お絵描き(FGO_清姫)
こんばんわです!
また1枚お絵描きしましたのでひとつ。
FGOの清姫。21年8月9日に描いた絵のリライトです。
こっちが21年のイラスト。当時に比べると絵はだいぶ上手くなったと思います。でもなんというか、迫力というか気迫みたいなもんでは昔の方が勝ってたような。まあ、塗りは確実に今の方がよくなってるだろうと思うのでいいのかなぁと。
以上でした、それでは!
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遠蛮亭 2023/05/12 17:52
こんばんわです!
また1枚お絵描きしましたのでひとつ。
FGOの清姫。21年8月9日に描いた絵のリライトです。
こっちが21年のイラスト。当時に比べると絵はだいぶ上手くなったと思います。でもなんというか、迫力というか気迫みたいなもんでは昔の方が勝ってたような。まあ、塗りは確実に今の方がよくなってるだろうと思うのでいいのかなぁと。
以上でした、それでは!
遠蛮亭 2023/05/11 19:07
こんばんわです!
まず、お絵描き1枚。
あいミスのフリッカ。描いてるうちはだいぶうまく描けてる気になってましたが、完成するといまひとつ。服は結構問題なしなんですけどね、表情、とくに目が生きてないのが……。まあ、以前のようにこの絵は気にくわん、と歯噛みするようなことはないのです、なので最低限描けてるとは思いますが、やっぱり少し物足りない。
ちにみにこのフリッカのウサ耳で思い出しましたが、昔ウチでミニうさぎ飼ってました。これがミニといいながら普通の兎の数倍大きくなるわけですよ。しかも性格凶暴で餌の時にしょっちゅう顔面蹴られました。1匹しか飼えなかったのでウサギの性欲をもてあましてたのかもしれないです、懐かしい。
以上で終わりだと物足りないので、くろてんリライト再掲。今話もよろしくお願いいたします!
くろてんリライト.2章5話
一夜明けて。
蒼月館男子寮・秋風庵の辰馬の部屋。
「さて。こっからここがおれらの拠点になるわけだが」
ぼや―と言う辰馬。緊張感はあまりない。
「必要なことは何でしょうね。とりあえず募兵と出陣は必須事項だとして……」
大輔が首をひねる。これからやることは一冒険者としての行動ではなく、大勢の仲間に責任を持つことになる軍団戦。辰馬に緊張感が欠けるとはいえ、その舎弟たちの表情はさすがに硬い。これまで「人を率いる」なんて経験、ロクになかったのだから当然だが。
「内政、っつーか学園経営の一部かな、そのへんも任された。購買とか学食のメニュー案とか出して、それで実際利益が上がったら一部を軍資金にしていいんだと」
ぺらりとメモをめくって、辰馬は相変わらずぽやーんと。この緊張感のなさが伝播して、仲間たちの過分な緊張をうまい具合にほぐす効果になる。計算でやっていたらとんでもないが、あいにく天然である。
「あ、ならオレメニュー案出します。とにかく辛いやつ!」
「いやがらせか~?」
挙手するシンタに、辰馬は半眼ジト目でぼそっと言う。シンタも気づいたようで、すこし気まずげに笑った。
「いや、そーいうつもりはないンすけど。……辰馬サン、辛いのダメっスもんねー……」
「ガキ舌だってゆーんだろーが。おれにいわせりゃ辛いのばっか喜んで食ってるお前らの舌がバカなんだよ」
「いや、でも辛いの受けますよ?」
「まーなー。そこらへんはわかってるんだが。んじゃあなんか具体的にメニュー考えといてくれ」
「了解っス!」
「つまり、商業活動とそれに応じた報酬の受け取りが認められる、と、そういうことでゴザルな?」
出水がデブ肉を揺らして言って、眼鏡をくいっと。
「うんまあ、おおむねそのとーり」
「では拙者の出版物の稿料、今後は受取先をここにしておくでゴザル。多少の軍資金の足しにはなるでゴザろう」
出水秀規のもうひとつの顔、「ちんちんかもかも丸」名義での官能小説家活動。業界で威張れるほどに売れているわけではないが、辰馬たち学生にしてみればその印税による稼ぎは大金だ。それを出水は擲つという。
「え……いーんかな?」
「構わんでゴザろう? 問題あったらその時謝ればいいでゴザル」
「そんなもんか? ……んじゃ、内政はそんな感じで収益上げるとして。あとは訓練も必要だな。昨日ので実感した」
実感した、というのは味方の男子の弱さだ。アルティミシア大陸は女神の加護する大地、しぜん恩寵は女子に篤く男子に薄い……というのはわかりきっていたとはいえ、その落差がここまで大きいとは思わなかった。そのあたり、辰馬は魔王と聖女のデモノハーフで女子に劣ることがなかったし、シンタ達三バカも神力・魔力を持たない霊力・人理魔術使いとしてはかなり腕が立つから、失念していたといっていい。昨日の一戦、陣形とか作戦とか、そういうものに相手が慣れていたならああも簡単にはいかなかった。
「ですね。鍛錬なしの雑兵ではこの先、役に立ちません。ましてや神力持ちの女子を相手にするわけですから……」
「模擬戦の感触だと……、女子一人に男子五人でようやく互角、ってとこなんだよなぁ……」
「はれ、そんな差ありました? オレ、案外簡単に勝てたと思ったんスけど」
「そりゃ、指揮官の能力に差があったからな。林崎や塚原が相手ならおれは勝ってるけど。学生会長やら、向こうの李詠春やらに比べるとさすがに厳しい」
シンタの問いに、正直に自分の実力とその限界を告げる辰馬。学生会長・北嶺院文はアカツキ三大公家の令嬢だが、その門地格式にかかわらず実力で士官学校に大佐待遇で入学を内定している才媛だ。昨日辰馬が見せた戦術くらい簡単に対策するだろうし、それと張り合えている明芳館のトップ、李詠春もそれと同等の才覚実力を持っていると考えるべきだろう。
「では、その辺5対1から3対1くらいにはなるよう、レベル上げますか」
「だな。つーても普通に冒険者としてのレベル上げじゃいかん。軍指揮官と兵員としての技量と熟練を上げんと」
「んな都合のいい訓練所あります? まさか国軍の演習に参加とかできないっスよね?」
「シンタ惜しい。国軍の出してる討伐クエストを受ける。今までは無視してたけど、ギルドにはそーいう仕事もあんだよ。傭兵用の」
「傭兵用のクエストですか……普通のクエストより何度厳しめですね。そのぶん、報酬も多くはありますが」
「ま、無理はせん範囲でな。あとは……まあ、実際やってくのが一番か。つーかやってみねぇとなんもわからん」
「そうですね。じゃあ、ひとまずこのくらいで?」
そこでガチャリとドアが開き。
「ここが新羅の部屋? 案外こざっぱりしてるのね」
「し、失礼します新羅先輩……はわぁ、男の人の部屋……」
と、入ってきたのは林崎夕姫、塚原繭の二人。今日は冒険用の武装ではなく、普段通りの蒼月館学生服姿である。ふたりとも男の部屋が珍しいのかきょろきょろするので、辰馬としてはなんだか背中がむず痒い。
「おのぼりさんか。つーかあんまりジロジロ見んなよ、なんか恥ずかしーわ」
「なによ、見られて困るもんでもあるの? エロ本とか?」
「エロ本ねぇ……そーいうのも見たくはあるが、買うなってしず姉のお達しでな。『ムラっと来たら雫おねーちゃんに全部ぶつけんさい!』ってことで……」
「はあ……牢城先生もモノ好きよね、こいつのどこがそんなにいいわけ?」
「知るか、おれに聞くな」
「いえ、新羅先輩はかっこいいですよ? 林崎センパイだって……」
「繭!? アンタなに言ってんの!?」
「??」
「ぎゃー! こっち見んな! アタシはおねーさま一筋なの。新羅なんか歯牙にもかけてないのよ!」
「はいはい。くすす……」
「??? ……まあ、林崎が同性愛者なのは知ってるが」
林崎夕姫と北嶺院文がそういう関係だということは、蒼月館の学生ならだれでも知っているレベルの話だ。どちらが受けでどちらが攻めかとか、そういうことは知らないが。そもそも女性主権で男子は汚らわしいとされるこの世界、女性同士の同性愛は珍しくもない。
「……そーよ。なにか文句ある?」
「いや、ウチにもすぐひとのケツ触ろうとしてくる赤ザルいるから、まあなんとなくはわかる」
「ちょっと! 上杉とアタシを一緒にしないでくれる!?」
「いや、大して変わらんだろ」
「うわ‥‥‥こーいうこというからこいつ嫌い」
「んで、なにしに来た?」
「あ、すみません失礼しました……、本日をもって正式に、新羅先輩の指揮統帥下に入ることになりました塚原繭と」
「林崎夕姫よ。いちいち自己紹介も必要ないでしょーけど」
「センパイ? 相手は上官なんですから、ちゃーんと頭下げて」
ふてぶてしく昂然と胸をそらす夕姫の頭を繭がつかんで、強引に頭を下げさせる。武家の娘で体格的にも腕力的にも優れる夕姫の力に抗しきれず、ギギギと頭を下げさせられる夕姫。
「了解。これからいろいろやってもらうから、よろしく」
「はい♡」
「ま、アンタが成功してるうちは、いうこと聞いてあげるわよ」
こうして、林崎夕姫と塚原繭が、辰馬の指揮下に入った。
さらにしばらく駄弁っていると、再びドアがガチャリと開く。
「たぁく~ん、たぁくんたぁくんたぁくんたぁくん、会いたかったよぉ~っ!」
「うぎゃああ!? いきなり抱き着くなやアホ姉!! なんの用だアンタ!?」
「むー、たぁくん冷たい。あたしのいないところでキレイどころ二人も侍らしちゃって……。まあ、あたしは理解のあるやさしー奥さんなので許してあげちゃうけど」
「いーから、本題」
「はーい。えっとね、みずほちゃん、週末退院だって。うれしかろー?」
「週末? また、えらく早い……やっぱ齋姫ってことで、女神の加護的なもんがあるのかね……? そんじゃ、退院のときは手伝いするとして。しず姉、訓練教官頼めるか?」
「んー? 学園抗争? 教師の立場としては学生の喧嘩に手を貸すのはなぁ~……。てゆーか、たぁくんがアレに参加するとか意外だったよ? 普段たあくん、あーいうのには我関せずじゃん?」
「……まあなー、ちょっとあってな」
絶望の悲鳴を上げながら駆け寄ってきた男子、背後から神撃を叩きつけられ、踏みつけにされた少年の姿が頭を離れない。そのうえで明芳館・李詠春の「男子は羽虫」発言。ことここに至っては我関せずというわけにもいかなかった。
「積極的に学園抗争に加担、はできないけど。まあ偶然にうちの学校の子がよその子と喧嘩してて? そこに出くわしたらしかたなく、雫おねーちゃんも手を貸すことになる、かな」
「あんがと、それで十分。あとは……エーリカか」
……
…………
………………
エーリカ・リスティ・ヴェスローディアはスタジオにいた。瞬くフラッシュライト。赤い水着と前をはだけたヨットパーカーという健康的に煽情的な姿のエーリカが、シャッターが切られるたび表情とポーズを目まぐるしく変える。
「その表情いいよぉ~、そのまま、そのまま!」
「エーリカちゃんもう少し足、寛げてみよーか?」
「はーい♪」
と、水着姿でニッコリ笑う同級生をぼけーっと待ちながら、「なんだろーな、あれ……」辰馬はぼんやり呟いた。なんというか、辰馬の知るエーリカとここにいるエーリカの落差が激しい。あいつあんな素直な顔するキャラ違うやろ! と思うわけだが、まあ職場とプライベートの顔が違うなんて珍しくもないのである。
辰馬はスタジオのスタッフとは顔見知り……というかエーリカにグラドルの仕事を紹介したのがシンタで、その時に随伴したので顔を覚えられている。その節は何度もしつこくアイドルにならないか、と尋ねられたものだが、さすがに何度も重ねて断ったからにはこれ以上しつこくするスタッフもいない。
だからスタジオに足を運んでも門前払いとはならず、「撮影終わるまで見ていくかい?」となったわけだが。
「シンタとか、エーリカの身体がエロいエロいってよくゆってたが……まあ確かにエロいか。ふだんジャージだとわからんが」
「はれ? たつま?」
撮影中のエーリカの注意が、こちらに向いた。余所行きの表情が剥がれて、普段の強気で自信家なエーリカが現れる。辰馬はあちゃーと頭を抱えて撮影妨害になったことを悔やんだが、むしろスタッフは大喜びでエーリカの素の表情を撮りまくった。
「ちょ、やめ、やめて! この表情違うから!」
意図しない表情を隠そうとするエーリカと、その困り顔に群がるスタッフたち。なんか襲ってるような絵面に、辰馬はそっと目を背ける。
「あ゛-、えらい目に遭ったわ……で、なにしに来たの、たつま?」
「んー、今後学園抗争に参加することになってな。エーリカの力を借りたい」
「ふーん。色気のない話ねぇ」
「おれに色気とか求められても困るわ。んで、ご協力願えますか?」
「いーけど、なんか見返りがほしーところよね。国語と歴史の家庭教師、あたしが望んだ時にいつでも、っていうのは?」
「OK、それでいい。まあ完全にいつでもってわけにはいかんかもしれんが」
こうして。新羅辰馬は順調に、陣営の地盤を固めていく。
数日間は学生会の一員として、学食のメニュー出しから購買の管理、放課後の治安維持活動と集団戦訓練。そして週末、いよいよ神楽坂瑞穂が退院する。
………………
以上でした、それでは!
遠蛮亭 2023/05/03 11:06
こんにちわです!
本当は「日輪宮」のCGギャラリー作らないとならないんですが、まあそこは急ぎでもないし今急いでも発売はできないので、お絵描きです。
まずこちら、あいミスのユー。半年くらいあいミス放置してたらユーがプレイアブルになったということでひとつ。原作のユーはややツリ目なのでその時点でイメージが違うわけですが。
で、もう一枚。武蔵野伊織敗北絵。この子とか賢修院、明芳館のほとんどのキャラは自分で描かないといけないので練習。そもそも伊織の性格からして人気も出ないだろうから彼女らは立ち絵のみでOKと思ってたんですけども、意外と需要あるかも。
以上でした、それでは!
遠蛮亭 2023/04/29 21:46
おつかれさまです!
あのあとまたお絵描きをしたことと、あと3話でくろてん第1幕が完結、ならばいろいろ忙しくなって作業ができるかどうかわからない後日にするよりもあした日曜に全話(あくまで1幕の全話ですが)をあげ終えようかなということで今日3件目の更新です。
まずお絵描きはこちら。
FGOのジャンヌ・ダルク。FGOではマルタと三蔵ちゃんと並んで好きなキャラです。聖女というだけで劣情に補正がかかる。絵的には下絵の方が上手く描けたのですが、まあこれはこれで悪くないかと。
それでは「くろてん」小説再掲。今話でヒノミヤでの対五十六戦は決着、次話と次次話はエピローグだったり、次幕への準備だったりになります。
黒き翼の大天使.1幕3章16話.剛強なるは必ず死し、仁義なるは王たり
全開で行く。
あと数分なら魔王の力も使えるだろうと、辰馬は呪い石を外した。
呪訣。覚醒する本質。天が謳い地が戦き、空が震える。
その、地上に生きるすべてが恐れにふるえるほどの霊威を前にして、「くく……そうでなくてはな。来い、新羅辰馬。魔王殺しの栄爵も、ついでに貰っていくとしよう!」荒神を宿した神月五十六は悠然と微笑った。
「やかましーわ、やれるーもんならやってみろ!」
地を蹴って、肉薄。打ち込む拳は真なる覚醒を経た盈力を帯びて、それだけで父・狼牙の天桜絶禍、叔母・ルーチェの七天熾天使に匹敵する威力。拳が空を裂くたびに、ぎゅおっ、ばひゅ、と轟音が響く。
そのとおりに、空を切るのだった。中たらない。新羅辰馬という天才が新羅江南流という高度に洗練された術理を今のレベルまでつきつめて、確実に仕留める意思を持って虚実をとりまぜての打撃を繰り出しているにもかかわらず。五十六の身体にはかすりもしない。風に舞う柳の葉、水面に揺れる笹船の歩法と体術。それは新羅江南流、陽炎の術理に通ずる。
……こいつ……。
薄く笑いながらこちに目を合わせてくる五十六に、辰馬の脳裏でひとつの仮定。空間削撃以外にいくつか隠してあるのだろうこの相手の能力、そのひとつはおそらく「目を合わせた相手の技量をコピーする」もの。だから苛烈な攻防の中で、辰馬から目を離すわけにはいかないのだろう。とはいえ、術理が頭の中にあったところで鍛錬なしで新羅江南流の体術秘伝を使いこなせるはずもない。神月五十六の地力が相当高いレベルで肉体を錬磨していることは間違いがなかった。
そして、フェイントからの右ストレートを読まれ躱され、足下を軽く払われる辰馬。それ自体はほんの小さな崩しにすぎないが、達人同士の読み合い化かし合いにおいてほんのささいな隙こそが致命。
意識が0.0000001ミリ秒にも満たない時間、足もとを向く。表層の意識は五十六から動いていない。身体も沈めたりしていない。
それでも、深層の意識がそちらをかすかに意識すれば、五十六には十分。
辰馬の打ち出した腕に、上から右の鈎手を引っかける。ぐい、打ち下ろし、そのまま引き崩す。上体が空いた。左の掌を辰馬の顎先に。打ち込む瞬間、くん、とスナップをきかせ、衝撃を反響させる。
どぉふっ!
「くぁ……っ!?」
直撃。よろめく辰馬。魔王の霊威をまとうといえど、肉体そのものは人間ベースから変容したわけではない、脳を揺らされれば脳震盪を起こし、脳震盪を起こせばふらつき、よろめく。かろうじての判断で、追撃を避けて10メートルほど、一気に飛び退いた。無理してのバックステップにひどい吐き気がするが、あのまま間合いにいては仕留められている。どうしようもない。
くそ、にしても拳で上手いかれるとは……腹ン立つ……。
辰馬とて弓取りの子(部門の家柄)としての矜持がある。自分の技をコピーしただけの相手にやられるなどと、我慢できることではなかった。
つまるところ……あっちのほうが冷静で理知的におれを分析できてるからおれをハメられるわけだ。こっちも冷静になれ。拳の達人なるは臆病謹慎。頭を使って、逆に罠にはめろ。向こうがこっちを舐めてるなら、もっと舐めてバカにさせて、驕らせろ。
苛烈な攻防の中で、わざと隙を作る。隙、といっても常人ならほぼ気づかない、巧妙に隠された空隙。それを五十六は誘い、と知って逆を打つ。それを何度も繰り返す。繰り返すうち、五十六の動きが単調化する。辰馬が隙を見せたら、自動で逆を打つ。惰性でその行動がすり込まれた五十六の一撃、大振りで止めに来る。それがわかっていれば、そこにカウンターを置いておくことは難しくない!
どぅっ!
今度は辰馬の右掌打が、五十六の頬桁をえぐりこむように叩いた。続けて左ボディ。さらに、右足を跳ね上げ、高角度で野太刀の斬撃を思わせる、必殺の上段回し蹴り! 神月五十六はガードもできず衝撃を逃すことも許されず、長い黒髪をなびかせて地面に這いつくばる。
「っし!」
「…………」
残心の構えを決める辰馬の前で、五十六の肩が震えた。痛みと屈辱からか、と思うも、「くくく、ははは……!」という哄笑がそれを裏切る。ゆっくりと、片膝立ちになりつつ立ち上がる五十六は、浅黒くも端正な顔立ちに邪悪な笑みを浮かべた。
「効いた、効いたぞ新羅辰馬。さすがは魔王の継嗣。そして、さすがは我が生け贄! その力を儂に捧げるためにきてくれたこと、心の底から嬉しく思うぞ!」
「誰が生け贄か、ばかたれ。このまま沈めて終わらせる。観念しろ、クソ爺。次に目が覚めたら王城の牢獄だ」
まとう盈力の密度を高め、次こそ必殺の一撃をと構える辰馬。たちのぼる魔王の気は目に見えるほどに濃密な圧を帯び、しかしそれが徐々に徐々にと、かさを減らしていき、五十六へと流れていく。
「教えておこう。儂の……ミカボシの能力は3つ。ひとつは空間削撃、ひとつは目視した相手の能力の模倣。そして最後のひとつが、「接触を持った相手の力を奪い取り、神力に変換する」力。さすがにそこまで膨大な盈力を一度には奪いきれんが……なんにせよ、終わりだ。こうなった以上、遠からずお前の力は儂のもの。王手詰み……お前流に草原の民の言い方で言うなら、シャー・ルフだ」
にやり、残忍に笑い。弄(いら)うように言ってのける五十六。辰馬の盈力は着実に五十六へと流れていき、辰馬は消耗に片膝を突く。このままでは魔王化を維持できる時間も、あと1分ともたない。
轟!
と空を裂いて、巨大な炎虎の衝撃波が五十六を叩く。それはガードすらしない五十六の髪をわずか、そよがせたのみだったが、五十六はひどく苛ついた表情で不愉快げに相手を睨めつけた。
「この場に不相応の塵(ゴミ)が、神聖な戦いを穢すな。今すぐこの場を去れば神力の毒は消える、見逃してやるからさっさと家に帰って自慰でもしていろ、餓鬼!」
「うるせぇ……親分がピンチの時に頑張れないで、なにが舎弟だ……赤ザル、デブオタ、気合い入れるぞ! 今まで新羅さんに貰った恩、ここで返す!」
「「おぉっ!!」」
「身のほど知らずの塵どもが……ならば死ね!」
駆けて間を詰める大輔に、五十六の無慈悲な空間削撃。「デブ!」「合点承知でゴザル!」出水が術で造った石像が、大輔の目の前で身代わりになってぐしゃりと粉砕された。時間を得て、大輔は一気に踏み込む。大きく弓を引くように右腕を振りかぶる。毎日30万回の腕立て伏せと、同じく30万回の拳立て伏せ、30万回の指立て伏せと10万回の一指禅で鍛えた上半身。拳のタコは巻き藁がぐすぐずになるまで突きを繰り返した結実、土台となる足腰は日々、腕立てに劣らないだけ繰り返す片足スクワットの成果。その拳は石造りの巨人兵(ゴーレム)すら一撃で破砕する威力。
かつて、朝比奈大輔はきわめて荒んだ少年だった。家庭環境が劣悪で、水商売の母は不貞を繰り返し、そのヒモである父は酒を昼から酒をかっ喰らい、頭の上がらない妻の代わりに大輔を打擲した。幼い頃、まだまともだった父のすすめで空手に出会った大輔はやがて父よりはるかに強くなったが、父を憎みながらも結局、包丁すら向けて自分を虐め、脅し、痛めつける父を殴ることはできなかったから、傷が絶えることがなかった。
やがて蒼月館に入った大輔は空手部……は存在しなかったから、拳闘部に入る。圧倒的に強かった大輔は一躍、エース候補と謳われるも、しかし不幸なことに彼は、自分で思う以上に強すぎた。軽い拳の一撃で前エースの3年生を再起不能にしてしまい、その1試合を最後に大輔は試合というものから閉め出されることになる。強者ゆえに、戦うことを禁ぜられた。
そうして、大輔は、同じような拳闘士くずれを集めて愚連隊を組織し大暴れするようになる。それを「おまえうっさい、しばくぞ」の一言とともに文字通り、たたきのめしたのが新羅辰馬。辰馬は「暴れたかったらおれがいくらでも相手してやっから、他人様の迷惑んなることはやめとけ。はっきり言ってみっともねーし」倒した大輔にそう言った。その後大輔は何度となく辰馬に挑み、挑み、敗北する都度に荒んだ心のささくれがとれた。辰馬としてはただの五月蠅い同級生をしばいただけのことだったが、大輔がどれほど救われたかわからない。全力で殴っても構わない相手がいる、それは拳の道に生きる人間なら、間違いなくなによりも渇望すること。それが大輔が辰馬を兄貴分……主君と慕う確たる理由。シンタにも出水にも同じような理由があり、それはある意味で瑞穗や雫やエーリカが辰馬を想う気持ちにも劣らない。いざとなれば彼らは辰馬のために死ねる男たちであり、そして今がまさにその、いざというとき!
さておき。
馬鹿が。そんな大ぶりが……。
五十六はそう嘲って、軽く上体を逸らそうとする。物理的な威力は驚異だが、五十六に当てることは不可能な大振りでしかない。
しかし。
いつの間にか、気配を消して背後から迫ったシンタが、五十六を羽交い締めにする。
「あんまり、脇役舐めんなよ、大神官! ……いけぇあ大輔!」
「おぉ!」
顔面に、朝比奈大輔全力の轟拳が叩き込まれる。鼻から血しぶきを上げて、五十六は吹っ飛んだ。
「……くそ、塵が、いい気に……」
「らあぁ!」
かろうじてダウンせず、残した五十六のボディに、大輔の連打。しかし五十六はそのすべてを受け、捌き、そしてカウンターを繰り出して大輔に膝をつかせる。全開の空間削撃を繰り出そうと、力を高めるその力が、しかし不自然に歪む。
「こ、れは……瑞穗、……貴様かっ!?」
「ようやく、貴方の力……ミカボシをとらえることができました。万全の状態であったならどうしようもありませんでしたが、格下と侮っていた朝比奈さんたちから思わぬダメージを受けたことでほころびが生じましたね。人を見下す者はこうして、報いを受けることになります……! これでようやく……、お義父さまの仇と、わたしの恨み!」
淡く清浄な、光の発現。時軸の発動。時間が遡る。五十六とミカボシの、融合がなされる前まで。
「くあぁぁ……っ!」
呻く五十六。封印の宝具、ミカボシの封石が、音を立てて落ちた。それをシンタが奪おうとするが、五十六は軽捷にそれを躱し、封石を取り戻す。とはいえすぐさまミカボシは降ろせない。「退け!」シンタを突き飛ばすと、脱兎のごとく星辰宮から飛び出す五十六。そのあまりに潔い撤退ぶりに、辰馬たちはあっけにとられ追うことができない。
「たぁくん、大丈夫?」
荒い息をつく辰馬に、ようやく我に返った雫が駆け寄る。雫もエーリカも、五十六のはなつ威圧に根源的恐怖心を刺激され、動くことができずにいたのだった。その恐怖の源泉はつまり、瑞穗がうけた仕打ちと同根。敗北し、陵○されることを、雫とエーリカは恐れたということになる。女性に対して神月五十六という男の存在は、すさまじい劇毒だった。
「あぁ……なんとか無事……。瑞穗に決着つけさせることが、できなかったな、すまん……」
「……いえ、十分です。あの老人も、間違いなくわたしに負けたという現実に呪縛されることになるでしょう。それで十分、復讐は果たせました」
「じゃあ、これで終わり?」
「いや……今すぐとって返すぞ! 戦場は……三条平野か」
…
……
………
「くそ……まさか屑ごときに……!」
五十六は通路の壁を力任せに殴りつけた。30前後に若返っていた顔や指は、ミカボシとの融合がとけたことでふたたび老いを感じさせるものになっている。何度かミカボシを身に降ろそうと試したものの、さっきまでミカボシを降ろしていられたのは磐座穣をはじめとしたヒノミヤ諸子のはたらきで蓄えた霊力を変換した神力あってこそ。今の衰えた五十六の霊力ではなにをか況んやだ。五十六は苦々しげに頭を振り、今や追っ手の恐怖に身震いした。
厩舎に趨る。馬厩士をなかば強引にどかし、一番名馬の栗毛の四白流星に跨がるとヒノミヤを駆け去る。
「捲土重来、このままでは終わらんぞ、儂は絶対に……」
「神月老」
呪うように呟くもと、大神官の馬前を遮る、一人の赤い鎧の騎士。
「ガラハド! いいところに来た、護衛せよ!」
最強騎士を得てまだ運はつきていない、と意気を盛り返す五十六、その首元に突きつけられる、白く輝く長剣。魔法の力こそ帯びていないが、名剣であることは一目で知れる。
「牢城くんに言われたことがあり……。騎士の責務に縛られるより、心の命じるままに振る舞ったらどうかと。……心のままに振る舞うのなら、私の行動はこういうことになります」
そして。
剣光が閃いた。
…
……
………
来た道を戻る辰馬たち。その前を遮る、ひとりの巫女。
肩までの、さらさらの金髪セミロングに、ヒノミヤの巫女としてはむしろ異端な、袖も分かれていないしごく普通の巫女服。青い瞳は復讐に燃えながらもなお美しく、清楚な美貌はヒノミヤの最後に残った女神と言うにふさわしい。右手に持った短杖を、磐座穣は辰馬へと突きつけた。
「磐座さん……」
「ひとまずご勝利、おめでとうございます……。ですが最後にヒノミヤ最後の一員として、お相手願いましょう。このわたしがいる限り、宗教特区ヒノミヤは、神月五十六さまの理想は焉りません!
「終われって……今更、戦う意味ねーだろーが……」
「意味はなくとも、意義はあります! わたしの誇りと矜持と、存在のすべてを賭けて最後の勝負です!」
神力の光を陽炎のように立ち昇らせ、穣は気炎を吐く。辰馬たちは顔を見合わせた。正直なところを言えば、もうこれ以上戦う意味はない。しかも現在辰馬の魔王化、雫の天壌無窮、瑞穂の時軸がことごとく打ち止めで、うっかり戦えば全滅させられかねない。ここはどうあっても戦うわけにいかない。どうやってあきらめてもらうかというのが眼目になる。
んー……どーすっか……。
逡巡する辰馬と、仲間たち。その前でひたすらに殺る気の穣。
その穣の頭を、突然現れた人影の剣がごすり、と叩いた。
「はぅ?」
あえなく目を回す穣。そこに立っていたのは、まだ辛そうにしてはいるものの動くことのできる程度に回復した磐座遷であった。
「ありがとう……妹を死なせずに、済んだ。あとは司直に出頭して、罪を償うとする」
そう言い残し、軽く穣の華奢な身体を肩に担ぐと、磐座遷は去って行く。
「……よし、んじゃ、あと一踏ん張りするぞ!」
…
……
………
宰相、本田馨綋(ほんだ・きよつな)は帝の玉座の前にいた。
普段なら文武百官が勢揃いしてしかるべき場所だが、今はラース・イラと総力戦という緊急事態。下級の文官がまばらに残ってはいるものの、上級士官のほとんどは出征中。しかし本田の顔は普段、碁盤の前で策を練っているときとまるで変わらずなにを考えているかわからない。ただ、まったく焦ってはいないということだけがわかるのみだ。
「陛下、そろそろご出御の頃合いです」
「ふむ? そうか」
帝、永安帝も落ち着いたものである。いよいよ出番がきたということで、うきうきした顔で聞き返す。
「は。どうぞ救国の君として、名を成されませ」
すでにラース・イラ勢を駆逐する策は完成している。竜の魔女の出陣と、もうひとつの手もすぐに萌芽するだろう。あとは帝の出御という、錦の御旗で箔をつけるのみ。
「今度はこちらからラース・イラに攻め込むのもいいやもしれんな」
「ご冗談を」
冗談でもなく言った主君を、一言で窘める。怜悧冷徹な言葉ひとつで、独裁の君主たるはずの永安帝は震え上がってしまう。
そしてアカツキの元首と宰相が、いよいよ戦場に親征するはこびとなった。
………………
以上でした、それでは!
遠蛮亭 2023/03/20 17:29
こんにちわです!
今日で「日輪宮」2章にカタをつけるつもりでしたが、イベ絵が足りずそれ描くのに時間を取られました。瑞穂さんのイベ絵はすでにほとんどあるわけですが、晦日さんです。文さんと晦日さんは辰馬くんの「6皇妃」として特別な立場でありながら、イラストはほとんど描いてなかったりします……。一応、晦日さんの絵は何点か描いてストックしていたのですがシチュエーションにうまくハマるものがなく、なので今回バッと2枚描きました。
まずこちらが尋問中。SМではないです、ガチの暴虐。でも瑞穂さんのボコボコ絵に比べたら全然ソフト。
こちらが本番。この本番絵がないために今日は描き描きしました。ゴーレムにやられてる絵だったらあったんですが、とりあえず初体験は対人なので。
あと一枚、これは一次創作ではないのでどうかと思いますが……
大番長、京堂扇奈。最近のゲーム全然知らないので80年代後半から2000年代前半まででほとんどゲーム知識が止まってます。いまやってるゲームというとあいミスぐらい。
さておきまして、それでは、以上でした!