「男攻め」を楽しむ 0:男攻めとはなにか
こんにちは。サークル「貧弱兄貴」です。
当サークルは(2021/7/24現在)未だ広く浸透したジャンル名のない「男キャラ×男性コンテンツ消費者」というジャンルも愛好し、便宜上『男攻め』と呼称しております。
そこでジャンル布教の一環として、『男攻め』を楽しむために役立つ情報を連載していけたらと存じます。
What is 男攻め?
しかしその前に、当サークルの言う『男攻め』とは何なのかを少しはっきりさせておきましょう。
上記のとおり、「男キャラ×男性コンテンツ消費者」が基本的な定義です。既にジャンルとして確立されている男の娘・ショタ・各種ゲイ向けジャンルは含まないことが多いですが、広義には含んでおります。
当サークルはあまりこの言い方を好まないのですが、「俺たちが受けになるBL」と言うこともできるでしょう。
名前の由来ですが、「女攻め」の男版というだけです。なぜ男性向け界隈での言い方「女性上位」から流用してこなかったのかと言いますと、「男性上位」だといまいち男キャラに責められる感じが出なかったからですね。
あらかじめ申し上げておきますと、このジャンル自体は当サークル発足以前から存在しております。しかしジャンル名が存在しないため検索性が悪く、「腐男子向け」「ネコになって聴く女性向けBLシチュエーションボイス」などと書かれた状態で数多のBL作品に埋もれていることがほとんどです。
「男攻め」の魅力とは
当サークルはある意味男攻め布教サークルでもあるので、男攻めの魅力もお伝えいたしましょう。
ざっくり言えば、「意外性」や「男だからこその特別感」こそが大きな要素であり、分かりやすい魅力でしょうか。
「ギャップ萌え」という言葉があります。キャラクターの見た目や属性から連想しにくい要素を付与してやることで、キャラクターの魅力が増すと言われています。
男攻めは全自動ギャップ萌え発生システムと言っても過言ではありません。最近のソーシャルゲームでは減ってきているものの、男キャラには多かれ少なかれ女キャラを意識するシーンが存在したものでした。そしてそれがない男キャラは「ストイックなので女性にかまける暇がない」「まだ子供なので恋愛が分からない」などの理由づけがされてきました。そんな時代を生きてきた我々にとって、男キャラが我々(以降男性と想定します)に振り向いてくれるとはなかなか考えにくいのです。ですから、男キャラがこちらに深い好意を見せてくれるだけでもギャップ萌えとして認識することができます。
そして恋愛関係や性的関係にまで至ることを許すほどに好意が深ければ、そのギャップはさらに大きくなります。男キャラの方から積極的なアプローチをかけてくれるのであれば尚更です。
現代の子供向け番組における風潮などから考えると、男キャラが我々を受け入れてくれることに対する「意外性」が薄れていくことは容易に予測できます。しかし、そのキャラクターが男であることは変わりません。女キャラとは見た目のみならず匂いや触感もまた違うことでしょう。「男キャラにしかない何か」は確かに存在します。それが何なのかはまだ言語化できておりませんが、当サークルの作品からそれを感じ取っていただけたのであれば、それはとても嬉しいことです。
「結局のところ全部ホモでは?」の問いに対して
これは男の娘ジャンルでも発生した現象なのですが、「要するにこのジャンルって男同士の恋愛・性的関係を取り扱ってるわけじゃん? それを愛好してるって男としてどうなの?」と外部から言われているような気がしてしまい、愛好し続けることにためらいが生じる場合があります。
この外部の声(実際にそう言う人がいるかどうかは不明ですが)を「このジャンルは異性愛者男性が愛好するのに妥当であるか?」という問いとして単純化するとき、当サークルは3つの理由から「コメントのしようがない」とお答えすることしかできません。
1つ目の理由は「男の娘ジャンルがまだ己のスタンスを確立していない以上、それに倣って判断するわけにもいかないこと」。
男の娘ジャンルのメイン層は異性愛者自認の男性(として振る舞う人々)であり、キャラクターは『女らしさ』が強い男キャラです。最近では男性的な特徴があればなおよしとする人々も存在しています。時々「男の娘ジャンル愛好者はホモか否か」という話も持ち上がりますが、どの要因に注目するかで結論が変わってしまい、結論を出す必要性についてはさておき今に至るまでひとつの結論には辿り着けていません。
かろうじてジャンル支持者のうちでは「女性的な要素に魅力を見出しているのでホモじゃない」、つまり「ジャンル愛好者はまだ異性愛者の範疇に留まる」という一定の了解が形成されているようです。しかし前述の通り男性的特徴に魅力を感じる人も一定数存在し、全員が全員そう認識しているとも言い難いのが現状です。
まとめると、「男の娘ジャンルですら異性愛者向けなのか同性愛者向けなのか、あるいは腐向けなのかハッキリしない」ということですね。
ここで男攻めを見てみましょう。メイン層は異性愛者の男性(を想定)、キャラクターは男性。このジャンルの愛好者を外では見かけないので当サークル内の話になりますが、「男キャラが我々を受け入れてくれるというレアなシチュエーション」に魅力を覚える人が多いです。
メイン層にのみ注目するのであれば、これは立派な異性愛者向けです。どこに魅力を感じるかについても、男性的な特徴を二の次にしている以上、男の娘ジャンルと同じような立ち位置と言うことも可能です。その結果、キャラクターは紛うことなき男性でありながら異性愛者男性向けであるという、感覚的には納得しがたい結論を導くことができてしまいます。
しかし、納得しがたい結論というのは男の娘ジャンルも一緒です。キャラクターが身体的には男であるにもかかわらず、今のところは異性愛者男性向けとしてカウントされます。男の娘ジャンルはなぜ異性愛者男性向けとみなされるのか? そもそも異性愛者男性向けと分類することは妥当なのか? そこが未だにはっきりしないのです。そのため男攻めもまた、男の娘ジャンルに倣った分類ができない以上、とりあえず異性愛者男性向けとするほかありません。ですが、この結論は直感に反するものであり、明確な理屈によって導き出されたものでもありません。
結果、異性愛者男性が男攻めジャンルを愛好することが妥当か否かを判断することはできなくなります。
2つ目の理由は「このジャンルが100%異性愛者男性向けではないこと」。
当サークルが考える男攻めの定義は「男キャラ×男性コンテンツ消費者」と先程申し上げました。しかしこれは作品分類としての定義であり、愛好者の性別はジャンル定義に無関係です。いわゆる成人男性向けジャンルを女性が愛好するように、男攻めもまた男性以外の方が愛好しうるジャンルです。
ですから、このジャンルは「『男』として男キャラと何らかの関係性を持ちたい人」向けと言った方が適切でしょう。『男』になるひとときが欲しい方もまた、このジャンルの愛好者として想定されます。つまり全ての男性にこのジャンルをおすすめするのは不適切であり、逆に異性愛者女性が男攻めジャンルの愛好者になる可能性も存在します。
これは当サークルの意見なのですが、男攻めはTLや腐など「女性向け」と呼ばれる界隈から様々なテンプレートを借りてきた分派と考えることが可能です。そのため、完全に男性向けと言い切ることは難しいところがあります。
このように男攻めコミュニティは男性以外のメンバー・男性向け以外の要素をそれなりに含むことが想定されるため、異性愛者男性がこのジャンルを愛好することに対して当たり前であるとは言い切れませんし、絶対にありえないとも言えません。
3つ目の理由は「このジャンルが男性向け・ゲイ向け・腐向けそれぞれに求められる作風からこぼれ落ちていること」。
当サークルの処女作『淫魔青年将校が貴男に淫語とチンポとラブをブチ込む音声』は暫定的にゲイ向けとして登録しておりましたが、女性向けとして登録する運びとなりました。なかなか妙な話ではありますが、どちらにせよDLsiteがるまにBLの売り場からお求めいただく形となっておりますので皆様にはあまり関係ない話かもしれません。
しかし当サークルはこの決定に100%納得したわけではございません。BL作品の定石を離れ、制作側も腐向けとは認識していない今作を女性向け作品として登録させていただくことについては、従来のBL作品を愛好する方々に対して申し訳なく思っております。この場を借りてお詫び申し上げます。
先程も申し上げたとおり最初はゲイ向け区分に登録していたわけですが、当サークルにゲイ自認はおらず、キャラクターも「男が考える『男らしさ』」からは離れた造形で、この区分に置くのも不適切だと考えておりました。
女性向け(その中でも「乙女向け」「BL」「その他」に振り分けられます)として登録することも選択肢にはありましたが、「当サークルに腐自認がいない」「いわゆる『壁になって聴く』ことを考慮せず、聞き手に直接語りかける手法を取っている」という理由から当初は却下されました。
男性向けで登録することも検討したものの、元腐アンチのサークルメンバーによる「知識のない人が見たら腐としか認識されないものを男性向け売り場に置くのは許しがたい」の鶴の一声で却下されております。
要するに、男攻めはどの区分にも置きにくいジャンルなのです。男性向けに置くには男らしさが強く、ゲイ向けに置くには男らしさが足りず、TLとはターゲットが異なり、腐向けの理念とは真っ向から対立する。100歩譲って男臭いキャラクターがメインであればゲイ向けに分類できますが、そうなると「ゲイ向け」というジャンルに吸収されてしまいます。
今後ゲイ向けまたは男性向けの範囲が拡大し、線の細い少女漫画的なイケメンまで含むようになるそのときまで、男攻めジャンルはTL腐問わず女性向け区分の隣人として存在することになるでしょう。裏返せば、その日が来るまでこのジャンルはその3つの区分のどこにも所属できないと考えられます。
したがって、このジャンルは異性愛者男性向けと言い切れませんが、同性愛者男性向けとも女性向けとも言えません。また、異性愛者男性が愛好するのに妥当なジャンルでもあるかどうかも判断できません。
このように、定義を明確にする緊急性がないと判断された分類が多く存在する以上、当サークルも男攻めジャンルを異性愛者男性が愛好することの妥当性について曖昧な答えかたをせざるを得ないのです。
感情的なことを言えば「男がこういうの好きでも別にいいだろ!」の一言に尽きます。
おわりに
男攻めは当サークルが取り扱うよりも前から、細々と断続的に存在し続けました。しかしその数の少なさゆえに、「新しいジャンル」として認識されることが多いです。知らなかったジャンルなのですから、そう認識するのはおかしなことではありません。
当サークルはそのジャンルに「広く浸透した呼び名」をつけることで検索性やミュートしやすさを上げ、コミュニティを活性化し、ゆくゆくは男攻め作品がさらに増えることを狙っております。時代が下り人口が増えればさらなる問題点が見つかることでしょう。しかしそれと同時に、当サークルが予想していなかった・当サークルには作れなかった新しい「男攻め」が生まれてくるはずです。
そんな希望に満ちた未来を夢見て、当サークルからのお話を締めくくらせていただきます。
ありがとうございました。そしてこれから、男攻めをどうぞよろしくお願いいたします。