月島奏 / ChildMaid 2021/06/28 19:00

恋してイジめて姪っ子さまっ!#01-1

本日からオリジナル小説「恋してイジめて姪っ子さまっ!」の連載を開始します。ここでは1巻までの内容(挿絵を除く)を掲載いたします。

その後「執筆支援プラン」にて続編(未発表)を公開します。加筆修正を加えて順次発表していく予定です。

将来的には挿絵を刷新して完全版を出したり、音声ドラマ化できればと思っていますが、今のところは未定です。

かなり昔に書き上げた原稿であるため、筆者も記憶があやふやな箇所がほとんどです。みなさんと一緒に楽しめればと思います。

文庫本1冊程度の文字数があるため、連載は長丁場になります。
今日からしばしの間お付き合いいただけると幸いです。

以下、本編のスタートです。

◆◇◆

プロローグ~小悪魔の密談~

「転校先では、一人で寂しくはなくて?」
 電話口から投げかけられた質問に、思わず口元が緩んだ。
 慣れ親しんだ学園を離れ、親友と顔を合わせる機会の減った今、唯一の楽しみが週末の晩、報告を兼ねて長話をすることだった。
 二人が連絡を取り合うようになってから、今日で何日目になるのだろう。
 その度に、彼女の口から最初に出てくる台詞と言えば、新しい環境での身を案ずる問い掛けなのだ。親友は、余程自分のことを心配しているらしい。
(そりゃ、そうだよねぇ)
 心の中でそっと呟いて、本日最初の質問に対する返答を考える。
「ぅーん、そうだなぁ。転校して、朱里ちゃんと離れてから随分経つけど…困ってることって言ったら」
 悩み多き少女、橘すみれ。彼女が今、最も悩んでいること。それを打ち明ける時期が、遂に来たようだ。
(もう、言っちゃって良い頃だよね?)
 朗らかな雰囲気と、知的で慈愛に満ちた笑顔、すみれを見る者の多くが、その第一印象に騙されてきた。
――優しくて、物静かな女の子
 大人達が自身に下す評価の高さは、母親にとっては自慢だったのだろう。すみれも、そんな周囲の抱く幻想を壊さないように努力して来たつもりだった。
 けれど、そんな作り物の人格など、すぐに崩れてしまうものだ。
「物足りないなぁ。寂しいっていうよりは、もっとこう」
 人差し指の先を唇に当てながら、少女は悪戯っぽい微笑みを浮かべた。
 彼女本来の人格を証明するかのような大きな瞳は、聡明さに加え、我が侭で、気の強い女の子であることを表している。
「久し振りに、苛めたいのではなくて? 愚かな男子たちを」
 やはり親友は、全てお見通しだったようだ。
「ぅう~、またそんな意地悪言う…」
「あら、違いまして? やっと本音を語る気になったのかと思いましたのに」
 幼い中にも気品のある声色が、すみれの心を刺激する。
 大好きな女の子に弄ばれる甘美な悦びに、理性が追いつかない。思わずベッドの上で身悶えてしまう。
「そうだよぉ。今までは朱里ちゃんに心配かけないようにってずっと我慢してたんだからぁ」
 電話の向こうにいる相手に表情など見えはしないのに、ぷくっと頬を膨らませてみせる。その姿を、電話越しにも想像できたのか、親友は小さな笑いを零していた。
「でも、以前のようには振舞えないのでしょう?」
「う、うん。さすがに無理だよ」
 転校以来、すみれは印象通りの女の子を演じるように心掛けてきた。
 賢くて、優しそうな容姿が幸いしたのか、クラスの女子からは人気が集まり、すぐに打ち解けることが出来た。だけど、男子連中は話が違う。
 大人しそうで、小柄な容姿が、逆に仇となったのだ。
 転校生という理由も手伝って、恰好の標的とされてしまった。
 異性に興味を抱き始めた少年たちにとって、女の子を弄ることはちょっとした冒険なのかも知れない。
「毎日やり返したくてうずうずしているのでしょう?」
 全てを見透かしているかのように言う親友には、流石と感心させられる。
「朱里ちゃん、気付いてたんだ」
「当然でしょう。ワタクシは貴女の本性を知っているのだから」
 すみれの本性。それは、周囲の人間が彼女に抱く印象を一蹴するものだった。
 運動神経に優れ、明るく活発なすみれは、男子にも負けないぐらいの体力を持っている。
 更に悪戯好きで、あらゆることに興味を抱く彼女は、早い段階で性に目覚め、そちらへ傾ける情熱も、次第に強くなって行ったのだ。そのことに、周囲の人間は気付くことができなかった。
 事の発端は、極めて単純だ。前の学園でも、物静かな優等生として過ごしてきた彼女であったが、ある日を境に、男子連中が彼女を見る目が変わることとなる。
 知識に疎いながらに、異性に気を向け始めた男子達の悪戯は日増しに酷くなり、遂に、すみれの怒りは爆発した。
 昼休み、いつものようにすみれのスカートを捲ってきた男子を追いかけ、取り押さえたすみれが、思い切り股間を膝で打ち付けたのだ。
 聡明な少女は、以前から男の子の弱点や生理現象についての知識は心得ていた。その上で行った仕返しだった。
 手心を加える余裕なんてなかった。力も体力も勝るお年頃。そんな女子の渾身の一撃を急所に受けた男子は、当然、地獄を見ることとなる。
 目の前で股間を抑えて悶絶し、嘔吐する少年を見て、すみれは初めて、性的興奮というものに目覚めたのだ。
 噂は忽ち、男子生徒たちの間に広まった。何時しかすみれは、好きなときに、好きなだけ男の子を玩具に出来る、学園の女王様として女子の頂点に君臨することとなった。
 同学年はもちろん、果ては上級生までもがすみれの下僕となり、欲望を吐き出そうと縋りついた。
 時には下級生の男子を招き、人気の無い体育館や空き教室を使い、早すぎる体験も済ませたほどだ。
 性に疎い同級生は、男女を問わず彼女の与える快楽に溺れ、少年、少女達は神聖な学び舎の中で連日宴を上げる。
 後にその行為は『放課後えっち倶楽部』と名付けられ、すみれを慕う者たちによって営まれるようになった。
 常軌を逸した行為でありながらも、その最中、親友は常に近くに身を置き、自らは手を出すこともなく、静かに見守ってくれていた。
「そう言えば朱里ちゃん、最後まで一緒に混ざることがなかったよね」
 過去を悔やむすみれが、きゅっと唇を噛んだ。
「こんなことなら最後に思い切りやっちゃえばよかったのに」
 親友と共に、男女を問わず多くの生徒たちと快楽に溺れる、それもまた一興だっただろう。
「わたくしは、すみれが気持ち良さそうにしている姿を見ているだけで満足でしたわ」
「またそんなこと言っちゃってさ、本当は朱里ちゃんも混ざりたかったんじゃないの?」
 すみれ以上に気が強く、けれど負けないぐらいに男子から人気のあった彼女が加われば、本当に学園中の生徒を自由に出来るかも知れない。すみれは常々、そんな願望を口にしていた。
「ご心配には及びませんわ。わたくしにはもっと刺激的な楽しみがありますもの」
 その刺激的な楽しみとやらの真相は、付き合いの長いすみれにも分からなかったが、彼女なりに没頭できる遊びを見つけているのであれば、それは良いことだと思っている。
「悔しいのは、すみれがわたくしの元から離れて行ってしまったことですわ。あれほど言ったじゃありませんの、少しぐらいは我慢もなさいって! だから、わたくしだってあの時、反撃しないで大人しくやられていましたのに…」
 すみれに甘い親友も、この話になると声を荒げるのだ。それだけ、離れ離れになってしまったことが辛いのだろう。
「う、うん。それは、悪かったと思ってるよ。わたしだって、朱里ちゃんと毎日会えないのは辛いもん」
 女王様たるすみれにも、手に負えないことはあった。それは、他の女子生徒の保護だ。
 思えば、すみれを慕う男女に無条件で参加を許し、一か所に集めてエッチをするという遊び事態が無謀なことだったのだろう。
 ある日の放課後えっち倶楽部、それは日常に舞い降りた楽園を、儚い幻想に変える出来事だった。
 週末のクラブ活動のため、体育館が使用されていたその日は、上級生の案内で空き教室を利用することになった。場所も変われば、メンバーの顔触れにも若干の変化が表れる。その日、新たに参加し始めた者の一人に、気性の荒い男子がいたのだ。彼は好みの女子を捕まえては、相手の意思を聞かずに自分の欲望を吐き出すことが常だった。
 そんな上級生男子に真正面から拒絶を示したのが、すみれのクラスメイトの少女だった。早々に性処理を済ませてスッキリしてしまいたい彼は、自分を拒む下級生に怒りを顕わにすると、彼女の髪を掴み、罵りの言葉を吐き付けた。そして、力で抵抗できない下級生女子の顔を強引に股間へと近付けると、先端から我慢汁を滴らせる陰茎を、小さな唇へと押し込んだ。
「んぐっ、ひぅ…ひゃ…ゃめて…ムグッ、」
興奮に火照り、蒸れた勃起を口いっぱいに咥えさせられた少女は、嗚咽交じりに呻くと、涙目になりながらすみれに助けを求めた。
 理由を聞けば、その男子とはペアを組みたがらず、彼女は自分の気に入った――クラス委員であり比較的容姿の整った――男の子とだけ組んでいたのだと言う。
 この手の争いは、メンバーが増え続ける倶楽部には絶えないことだったが、この日の出来事はいつもとは違っていた。
 既に、ただの『性処理倶楽部』となりかけていたこの頃、すみれの言うことを聞く男子は少なくなっていた。その最中で勃発した争いだったのだ。
 自分の思い通りに動かず、逆らい始めた男子連中に怒りを覚え始めていたすみれが行動を起こす切っ掛けを作ったのも、その男子だった。
『くだらない争いはお止めなさい。貴方は、彼女の好みではなかったのですわ。諦めて相手にしてくれる女の子と――』
 朱里が、少年に努めて冷静に注意をする。だが、そんな下級生の態度が気に入らなかったのだろう。乱暴なその男子は、怒り任せに朱里の胸倉を掴むと、教室の隅に布団代わりに敷いていた体操マットの上に押し倒したのだ。
『朱里ちゃんっ!』
 最早、すみれの制止など発情した少年の耳には届かない。
 取り囲む女生徒達が非難の声を上げる中、若い雄たちの興奮は一層高まって行った。
 朱里の制服のスカートを捲り上げると、震える勃起を挿入すべく、力任せに太腿の辺りまで幼さの感じられる下着が降ろされる。
 未発達な少年の生白いペニスの中で、一際充血した亀頭が、未だ薄い叢すら形成されていない朱里の恥丘へと擦りつけられる。そして、いきり勃った醜根を、濡れてもいない秘肉の合わせ目へと突き入れようとした、その瞬間。
『やめろっ、朱里ちゃんにそんなことするなぁあああああああ!!!』
 興奮する男子や成り行きを見守る女子たちの人垣を掻き分け、二人が重なる体操マットへとすみれが走り寄る。渾身の力で朱里の身体から引き離された男の子が仰向けに倒れた。股を大きく広げて無防備に晒された股間には、今も雄の本能を浮き彫りにした肉茎が息衝いている。
 この時、すみれにとって眼前に晒された男性器は、親友を喰らおうとした凶器にしか見えなかったのだろう。相手から、その脅威を奪い去る、ただそれだけの行為だったのかも知れない。
『朱里ちゃんにしたことを、償いなさい!』
 勃起に向けて振り降ろした足に、全体重を乗せた。上履きの踵が、ペニスに触れた瞬間、躊躇うことなく陰嚢の方向へとへし折る。
 男の子が泣き叫んでも、すみれは許さない。続けて、振り上げた踵を、睾丸目掛けて直撃させる。潰れるまで、いや、潰れても止めることはしない。
 繰り返される動作の中で、突然、グシャリ、という肉の潰れる感触が伝わって来ると同時に、女の子たちの黄色い悲鳴が上る。
 そこから先のことは、二人とも話題に上らせることは無かった。
 元々優等生であったすみれが起こした事件であっただけに、騒ぎにはなったが、結局原因は、朱里を襲った男子を止めようとした結果として、放課後えっち倶楽部の存在は明るみに出ることは避けられた。
「すみれが転校した後は、女の子たちが男子虐めに目覚めてしまって…」
「あれからそんなことになってたんだ」
 自分が転校した後の学園の様子を想像しただけで、すみれは感情を抑えられなくなる。
(もっと早くに他の女の子も目覚めてくれてたらよかったのに)
 けれど、この気持ちは親友にも伝えられない。
「わたくしの仕事もやり辛くなりましたわ(恋路を邪魔したくなるような純粋なカップルが減ってしまって…)」
「ご、ごめんね」
 何の仕事なのかは分からないが(たぶん、風紀委員のお仕事?)、一応、しおらしい様子を見せておく。
 結果として、すみれも後悔しているのだ。あの出来事さえなければ、今でも二人は、同じ学園で毎日楽しく過ごしていただろう。
「それで、転校先ではいつ本性を見せますの?」
 その台詞に、意地の悪さは感じられない。彼女なりに、すみれのことを心配しているからだ。
「虐められているのでしょう? ならばいっそ、脅しをかけてやれば良いのですわ。もちろん、問題にならない程度の手心を加えて…」
 念を押す親友に、すみれは苦笑するしかない。
「う、うん、もうあんなことしないよ。取り敢えず様子見かな。お母さんも、転校先でのこと知っちゃったし、あまり心配かけたくないんだ。夏休み明けまでには対策を考えないとね」
 ふと、目に止まった卓上の写真に手を伸ばす。それは、浴衣姿の男の子と写る、幼い頃のすみれの写真だった。
 目付きは悪いけど、どこか弱々しそうな少年が、すみれと手を繋いだままそっぽを向いている。
「何か考えがありますの?」
「一応、ね。夏休みに…ふふっ」
 考えただけでも、わくわくする。
 記憶の中の少年は、どんな男の子に成長しているのだろう。
「また一人で想像して…ねぇ、夏休みに、何がありますの?」
 自分も仲間に入れて欲しいと駄々をこねる朱里の姿を想像して、すみれはまた、くすくすと悪戯な笑顔を浮かべる。
「安心して、朱里ちゃんも一緒に楽しもう。あのね、前に話した、わたしの大好きな男の子、覚えてるでしょう?」
「もちろんですわ。もう、何度となく聞かされていますもの」
 嫉妬の炎を燃やす親友には、なるべく避けておきたい話題だったが、今日だけは、話さなければならない。
 何故なら。
「その子がね、夏休みに――」
 週に一度のお楽しみ。二人の夜は、他愛もない会話と共に更けて行く。
 ただ、この日は少し、いつもと違っていた。
 懐かしい人の写真を見ながら、久し振りにやってみようと思う。
(お兄ちゃん…もうすぐ会えるね)
 少女のあどけない指先が、今夜もまた、敏感なか所へと添えられる。
 親友の声に耳を傾けながら、すみれは一人、自分を慰めていた。

◆◇◆

次回「有り触れた風景…そしてまた、いつもの誤解?」に続きます。

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