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DIESEL文庫 2022/12/09 22:21

お姫様に成れない…

愛子は出演したAVをキッカケに、
売れっ子の高級ソープ嬢となる。

そんな彼女に禁断のオファーが!?

愛子! ちょっと、、」

休憩室に飛びこんできたのは若手の店長、
急げ急げと言わんばかり、小刻みな動きで私を惑わす…

「急いで」

「…むぅっ 私、休憩中なんですけどっ」

先ほどの客と別れて10分も経ってない。
ちくしょーって叫びたくなる衝動を抑えつつも、店長には時間外ってのを認識してもらう。

「VIPだ。 初めての芸能人対処だし、愛子しかいないから頼むよ」

…っ、流石に若いながらも幹部だ。
人の使い方を心得てる。

『んで、芸能人って誰だろ?』



サービスルームに向かうと、既に芸能人という客がベットに座っていた。
帽子にサングラス、マスク、マフラーにコートの90年代初期の犯罪者ファッションだ。
わずかに見える隙間からは若々しい青年であることがわかる。

『おっと、これは…』

風俗に来る客にコソコソする男はいるけど…
これは極端だな~。

「シャワー浴びましょうか。
ここでは恋人同士なんだから恥ずかしがらないで」

にこっと笑顔で彼の前にしゃがみ込んで手を膝の上に置く、

彼は動揺しながらも帽子やサングラスを外していった。

『!?』

あっ! 若手イケメン俳優の火島広樹じゃないの!?
ドラマでは必ずヒロインを泣かすという…
なんで?
なんで?
どうして?

っといけない。
私はプロだ。
誰が相手であろうと―‐

…いつものように真心を込め奉仕するのよ!

シャワーを浴び終わって、
いざ、口淫♪

「まぁ ご立派ですわねぇ」ウソだけど…

彼はしゃべらないし、接客はしにくい…。
そして…最高にペニスは小さかった。

「失礼して、頂きます……はむはむ…」





「………」

オチン×ンは起たない…。
私のテクが、通用しないってこと?

すると、
彼は困った表情で、

「あの…ありがとうございます…もぅ大丈夫ですから……あなたのせいではありません」

プルル…
部屋の内線電話が鳴る。
時間は、まったく経過していないのだが?

「んにゃ」

「愛子、お客様と一緒に待機しててくれ。 今からソッチに向かうから」




―‐応接間

「実はウチの火島は体調不良でして……
つまり……性交渉が思うように…」

彼のマネージャーさんが重い口で説明するのだが、

「インポってことですか?」

店長は唐突に質問した。
コイツはYes、Noがハッキリしないのを嫌う。

「こらっ」

ガッと店長の頭に私の奥義の一つ岩山両斬破(チョップ)を叩き込んだ。

「で、ですね…愛子さんの評判を聞きまして…どんな男もビンビンビビン!とネットに出ていたものですから」

彼はかわいそう…
エッチは人生の潤いと癒しなのに、

好きな人とエッチできないなんて辛いでしょうに…

「私、協力します。 時間をかければ、きっと治りますよ」

するとマネージャーさんは私の両手を両手で握りしめ、

「ありがとう。 あなたが最後の頼みなのです。 医者にもサジを投げられてしまって…火島は演技に精彩を欠いています。 絶対に回復してもらわなきゃいけないのです!」

マネージャーさんは困った表情でさらに、

「しかし、彼の立場上…このようなお店に通うわけにも…」




そんなわけで、
私は一ヶ月の期間限定で火島の専属となった。
お店には、莫大なお礼が入ることになって店長も了承。

だけど、彼の顔は浮かない。
私のことが気に入らないってことはないだろうけど…

『でも、私だってNo1になった意地とプライドがあるわ』


「何分、火島は多忙ですので、スタッフとして移動間は同行してください。」

彼の移動は女の子の声援で鼓膜がつぶれそうだ。

「きゃーっ」

「ヒローっ!」

「ステキこっち向いてぇ!」

「愛してるぅ!」

私も、この間はマスクをしたり、髪を縛ってイカニモって感じのスタッフOLで偽装するのだが…

「あの女ムカつく~」

「ヒロに近すぎ! そばに寄らないで!」

などと、何もしていないのにクレームとブーイングの嵐が彼女たちのそばを通過すると襲ってくるのだ。

―‐楽屋にて

「次の収録まで二時間待ちで~す」


「では、さっそく」

楽屋、
ホテル、
彼のマンション、
車の中、

私の習得した奥義のすべてを尽くしたけど…

彼は回復しない……


身体は健康。
私のテクの問題でもないなら…
ココロが原因?

生い立ち、
家族、

その気品の高さから裕福な生まれと噂される彼にどんな悩みが…?

今や日本中の女性に愛されてる。
そんな彼に悩みがあるのかしら?



「一時間後に雑誌のインタビューです。 食事をすませてください」

スタッフに促された彼に、

「あ、火島さん…お弁当を作ってきたの、
ロケ弁や外食ばかりでは体に良くないでしょ」

「そこまでして頂くには…」

彼は誠実な人だから私も続けてこれるのだ。

「ギャラはたっぷり頂いてますから☆」

にこっと笑顔で彼に渡すと、

「…ありがとう」







「おいしいです…手作りの食事なんて……」

「ほんと? 作った甲斐があるわ」

「………あの…」

彼は非常に困った表情で私を見つめた。

「あなたのような女性がどうして…風俗に…?」

ちかい事は客にもよく聞かれる。

「親が離婚したし、学生の弟もいたしでね。
もちろん、お金のためなんだけど、AVで人気が出ちゃってさ」

私は風俗嬢になったばかりのことを思い出した。

『女の子に優しくされたのはじめてだよ』
『これで明日からまた働けるよ』

「最初は割り切った仕事だったんだけど、私の身体で癒されてくれる人がいるのは嬉かなぁって」

「……あなたは優しい女性ですね。
愛子さんって名前、自分でつけたのですか?」

「うぅん、店長よ。
私の本当の名前はマイよ。
真実の愛と書いて真愛」

「じゃあ、マイさん、
お弁当のお礼に今夜は美味しいお酒はいかがですか?」

彼はテレビの外でも優しい誠実の人。
一緒に出掛けるとなんだかデートみたい。
行きつけの芸能人が隠れて行くバーに連れて行ってくれた。

アフター5って経験がないから新鮮な感じだった。
しかもスタッフとして地味なOL風に偽装してるから、
一度は彼に完全体を見てもらっていても、ちょっと不愉快だった。
バッチリメイクでデートできれば最高なのに……

「広樹っ!」

知らない金持ちそうなオバサンが、突然後ろから声をかけてきた。
ケバい…人のこと言えないけど今の私は薄化粧。
芸能関係者だろうか?

「なんなのその女は?
体調不良とか言って私の相手ができないって言ってたくせに」

彼の知り合い?
何かが…一般人に知りえない何か違う。

「か、彼女は…新入りのスタッフです」

とっさに言い訳をする彼だが、嘘ではないかな?
ご奉仕スタッフだし、

「わかっているでしょうね。 あなたは勝手に恋愛なんかできる立場じゃないのよ!」

なんという怪訝な顔でオバサンは言い放った。

「……わかってます」

「なら、いいわ」

オバサンは去って行った。



「今の人…?」

「制作会社の女社長で…売れない頃にお世話になったんだ…」

「…つまりパトロン?」

彼は顔を赤らめた。

「他にも…何人かいるんだ」

彼は俯いて目を瞑った。


わかった
彼の勃たない理由!
パトロンのオバ様たちに御奉仕を強要されていたんだわ。
男の場合は――-萎えちゃうから。



―‐彼のマンション

「…好きな人とエッチしないと気持ち良くなれないよ……。
って私が言っても説得力ないか…
あなたの体はきっと恋をすれば治るわ」

「恋…」

「簡単よ。
好きな人と手をつないでデートして、目を見て笑ったり、
それからキスしたり」

私は彼の唇をふさいだ。
何度もエッチしたのにキスをしたのは初めて、
彼はまぶたを硬く閉ざし、私のキスを受け止めた。

私たちは長い間、何度も唇を重ねていた。

「んんっ……あ!」

火島広樹とキスしたんだ。
…いつの間に?
これが自然?

「このまま…抱いていいですか?」

「ほぇ?」

ドキドキドキ

「んっ」
彼からキスを―‐

私も忘れていた。
エッチって一方的に奉仕することじゃない。
お互いが慈しみあうこと…

それだけで気持ちが高ぶる。

大きい、硬くなって私の中に入ってきた。

「はっ…あっ…」



「んんーっ!」





「マイさん……君のこと…」

私は彼の口に指を押し当てた。

「言っちゃダメ…」

だって私は…
お姫様になれない…

「よかったら、またお店に来てね」

これが私の仕事……っ





契約は終わったハズなのだが…

90年代初期の犯罪者ファッションで身を固める客…

「………」

「そのカッコ…余計に目立つわよ。
あなたは治ったのだから…こんなトコ来「ダメなんです」

私がまだしゃべっているのに彼は伝えてきた。

「マイさんとじゃなきゃ……他の人ではできなかったんです」




「好きな女(人)…とじゃなきゃ」




「じゃあ、お金で私を私を買う?
仕事であれば喜んで!」

と、言いつつも内線電話の受話器を上げる。
これだけで事務室につながるのだ。

「VIPがおかえりです。
丁重に裏口からお送りして」

「マイさん!」



―‐彼がいなくなったサービスルーム

「もぅ来ちゃだめだよ…」

ああ好き
好き
好き…


そして、やはりAVで一度有名になった私なだけに
彼のスタッフとして周囲にいた私の姿が目撃され、
彼には疑惑の声があがったが―‐

「AV嬢…いまは現役の風俗嬢をスタッフとして雇用していたというウワサがありますが!?」

TVで彼が記者に―‐

「職業が人としての資質を汚すものではありません」

「まさか恋人なのではありませんか!?」

「彼女がそう呼んでいいと許可してくれるなら…」


!!っ
バカ…


「愛子……また例のVIP来たよ。
ニュースは時間がたてばすぐに冷めるから、今日は断ろうか?」

店長が私を気にかけてくれた。
この仕事は―――



「うぅん…いける」会いたい

TVの外でも女を泣かせるなよ…

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