倉くらの 2023/01/06 08:11

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サンプルをpixivに…と思いましたが、規約が変更されてアウトになる可能性が高そうなので、こちらに載せますね。
参考にしていただければと思います。



【サンプル】


触手なご主人様が私を離さない!


 私が働きに出たのは家族のためだった。
 私の生まれた家は男爵家だったのだが、父が知人に持ちかけられた投資に失敗して財産のほとんどを失ってしまったのだ。
 何とか残った財産で食いつなぐ日々を過ごしていたけれど、それもいつまでも続くものでもなかった。

 私が結婚して、嫁ぎ先に援助していただければ良かったのだけど、残念ながら嫁ぎ先は見つからなかった。それは私が『呪いの令嬢』なんて不名誉な呼ばれ方をしているせいだった。
 どういう訳か、私と婚約する方は皆一様に失踪してしまうのだ。これまで三人の方とご縁があり婚約に至ったのだが、ある日突然何の手がかりを残すこともなく、煙のように消えて行方が分からなくなってしまう。
 そんなことが何度も続いたので、当然ながら私と結婚したいという方は現れなくなってしまった。

 かといって働きに出ようにも、私には特別秀でた才能も無かった。このままでは一家心中という末路が頭をよぎる。屋敷にはまだ幼い弟もいるというのに……。

 途方に暮れて困っていたところ、屋敷に出入りしている商人の方にとある話を持ち掛けられた。それは森の奥にひっそりと建つ洋館でメイドを募集している、というものだった。
 お給料の額は相場よりもずっと高くて一介のメイドが到底稼げるようなものではないという。
 どうしてそんな良い仕事に働き手が見つからないのか不思議に思い首を傾げる。

 さらに詳しく聞いてみると、屋敷の主人は教養のある女性を求めているのだとか。成る程、それならばお給料の額が良いのも納得できる。
 貴族の淑女には読み書きが完璧に出来る者が多く、マナーも身に着けている。私もその辺りのことは学んできたので問題ないはずだ。
 メイドとして働くことは、顔も知れない誰かと結婚するよりもずっといいことだと感じられた。私は働くことを決意して、屋敷へと向かうことにした。
 それが数日前の話だ。


 私は屋敷に向かうとすぐに採用されて、ご主人様の身の回りの世話を任されることになった。
 この屋敷が少し変だというのは足を踏み入れてすぐに気付いた。

 まず第一に人がほとんどいない。大きな広い屋敷だから、綺麗に保つにはたくさんの使用人が必要だろうに、その姿を見かけないのだ。
 屋敷は森の奥に建てられているということもあって、少々薄暗い雰囲気が漂っているけれど、部屋の中は埃が一切無くて清潔が保たれている。

 唯一初日に顔を合わせたのが、執事だという高齢の男性だった。どことなく生気が感じられない、人形のような人だった。
 感情があるのかよく分からないその執事の男性によって私の仕事の説明が淡々とされた。

 内容は朝昼晩の三回、ご主人様に食事を届けるようにとのことだった。それだけでいいのかと驚く私に「まずはそこからです」と言葉が続いた。そうして初日からの数日間はご主人様に食事を運ぶ日々を過ごしていた。

 今日もいつも通り食事の乗ったトレイを部屋まで運んでいく。
 不思議なことに人の姿はないのに、時間になると厨房にはきちんと食事が準備されているのだ。湯気をたてるスープの器を眺めては首を捻る。

 一度執事の男性にどうして人の姿が全く見えないのでしょう、と尋ねてみたこともあったけれど「あまりあれこれと詮索されませんよう」とガラス玉のような目でじっと見つめられたので、それ以来口を閉ざして気にしないようにした。


 簡単な仕事に、良いお給料。あまりあれこれ詮索して嫌われて、追い出されてしまったらたまらない。少しだけ不思議であること以外、悪いことは何もないのだから。

「ご主人様、お食事をお持ちいたしました」

 扉をノックしてから室内に入る。

 天井からはいつものように、長細いうねうねと動くものが何本も垂れ下がっていた。私はそれをじっと見つめてからテーブルの上にトレイを置いた。
 第二の屋敷の不思議。
 それはご主人様が触手の化け物だったということだ。


 ご主人様の見た目は何匹もの蛇が絡まり合ったような姿をしている。本体部分は丸いボールのようだ。ボールのような部分に目が一つだけある。そして丸い本体部分からうごうごと蠢く触手がいくつも生えているのだ。思わず目を背けたくなるような非常に恐ろしい見た目をしていた。

 初めてご主人様の姿を見た時は、恐れて怯えた。食事のトレイを床に落として声なき悲鳴を上げた。
 腰を抜かしている私に、天井のシャンデリアからぶら下がっていたご主人様は、触手を一本だけ伸ばして来た。薄いピンク色の、巨大ミミズのようなそれが私の目の前にやってきた。ガチガチと歯を鳴らしてそれを見つめる。
 きっと首を絞められて殺されて、食べられてしまうのだろうと思った。

 だけど、私の目の前に来た触手はじっとしたままそれ以上動くことはなかった。まるで腰を抜かした私に腕を差し出して立たせようとしているような……そんな気がしたのだ。

 長い間逡巡して、そっとその触手に触れてみた。ふに、と柔らかい触感だった。意外にも手触りはすべすべとしている。いつまでも触っていたくなるような不思議な触感だ。ふに、ふに、とゆっくり揉んでみたら、ピンク色の触手は少しだけ先端を震わせた。

 そうかと思ったら、急に動き出して私の腕に触手が巻き付いてきた。驚いていたら、あっという間に体を持ち上げられて立たせられる。
 いつの間に垂れ下がって来たのか、目玉のある本体が私の目の前に来ていた。
 一つだけしかない目玉がパチ、パチと瞬きを繰り返しながらじっと私を見ていた。
 いつまでも立てずにいる私を起こしてくれたに違いない。

 私はこの化け物の中に知性のようなものを感じた。人間を相手にしているようにさえ思えたのだ。その瞬間から、恐く無くなった。
 やさしさを感じたせいなのか、私はご主人様が化け物だということを知っても、不思議と逃げ出そうという気にならなくなった。自然と「そういうこともあるのか」と受け入れた。受け入れたら不思議とその姿さえも時折可愛らしく見えて来た。


 ご主人様が食事をしている間、私は椅子に腰かけて見守っている。初めの頃は食事の間は退出していたのだが、昨日ぐらいから腰に触手を絡められて椅子に座らされて、同じテーブルにつくようになったのだ。

 ご主人様の食事風景は実に興味深い。口は目の付いている丸いボール部分にあるのかと思いきや、そうではなかった。数本の触手をスープの器に突っ込むと、その先端から穴が開く。触手部分が口になっている。そして穴からごくごく、と喉を鳴らすようにスープを飲み込んでいくのだ。ホースに水が通るのが分かるみたいに、触手全体がふるふると震えてスープが通った軌跡が分かる。

 面白くなってしまって、ふふ、と笑ってしまった。
 ご主人様に分からないようにこっそりと笑ったつもりなのに、ご主人様はピタッとスープを飲む動きを止めた。気分を害してしまっただろうかと私は慌てて謝る。

 ご主人様は何本もの触手を蠢かせて、テーブルの上の食器を全てガチャンと床に落としてしまう。銀食器でできているので、割れることはなかったけれど、けたたましい音が上がる。そして食器を全て払いのけてスッキリとしたテーブルの上に私の体を持ち上げて乗せた。背にひんやりとしたテーブルの感触がした。

 これはいよいよ本格的にご主人様を怒らせてしまったらしい。もしかしたらとうとう食べられてしまうのかもしれない。

「お、お許しください! 笑ってしまったことお詫びいたします」

 血の気が下がりながら、指を組んで必死で謝る。
 ご主人様は私の頬に触手を伸ばして、スリスリとさすった。それは怒ってないと言っているように感じられた。
 だけど、それなら何故私はテーブルの上に固定されるのか。四肢にはご主人様の伸ばした触手が絡みついている。

 それどころか、メイド服のスカートの裾に触手の一本がもぐりこんできたではないか。スカートが腰のあたりまで捲り上げられてしまう。そうして顕わになったショーツに触手が巻き付いた。スス、と蠢いたかと思ったら頼りない布が取り払われてしまう。
 ご主人様の目が私の股のすぐ近くにあって、なおかつ足を開かされるように固定されたままだったので、人に見せてはいけない部分が全て丸見えになっているだろうことが容易に想像ついた。
 ご主人様は人ではないのに、男性の前で下半身を露出してしまったかのような羞恥に襲われた。

「やっ、駄目です、ご主人様! お返しください」

 私はもうこの頃になると、ご主人様には言葉が通じるものだと信じて疑わなかった。これまでに何度も言葉が通じていると思う場面があったからだ。だから必死でお願いすれば返していただけると思ったのだ。
 ところが、今日のご主人様には話を聞いていただけなかった。

「あっ、何です……!?」

 触手は数を増やして、私のメイド服の中に入り込んで来た。もぞもぞと蠢きながら体を這って胸の方にまで到達する。服の下に入り込んでいるからどんな風になっているのか分からないけれど、もこもこと布地が形を変えて動いている。

「くすぐったいです……!」

 柔らかな触手が体を這いまわる。胸や脇をさわさわと撫でまわされて私はあまりのくすぐったさに身を捩らせた。初めはくすぐったさのあまり笑っていた私だったけれど、すぐに笑えなくなってしまう。息をごくっと呑み込む。

 胸の先っぽに違和感を覚えたからだ。たぶんこれは細い触手だ。それが胸の先っぽをちろちろと掠めるようにして動いている。
 くすぐったさとは別の感覚が体の内から沸き起こる。

「は……あ、そ、それは……駄目ですっ」

 唇を震わせて耐える。だけどご主人様はちっとも止めてくださらない。

「あぁ……ご主人様っ」

 長いこと耐えて震えていたせいか、私の股はいつの間にかぬるぬると湿っていた。
 膣から漏れた愛液を纏わせながら触手がスリスリと股を擦った時にハッと再び息を呑んだ。
 初めはペットにじゃれつかれているようなものと思っていたけれど、これは違うのかもしれない。

 もしかしてご主人様は私相手に性交をなさろうとしているのではないかと、この時になってようやく思い至ったのだ。体を固くする。

 お給料が高い理由、それはこういう行為も含めてのものだったのだろうか。食事を運ぶだけでいいのかという私の問いに「まずはそこからです」と答えた執事の男性。そのことを思い出したら、ますますそうとしか思えなくなってくる。
 拒絶したら、屋敷にいられなくなってしまうのではないか……ということが頭をよぎる。

 私自身に性交の経験はないし、これからお嫁に行くという予定もない。何よりもここでクビになったら家族が飢え死にしてしまう、様々な思惑から、力を込めて固くしていた体をだらりと弛緩させた。
 恐る恐るご主人様に問いかける。

「ご、ご主人様……、私、こういう経験が無いので、恐くて……やさしくしてくださいますか?」

 伸びて来た触手が私の頭を撫でるように掠めて行くので、ほっとした。


*サンプルはここまでになります!

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