用の便器が並んでいる。男子が用を足すための場所だ。
 ゴクリ、と喉を鳴らす。しかし、一般の女生徒とは違うのだ、羞恥に頬を染めている場合ではない。
「だ、大丈…夫?」
 それでも、恐る恐るといった様子で声を掛ける。
 案内して来た下級生の背中が、役目を終えたとばかりに眼前から離れる。その直後、彼女の視界に衝撃的な光景が広がった。
「――ッ?」
 小便器を背にして、股間を抑えながら苦しむ上級生が、そこにはいたのだ。
 学園の優等生らしい生真面目な少女は、面倒見がよく、初○部の頃から怪我人や体調を崩した生徒を介抱する機会は何度もあった。しかし、この時遭遇した事態は、過去のどの経験にも属さないケースだった。
 男子トイレの中、異性の生徒が取り囲む中、成す術もなく立ち尽くす彼女に、一人の生徒――その後、不良グループの一人と分かった――に促される。
「コイツ、小便してたら急に苦しみ出したんです。ちょっと見てやってくれませんか!?」
 後から考えれば、おかしな話だった。もし本当に痛みを訴えていたのだとしても、保健室に運ぶなり、病院へ搬送するなりの対処をすれば済んでいたはずだ。けれどもこの時、混乱していた沙夜からは、冷静な思考というものがすっかり取り払われていたのかも知れない。
「ヤバいですよ、早く見てやって下さい!」
「ま、待って…わ、わかったから」
 すがるように訴える男子たちに、沙夜が仕方なく応じる。
「どこ、見せて?」
「こ、ここです」
 トイレの床に膝を突き、男子の股間に手を伸ばす沙夜を、取り囲む者たちが固唾を飲んで見守っている。
 そんな中、あまりにも優しすぎる先輩女子の態度に居た堪れなくなったのか、案内して来た下級生が、小さな声で呟いた。
『ご、ごめんなさい』
「…ぇ?」
 耳に届いたその言葉に、我を取り戻す。
「ほら、もたもたしてないで見てくれよ!」
 だが、この姿勢、この状況では全てが遅過ぎた。下級生の声に視線を逸らした沙夜の頭を強引に引き寄せると、そいつは力任せに自身の股間へと向けさせたんだ。
 ズボン越しにも、その部分が膨らんでいるのが分かったのだろう。この時、沙夜は酷く困惑していた筈だ。
(なに? これ、どういうこと!?)
 意味が分からないというように混乱する沙夜の姿を、取り囲んでいた男子たちが笑い飛ばす。それに便乗するように、先程まで苦しんでいた筈の上級生男子も高笑いを上げながら、凶悪な本性たる逸物を取り出していた。
「ほら、これ、凄く腫れてるだろ? 痛いんだよ!」
 ジッパーが開いた瞬間、眼前に飛び込んできたのは、いきり勃った男のシンボル。知識としては知ってはいても、本物を目にする機会などありはしない。まして、年頃の女子である自分の顔前に晒される日が来ようとは、想像もしていなかったのだろう。濁りを知らない、大きく澄んだ黒い瞳に涙の幕が広がる。
 その中に浮かび上がったものは、純真な少女にはあまりにも醜悪な印象を放つ勃起した男性器だった。
 先端の括れた肉の棒に無数の血管を貼り付かせて、ビクビクと脈打ちながら震えている。少女には存在しない生殖器、陰茎。
 沙夜は、泣き出しそうになる自分の顔を必死に隠すため、頬を引き締めていた。
「騙したの? どうして、こんなことを……」
 怒りよりも憐れみを滲ませるその表情が、勃起を震わせる男子や周囲を取り囲む者たちの間に罪悪感を抱かせる。けれど、その程度で改心してくれたら苦労はしない。心よりも、肉欲。彼らの身体が欲しているものは、人としての気持ちよりも性処理だった。
「な、なんだよ、その顔……それより、どうしてくれるんだよっ、こんなになっちまったのはお前のせいだぞ! 風紀委員の優等生さんよ!!」
「んむっ!?」
 油断した隙を突いて、沙夜の頭が抑え込まれる。そのまま、悔しさに引き結ばれた唇目掛けて肉棒が捻じ込まれた。
「んっ? ふぇっ、あむっ…ジュビュ…クチュ…」
 汗に蒸れた肉棒が、口腔内を掻き回す。先端に溢れたカウパー線液の味が、少女の小さな口の中へと広がり、軽い吐き気を覚えるが、声を発することのできない彼女は息を詰まらせながら噎び泣くことしか出来ない。
 困っている人を助けるためであれば仕方がない。だけど、人助け以外で意に反する行為を強いられることは許せない。真面目な沙夜の正義感に火を点けてしまったことは、言うまでもない。
 異性と口付けさえも交わしたことの無い唇を、陰茎に割り開かれることは、彼女に強烈な不快感を齎した。
 虫歯一つない清潔な口腔内で、凶悪な肉棒が蠢く感触。今までに感じたことの無かった、胃の内容物が逆流するような感覚を味わう。
 苦しみは、いつしか怒りへと変わりつつあった。頼れる優等生という立場を超えた、一人の少女としての本性が姿を現す。同時に、心の奥に秘めた異性への反撃心が芽生え始めたのかも知れない。
『いきなりイラマチオかよ』
『もっと激しく掻き混ぜろっ』
『さっさと出して俺らにも順番廻せよ~』
 屈辱的な笑いが、アンモニア臭の漂う密室内に響き渡る。
 その瞬間、秋本沙夜という少女の中で、何かが吹っ切れた。
 これまでに学んだ知識を総動員して、この状況を脱するに最も相応しい選択だと判断したのだろう。
「くちゅ…ぴちゅ……」
「あっ、んあっ…ひひっ、へ、へぇ、上手いじゃん。もっと喉の奥に…あっ、そう、こ、これなら…俺専用の…っう、オナホに…してやっても、へへ、良いぜ」
 近付く絶頂に熱い呼吸を繰り返しながらも、奉仕を続ける少女に挑発的な言葉を浴びせかけるのは、男としてのプライドからか。
『すげぇ淫乱女。本当は初めてじゃなかったんじゃねぇの?』
 取り囲む男子の一人が発したその言葉が、相手を想い、反撃するか否か戸惑っていた沙夜の背中を押した。秋本沙夜の優しい心が、怒りに負けた瞬間だった。
 そして。
「――ガリッ!!!」
 快感に頬を緩ませ、気持ち良さそうに鼻の下を伸ばしていた男の顔が、一瞬にして痛みと絶望に歪められる。
「あぐッ……い、痛ってぇええッ!! や、やめろ、は、放して!!!」
『お、おい、どうしたんだよ!?』
 沙夜の口の中で何かが噛み潰される音と、ただ事ではない蒼白した男の表情に、仲間の一人が不安そうに近付いた。背後で動揺する男子たちと、股間から離そうとして必死に少女の小さな頭を押さえて泣き叫ぶ男の様子に、ようやく沙夜が口を離す。
「ん…だよ…これ、お、俺のちんこが…」
 振り返った少女の顔に、先程まで馬鹿騒ぎしていた男子たちが凍り付く。
 凛々しくも可愛らしい眼鏡少女の口端からは、少しずつ赤い雫が垂れ始めていた。その量から見ても、前歯で軽く傷付けた程度のものではないことが分かる。
「ぅ…ああっ……ぅああああッ」
 射精の直前だったのだろう、勃起を震わせながらペニスの根元を抑える男子の顔が青ざめている。
 同性の只ならぬその姿に視線を下げると、そこにはトラウマを引き起こすような末路を遂げた肉棒が、変わり果てた姿で萎え始めていた。
 沙夜はきっと、本気で噛み潰すつもりでやったのだろう。今や、健康そうにプクリと膨らんでいた亀頭の面影は無く、奥歯で抉られ、肉を剥き出しにされていた。
痛みとショックで力尽きたその男子が、脚を震わせながらタイル張りの床へと倒れ込む。
「――秋本ッ!」
 そのときの光景は、今でもよく覚えている。遅すぎる登場だった。
秋本の級友から、下級生の男子が案内するところに向かって行ったという話を聞いた瞬間に危機感を抱いた俺は、校舎中を探し回り、そこらにいる生徒を片っ端から捕まえて、彼女の行方を訪ねて歩いた。だが、まさか上級生の男子トイレに連れ込まれていただなんて、いくらストーカー張りに沙夜の行動に目を光らせていた俺でも想像が及ばなかった。
 正座を崩したように膝を折り曲げて座り込む女の子が、今にも泣きそうになりながら俺の声に振り返る。
「何やってんだよ…テメェらっ」
『お前、二年の瀬戸稔彦』
 そいつが言い終わる前に、怒り任せに殴り飛ばす。
 予期せぬ後輩男子の登場で、その場の全員が顔を見合わせる。
「お前ら、何やってた。事と次第によっては地獄を見てもらうぜ?」
 自分でも、驚くほど冷静に話していた。それが逆に脅威と思われたのか、連中は顔を見合わせて答えに窮している。だが、沙夜の表情を見れば、どういうことが起きたのか想像は付く。
「ッ…チクショウ」
 所詮、弱い者にしか手が出せないのだろう。
 連中はすぐに弱腰になり、その場を離れようとするが、残念ながら、全員を許すつもりなんて、俺にはなかった。
「おい」
「ひっ」
 ペニスから血を流しながら蹲っている仲間を引き起こし、連れ去ろうとする男子に、俺はわざと凄みを利かせる。
「貞太の仲間か?」
 そいつは、怯えながらも頷いた。
「そうか。だったら、今回の件は俺の中で止めておくが、一人犠牲が出る。そう、兄貴に伝えとけ」
 静かに言うと、そいつは何度も首を縦に振っていた。
 俺は視線だけで、外に出て行くように伝える。すると、薄情にも怪我をした仲間を見捨てて全員がトイレを後にした。
「ざまぁねぇな、お前らの仲間意識はそんなもんか?」
 震えながら股間を抑える男子の姿を見れば、大体のことが分かる。
 タイルに落ちる赤い雫から、想像は付いた。
「咥え…させられたのか?」
 沙夜が、無言で頷く。
「手を出してきたのは、コイツだけだな?」
 もう一度、肯定を示した。
「そうか。で、そこのお前」
「はっ、はい」
 一応、責任は感じているのだろう。貞太の仲間に脅されたと見られる、初○部から上ったばかりのその少年は、肩をびくつかせながら返事をした。
 典型的なショタっ子だ。そんな中性的な可愛らしい容姿と小柄な身体を前に凄みを利かせていると、何やら罪悪感のようなものが込み上げて来るから困る。
「貞太の命令だってのは分かるし、ここまで逃げずに留まったのも褒めてやる。だがな、こうなった責任は、しっかり取ってもらうぞ」
「…っ!?」
 怯える後輩に、俺はすぐに笑顔を作り、安心しろと言う。
「ちょっとな、協力して欲しいことがあるんだ。秋本、お前がどんなに拒否しても、今日だけは俺の言うことを聞いてもらう。次はどうなるか分からねぇんだ。必ずしも反撃の隙が出来るとは限らないんだぞ」
 亀頭に残る、噛み切られたような傷、秋本の濡れた唇から流れる血液。口を犯されていたことは想像に容易い。
 俺が駆け付けるまでの間の状況は後から確認したが、この時点で何があったのか、その場の状況からも予測は出来ていた。
「おい、そいつを立ち上がらせろ」
「……は、はい!」
 真新しい制服に身を包む幼い顔立ち、男装した少女に見える彼にこそ、この役目は相応しいだろう。
 後輩に抱え上げられたそいつは、これから俺達のやろうとしていることが分かったのか、血を流す陰茎を押さえながらも、微かな抵抗を示す。だが、気力も体力も削ぎ落されているのか、女生徒同然の小柄な一年生の少年に、いとも簡単に動きを封じられてしまった。
「そのまま立たせてろ。お前は少し腰を引いておけ」
 少年が、不良の先輩を押さえ付ける。逆転したその姿に、俺は湧き上る嗜虐心を震わせた。
 三年でありながらも身長の低いそいつは、両脇の下に手を入れられ、動きを封じられている。その姿が、怒りに支配された俺を楽しませた。
 今考えてみても信じられないのが、その時の沙夜の行動だ。これまでにも護身のために練習――男子から付け狙われていたので――させようとしたことはあったけど、そこはやはり年頃の女の子なんだろう。羞恥心が反撃を躊躇わせていた。だが、今日はこれまでとは状況が違う。実践させる好機だ。レ○プ寸前にまで追い込まれていた沙夜には悪いが、復讐ついでに俺の欲望を満たす手伝いもしてもらう。
「お前を騙して犯そうとしたそいつを練習台にして、思う存分股間を蹴り上げてやれっ」
 唐突な俺の言葉に、意外のも素直に頷くと、沙夜は涙を拭い、股間を丸出しにした男子の前に立つ。強い意志を思わせる瞳は、決して悪を許さない、正義感溢れる少女のものだった。
 学業のみならず運動神経にも優れた沙夜の鍛え上げられた美脚が、陸上の競技前のように軽く慣らされる。眼鏡の奥の瞳が、的を捕える。狙いの先はもちろん、金的だ。
「や、やめてくれっ、もう、もう勘弁してく――」
 泣き言を漏らし始めたところへ、沙夜の容赦ない蹴りが、今も出血を続ける醜棒へと直撃する。
「ぐッ…ぎゃぁあああああああ!!!」
 しばしの沈黙の後、長い悲鳴がその場に響き渡った。
 普段は優しく、決して人を傷つけるようなことをしない、風紀を正す真面目な少女が、自分を犯そうとした男子の股間をこれでもかと言うほどに蹴り上げ、責め立てる。
 その光景は、俺の特殊な性癖を刺激した。高まる熱狂が空間に広がったのか、羞恥心に躊躇するはずの沙夜が、無心に蹴り続けていた。
 悶絶する間も与えられずに震える不良男子を、後ろからしっかりと押さつける少年も、嗜虐心に満ちた笑顔を見せていた。ぱっと見、女子二人で男子をシメているようでおもしろい。
「いいぞ、そこじゃねぇ、玉だ! 金的を狙え!」
 振り上げる度に翻るスカートから生脚が姿を表し、強烈な金的を男性器に叩き込む。上履きの爪先が肉玉を打ち砕く。その度に、男は涎を垂らして苦しんでいた。
 どのくらい繰り返されたのか。二つの肉玉を叩く衝撃音が密室に響き渡る中、俺たちは時間の経過も忘れていた。既に対象は気を失いかけている。
「おい、何をやってるんだ!?」
 そこでようやく、というべきだろうか、制御不能となった俺たち三人の元へ、教師の一人が駆け付けたんだ。
 開かれた扉の隙間から、一瞬だけ、沙夜のクラスメイトの女の子たちの姿が見えた。
 理由があったとしても、あれだけのことをしたんだ、俺たちには相応の処罰が与えられるものと覚悟していたが、学園側の対応は、体裁を優先させたものだった。
 事の発端からして、相手方にも相当な非があったし、校内の風紀の乱れや、学生の質の低さが窺える事件でもあっただけに、学園側が仲裁に入り事を収めた。悪く言えば、揉み消したのだ。
 幸い、沙夜のした行為は、犯されそうになった際の反撃であったこと、俺が間に入ったのも、助けに入ったものとして多くは追及されなかったが、事が終った後の連続金蹴りについては触れられなかった。
 あの時の俺は、復讐心に支配されていたんだ。決して下心などは無かった、と信じたい…。だが、不良男子の股間を力いっぱい蹴り上げる沙夜の姿は、鮮明に脳裏に焼き付けられていて、思い出すたびに股間が熱くなってしまう。
憧れの少女にとって最悪の出来事が、後々オカズになっているだなんて知られるわけにはいかないな。
 彼女なりに思うところがあったのか、これまでに輪をかけて真面目になったように感じられる。失敗は態度で示すタイプなのだろう。それ以降は、一度もこの話題に触れることはなかった。
 俺としては、事態の重さを考えると、あれは正当な行為だったと思っている。咄嗟に噛み付いてしまったのも、状況から考えれば仕方の無いことだ。沙夜に促した金蹴りだって、下種な野郎を反省させるためには必要な仕打ちだったんじゃないだろうか。
分かってるよ。どんなに自分を擁護する理由を並べてみたところで、俺にはどうしてもある性癖というものが付きまとってきてしまうんだ。
 幼少期に覚えてしまった、あの感覚。身体形成の違いが圧倒的な逆転を齎し、普段華奢な女子が男子を負かすその光景。想像するだけでも、股間に血流が集まって行くのを感じてしまう。
 そうさ、正直な話をすれば、あの時、追加で加えた制裁は、俺が自分の怒りを鎮めるための行為であり、同時に己の欲望を満たすためのものだったんだ。
 結果として、沙夜にとっては復讐にもなり、護身術の練習にもなったのかも知れないけど、混乱していた彼女や、逆らうことを知らない一年生を利用したことに変わりは無いんだ。
 あれから、俺も沙夜も、表面上では何も変わっていない。

――だけど

「っ…何を思い出してニヤニヤしてるのよ? 気持ち悪いっ」
 こんな態度を取っていても、あの時助けてもらったことを、沙夜は素直に感謝してくれている。
 冷静になった後、自分のしてしまったことに後悔し、相手を心配していたときのあの泣き顔は、今でも忘れられない。
 残念ながら、あの一件で二人の距離が縮まることはなかったが。
「なんでもねーよ。それより、言葉で何でも解決できるなんて思うなよ。また危険な目に遭ったらどうするんだ?」
 俺の言わんとしていることを察したのか、沙夜の背中が微かに震えた。
「わ、分かってるわよ、そんなこと。だけど、放っておくわけにもいかないでしょっ」
 困ってる奴を放っておけない。そこは、俺も同感だ。
 この考えを持つようになったのは、餓鬼の頃の出来事が切っ掛けなんだが、その時のことを、俺は今ひとつよく覚えていない。
「ああ、同感だ」
 世話焼きで、自力救済が出来ないくせに正義感だけは人一倍。コイツのそんな性格は、今も変わることがない。
 俺は、そんな不器用な女の子が大好きだし、魅力も感じている。
 だけどよ、どうして自分の身の安全よりも他人優先なんだ?
 理不尽な暴力は俺も好まねぇが、こいつの天使のような在り方は決して褒められたものじゃない。
 先を歩く沙夜は、相変わらず長身で、だけど頼りなさ過ぎるぐらいに細い。
 そんな無力な少女に、これ以上ぶつける言葉なんて、見つからなかった。

◆◇◆

ここまでお読みいただきありがとうございます。
一般公開は約15,000文字でした。

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月島奏 / ChildMaid 2021/06/28 19:00

恋してイジめて姪っ子さまっ!#01-1

本日からオリジナル小説「恋してイジめて姪っ子さまっ!」の連載を開始します。ここでは1巻までの内容(挿絵を除く)を掲載いたします。

その後「執筆支援プラン」にて続編(未発表)を公開します。加筆修正を加えて順次発表していく予定です。

将来的には挿絵を刷新して完全版を出したり、音声ドラマ化できればと思っていますが、今のところは未定です。

かなり昔に書き上げた原稿であるため、筆者も記憶があやふやな箇所がほとんどです。みなさんと一緒に楽しめればと思います。

文庫本1冊程度の文字数があるため、連載は長丁場になります。
今日からしばしの間お付き合いいただけると幸いです。

以下、本編のスタートです。

◆◇◆

プロローグ~小悪魔の密談~

「転校先では、一人で寂しくはなくて?」
 電話口から投げかけられた質問に、思わず口元が緩んだ。
 慣れ親しんだ学園を離れ、親友と顔を合わせる機会の減った今、唯一の楽しみが週末の晩、報告を兼ねて長話をすることだった。
 二人が連絡を取り合うようになってから、今日で何日目になるのだろう。
 その度に、彼女の口から最初に出てくる台詞と言えば、新しい環境での身を案ずる問い掛けなのだ。親友は、余程自分のことを心配しているらしい。
(そりゃ、そうだよねぇ)
 心の中でそっと呟いて、本日最初の質問に対する返答を考える。
「ぅーん、そうだなぁ。転校して、朱里ちゃんと離れてから随分経つけど…困ってることって言ったら」
 悩み多き少女、橘すみれ。彼女が今、最も悩んでいること。それを打ち明ける時期が、遂に来たようだ。
(もう、言っちゃって良い頃だよね?)
 朗らかな雰囲気と、知的で慈愛に満ちた笑顔、すみれを見る者の多くが、その第一印象に騙されてきた。
――優しくて、物静かな女の子
 大人達が自身に下す評価の高さは、母親にとっては自慢だったのだろう。すみれも、そんな周囲の抱く幻想を壊さないように努力して来たつもりだった。
 けれど、そんな作り物の人格など、すぐに崩れてしまうものだ。
「物足りないなぁ。寂しいっていうよりは、もっとこう」
 人差し指の先を唇に当てながら、少女は悪戯っぽい微笑みを浮かべた。
 彼女本来の人格を証明するかのような大きな瞳は、聡明さに加え、我が侭で、気の強い女の子であることを表している。
「久し振りに、苛めたいのではなくて? 愚かな男子たちを」
 やはり親友は、全てお見通しだったようだ。
「ぅう~、またそんな意地悪言う…」
「あら、違いまして? やっと本音を語る気になったのかと思いましたのに」
 幼い中にも気品のある声色が、すみれの心を刺激する。
 大好きな女の子に弄ばれる甘美な悦びに、理性が追いつかない。思わずベッドの上で身悶えてしまう。
「そうだよぉ。今までは朱里ちゃんに心配かけないようにってずっと我慢してたんだからぁ」
 電話の向こうにいる相手に表情など見えはしないのに、ぷくっと頬を膨らませてみせる。その姿を、電話越しにも想像できたのか、親友は小さな笑いを零していた。
「でも、以前のようには振舞えないのでしょう?」
「う、うん。さすがに無理だよ」
 転校以来、すみれは印象通りの女の子を演じるように心掛けてきた。
 賢くて、優しそうな容姿が幸いしたのか、クラスの女子からは人気が集まり、すぐに打ち解けることが出来た。だけど、男子連中は話が違う。
 大人しそうで、小柄な容姿が、逆に仇となったのだ。
 転校生という理由も手伝って、恰好の標的とされてしまった。
 異性に興味を抱き始めた少年たちにとって、女の子を弄ることはちょっとした冒険なのかも知れない。
「毎日やり返したくてうずうずしているのでしょう?」
 全てを見透かしているかのように言う親友には、流石と感心させられる。
「朱里ちゃん、気付いてたんだ」
「当然でしょう。ワタクシは貴女の本性を知っているのだから」
 すみれの本性。それは、周囲の人間が彼女に抱く印象を一蹴するものだった。
 運動神経に優れ、明るく活発なすみれは、男子にも負けないぐらいの体力を持っている。
 更に悪戯好きで、あらゆることに興味を抱く彼女は、早い段階で性に目覚め、そちらへ傾ける情熱も、次第に強くなって行ったのだ。そのことに、周囲の人間は気付くことができなかった。
 事の発端は、極めて単純だ。前の学園でも、物静かな優等生として過ごしてきた彼女であったが、ある日を境に、男子連中が彼女を見る目が変わることとなる。
 知識に疎いながらに、異性に気を向け始めた男子達の悪戯は日増しに酷くなり、遂に、すみれの怒りは爆発した。
 昼休み、いつものようにすみれのスカートを捲ってきた男子を追いかけ、取り押さえたすみれが、思い切り股間を膝で打ち付けたのだ。
 聡明な少女は、以前から男の子の弱点や生理現象についての知識は心得ていた。その上で行った仕返しだった。
 手心を加える余裕なんてなかった。力も体力も勝るお年頃。そんな女子の渾身の一撃を急所に受けた男子は、当然、地獄を見ることとなる。
 目の前で股間を抑えて悶絶し、嘔吐する少年を見て、すみれは初めて、性的興奮というものに目覚めたのだ。
 噂は忽ち、男子生徒たちの間に広まった。何時しかすみれは、好きなときに、好きなだけ男の子を玩具に出来る、学園の女王様として女子の頂点に君臨することとなった。
 同学年はもちろん、果ては上級生までもがすみれの下僕となり、欲望を吐き出そうと縋りついた。
 時には下級生の男子を招き、人気の無い体育館や空き教室を使い、早すぎる体験も済ませたほどだ。
 性に疎い同級生は、男女を問わず彼女の与える快楽に溺れ、少年、少女達は神聖な学び舎の中で連日宴を上げる。
 後にその行為は『放課後えっち倶楽部』と名付けられ、すみれを慕う者たちによって営まれるようになった。
 常軌を逸した行為でありながらも、その最中、親友は常に近くに身を置き、自らは手を出すこともなく、静かに見守ってくれていた。
「そう言えば朱里ちゃん、最後まで一緒に混ざることがなかったよね」
 過去を悔やむすみれが、きゅっと唇を噛んだ。
「こんなことなら最後に思い切りやっちゃえばよかったのに」
 親友と共に、男女を問わず多くの生徒たちと快楽に溺れる、それもまた一興だっただろう。
「わたくしは、すみれが気持ち良さそうにしている姿を見ているだけで満足でしたわ」
「またそんなこと言っちゃってさ、本当は朱里ちゃんも混ざりたかったんじゃないの?」
 すみれ以上に気が強く、けれど負けないぐらいに男子から人気のあった彼女が加われば、本当に学園中の生徒を自由に出来るかも知れない。すみれは常々、そんな願望を口にしていた。
「ご心配には及びませんわ。わたくしにはもっと刺激的な楽しみがありますもの」
 その刺激的な楽しみとやらの真相は、付き合いの長いすみれにも分からなかったが、彼女なりに没頭できる遊びを見つけているのであれば、それは良いことだと思っている。
「悔しいのは、すみれがわたくしの元から離れて行ってしまったことですわ。あれほど言ったじゃありませんの、少しぐらいは我慢もなさいって! だから、わたくしだってあの時、反撃しないで大人しくやられていましたのに…」
 すみれに甘い親友も、この話になると声を荒げるのだ。それだけ、離れ離れになってしまったことが辛いのだろう。
「う、うん。それは、悪かったと思ってるよ。わたしだって、朱里ちゃんと毎日会えないのは辛いもん」
 女王様たるすみれにも、手に負えないことはあった。それは、他の女子生徒の保護だ。
 思えば、すみれを慕う男女に無条件で参加を許し、一か所に集めてエッチをするという遊び事態が無謀なことだったのだろう。
 ある日の放課後えっち倶楽部、それは日常に舞い降りた楽園を、儚い幻想に変える出来事だった。
 週末のクラブ活動のため、体育館が使用されていたその日は、上級生の案内で空き教室を利用することになった。場所も変われば、メンバーの顔触れにも若干の変化が表れる。その日、新たに参加し始めた者の一人に、気性の荒い男子がいたのだ。彼は好みの女子を捕まえては、相手の意思を聞かずに自分の欲望を吐き出すことが常だった。
 そんな上級生男子に真正面から拒絶を示したのが、すみれのクラスメイトの少女だった。早々に性処理を済ませてスッキリしてしまいたい彼は、自分を拒む下級生に怒りを顕わにすると、彼女の髪を掴み、罵りの言葉を吐き付けた。そして、力で抵抗できない下級生女子の顔を強引に股間へと近付けると、先端から我慢汁を滴らせる陰茎を、小さな唇へと押し込んだ。
「んぐっ、ひぅ…ひゃ…ゃめて…ムグッ、」
興奮に火照り、蒸れた勃起を口いっぱいに咥えさせられた少女は、嗚咽交じりに呻くと、涙目になりながらすみれに助けを求めた。
 理由を聞けば、その男子とはペアを組みたがらず、彼女は自分の気に入った――クラス委員であり比較的容姿の整った――男の子とだけ組んでいたのだと言う。
 この手の争いは、メンバーが増え続ける倶楽部には絶えないことだったが、この日の出来事はいつもとは違っていた。
 既に、ただの『性処理倶楽部』となりかけていたこの頃、すみれの言うことを聞く男子は少なくなっていた。その最中で勃発した争いだったのだ。
 自分の思い通りに動かず、逆らい始めた男子連中に怒りを覚え始めていたすみれが行動を起こす切っ掛けを作ったのも、その男子だった。
『くだらない争いはお止めなさい。貴方は、彼女の好みではなかったのですわ。諦めて相手にしてくれる女の子と――』
 朱里が、少年に努めて冷静に注意をする。だが、そんな下級生の態度が気に入らなかったのだろう。乱暴なその男子は、怒り任せに朱里の胸倉を掴むと、教室の隅に布団代わりに敷いていた体操マットの上に押し倒したのだ。
『朱里ちゃんっ!』
 最早、すみれの制止など発情した少年の耳には届かない。
 取り囲む女生徒達が非難の声を上げる中、若い雄たちの興奮は一層高まって行った。
 朱里の制服のスカートを捲り上げると、震える勃起を挿入すべく、力任せに太腿の辺りまで幼さの感じられる下着が降ろされる。
 未発達な少年の生白いペニスの中で、一際充血した亀頭が、未だ薄い叢すら形成されていない朱里の恥丘へと擦りつけられる。そして、いきり勃った醜根を、濡れてもいない秘肉の合わせ目へと突き入れようとした、その瞬間。
『やめろっ、朱里ちゃんにそんなことするなぁあああああああ!!!』
 興奮する男子や成り行きを見守る女子たちの人垣を掻き分け、二人が重なる体操マットへとすみれが走り寄る。渾身の力で朱里の身体から引き離された男の子が仰向けに倒れた。股を大きく広げて無防備に晒された股間には、今も雄の本能を浮き彫りにした肉茎が息衝いている。
 この時、すみれにとって眼前に晒された男性器は、親友を喰らおうとした凶器にしか見えなかったのだろう。相手から、その脅威を奪い去る、ただそれだけの行為だったのかも知れない。
『朱里ちゃんにしたことを、償いなさい!』
 勃起に向けて振り降ろした足に、全体重を乗せた。上履きの踵が、ペニスに触れた瞬間、躊躇うことなく陰嚢の方向へとへし折る。
 男の子が泣き叫んでも、すみれは許さない。続けて、振り上げた踵を、睾丸目掛けて直撃させる。潰れるまで、いや、潰れても止めることはしない。
 繰り返される動作の中で、突然、グシャリ、という肉の潰れる感触が伝わって来ると同時に、女の子たちの黄色い悲鳴が上る。
 そこから先のことは、二人とも話題に上らせることは無かった。
 元々優等生であったすみれが起こした事件であっただけに、騒ぎにはなったが、結局原因は、朱里を襲った男子を止めようとした結果として、放課後えっち倶楽部の存在は明るみに出ることは避けられた。
「すみれが転校した後は、女の子たちが男子虐めに目覚めてしまって…」
「あれからそんなことになってたんだ」
 自分が転校した後の学園の様子を想像しただけで、すみれは感情を抑えられなくなる。
(もっと早くに他の女の子も目覚めてくれてたらよかったのに)
 けれど、この気持ちは親友にも伝えられない。
「わたくしの仕事もやり辛くなりましたわ(恋路を邪魔したくなるような純粋なカップルが減ってしまって…)」
「ご、ごめんね」
 何の仕事なのかは分からないが(たぶん、風紀委員のお仕事?)、一応、しおらしい様子を見せておく。
 結果として、すみれも後悔しているのだ。あの出来事さえなければ、今でも二人は、同じ学園で毎日楽しく過ごしていただろう。
「それで、転校先ではいつ本性を見せますの?」
 その台詞に、意地の悪さは感じられない。彼女なりに、すみれのことを心配しているからだ。
「虐められているのでしょう? ならばいっそ、脅しをかけてやれば良いのですわ。もちろん、問題にならない程度の手心を加えて…」
 念を押す親友に、すみれは苦笑するしかない。
「う、うん、もうあんなことしないよ。取り敢えず様子見かな。お母さんも、転校先でのこと知っちゃったし、あまり心配かけたくないんだ。夏休み明けまでには対策を考えないとね」
 ふと、目に止まった卓上の写真に手を伸ばす。それは、浴衣姿の男の子と写る、幼い頃のすみれの写真だった。
 目付きは悪いけど、どこか弱々しそうな少年が、すみれと手を繋いだままそっぽを向いている。
「何か考えがありますの?」
「一応、ね。夏休みに…ふふっ」
 考えただけでも、わくわくする。
 記憶の中の少年は、どんな男の子に成長しているのだろう。
「また一人で想像して…ねぇ、夏休みに、何がありますの?」
 自分も仲間に入れて欲しいと駄々をこねる朱里の姿を想像して、すみれはまた、くすくすと悪戯な笑顔を浮かべる。
「安心して、朱里ちゃんも一緒に楽しもう。あのね、前に話した、わたしの大好きな男の子、覚えてるでしょう?」
「もちろんですわ。もう、何度となく聞かされていますもの」
 嫉妬の炎を燃やす親友には、なるべく避けておきたい話題だったが、今日だけは、話さなければならない。
 何故なら。
「その子がね、夏休みに――」
 週に一度のお楽しみ。二人の夜は、他愛もない会話と共に更けて行く。
 ただ、この日は少し、いつもと違っていた。
 懐かしい人の写真を見ながら、久し振りにやってみようと思う。
(お兄ちゃん…もうすぐ会えるね)
 少女のあどけない指先が、今夜もまた、敏感なか所へと添えられる。
 親友の声に耳を傾けながら、すみれは一人、自分を慰めていた。

◆◇◆

次回「有り触れた風景…そしてまた、いつもの誤解?」に続きます。

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月島奏 / ChildMaid 2021/06/27 12:00

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月島奏 / ChildMaid 2021/06/26 16:15

金的フェチに贈る M作家がハマった玉責め音声ドラマ

今日は月島が今でもお世話になっている玉責め音声作品をご紹介いたします。
M男子の中には金的好きな方もいらっしゃるかと思いますが、今日ご紹介する作品はいずれも超絶ハードな内容となっています。去勢小説を専門にする月島でさえ“ことを致した”あとで冷静になるとさっきまで聴いていたストーリーに恐怖を覚えることがあるほどです。それでも“金的の疑似体験”が止められない。結局、溜まった頃に再び聴いてしまうのです。
これって激辛好きな人の感覚に似ているのでしょうか。辛い、痛い、でも止められない!一度ハマると抜けだせない刺激があるのでしょうね。

前置きはここまでにして、さっそくお勧めの商品をご紹介します。
1本目は、アイロンウェアーさんの「こだわり淫語~恍惚玉責め苦痛編~」です。

古い作品ですが、2021年現在もM男子を虜にしている名作の一つです。
月島の小説のような直接の去勢描写はないのですが、それに近い過激な玉責めが疑似体験できます。シチュエーション、キャラクターともに豊富なので、M男子の幅広い好みに対応しているかと思います。

ストーリーは全部で5つ。
「お嬢様」「シスター」「護身術教室」「風紀委員長」「巫女」
と属性も幅広く、玉責めの方法もそれぞれの個性が生かされています。

ちなみに月島が頻繁にお世話になっているのは「護身術教室」と「巫女」です。
護身術教室『玉責め授業編』は“潰れる”or“潰れない”の二種類が用意されているので、後者を選べば救いがあるように思われますが、この世界はそんなに甘くありません。ネタバレになるので多くは語りませんが、ある意味もっとも残酷なストーリーが“潰れない“選択かも知れません。だって、金玉を潰されるまで延々と護身術の練習台として女の子たちの金的サンドバッグになるのですから…。現実時間にすると何時間なんでしょうね。序盤の女の子たちによる責めが終わった後にもさらに別なグループからも金蹴りされるとしたら、耐えられますか?どんなに耐性のあるM男子でも壊れてしまうでしょう。作中では男のその後は描かれていませんが、それだけに聴き手の想像力を刺激することで恐怖を残しています。

巫女『玉突き百八つ編』は、本作で一番優しいお話となっております。予告編で巫女さんご自身が『睾丸はお潰しできません』と仰っています。魔除けの羽子板で玉を打ちつけている最中も途中で休憩を挟んで慰めてくれますし、あくまでもあなたの煩悩を祓うことが目的なので、虐めみたいなことはしません。さらに、巫女さんの母性にはバブみを感じられるので、ママキャラ好きな甘え上手なM男子にはお勧めのストーリーです。

実を言うと月島は昔から巫女さんフェチで、緋袴に妙な興奮を覚えるという謎の性癖を持っているのです。過去に一度だけ、D.C.というゲームに登場する巫女さんを主役にした去勢小説を書いたこともあります。巫女モノのエロゲーもたくさんプレイしてきました。エッチシーンで特に大好きなのは、緋袴を穿いたままする足コキですね。

こんな特殊なフェチを患う月島も満足できたのが、この『玉突き百八つ編』だったのです。

その他3つのストーリーは以下の通りです。

・お嬢様『暇潰し玉潰し編』
仕様人ポジションで責められます。非常に理不尽かつ過激な玉責めを味わえます。これに関しても個人的には「潰れない」を選択した方が辛い展開でした。
・シスター『睾丸鞭打ち懲罰編』
懲罰がメインです。背徳感を味わいたければ抜いた後に聴くと効果的。感情移入がし易くなります。
・風紀委員『懲罰としての睾丸圧迫編』
こちらの風紀委員長も朱里ちゃんに負けず劣らず容赦のない責め苦を味わわせてくれます。同サークルの「こだわり淫語~事務的に射精させられる快楽編~」でも登場していた女の子と記憶しています。そっちは快楽責めメインでしたが、こちらはひたすら玉に罰を与えるのがお仕事です。

以上、魅力的なストーリーが盛りだくさんです。こうしてまとめると、やはり玉を潰さない巫女さんだけ特別感がありますね。その他はいずれも“潰れる”or“潰れない”が選択できるので、玉潰しが苦手な人にも配慮されていますよ。

個人的にはアイドルも好きなので、悪いファンを去勢する話が欲しいところです。
いずれ音声作品を作る機会があったら挑戦してみますね。

2本目は、ratisさんの『風紀委員さゆりちゃん ~ chapter.0 ~「可愛い妹の目の前で…」』のご紹介です。

残念ながら続編は出ておらず、この1作品だけで終わってしまいました。
このサークルの代表者様とはお互いのフェチについて熱く語り合った関係で、2作目の準備をしている段階でお誘いを受け、サークルメンバーとして加入させていただいたのですが、残念ながら新作を発表することなく解散となりました。

この「風紀委員さゆりちゃん」は金蹴り中心で、ひたすらさゆりちゃんとその取り巻き2人から密室で取り押さえられたまま金的責めを受けるというシンプルな内容となっております。シンプルなだけに玉責めの恐怖を体験できる、臨場感ある作品に仕上がっています。

脚本を務めた代表のお話では、当初はもっと過激な去勢音声作品を制作する予定だったのだそうです。しかし、あまりにも刺激が強かったため、商品化は見送られたそうです。
月島がサークルに加入した後には没になった音声サンプルもいただいたのですが、確かに、凄まじい去勢シーンでした…。詳しくは言えないのですが、月島の小説に匹敵する壮絶な玉責めです。

あれを世に送り出せなかったのは非常に惜しい。いつか月島も音声作品を作りたい!
そう願うようになったきっかけをいただく素敵な出会いとなりました。

さゆりちゃんでは切ったりする去勢シーンこそありませんが、女の子からの言葉責めと金蹴りの責め苦が味わえます。特に妹の前で悶絶させられる羞恥心と背徳感はたまりません。金的の痛みを知らない少女たちに囲まれて、男子の痛みに耐えるシチュエーションの見せ方は上手い。心と身体を傷付けて、ときに優しく気持ち良く、快楽責めのあとに地獄へ真っ逆さま。文字通り、一生忘れられない傷と恐怖を股間にプレゼントしてくれます。

こんな素敵な作品を作るサークルさんで音声ドラマ制作のスキルを学びたかった…。
今尚、残念な気持ちですが、ひとりのM男子としてこの作品が優れていることは保障できますし、是非多くの金的フェチに届いて欲しいと思っています。

以上の2作品を、月島お気に入りの金的音声作品としてご紹介しました。

サンプルもDLできますので、ご自身のフェチに合うか一度試してみてください。
玉責めが苦手な人は、くれぐれも無理の無いようにしてください。

他にも月島が愛用している玉責め音声作品はあるのですが、ここでは特に気に入っている2作品をご紹介いたしました。

今後も新しい金的音声作品と出会い次第ご紹介させていただきます。

月島奏

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