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プチの記事 (5)

ichiya / イチヤヅツ 2024/05/01 00:00

小人剪定バイト~千倍サイズバスケ部男子が小人の街や戦艦や軍事施設を完膚なきまでぶっ壊す話~

小人収穫バイトのシリーズの話になりますが、これだけでも読めます。
一緒に読むとより楽しめると思います。

・小人剪定バイト1(フォロワー限定)
 珍しくイライラしていたイオリは、向かったバイト先で"剪定"のバイトを見つける。1000号の世界でのイオリの巨大さはとんでもなく、片足で街の一区画を踏み潰し、電車一両が楽々亀頭に載ってしまう。人間なんかダニのような小ささでろくに見ることもできない。戦闘機の攻撃を鼻で笑い、海に入って砲撃してきた艦隊を蹴散らすと、最後に残った戦艦を持ち上げて……
・小人剪定バイト2(プチプラン限定)
 イオリは持ち上げた戦艦にゆっくりと自分のブツを挿入していく。亀頭はメリメリと甲板をゆがめ砲塔を持ち上げながら内部を船員ごと蹂躙していく。だが最大級の戦艦でもイオリのチンコには小さく、全部突っ込む前に亀頭が船首を突き抜けてしまう。仕方なくそのままオナって豪快な射精をしたイオリのもとにミサイルが飛んできて、イオリは火の玉に包まれてしまう……
・小人剪定バイト3(ライトプラン限定)
 街に戻ったイオリは街を走って縦断しながら反対側にある山に向かう。胸の高さほどの山に、そこを切り開いて作られた軍事施設を見つけると、先ほどのうっ憤を晴らすように、洞穴に兵器や設備を詰め込んで山を抱きながらチンコを突っ込む。内部の爆発もただの刺激にしかならず、ついに山を崩しながら絶頂に達したイオリは……
・小人剪定バイトあとがき(プラスプラン限定)
 書いていた時どういうことを考えていたかや1000倍サイズで気を付けた点、剪定の意味等のあとがきなど。

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ichiya / イチヤヅツ 2024/04/01 00:00

大学で再会した幼馴染がめちゃくちゃマッチョで巨根の長身イケメンに成長してました

・大学で再会した幼馴染がめちゃくちゃマッチョで巨根の長身イケメンに成長してました1(フォロワー限定)
 圭介が大学構内でぶつかってしまった身長2m越えのムキムキイケメンは、幼いころ離れ離れになった幼馴染の正弘だった。圭介のアパートで話そうということになり移動するが、歩いていても電車の中でも正弘のデカさ大きさに圧倒される圭介。部屋で話しているうちになぜか昔やっていたチンコ比べをやることになって……!?
・大学で再会した幼馴染がめちゃくちゃマッチョで巨根の長身イケメンに成長してました2(プチプラン限定)
 萎えと勃起どちらもチンコ比べで完敗した圭介は、昔のルールにのっとり正弘の言うことを何でも一つ聞くことになる。正弘は自分の勃ったままのチンコを抜いてほしいという。圭介は最初抵抗するものの、なし崩し的にそれを了承して風呂場へと移動する。浴室の天井に頭がぶつかる正弘のチンコを、圭介は必死に扱いていく。巨大な正弘のモノに苦戦していると、上から正弘が舐めるように言ってきて……!?
・大学で再会した幼馴染がめちゃくちゃマッチョで巨根の長身イケメンに成長してました(BADバージョン)(ライトプラン限定)
 萎えと勃起どちらもチンコ比べで完敗した圭介は、昔のルールにのっとり正弘の言うことを何でも一つ聞くことになる。正弘は自分の勃ったままのチンコを抜いてほしいという。そうやって自分に伸ばされた手を圭介は反射的に弾いてしまう。拒否された正弘は雰囲気が一変し、圭介を片手で宙づりにした後、床に落として30㎝越えの足で踏みつける。100㎏越えの重量に苦しむ中、次第に圭介に覆いかぶさる正弘の足がの範囲が増えてくる。あっという間に圭介の全身は正弘の足に覆われてしまい、足が上がるとそこにいたのは……ビルのようにでかい正弘の姿だった!!正弘は小さくなった圭介を摘まみ上げると……!?
・大学で再会した幼馴染がめちゃくちゃマッチョで巨根の長身イケメンに成長してましたあとがき(プラスプラン限定)
 二人の身長体重などのプロフィール、来歴や本編の後どうなったかを書いています。

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あとがきや二人の身長体重来歴その後等が読めます。約2400字

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ichiya / イチヤヅツ 2023/12/01 00:00

怪力属性大型犬系社会人後輩サイボーグ~10万馬力の後輩に素手で愛車を壊され連れ去られ溺愛される話~

・怪力属性大型犬系社会人後輩サイボーグ1(フォロワー限定)
 綿谷は後輩の朝霜に懐かれていた。イケメンで長身、性格もよく仕事もできる朝霜がなんで俺を……と思いながらも悪い気はしない綿谷。ある日終電を逃した朝霜を綿谷は自分の愛車で朝霜の家まで送ってやる。山奥の朝霜の家を目の前にして車が脱輪し、綿谷は朝霜の家に一泊することになる。両手を使った腕相撲で片腕の朝霜に完膚なきまでに負け、先に風呂に入ることになった綿谷は風呂の窓から朝霜が、自分の愛車を持ち上げているのを目にして……
・怪力属性大型犬系社会人後輩サイボーグ2(プチプラン限定)
 朝霜がサイボーグだと知り、怖くなって逃げ出してしまった綿谷。愛車をかっ飛ばして山道を降りるも、先回りしていた朝霜が倒木で道をふさいでいた。車を簡単にグラグラとゆすられて、それでも車から出てこない綿谷に大きなため息をついた朝霜は、運転席のドアに手を当てるとそのすさまじい力で……
・怪力属性大型犬系社会人後輩サイボーグ(番外編)(ライトプラン限定)
 朝霜の家の地下に軟禁される生活を送っていた綿谷だったが、ある日ガレージに愛車が残っていると聞かされる。それを目にして、思わず愛車に駆け寄ってしまう綿谷。すると朝霜は綿谷に覆いかぶさるようにして車に手を当て、ルーフを握りちぎり、ドアを無理やりあけると綿谷を放り込んで車ごと……
・怪力属性大型犬系社会人後輩サイボーグあとがき(プラスプラン限定)
 書いていた時どういうことを考えていたかのあとがきと、本編に出てきた二人のプロフィール。朝霜のサイボーグ化の経緯やパワーや耐久力、通勤方法を濁した理由だったり平凡な綿谷の普通ではないところ等を書き連ねています。

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ichiya / イチヤヅツ 2022/08/01 00:10

人間を飼うことにした~ラグビー部の100倍サイズ巨人が人間の街で捕まえた男を寮で飼う話~

・0.これが飼うことにした人間(誰でも)
ラグビー部巨人が、たまたま見つけた人間の街のことを、友人に興奮気味に話している……

・1.人間の街に行くことにした(誰でも)
ひょんなことから学校裏の雑木林で人間の街を見つけたラグビー部巨人のタカヤは、
素足で街に入って建物や自動車を潰したりして、その中の一人の人間に興味を持ち
家を潰したりしながらその人間を連れ帰ってくる……

・2.人間を連れ帰ることにした(誰でも)
寮の自室に連れ帰った人間は喋るだけで吹っ飛びそうなほど小さい。指先で触れるような握手をし、夕飯の間逃げないように、タカヤはティッシュの箱を手に取る……

・3.人間を洗うことにした(フォロワー限定)
土や泥で汚れている人間をペットボトルキャップの風呂で洗ってやる。脱いだ服を息で吹っ飛ばしてしまうハプニングがありながらも人間を洗ったタカヤは、自分も寮の風呂へと急ぐ。巨人の中でもさらにでかいタカヤは脱衣所でもその筋肉やチンコを存分に見せつけて……

・4.人間に与えることにした(フォロワー限定)
人間の服や食べ物を、どうやって手に入れるか?悩んでいたタカヤだが、いいことを思いついて、もう一度雑木林の人間の街を訪れる……

・5.人間に仕置きすることにした(フォロワー限定)
トラックに乗って逃げようとしていた人間を、トラックごと捕まえたタカヤ。自分のチンコより小さいトラックに乗る人間にお仕置きすることにしたタカヤは、トラックを口に含んだり、チンコに添えたりして人間を恐怖のどん底に陥れる……

・6.キャラクタープロフィール(プチプラン限定)
巨人のタカヤと飼われている人間のプロフィールが読めます。
身長だったり学校や部活での様子などなど。

・7.モミジ狩り(プチプラン限定)
飼われている人間視点で、空からモミジの木が降ってきた話です。

0.これが飼うことにした人間


 こないださ、人間の街行ったんだよ。そう、人間。……ほら、学校の裏に雑木林があるじゃん。開けたところに偶然見つけてさ、こないだ行ってきた。
 ~~っもう、人間の街ってあんなにちっちぇーのな! 住宅街みたいなとこだったんだけど、ほとんどくるぶしぐらいの高さしかなくてさ、たまにちっこいビルがあっても脛の半分もねえの! 道路も片側一車線だと俺の片足の幅ぐらいしかなくて、普通に歩くのとかぜってーむり。平均台みたいになる。まあ建物とか踏みつぶして入っても良かったんだけどせっかくだしさ、大きい道路……それでも俺の両足がやっとおさまるぐらいで、まともに歩ける道じゃないんだけど、まあそこから街に入ったんだ。
 片側三車線ぐらいだったかな。ゆーっくり右足を下ろすとさ、足の裏に色々感じるわけ。……ああ、素足だよもちろん。まず電信柱とか信号とか、細いもんが足に当たるんだけど、あっという間にぽきぽき折れて、それから車が足裏に触れるんだけど、もう紙くず、いやそれよりも抵抗なくってさ、体重かけてるんじゃなくて、ただ足の重みだけでぐしゃぐしゃつぶれてくの。そんでようやくアスファルトに足がつく。このアスファルトもあっという間にバキバキ砕けてってさ、もう脆いのなんの。こんなんで舗装とかって、ちょっと笑っちゃったね。それで左足を入れるために右足に体重かけると道路がほんと沈み込むように陥没してってさ、どんだけ脆いんだよって逆に怖くなったわ。
 まあそれでなんとか左足も入れて、人間の街の道路に立ったけど、まず足元見るわけ。いやまあ目線の高さに何もないから足元見るしかないんだけど。俺、街に入っただけだぜ? 道路に右足と左足入れただけ。なのにさ、道路はボロボロだし、親指の近くにあった車は傾いて俺の親指に寄りかかってたり、他にも足の周りの車は横転してたり吹っ飛んだりでさ、もう人間の街やべーなっ! って。
 ……ああ人間? いるいる。車の周りとかにうじゃうじゃ。みーんな俺から逃げてるみたいなんだけど、もう遅くてさ。俺の足一つ分動くのに、一分とかかかるの。……いやマジで! マジでめちゃくちゃ遅いの!
 でも人間ほんっとちっちゃいから、立ってるとマジ見えないんだわ。何か小さい粒が動いてるなーぐらいにしか見えない。だからちょっと脚開いて……いや潰したんじゃなくて横にずらした。道路の横にちっちゃいビルみたいなの沢山あったけど、足に当たるだけで崩れてくの。いやほんとに。砂場で子供が作ったやつとかの方がまだ抵抗あるって。んで脚開いてしゃがんでさ、そうするとようやく人間の姿が見えてくるわけ。そこまで近づいてようやく男とか女とかがわかる感じかな。
 試しに人差し指をさ、逃げてる人間のそばにたてて見るんだけど、ほんっとちっさくて! 指より全然細いし、指の第一関節よりちっちゃいんだわ。すげーよな。
 そんな風に周り見てたらさ、俺から逃げる流れからそれてる人間がいてさ、目でずーっと追ってったら、細い道に入って……ああ、上から全部見えるよ。家に入ってったんだ。そう一軒家。それがすげーかわいくてさ。だってそうじゃん? その家さ、俺の足よりずっとずっと小さいんだぜ? 人間には丈夫な家かもしれないけどさ、俺がやろうと思ったら家ごと一踏みだぞ? なんなら手でも潰せるのに……そういうバカなとこかわいくない?
 で、ちょっと興味出てさ、その家の横に手を突いたんだよ。……ああ、もう全然近く。しゃがんだまま手の届く範囲。比べたらその家、手のひらの半分もねえの。ほんっと人間の家ちっちぇえよな。手ぇ突いたらそれだけで下にあった家何軒か潰しちまったし。もっと近くで見たくて、反対にも手ついてさ、脚伸ばして腹ばいに……ん? いやもちろんつぶれたよ。俺の手でつぶれるもんが俺の身体の下敷きになって大丈夫なわけないだろ。でも脚の方は街の外だったと思うぞ。
 腹ばいにまでなったらもう目と鼻の先にその人間が隠れた家があるんだけどさー。いやー人間の家って脆いな! 触ってないんだぞ? 横に手をついただけでもうボロボロ。窓は割れてるし壁にヒビは入ってるし……多分指で突いただけでも壊れるってあれ。割れた窓から人間見えないかなーって、顔をもっと近づけたんだど……いやさ、家ほんと小さくてさ、手で周りの家はらって顔地面につけてもまだ眼の方が高いんだよ。だから家の周りの地面掘ってさー。地面低くしてようやく目線と窓が同じ高さになった。……いやだから持ち上げたら絶対崩れるんだって! だって近づいたとき鼻息で家が揺れるんだぜ? あれ多分思いっきり息吹いたら吹っ飛ぶって。……ああ人間? いや、窓からちょっと覗いたけどなんか暗くて結局見えなくてさ。屋根はがしても良かったんだけどそのまま壊しそうだったし「出てこい」って言ったんだよ。ほら、人間は言ってることわかるじゃん?
 うん、いやまあ出てこなくてさ。だからちょっと脅したんだよ。両手で家ごと覆ってやってさ、「次言ったとき出てこないと、家ごと握りつぶすぞ?」って。……うん、そうしたら出てきた。ドア開けてさ。転がるみたいに飛び出して来たのが親指の隙間から見えた。腹ばいでめちゃくちゃ近いからそのぐらいになるとなんとか顔もわかるぐらいになるんだけど、その人間、俺見て叫んでさ。まあ手が家を覆っててその向こうにそれよりでかい顔が見下ろしてたら分からなくもないんだけど。
 人間ってほんと小さいからさ、そのぐらい近いと鼻息だけで吹っ飛びそうなんだよね。だからとりあえず手に乗せてやろうと思ってさ。でもつまんだら絶対潰すから、人間の手前の地面に指入れて、下から地面ごと人間掬ってさ、そうっと息で土とか瓦礫飛ばして、その人間手に乗せたんだよね。そんなに気を付けたのに手のひらで人間動かなくてさ、まさか死んだ!? って思ったんだけど、ちょっとしたら動いたからほっとしたよね。いやほんと、人間すぐ死ぬから気を付けないと……
 それでさ、さっきの家の横に人間のいる手のひら置いて、反対の手を家にかぶせてゆっくり重みかけて屋根から潰してやって、それ見てた人間に「一緒につぶれなくてよかったな」って笑いかけたらさあ……その人間俺の手のひらの上でうずくまって泣くんだよ~~~~!!! すげえ可愛くねえ!? 可愛いだろ!? もう俺それでどうしようもなくなってさ~~その人間連れてきちゃったんだよねー……そう、それがこいつ。可愛いだろ?


1.人間の街に行くことにした


 この間人間の街を見つけた。学校の裏には大きな雑木林があるのだが、飛んでった練習用のボールを探す時にたまたま開けたところに出て、そこで見つけたのだ。その時はすぐ練習に戻らないといけなかったが、場所だけはしっかりと覚えていた。

「お、あったあった」

 休みの日の午前練のあと、練習用のTシャツと短パンのまま俺はその人間の街へとやってきた。ちょうど木がなくて日光が地面を照らしている場所があって、草とか土とか石ころとかがあったりするのだが、そこに全く異質な色が広がっている。それが人間の街だ。

「へー、こんなふうになってんのかー」

 大きさは大体、子供の一人部屋ぐらい。十歩も歩かず反対側にいけそうだ。全体的に丸く作られていて、街との境にはぐるりと壁らしきものが立っている。といっても、俺の膝ほどの高さもない。
 靴と靴下を脱いで、壁の前に足を置いてみる。その壁の厚さは、せいぜい俺の足の三分の一ってところだろうか。足先で押してしまえば、すぐに内側に倒れてしまいそうだ。その内側といえば、住宅地みたいなのが広がっている。建物は壁よりも低くて、多分、俺のくるぶしぐらいの高さしかないんじゃないか。街の中心部にはもっと高い建物もあるみたいだけど、それでも俺の膝をやっと越えるぐらいだろう。

「……人間の街って、こんなにちっちゃいんだなー」

 もちろんもっと広い街があることは知っているが、なんというか、全部が低い。自分の腰以下で全ての建物が完結しているだなんて、知ってはいたが実際体感すると全然違う。さてもう一度足元に目を向ける。街の内側では、既に騒ぎが起きているようだった。小さなざわめきがかすかに聞こえる。このまま外から眺めるのもいいが、せっかくの人間の街だし、ちょっとだけ中に入ってみたい。そう思って入れそうな場所を上から探してみるが、小さな家が密集していて足の踏み場もない。道路もあるにはあるが俺の足の幅の半分ぐらいで、踏み入れたら道路沿いの家ごと踏みつぶしてしまうだろう。まあ踏みつぶしてもいいのだけど、ちょっともったいない気もする。

「うーん……あ、あれならいけるか?」

 ちょっと離れたところ……といっても、一歩でいける距離に少し大きめの道路があった。片側三車線の、街の中心へ向かう街道。車でごった返しているが、あそこならなんとか俺の足もおさまるだろう。

「じゃあ、失礼しまーす」

 右足を上げて壁を軽くまたぎ、目当ての道路へと足を向ける。ただ着地地点が横にたった一歩分ずれれば建物を潰してしまうので、ゆっくりと足を下ろすのだがこれが練習後の身体には少しきつい。

(お……)

 足裏に何かが当たる感触がした。多分、電柱とか信号機だ。ただそれに足を支える丈夫さがあるわけもなく、折れたのか足裏から圧力が消える。そのままゆっくり下ろしていくと足裏全面に点々と触れるものがある。これが多分車だ。その車も本当に、ティッシュか紙くずを踏んでいるのかというぐらい抵抗がなくつぶれていく。別に体重をかけているのではなく、ただ足を下ろしているだけなのだ。

(車が何台並んでいても俺の足を置くことすらできねえのか……)

 そうやって車をぺしゃんこにして、ようやくアスファルトに足が触れる。そのアスファルトも足を置いていくとバキバキと割れる。これ体重かけたら沈むんじゃないか。

「こんなんで舗装って……」

 ちょっとだけ笑いが漏れる。沈むんじゃないかと少し怖かったが、ゆっくり右足に体重をかけていく。アスファルトのヒビが広がり、陥没して足が地面に沈んでいく。巻き込まれた車が転がって、親指に引っかかった。同じようにして左足を壁に引っ掛けないように引き寄せて、ゆっくりと反対車線に置く。

「ふう……」

 なんとか、小人の街に入ることができた。入るだけなのにものすごく気を遣う。そして俺はまだ、小人の街に右足と左足を入れただけなのだ。なのに足元を見ると、すごいことになっている。下にあった車がつぶれたのは仕方ないとしても、アスファルトの陥没が思ったより大きくて、横の歩道までガラガラと崩れている。陥没に巻き込まれた車が、俺の足にくっつくように寄りかかっていて少しむず痒い。そして足で触ってないはずの電信柱や信号も、電線で引っ張られたのか揺れなのかで倒れたりしていて、それから足の近くの車も横転したり追突していたりと……言ってしまえば大惨事だった。

「足入れただけでこれかよ……」

 呆れと共に、本当に人間は弱いんだなと再確認する。足元に目を凝らすと、もうまともに動けない車の隙間を、点のような何かがうごめいている。多分、それが人間だ。

(ちっちぇえー……)

 動きをよくよく見ていると、どうやら俺の足から離れるように動いているみたいだ。ただ、それにしても遅い。点を一つ追ってみたが、俺の足の長さ分の距離を動くのに、三十秒とか一分とか、そのぐらいかかっている。そんなの俺がほんのちょっと足を動かせば一瞬で詰められる距離で。俺の手の届かないところにいくのには、いったいどれだけ時間がかかるのだろう。

(にしても、ちっさすぎて見えねえな……っと)

 立ったままだと小さすぎて人間が本当に点のようにしか見えないので、もっと近くで見てみたくなった。今の姿勢だとバランスが悪いので、左足を横にずらす。道路はもう今の時点でいっぱいなので、ずらした足は道路沿いの小さいビルみたいなの数軒に当たったが、これも泡でできてるんじゃないかと思うぐらいあっさりと崩れてしまった。まだ子供が砂場のふちに作るような作品の方が丈夫なんじゃないか。ともかく脚幅を確保して、膝を抱えるようにしゃがみこむ。しゃがんでようやく人間が男か女かが判別できるぐらいになった。でも逆に言えばそこまで近づいてもまだ性別しか判断できなくて、人間って本当に小さいんだなって、もう何回目かわからないぐらいに思い知る。やっぱ実際の経験って大事だよな。

(俺の指より絶対小さいよな……)

 そっと、道路の人間が逃げているあたりに、右手の人差し指を立ててみる。指より全然細いし、高さも第一関節までない。横にあるワゴン車の幅と指の太さが同じぐらいだ。指をずらしてワゴン車の前に置き、そっと指を寝かせたらあっけなく車がつぶれてしまった。

「はー……小さいな……ん?」

 俺から逃げていく人間の流れを見ていると、一つ、他の人間とは違う動きをする人間が目に入った。男という事しかわからないが、他の人間が大きな通りを走って逃げているのに、その人間はわざわざ細い道に入っていく。少し不思議に思ってその人間を目で追ってみる。いくら細い道に逃げても、ほぼ真上から見ているから関係ないんだけどな……と思っていたら、その人間は、一軒家に逃げ込んだのだ。そこで俺は小さく噴き出してしまった。

(ええ、待って、何で! え、え。……えー……)

 後から後から笑いがこみあげてくる。だって、その家は俺の足よりずっと小さいのだ。人間にとっては丈夫な建物なのかもしれないが、俺がやろうと思えば家ごと一踏みで潰せる。なんなら手でだって簡単に潰せるだろう。そんな脆いものの中に、人間が俺から逃れようとして逃げ込んだのだ。

「えー……可愛いな……」

 そのちょっとバカな行動が思いのほか可愛くて、その人間を見てみたくなった。とりあえずもっと近づかないといけない。その家はしゃがんだままでも手の届く場所だったので、その横に手をついてみる。もちろんそこにも家が三軒ほど並んでいたが、薄紙でできた箱のように簡単につぶれてしまった。反対側にも同じように手をつく。ぐっと両手に体重をかけると、掴んでいる地面がゆっくり沈む。

「っ……と」

 そのまま右脚を後ろに伸ばした。伸ばした脚は街には収まらず、壁に当たって崩れる感触がする。街の外に足をおろして、左脚も同様に壁を壊しながら伸ばす。そうして膝をつき、ゆっくりと腹ばいになった。身体の下で建物がつぶれていく感触がするが、草の上に転がった時と大して変わらない。胸まで地面につけると大分体勢が楽になって、少し微調整しながら目の前に家が来るようにする。周りの邪魔な家を手ではらって顎を地面につけてみる。が、それでもまだ俺の目線の方が高い。けどここまで近づくと家の細かいところまでわかるようになってくる。こんなに小さいのにドアも窓もあって、そこで生き物が暮らしているなんて、目の前にあるのにちょっと信じられない。ただ、その家自体には触れてはいないのに、横に手をついただけで窓が割れたり壁にひびが入っていたりして、ボロボロになっているのにはびっくりした。

(本当に人間の作ったものって脆いんだな……指でつついただけでも壊れるだろ、これ)

 人間を見ようと地面に頬をつけて窓から覗いてみようとしたが、それでもまだ眼の位置が高くてうまく覗けない。こんなに脆い家、持ち上げたら絶対壊れるしな……とちょっと考えて、家の周りの地面に指を突き刺す。腐葉土のように柔い地面に埋まった手で周りの地面をかくように掘って、家の周りの地面を低くする。そうして地面に頬をつけてようやく窓と目線が一致した。

(……暗くて良く見えないな……)

 鼻息だけで家が揺れる。これ、思いっきり息吹いたら家ふっとぶんじゃねえの。と思って息を殺して慎重に覗いたが、中が暗くてよくわからない。ちょっと落胆しながら顔を上げて、また家を上から見下ろす。

「どーっすかなー……」

 屋根をはがしてみてもいいが、この脆さだと家ごと壊してしまいそうだ。となると人間の方から出てきてもらうしかないが、と考えてピンときた。人間は俺の言ってることがわかるんだった。

「出てこい」

 その言葉だけで割れた窓が震えている。しばらく待ったが、人間が出てくる様子はない。ちょっと脅さないとだめかなと、家を両手で覆ってもう一度声をかける。

「次言ったとき出てこないと、家ごと握りつぶすぞ?……出てこい」

 十秒ぐらいそのまま待ってみる。するとドアが開いて、人間が転がり出てきた。腹ばいになるぐらいまで近づけば小さな人間でも何となく表情ぐらいは見えるが、その出てきた人間は俺の顔を見上げた途端、狂ったように叫びだした。まあ、家を手が覆っていて腕に囲まれて、目の前には俺の身体。その上のはるか高いところにビルよりでかい顔があったら叫びたくもなるか。ともかく近すぎて鼻息で吹っ飛びそうだったので手に乗せてやろうと家から手を離す。それでちょっと腕を動かしたら地面が揺れたみたいで、人間が尻もちをついた。

(これだけで立ってらんないのか……でもどうしよ、手に乗せるにしても、つまんだらぜったい潰しちゃうよな……)

 実際にやったことはないが、撫でるように触れただけで車がつぶれるのだ。それより脆いだろう人間をつまめるはずがない。ちょっと考えて、人間の前の地面に指を二本突き刺して、地面ごと人間を掬いあげた。指を傾けながら人間を手のひらの上に移動させて、そうっと息を吹いて土を吹き飛ばす。ようやく人間を手のひらに乗せられたが、しばらく待ってみてもその人間が倒れたまま動かない。

(えっ、まさか死んだ!? あれで!?)

 ちょっと焦ったが、ゆっくり手をゆすると人間が動いて身体を起こしたのでほっとする。俺の顔を見上げているが、今は叫んではいない。

(ほんとに人間って脆いんだな……)

 人間の乗った手のひらを、さっき人間が出てきた家の横に寄せる。そのまま左手を家にかぶせて、ゆっくり、ゆっくりと手を下ろしていく。手の重みだけであっさりと家はつぶれてしまった。左手を上げると地面には手の形がうっすら残っている。

「一緒に潰れなくてよかったな」

 呆けた顔でそれを見ていた人間に笑いかけると、人間は俺の方を見て、そしてうずくまってしまった。多分だけど、泣いているんだ。それを見て俺はキュンとしてしまった。

(か、可愛い~~っ! 可愛い! え、待って人間可愛いな!!)

 しばらくそのまま泣く人間を見つめていたら、本当にその人間がどうしようもなく愛しくなってしまった。右手を揺らさないようにしながら左手を地面につき、脚を引き寄せてゆっくりと立ち上がる。それでも揺れたのか、人間は手のひらの中央で這いつくばっていた。

「決めた。俺と一緒に暮らそうな?」

 そう人間に笑いかけて、振り返った。俺の寝っ転がった跡が凹凸まではっきりと残っている。

「それじゃ、帰るか」

 人間が落ちないように、左手を囲いにしながらゆっくりと街を出る。自分の部屋に人間がいる光景を想像したら、胸が高鳴るのを抑えられなかった。


2.人間を連れ帰ることにした


 机の上のノートをとりあえず横によける。勢いがつきすぎて何冊か床に落ちたが、今はそれはどうでもいい。とりあえずスペースが必要だ。床に置いたエナメルバッグのジッパーを開けて、一番上に畳んで置いてあるスポーツタオルを、崩さないようにそっと取り出す。

「大丈夫だよな……?」

 少し不安になりながらもタオルを机の上に置き、ゆっくりと開く。開いて両手分ぐらいの大きさになったタオルの上に、爪先ぐらいの粒が乗っている。タオルに顔を近づけてその粒を見る。どうやら丸まっているみたいだ。かすかにだが動いているのがわかる。

(お、動いてる動いてる)

 街で捕まえた人間だけど、さすがに手に乗せて持って帰るのは落としたり潰しそうだったのでタオルに挟んでバッグにいれたのだが、大丈夫だったみたいだ。とりあえず生きてることが確認できたので顔を上げ、一息つこうとデスクチェアに腰を下ろした。俺が重いのもあるけど、めちゃくちゃきしむから怖くて勢いよく座れないんだよな。そのままじっと人間を見下ろしていると、もぞもぞとしか動いていなかった人間が体勢を変えて起き上がる。座り込んだ状態のまま周りを見渡して、俺の腹辺りを見て、そのまま顔を上げて……多分、目が合った。

「起きたか?」

 俺の声で人間が耳をふさいだ。そっか、人間には俺の声はでかすぎるか。気を付けないとな。

「悪い悪い。……このぐらいでいいか?」

 少し声を小さくしてみる。とりあえず人間が手を耳から外したのでこのぐらいで話せばいいみたいだ。ていうかこれ以上小さくすると囁くみたいになって喋り辛い。よしよし、まずは挨拶からだろ。机に置いていた右手を上げて、タオルの上にいる人間の前に小指を突き出す。

「今日からよろしくな。俺、タカヤっていうんだ」

 腰を抜かしたままの人間は目の前の俺の小指と、上にある俺の顔を交互に見つめている。あ、これ分かってない感じか。

「握手だよ。ほんとは手を握るんだけど、俺とじゃムリだろ?」

 なにせ俺の手どころか指で体まですっぽりおさまってしまうサイズ差だ。親指と人差し指で手をつまむぐらいはなんとか出来るかもしれないが、多分そのまま腕を擦り潰してしまうだろう。

「ほら、俺の指触って」

 小指をちょい、と動かすと、人間は怯えながらも立ち上がる。タオルのパイルをかき分けながら俺の指に近づき、ゆっくりと伸ばしたその手が俺の指に触れた。何も感じないけど、多分触れた。

「よし!……って、ごめんな」

 人間から俺に触れてくれたことがうれしくて指を動かしてしまい、指を触れていた小人が倒れてしまった。不用意に動いたら駄目だな。

「大丈夫か?」

 机に手をついて人間に顔を近づける。じっと見る限りでは手足を動かしているので、大丈夫みたいだ。だけどこの人間、とても汚れている。

(近くで見ないと分からないけど……土とかで結構汚れてるな、一回洗ってやった方がいいかな?)

 体を起こして人間から離れる。洗ってやるにしてもどうしようか。寮の風呂に連れてくのは無理だし、トイレの洗面所も間違って流してしまいそうだ。コップだって人間にとってはビルみたいな大きさで、脚がつくとかいう問題ですらない。

「うーん……あ、あれいいな」

 周りを見渡して、ちょうどいいものを見つけた。しかもちょうど夕飯の時間だ。再び人間を見下ろす。

「ごめん、俺これから夕飯だからさ、ちょっと待っててくれよ。帰ってきたら一回お前の身体洗おうな?」

 ていうか俺も着替えてなかった、と思い出して椅子から立ち上がった。人間の街で汚れてしまった練習着を脱いで、部屋に干してあったTシャツを取る。

「あ……まあいいか」

 手に取った紺のTシャツはそのうち捨てようと思っているのに、いつも癖で洗ってしまうものだった。だけど他の服はまだ乾いていないし、食堂だけだからいいだろうと、頭からTシャツをかぶる。

(……これ、きついんだよな……)

 腕を通して、背中に引っ掛かっている裾を無理やり引っ張り下ろす。入学当初はまだ余裕があったはずなのに、今じゃ胸の辺りの生地がピンと張っており、袖も常時腕に張り付くほど余裕がない。

(でかくなってるってことだから、いいことはいいんだけどな)

 短パンの方は最近買ったのがちょうど乾いていたのでそっちを穿く。

「じゃー行って……あれっ!?」

 部屋を出る前に人間に声をかけようと机の上のタオルを見ると、さっきまでそこにいた人間がいない。

「えっ、どこ……いた!」

 机の上に目を凝らすと、机の右側に積み上げたノートの山に走っている人間を見つけた。あわてて人間とノートの間に手を立てる。手が机についた瞬間、人間が倒れて止まる。人間にとってはいきなり身長の何倍もある壁が現れたのだから当然だろう。

「もー……危ないだろ」

 人間が逃げるなんてまったく思わなかった。だってタオルの上から逃げたところでそこは机の上。俺にとっては股間より下だけど、人間からすれば高層ビルの高さだ。降りられるわけがない。降りられたとしても、この狭い寮の一人部屋と言えども、人間がドアまでたどり着くのだって大変だろう。

「街に帰れるとか思ってんのかな……」

 俺なら歩いて十分ぐらいだが、人間じゃ何日もかかるだろう。その間に踏み潰されるのがオチだ。

「おとなしくしててくれねーかな……」

 夕飯の間、逃げないように何かに入れておかないといけない。手頃なものがないかと探すと、ティッシュ箱があった。あと少しでなくなりそうなやつだ。

「えーと……一旦これで……」

 人間が逃げたあとのタオルを掴んでくるくると縦に丸め、細い棒状にする。それで人間の周りをぐるりと囲んだ。簡単だけど人間の二倍ぐらいの高さがあるし、これでとりあえず逃げられないだろう。

「箱と……あとカッター……」

 筆箱からカッターを取り出し、ティッシュの箱の上面を切り抜く。下に数枚ティッシュが残っていてクッションがわりになるし、ちょうどいいや。

「よし、じゃあここに……」

 と、左手に箱を持ちながら人間の囲いを見て、どうやって入れようか悩む。摘まんだら絶対潰す。人間の街みたいに地面ごと持ち上げるのも無理。ちょっと考えて、小指を爪を下にして人間の前に置いた。

「自分で乗れる?」

 少し斜めから見ると、一番小さい小指でも人間の胸の高さぐらいまである。人間も難しいのか指には近寄らず俺と指を交互に見つめている。

「ダメか……持ち上げたら潰しちゃうだろうから、自分で乗って欲しかったんだけど……」

 どうしようかな、と思っていたら急に人間が小指に飛び付いた。爪に足をかけて、必死に俺の指に登っている。

「お、なんだできんじゃん」

 なんとか俺の指に上りきった人間は、ずりずりと移動しながら指の腹にしがみついた。それでもちょうど第一関節に収まるぐらいだ。俺の手は他の奴よりでかいけど、ここまでサイズ差があるとあまり関係ない気もする。

「よーし、そのまま捕まっとけよ~」

 人間の乗った小指を動かさないように手をそっと持ち上げて、ゆっくりと切り抜いたティッシュの箱の中へ下ろす。そのティッシュに小指をつけ、ちょっと傾けると人間はずるずるとティッシュの上に落ちた。

「ここなら大丈夫だろ?」

 人間が周りを見渡している。ティッシュ箱の高さは人間の三倍はあるから、登って逃げたりはしないだろう。広さだって、人間の家三つ分ぐらいはある。十分だろう。

(とりあえずで作ったけど、これを人間の家にしてもいいかもな)

「じゃあ、おとなしく留守番してろよ~」

 ティッシュ箱の中の人間に笑いかける。ペットボトルだけ忘れないようにもって俺は部屋を出た。

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ichiya / イチヤヅツ 2022/08/01 00:05

ワールドエンド~世界を滅ぼせる巨人に好かれた男が巨人と一緒に学校行ったり抜いたりするようになる話~

1.そうして世界は終わらなかった

 もうすぐこの世界は終わるのだろう。

 よく晴れた空。適度な白い雲。火薬のにおいが風に乗って流れてくる。絶え間なく聞こえる人々の悲鳴、爆発音と砲撃。そしてそれらをすべてかき消すほどの地鳴り。

(いや、足音、か)

 尚樹は自宅の屋上からそれを見上げた。まだまだ遠くにいるはずだけれど、その姿はしっかりと視認できる。巨人だ。近くにあるマンションは十階分ぐらいの高さはあるはずなのに、その巨人の腰よりも低い。ズゴォン、ズゴォンと大地を揺らしながら巨人が歩く。世界は、この巨人によって終わろうとしていた。

 突如ハワイ沖に現れハワイを地獄に落とし入れた後、海を越えアメリカを崩壊させ、ヨーロッパとロシアとインドを火の海に変え、ヒマラヤを崩し越えて中国が壊滅。核を含む人類のあらゆる抵抗をまるでゴミのように吹き飛ばし、数十メートルから数千メートルまで大きさを自在に変えて世界を蹂躙する巨人。南半球はまだ無事な国が多いが、それも時間の問題だろう。日本をつぶしたらすぐ、のはずだ。

 そんなことをぼうっとかんがえていたら、ずどおおおおおおおおん!!!と、今までで一番大きい爆音が響いた。揺れる地面とともに身体が飛び上がる。次いで爆風が襲ってきてこらえる暇もなく物干し台や鉢植えとともに屋上に転がった。

「………………でっか……」

 何とか起き上がって見上げたのは、家の前で仁王立ちをしている巨人、の脚だった。さっきの爆音は、多分斜め向かいの家を踏みつぶして、大地を揺らしたときの音だろう。家を踏みつぶして余りある足が道路にまではみ出している。目の高さにあるのは脛だ。二階建ての家の屋上にいるのに。そのまま顔を上げると、逞しい太腿……と、その間に重々しくぶら下がるめちゃくちゃでっかい男の象徴が視界に入る。車やバスより断然でかい。長さだけで多分普通の家の高さぐらいはある。

(………………)

 もっともっと上を向けば、幾多もの砲弾やミサイルでも傷一つつかなかったぼこぼこに盛り上がった腹筋が、そしてその腹筋に影を作るほどせり出している胸板がそびえている。まるで、覆いかぶさるように。

「どんだけでっかいんだよ…………」

 もう見上げる首が痛くて、あきらめて地面に寝転がった。家の幅よりある広い肩、太い首の上に、たった一カ月で北半球をほぼ壊滅に追いやった巨人の顔が乗っていた。これがまた精悍で男前な顔で、充分人間のモデルとしても通用するぐらいのイケメン。こちらを覗き込むように背中を曲げていたその男のでっかい眼が俺を見つめていた。特に笑っているでも蔑んでいるのでもなく、じっとこちらを見つめている。

(これでおわりだな)

 いつの間にか砲撃の音はしなくなっていた。全滅したか弾薬が尽きたか。ちなみに避難はぜんぜん間に合ってないので、俺がいるからって理由はないと思う。

「………………いまいくよ」

 巨人の、家どころかビルさえしのぐ大きな脚が持ち上がり、そして。



***



「…………ゆめか……」

 枕元で鳴り響くスマホのアラームで、目を覚ました。薄暗い部屋の中、手探りでスマホを探してアラームを止め、ゆっくりと息を吐く。

「あっつい……」

 寝ている間に汗をかいたのか、体中がべとべとしている。着ているTシャツとハーパンも心なしか湿っている。掛け布団を蹴飛ばしたが、こもった熱気はいつまでも散らない。

(いやまて、あつすぎ)

 もう暦の上では秋だったはずだ。真夏ならまだしも、最高気温が三十度を超えないこの時期に部屋がこんなに暑いはずがない。

(ていうかまだ夜? 外が暗……ああ)

 部屋が暑い原因と外が暗い原因に同時に、というより原因が同じものだと思い当たり、大きくため息をついた。一度目をつぶり、ゆっくりとベッドから起き上がる。窓に近づき、カーテンを勢いよく開けた。ガラス越しに見えたのは夜空でも青空でもなく、ぼこぼことした肌色の壁。少し下には黒いジャングルとふてぶてしく鎮座している車なんかよりずっとでかい、それだけで一軒家ぐらい潰せるだろう肉の棒。

「ったくもう……」

 鍵を開け窓を開ける。むわっとした熱気と独特の匂いが外から舞い込んでくる。部屋が暑かったのはこのせいだ。窓から身を乗り出して上を見上げる。

「おはよう! 尚樹!」

 はるか上から家が震えるほどの大きな声が響き落ちる。起き抜けからこの大音量は頭に痛い。

「シン!おまえなー!」

 家の屋上よりずっとずっと高いところにある顔に届かせるため、精一杯声を張り上げる。

「ウチを股に入れて座るのやめろっていってんだろ!!」

 光を遮り、夏のような熱気を放っていたのは予想通り目の前にあるこの巨人の体だった。座っているのに家よりでかいサイズのこの巨人は、まるであぐらをかくようにすっぽりと俺の家を脚で囲んでしまっているのだ。暑いし揺れるし、その筋肉がぼこぼことついた太腿がちょっとでも触れれば家がぶっこわれるとさんざん言っているのに、この巨人……シンはなかなかこれを止めようとしない。ぐぐっとシンがかがむと、目の前の身体が地鳴りとともに迫ってくる。影が濃くなり、シンの顔が少し近づく。

「まあいいじゃんか。いい天気だぜ!」
「お前のせいで天気もわかんねーんだよ……」


 そう、あの時世界は終わらなかった。なぜだか俺が、この巨人、シンに気に入られてしまったせいで。

2.二人だけの登校風景

「……とりあえず、俺シャワー浴びるから、その間に小さくなっておけよ!」

 上からのぞき込むシンの顔に叫んで、窓を閉める。外でシンが「なんでだよ~」とかでかい声で言っているが知るもんか。替えの服をひっつかんで階下に降りる。汗で湿った服をまとめて脱ぎ捨て浴室に入ってドアを閉めた。

「はーーー…………」

 朝から疲れる。鏡に映る自分を見る。シンとは比べ物にならないぐらい貧相な体だ。これでもサッカーをやっていたからそれなりにましなはずなのだが。

(まあ比べる対象が悪いか)

 蛇口を捻りお湯が出るのを確認してからシャワーで汗を流す。湯がべたつきを洗い流すと少し頭も冴えてきた。シャワーを止めて身体を拭きながら今日の予定を頭の中でさらう。

(体育……はない……数学の宿題……もやった……昼は購買で買って……ああそうだ。政府の人と会う約束があるんだった……)

 着替えてから軽く朝食を食べ、昨日のうちに用意しておいた鞄を持って玄関で靴を履く。起きてから大体四十分。扉を開けて外に出る。

「やっときたな! 尚樹!」
 
 家の前には、学ランに着替えたシンが小さくなってこっちに手を振っていた。小さくなったとはいっても、余裕で二メートルは超えているでかさだ。特注させているはずの学ランが今にも破れそうで、太い腕に引っ張られて持ち上がる黒い生地が多分悲鳴を上げている。鍵をかけてからシンの元へと近寄る。ちょうど目線のあたりが学ランの布地を大きく膨らませている大胸筋の真ん中あたりで、シンの顔を見るにはかなり見上げなければならない。

「お前もうちょっとちっちゃくなれないの?」
「こんぐらいがいーんだよ」

 シンが俺の頭にでかい手をおいてぐしゃぐしゃとなでる。本人はじゃれているつもりなんだろうが、俺にとってはたまったもんじゃない。シンはこのサイズでも腕一本で戦車を空の彼方まで投げ飛ばせるし、足踏み一つで地下街を崩壊させることができる。俺の頭を握りつぶしたり首をぽきりと折ることなんて、息をするより簡単にできるだろう。

「やーめーろ」

 俺がシンの手を払おうとすると、(俺の力じゃむりやりどかすことなんてできないのだが)シンは頭をなでる手を離す。その顔がまたにやにや笑っているもんだから腹が立つ。

「……学校行くんだろ。行くぞ」
「おう!」

 俺が歩き出すとシンも横に並んでゆっくりと歩く。俺とシンじゃ歩幅が全然違う。俺の胸の下あたりにベルトがあるのだから脚の長さは歴然だ。それでもって俺の歩く速度に合わせてゆっくりと歩いているのだ。

「なーやっぱ俺がでかくなって尚樹乗せて運んだほうがはやくね?」
「別にお前は一緒に学校行かなくてもいいんだぞ」

 そもそも世界を壊滅させかけた巨人が、日本の学校に通っていることがおかしいのだが、この巨人がそうしたいといえば世界は逆らえない。まあ俺が学校に通い続けたいと言ったのもあると思うけれど。

「俺は尚樹といっしょにいてーの!」
「じゃあいいだろ。通学だって学校の一部だ」

 政府から専用車を出すっていう提案もあったけれど、そんな非日常は絶対嫌だったので断った。だから俺を好きらしいこの巨人は、俺の望みどおりに電車での通学についてくるのだ。

「壊すなよ」
「壊さねーって」

 既に三回ほどぶっ壊しているから言っている。自動改札もシンにとっては跨げるぐらいに小さい。だからか、どうもICカードのタッチと歩くタイミングが合わないらしい。最近は駅員さんの遠隔操作の努力もあり上手く通れるようにはなったが。

「お、電車くる」

 アナウンスと共に電車がゆっくりとホームに入ってくる。乗るのは真ん中付近の四両目だ。滑らかに電車が止まり、ドアが開く。ひょい、と乗る俺に比べてドアが肩までの高さしかないシンは逆手にドアの上枠を掴み、ぐぐっと大きく体を曲げて車内に侵入する。シンの体重で電車が揺れる。つり革や広告がほとんどなくても、シンが身体を起こせば頭は天井に付き、下手するとそのままぶち抜く。だからシンは身体を屈めたまま既に座っている俺の横に腰を下ろした。椅子のクッションがぎぎっと軋み、なんとかシンの体重を支える。脚は大きく開いているが、問題ない。この車両、いや、この電車には他に誰も乗っていないのだから。

(まあ、世界を破壊した巨人と同じ電車には乗りたくないよな……)

 別に巨人専用というわけではないが、皆あえてこの時間の電車を避けているのだ。だからいつも通学時はシンと二人きりである。朝はニュースを見る時間がなかったので、この時間を利用してスマホでニュースをチェックする。ニュースサイトを開いていると横からシンが覆いかぶさるように覗き込んでくる。

「何見てんだ?」
「ニュース。……知らないかもしれないけど、まだまだ世界大混乱中だからな?」

 シンの大破壊から一カ月。北半球はもちろんだが、直接シンの被害のないところでもテロや紛争が勃発していた。

「ああほら、中東がまた軍事衝突……」

 中東あたりはシンの被害を免れた地域だが、もともと軋轢が多かった場所だ。世界のパワーバランスが崩れたおかげでもう火薬庫に火を入れたかのように紛争中である。他にもヨーロッパのテロやアメリカの復興の記事が並ぶ。

「はやく平和になればいいんだけどな」
「でも尚樹にはかんけーねーだろ?」
「関係なくても。ていうかお前のせいだからな!?」

 興味のなさそうな顔をしているシンに突っ込むが、全く堪えていない。そうしているうちに学校の最寄り駅に着き二人で電車を降りる。窮屈だったのか、ホームにこれまた特注のローファーを下ろしたシンは、今にも内側から破れそうな学ランでぐぐっと伸びをした。

「あっ……」

 気づいたときには遅く、伸ばしたシンの腕が普通の人間なら届きもしない電光掲示板の中程に当たる。それなりにしっかり固定されてるだろうに、シンのたくましい腕は容赦なく電光掲示板を吹っ飛ばす。

「ん?」

 シンも気づいたようだが、コードやらなんやらがちぎれた電光掲示板はけたたましい音をたててホームに転がった。そのままその鉄の塊は勢い良く滑り階段に当たって止まる。画面は割れ、中程から大きくひん曲がっている。

「あー、やっちゃった」
「あんなとこにある方が悪いよな」

 シンは落ちていた空き缶を蹴ってしまった、ぐらいの軽さだ。あれだって安くないだろうに。

「それより尚樹、早くいこうぜ」
「……うん。あ、でもあれ邪魔だな」

 まあ良くあることなので早々にあきらめて改札に向かおうとしたが、先程の電光掲示板が階段を塞いでいる。周りにも割れたパネルやらなんやらが飛び散っているし、下手に歩けば怪我をしそうだ。

「向こうの階段から……」
「なんだよ、こーすりゃいいだろ」

 そういうとシンは俺の両脇に手を入れるとひょい、と持ち上げた。

「うわっ!」
「俺が運んでやるよ」

 俺も一応六十キロはあるのだが、シンにとっては空気も同然だ。尻に左手を添えられ、流されるままにシンのぶっとい首に腕を巻き付けると体が安定する。

「一言いえよ」
「ははっ、わるいわるい」

 シンの頭越しに後ろが見えるが、とんでもない高さだ。ホームにある自販機の上に埃がたまっているのが見える。シンが歩き出すと体がゆらゆらと大きく揺れる。階段に近づくと、シンは壊れた電光掲示板を構わずに踏みつける。メキャメキャバリバリと凄まじい音がして、丈夫なはずの電光掲示板がまっぷたつになる。

「……すげー」
「へへっ、こんなのなんでもねーよ」

 そのままシンは電光掲示板を踏み越えると、身体をかがめながら足の長さの半分もない階段を上って改札までたどり着く。俺を下ろすと、シンは改札横でひたすら目立たぬようにたっていた駅員の元へ向かう。

「ひっ……」

 何度も言うがシンはこのサイズでも十分でかい。シンが背中を丸めても、駅員の帽子はその肩にも届かない。むしろ上から覗きこまれて恐怖なだけだろう。俺の目線からはシンの背中に全て隠れてしまって駅員の姿すら見えない。

「わりいな、ホームの掲示板壊しちまった」

 シンの低い声が抑揚薄く駅員に降りかかる。重ねるがシンは世界を壊しかけた巨人だ。拳銃を突きつけられるよりも確実で強大な「死」を目の前にして、駅員は、なんとか声を振り絞る。

「だだだだい……じょうぶ、です!!」
「そうか、ありがとな。……尚樹ー、いこうぜ!」

 許されることが確定していた謝罪が終わると、シンがこちらを振り向いた。屈託のない笑顔と明るい声。さっきまで駅員に向けていたものとはまるきり違う。

「はいはい、いくぞ。改札は壊すなよ」
「わかってるって!」

 シンと一緒に改札を抜け、駅を出て学校へと歩を進める。なんのことはない、普通の登校風景だ。


3.大事なものは一つだけ

 予鈴までまだまだ時間があるから余裕をもって学校にたどり着く。校門を抜けて昇降口に入ると、途端にシンの大きさが際立つ。天井は高いが、周りのあらゆるものが人間向けの高さにできているからだ。

「スノコ踏むなよ」
「わーってるって」

 いわゆる土間から一段あがる框の前には青いプラスチック製のスノコが並べられている。生徒はそこで靴を脱いだり履いたりするのだが、シンが乗ってしまえばたちまちスノコは割れてしまう。かつて並んでいた四つのスノコのうちひとつは取り払われ、そこでシンは右の爪先で左のローファーの踵を押さえてまずは左足の靴を脱ぎ、左足で框に上がりもう片方も器用に脚を振って脱いだ。

 五段仕様の下駄箱の向こうを俺は見通すことはできないが、シンにとっては肩にも及ばない低さだ。シンはしゃがんでローファーを持ち上げると、下駄箱の一番上に乱雑においた。三十七センチという巨大な靴は当然下駄箱になんか入らない。隣に置いてある白のスニーカーは上履き用で、ローファー共々特注品だ。

 靴を履き替えたら教室まで歩く。二年の、というより俺とシンのクラスの教室は一階にあるのですぐそこだ。教室のドアは、天井までの高さがある特注品だ。シンが三回ほどぶち壊してから、ドア自体が変わった。

「おはよー」

 ドアを開けると、既にほとんどのクラスメイトが教室に来ていた。おはよう、と、教室内にいた二十人弱のクラスメイト全員が返す。

「尚くん、おはよう! シン様! おはようございます!」
「おはよう」
「おう」

 その中で近づいて挨拶をしに来たのが、友達の裕一だ。シンをめちゃくちゃ崇拝していて、毎回こうやってシンに挨拶をしに来る。身長は俺より大分小さくて、でかいシンと並べばちょうどシンの肘が顔に当たるぐらいの差がある。

「お前も毎回元気だな」

 シンがポン、と裕一の頭に常人の二倍はありそうな手を置く。教室の空気が一瞬でピリッと張り詰めた。シンならそのまま裕一の首をねじ切ることも、頭蓋骨ごと頭を握りつぶすことも、食い終わったハンバーガーの包み紙をぐしゃぐしゃと丸めるぐらい簡単に出来るのだ。だがシンはねじ切ることも潰すこともせず、裕一の頭から手を上げた。裕一はシンの手が触れた頭を両手で触り、恍惚の表情を浮かべている。

「シン様に……触れられた……」

 自分の世界に入った裕一を置いておいて自分の席に向かう。一番窓側の後ろから二番目が俺の席、その後ろがシンの席だ。シンの机と椅子はこれまた特注で、俺の奴より二回りもでかい。以前椅子に座らせてもらったら脚はぶらぶらと揺れるし背もたれにもとどかないような大きさだったが、それでもシンが座ると金属でできた椅子はギシギシと悲鳴を上げている。

「……ったく、こんなのによく何時間も座ってられるよなー」

 俺だと持て余す机と椅子でも、シンにとっては窮屈なものなのだろう。そもそも学校に来たからといって勉強をするでもなし、大体は後ろから俺を眺めているだけのシンに机もなにも要らないと思うのだが、まあ学ランと同じくどうやら俺と同じことをしてみたいらしい。斜め上からの視線が嫌でもわかる。
 そのうち予鈴がなって、クラスメイトたちが席につく。世界を破壊したシンと一緒に授業を受ける不思議な光景。シンがこの街、というか俺の近くで暮らすことが決まったとき、当然のごとく街の人たちは逃げ出した。シンがひっかき回して世界中が動乱に巻き込まれる中、シンという核を超える抑止力のお陰で今日本は世界で一番安全な国だ。だがそれでもわざわざ巨人の近くにいたいと思う人はいないだろう。当然かつてのクラスメイトたちも教師もほぼいなくなり、学校自体がなくなりかけた。
 だからいまここにいるのは、大体が政府によって用意された人々だ。孤児だったり金が必要だったり、そういう人々が高校生活を送る代わりに、世界でもっとも安全で危ない場所に配置される。裕一なんかはまた別だが。

「おーし全員いるな、授業始めるぞー」

 中年の教師が入ってきて、教卓に資料を置く。授業自体は全くもって普通のものだ。面倒なサインとコサインのグラフが黒板を埋め尽くしていく。数学は嫌いだが、問題が解けたときの達成感は気持ちいい。

(シンもおとなしくしてるな…………)

 シンとしては俺の反応もなく暇な時間だろうが、授業の邪魔はするなと言ってある。視線はずっと感じるがまあそのぐらいは仕方ないだろう。

「じゃあ最後にプリント配るぞー。次までの宿題な」

 えー、という声がそこかしこから聞こえるが、先生は容赦なく一番前の列の生徒に紙束を配っていく。そうすれば皆もしぶしぶ従うしかない。紙束から自分の分を取って残りを後ろの奴に渡す。俺も前の席の優吾からプリントの束を受け取る。

「っ……」

 紙束を受け取った右手の人差し指に小さな痛みが走る。紙で切ったのか、ぷくりと赤い玉が指の腹から現れる。優吾の顔が一瞬でこわばる。

「ごっ、ごめっ」

 背中の方から響く轟音が、その謝罪をかき消した。何かが爆発したかのような巨大な音が教室中に鳴り響き、飛び上がりそうになるほど床が揺れる。音の反響が少しおさまってから、その元凶であるだろう後ろを向く。

「シン……」

 そこには無残な姿になったシンの机があった。厚み五センチはありそうなこげ茶色の天板が、シンが降り下ろしたでかい拳によって真っ二つに割られている。拳はそれだけでなく、下についていた金属の物入れまで引きちぎってぐしゃぐしゃにし、勢いで机の脚まで曲がってしまっていた。もう修理は無理だろう。木くずや壊れた金属が落ちる音以外は何も聞こえない。教室中の誰もが息をひそめている。シンが腰を上げると、椅子が後ろに倒れて音を立てた。でかいシンが立ち上がるとそれだけで風が起きたように空気が動く。俺の首は上へ上へと向いていき、振り向いた体勢もあって大分きつい。身体ごと後ろを向くと、ちょうど目の前にあったのはシンの股間だった。相変わらずでかいな、と、今の状況にそぐわないことを考えてしまう。

「おい」

 上からシンの声が降ってきて見上げると、屈んだシンが人間の顔をそのままつかめそうなでかい手をこちらに向けていた。が、その手は俺の左上を突っ切り、太い腕が俺の視界をかすめる。その時後ろで叫び声が聞こえた。

「ひあっ、ご、ごめんなさいごめっいやああああああ!!!」

 振り向く前にシンの腕が動いて、俺の真上を何か大きなものが通った。じたばたと動くそれは、前の席の優吾だった。シンがそのでかい手で前の席の奴の頭を掴み、宙づりにしているのだ。優吾はばたばたともがき、頭を掴むシンの指を掴んで外そうとしているが、人間にシンをどうこうできるわけがない。雄吾越しにシンの顔が見えた。ゴミを見るような冷ややかな目で目の前の優吾を見ている。シンの腕は微動だにせず優吾を持ち上げ続けていて、優吾は頭を握られている痛みに喘ぎながらもそのまま頭蓋骨を砕かれないために泣き叫ぶ。

「ごめんなさい! すいません!! わざとじゃないんです!!!!! お願いです許しぎああああああ!!」
「シン! ストップ!」

 下から叫ぶと、のたうつ優吾越しにシンがこちらを見た。まだ冷たい目に一瞬身体がこわばる。

「優吾を離して」
「でもコイツ……」
「いいから。早く降ろして。俺そういうの好きじゃない」

 重ねて言うとシンは不服そうな顔をしながらも優吾を持つ腕を右へと動かし、ゆっくりと腕をおろして手を離した。支えを失った優吾は、足は床についたものの腰が抜けているのかその場に崩れ落ち、眼から鼻から液体を流してのたうっている。

「優吾だいじょう……」
「尚樹大丈夫か!」

 優吾に駆け寄ろうとする前に、シンが俺に覆いかぶさって右腕をつかんだ。俺のはちょっとした切り傷だし、絶対優吾の方が重傷だし、なんなら今掴まれてる腕の方が痛い。が、シンは本気で俺の傷を心配している。

「……大丈夫だから、放して。こんなの舐めときゃ治るよ」
「そんなわけあるか! 保健室行くぞ!」

 そんなわけあるんだけど、という俺の想いとは裏腹にシンは俺の腰を掴んでひょい、と持ち上げてしまい、俺はそのままお姫様抱っこの体勢に移行させられてしまう。いや、シンとの体格差からすると、赤子みたいに抱かれているようなものか。

「ちょ、シン!」

 シンは有無を言わさず三十七センチの白いスニーカーを踏み出したが、その先には転がっている優吾がいる。シンの体重で踏みつけられればただでは済まないが、シンの脚はなんてことないように優吾をまたいだ。教室の出口へ向かうシンのために教室の後ろの席の奴らが飛びのいて逃げる。ドアまで来るとシンは右足を上げてドアに蹴りを入れた。シンに合わせて二メートルを越すサイズで作られた木製のドアは、すさまじい音を立ててあっけなく真っ二つになり床に倒れる。シンがそのドアを踏みつけながら廊下に出た。

(もう何言っても無駄だな……)

 シンに抱えられたまま、諦めて小さくため息をついた。



***



 大学病院並みの設備の保健室で、世界有数の名医である保険医の先生に絆創膏を貼ってもらって切り傷の治療は終了した。心配するシンを説得しながら教室に戻ると、真っ二つになったはずのドアは元通りになっていた。教室に入ると、シンがぶっ壊した机はきれいに片づけられており、まったく同じ机が代わりに置かれていた。前の席の優吾の姿はなく、おそらく病院に向かったのだろう。自分の席に座って、後ろを振り向く。

「……大人しくしてろよ」

 ギシ、と椅子をきしませながら座るシンは、俺の言葉には答えなかった。



 
 授業が終わっても、まだシンの機嫌は直らなかった。立ったり座ったりの動作がいちいち荒く、備品や校舎が壊れようがかまうものかと言っているようだ。昇降口でローファーに履き替えて外に出ると、学校の前に黒いセダンタイプの高級車が停まっていた。

(あ……)

 そういえば政府の人が話したいといっていたのを忘れていた。ちらりとシンの方を見上げてみるが、虫の居所が良くなさそうだ。

(今日はやめとこう)

 シンは政府関係者が嫌いなので、下手すると政府の人が車ごと消える。スマホを取り出して政府の人に連絡しようとするが、その前にシンが車に気づいた。

「チッ……」

 俺のはるか上で舌打ちしたシンが歩幅を大きくして車に向かう。二メートルを軽く超えているシンの本来の歩幅は相当なもので、俺も慌てて追いかけるけれども歩いているシンに対して小走りだ。手首すら太すぎて握れないので服を引っ張ってみるも、シンが歩みを止める気配はない。

「ねえ、シン」

 声をかけてみるも歩く速度は緩まない。じゃあしょうがない、と俺は掴んでいたシンの袖を放した。

「……俺、人殺すやつ嫌いだからな」

 届いたかどうかは知らないがそれだけ言ってシンの後ろ姿を見つめる。車と比べてもシンはやっぱりでかい。後部座席のドアの前に立ったシンの、腰あたりに車の屋根がある。車の中の人からはシンの脚や股間しか見えないだろう。政府の人もやばいと感じたのかエンジンをふかして逃げようとするが、その前にシンが車の、窓と屋根の境目に右手を伸ばした。親指は何の抵抗もなくガラスを割り、残りの四本は金属の屋根をぐしゃりと突き破った。そのままシンはフレームを掴んで腕を押し上げる。するといとも簡単に車が斜めに持ち上がり、車が接地しているのは右半分だけになった。運転手がアクセルをふかしているのか、左の前のタイヤが勢いよく空転している。接地している右側のタイヤも動いているはずだが、シンの怪力で車が固定されておりまったく進む気配がない。

「おい」

 車が斜めになったことで、シンが車の中の人間を見れるようになった。シンにとってはしゃがむより、車の方を持ち上げる方が簡単なのだろう。中から政府の人の叫び声が聞こえる。

「…………さっさと消えろ」
「はははははいっ!! すぐに!!」

 シンが手を離すと車が勢いよく地面に落ちて揺れる。その一瞬後、車は急発進したが、フレームが歪んでいるのか、まっすぐ走れず縁石にぶつかる。だがそれでも構わないとばかりに縁石にバンパーをこすり付けながら、車は走り去っていった。後ろからシンに近づくと、シンが振り向いた。腕に当たって吹っ飛ばされないようにのけぞるも、シンがあっという間にその手で俺の腰を掴み持ち上げて抱きしめる。

「うわっ、シン!」
「なー尚樹~……二人で遊ぼうぜ~」

 さっき政府の人を脅したとは思えないほど甘えた声。じたばたあがいてみるも、シンにとっては無抵抗に等しいのだろう。丸太のように太い腕に拘束されては全く動ける気がしない。諦めて力を抜き、ため息をつく。

「またかよ……」
「さっきのアレ殺さなかったしさ、な?」

 確かに機嫌の悪いシンなら、あのまま車を蹴とばしてビルにめり込ませたり、はたまたフレームを掴んで空に投げ飛ばしたりぐらいはしたかもしれない。それを思えば窓と屋根を割って脅したにとどめたのは良い方かもしれない。

「……ちょっとだけだぞ」
「よっしゃ! じゃあ……あの家で!」

 シンが周りを見渡して目を付けたのは一つの一軒家だ。この辺りはまあシンが通う学校の近くということで、わざわざ住む人はほとんどいない。家やビルはほとんどが空き家だ。シンは俺を腕に赤ん坊のように抱きなおし、その大きな歩幅で道路を渡って家の前にたどり着く。シンが俺を地面に下ろして玄関ドアの前に立った。今時の玄関ドアは背の高いものも多く、二メートルを軽く超すシンでも屈まずに中に入れそうだ。が、ドア幅のほとんどを占めそうな広い肩やでかい背中、太い腕を持つシンの前だと、そんな大きなドアでも頼りなく見える。
 シンが少しかがんで低い位置にあるプルハンドルに手をかける。そのまま引っ張るが、もちろん鍵のかかったドアは開かない。ガン、とドアがロックにぶつかる音がして、高い音と共にハンドルがドアから外れた。シンの引っ張る力にハンドルの接合部が耐えられなかったのだ。

「ちっ」

 シンは手元に残ったハンドルを投げ捨てると、ドアと壁の境目に手を入れた。もちろんシンの太い指が隙間に入るわけはないが、シンのものすごい力が金属のドアをメリメリと歪ませて指を侵入させていく。ドアや蝶番から不気味な音を響かせながらシンが手を入れドアを引っ張ると、鍵の折れる音と共にドアが開いた。開いたドアを見ると、ドアのずいぶん高いところが情けなく歪んでおり、シンの握った跡がはっきりと残っていた。シンが俺の方を振り向く。

「じゃあ、やろうぜ」


4.そのすべてが規格外

 シンがドアを大きく開き、身体を斜めにして家の中に入る。その後ろにくっついて俺も中に入った。暗い。靴のまま廊下を歩くシンを横に照明のスイッチを探す。玄関横のスイッチを押すと天井の照明がついた。電気はきちんと来ているようだ。

「お、明るくなった」

 明るくなって見えたシンの姿は迫力ものだった。一軒家の平均からすれば決して狭い廊下じゃないだろうに、その幅全てを埋め尽くすほどでかい背中。すれ違うのすら難しいだろう。頭は天井の照明にこすりそうだし、三十七センチのローファーで歩くたびにフローリングがギシギシと悲鳴を上げている。俺も靴のまま廊下にあがりシンについていく。

「んー……こっちリビングか」

 玄関のドアは高かったが家の中はそうは行かないようで、リビングに繋がるドアはシンの肩までの高さしかなく、立ったままじゃシンの首から上は完全にドアの上だ。シンならそのまま進むだけで壁ごと簡単にドアをぶち破れるだろうが、そうするとすごく埃が舞って俺が嫌がるのを知っているので、シンはぐっと体をかがめて股間当たりにあるレバーハンドルを指で押し下げた。金属が折れる音がしてドアのレバーが廊下に落ちる。シンが加減をミスってへし折ってしまったのだ。

「ちっ……」

 舌打ちしたシンは折れたレバーのあった辺りを手で押した。無理やりとんでもない力で押されたドアがバギバギ音をたてながら開く。シンはそのまま首を下げて身体を斜めにし、リビングへと入っていった。俺は落ちたドアノブやドアの破片を踏まないようにしてそのあとに続く。目に入った照明のスイッチを押すと、部屋が明るくなった。

(……けっこういい家だな……)

 リビングとダイニングが繋がった空間は軽く二重帖以上あって、六人掛けのダイニングテーブルや細かい細工の食器棚、リビングには六十インチはありそうなテレビにガラスのローテーブルと、三人は楽にかけられそうな大きなソファがおいてある。皿や小物が床に落ちたりしているのは仕方ないだろう。シンがこの街に来た時の揺れはすごかったし、その時にはもう住人は逃げ出していただろうから。ただそこまで埃っぽくないのが救いだ。

「来いよ、尚樹」

 ソファの近くに学ランの上着を脱いだシンが立っている。学ランを脱いでTシャツ姿になったことでシンの持つ筋肉が溢れんばかりにその大きさを主張している。人間サイズのものが周りにたくさんあるのでそのでかさが一層際立つ。俺は小さくため息をついて荷物をその場に置き、シンの目の前に立った。ちょうど目線がシンのみぞおち辺りだ。Tシャツの上からでもわかる大胸筋と腹筋の段差がすさまじくて、まるで別の生き物みたいだ。そのまま顔を上げようとすると、シンが俺の背中に手を回してぐっと俺を引き寄せた。

「わっ……」

 こらえようとしたけどシンの力に逆らえるわけもなく、シンの分厚い大胸筋に顔をうずめる形になってしまう。意外に柔らかいそれに顔を包まれ、シンの心臓の音が骨を通して直接耳に伝わる。ドクン、ドクンと巨大な体に血液を送る振動が頭を揺らす。息が辛くなってきて顔をのけぞらせて空気を確保する。かすかにシンの汗のにおいがした。

「シン~……」
「もうちょっとこうさせてくれ……」

 上から覗き込むシンがじっと俺を見つめる。どうしてかは知らないけど、シンは俺が好きだ。シンの力なら俺のどんな抵抗も無にして俺を好きにできるはずなのに、シンはそれをしない。本気で止めてほしいといえば止めるし、俺の大事なものには触れないでいてくれる。そんなシンと接していると、やっぱりどうしても甘くなってしまう。

「……なあ、当たってるんだけど」
「それは……しかたねえじゃん?」

 でかいシンが俺を抱きしめると身長差から色々触れ合う場所が変わってくる。俺の頭はシンの胸元だし、肩は腹。そして俺のみぞおちから下あたりには、ちょうどシンの股間が位置している。学ランの厚い布地を押しのけるほどのふくらみが俺の腹をぐりぐりと圧迫している。布越しでも伝わる肉の熱さ、そしてまるで第二の心臓かのように、シンのそれが脈打っている。

「……ズボン破っちまうだろ、脱げよ」
「別に破ってもいいだろ」
「俺、下半身裸の奴とは帰らないからな」

 そういうとシンは口をとがらせながらも俺に絡ませていた腕を解き、ガチャガチャと荒々しくベルトを外す。そして勢いよくパンツごとズボンを引き下ろした。

「……あいかわらずでかいな」

 俺が少し下を向いた先にあるのが、シンの巨大なチンコだ。股からずろんと垂れ下がっているそれは俺の常識からしたら信じられないでかさだ。コーヒー缶のような太さに、それをはるかにしのぐ長さ。俺の手を当てても簡単にはみ出してしまうサイズだ。

「尚樹も脱げよ」

 シンがそういいながらTシャツの裾に手をかける。俺も一歩下がるとシンに背を向けて学ランを脱いだ。近くにあったダイニングテーブルに上着やら何やらを雑に乗せ、パンツ一枚の姿になる。準備して振り向くと、シンは仁王立ちになってこちらを見ていた。

「……ほら、尚樹」

 手を広げるシンの元にゆっくりと近づく。近づくにつれシンの顔を見るため顔を逸らさなくてはいけなくなる。あと一歩でシンの身体がくっつく、というところで止まる。そうしてしばらくじっとシンの顔を見つめていると、シンが肩を落としてうなだれる。

「……なあ、ここまできたらやってくれてもいいだろ?」
「言ってくれなきゃわからないよ」

 そういうとシンはわざとらしくため息をついた。シンの吐息が髪の毛を揺らす。

「……俺のチンコ、触って、勃たせてくれよ」
「……わかった」

 シンに一歩近づいて、シンの股間からだらんとぶら下がっているチンコを左手で掬うように持ち上げる。肉が詰まった、ずしりとした感触。長すぎて手のひらの上でも垂れるそれを、右手で根元から先端に向けて優しくなでていく。上からシンの声が降ってくる。

「……いいぜ……尚樹……」

 時折揉みながら撫でるのを続けていくと、チンコがむくむくと質量を増してゆく。左手がずしりと重くなるが、しばらくするとチンコが手を離れて浮いていく。ぐぐぐ、と立ち上がっていくそれは、もう股ぐらから腕が生えているようなもので、一・五リットルのペットボトルと比べたって遜色がないだろう。シンの臍を軽々と超えて立ち上がるそれは、身長差もあって俺の顎の真下に亀頭がきている。もしシンが腰を突き出せば、俺はチンコでアッパーカットを食らう、そんな位置。びくびくと重量感たっぷりに揺れるそれはまるで別の生き物のようだ。

「……気持ちよくさせてくれ」

 シンの次のお願いを聞いて、俺はもう一度シンのチンコに手を添える。両手がなんとか回るとてつもないサイズ。両手をゆっくり長く動かして、シンのチンコを擦っていく。あっという間に腕が疲れそうになるが、しばらく擦っていると鈴口からどぷどぷと我慢汁が溢れてくる。亀頭から垂れてくるそれを手のひらに伸ばせばローション代わりになって、ストロークのスピードが上がっていく。

「へへ……やっぱいいな……尚樹にやってもらうのは……」


 ぐぐっとシンのチンコがまた一回り大きくなる。下を向きながらチンコを擦っていた俺の頬にべちゃりと我慢汁でぬれた亀頭が当たった。のけぞると亀頭は目の位置に来ていて、チンコを握っている手もどんどん上に引きずられていく。シンを見上げて眉を寄せる。

「……シン……」
「ふっ……悪いな……我慢できねえや……」

 真上にあるシンの顔がどんどん遠くなっていく。それと共に床がミシミシと鳴り始めた。シンがでかくなっているのだ。視界を埋めながら巨大化していくシンの圧迫感はすさまじく、照明の光を遮ってシンの影が濃くなってゆく。チンコはもう両手でも握れなくなっていて、手が顔の前に来た時に離した。チンコが揺れて、亀頭から溢れる我慢汁がべちゃりと髪の毛を濡らす。もうチンコすら見上げる位置にある。上からゴン、と音がした。

「っ……っとと……」

 シンが身体をかがめる。天井が頭にあたるほどでかくなったから直立できないのだ。シンなら天井をぶち破るのも簡単だけど、俺が埃が舞うのを嫌がるからそうしない。シンが背中まで折り曲げるぐらい屈まないといけなくなったところでようやくシンの巨大化が止まった。

「……ちいせえな、尚樹」
「いやシンがでかくなったんでしょ」

 見上げる俺の視界のほぼすべてがシンで埋まっていた。身体を折り曲げているシンは顔どころか胸のほとんどまで真上にあって、その影が俺をすっぽり覆いつくしている。腹筋なんかもはるか高いところにあって、身体に沿って目線を下げていって俺の目線にあるのは、シンのチンコの根元だ。シンの脚は筋肉がすごくて太いがモデル並みに長くもあるので、今ならちょっとかがめば俺はシンの股の間を潜れるだろう。臍を超えるチンコだから亀頭はもうはるか頭上にあり、上からまき散らされた我慢汁がぼたぼたと床に落ちる。ぬっと、俺の顔よりでかい手が接近する。

「俺のチンコぐらいまでしかねえな」
「わっ、ちょ、シン……」

 頭を手で半分すっぽり包まれながらシンが俺の頭をなでる。シンはあくまで優しくしているのだろうが、体格差がここまでになると流石に動きが大ぶりになる。手が俺の頭をググっとのけぞらせる。

「もうコレも限界だからさ……本気で抜いてくれよ」

 身体に合わせてシンのチンコも巨大化していた。もうペットボトルとかそういう次元ではなく、俺の腕より確実に太く長い。びくびくと我慢汁を吐き続けている亀頭はもう手の届く高さになく、目の前にある根元も太すぎて両手でも握れやしない。

「……この体勢じゃ無理だよ」
「へへっ……まあそうだよな」

 シンが俺の脇腹を掴んで空気のように俺を持ち上げる。俺を持ち上げる両手は俺の胴体を掴んでまだ余りあるらしく、シンの指と指がくっついている。

(これでちょっとシンが力いれたら、俺真っ二つだろうな……)

 シンは俺を持ち上げたまま天井に背中を擦りながら歩きだす。邪魔なローテーブルを軽く蹴飛ばすと、勢いよく吹っ飛んだテーブルは壁に当たって砕け散った。シンはソファの前に移動すると、その小さな座面に腰をおろした。金属と木材がへし折れる音と共にソファがつぶれる。三人が優に座れるソファは背もたれごと一瞬にしてペチャンコになった。

「つぶれちまったな」

 シンはまるで気にせず脚を伸ばし、持ち上げたままの俺を自分の股座に近づけ、くるっと半回転させて座らせた。そこはシンの腹とチンコの間。今俺の股の間からは、顎までもありそうなチンコがそびえ立っている。

「でっか……」

 下から見上げるのとはまた違う迫力。まっすぐに伸びるそれはもう両手でも握り切れない太さ。太い血管がうねうねと枝分かれしながら張り付き、触るとドクドクと脈打ちながらチンコに血液を送っている。亀頭の部分はピンと張り詰めながら一層太さを増しており、溢れる我慢汁がぬらぬらとチンコ全体をなまめかしく光らせていた。その圧倒的なオーラにごくりと息をのむ。

「じゃあ、頼むぜ」

 はるか上からシンの声が降ってくる。俺の脚より太い腕が近づいてきて、指で俺の手をつまむようにしてシンのチンコに触れさせる。既に我慢汁でドロドロだが、手のひら全体に熱が伝わるほど熱い。

「……わかったよ」

 手のひらを滑らせるようにしてシンのチンコを擦っていく。これだけでかいとストロークも長大だ。自分の股座の根元から、胸元当たりのカリまでの距離で腕を動かすが、あっという間に腕が疲れてくる。

(……でかすぎなんだよ……)
「うおっ……尚樹……!」

 少し前に出て、チンコに抱き着く。そのまま体を揺らして、身体全体で擦るようにしてチンコをしごく。これは大分気持ちよかったのか、シンが喘ぎ声を漏らす。畳みかけるように腕で裏筋を擦り刺激を増やしていく。

「うっ……あああいいぜ……尚樹……もっとやってくれ……!!」

 シンは膝に手を置き、上から俺がチンコを刺激しているのを見下ろしている。俺にやらせたいってのもあるんだろうが、もしシンが自分でチンコに触れようものなら巻き込まれた俺は肉塊になってしまう。それは避けたいのでさっさといかせようと思いっきり身体を揺らす。シンの我慢汁でもう俺の身体もべとべとで、履いたままのパンツは完全に濡れて重くなっている。

(……しぶとい……!!)

 チンコを抱えなおして亀頭に顔を近づける。どうせもうここまで体中べちょべちょなのだからと、顔の半分もある亀頭に舌を這わせた。それと同時に脚でぎゅっとチンコを絞める。

「あっ、なお、尚樹っ……! イクっ!!」

 亀頭が一層膨れ上がるのを舌から感じて俺はとっさに頭をそらした。瞬間、亀頭の先から勢いよく白い奔流が撃ちあがった。ブシュ、とかドプッ、とかいうレベルではない。人が食らえばそのまま貫通しそうな勢いで精液が噴きあがり、天井に着弾して激しい音を立てる。それが連続で二発三発。四発目は目の前の六十インチはありそうなテレビに当たり、その勢いでぐわんぐわんと揺れる。その後も勢いを失うまで十五発程度射精し、リビングのいたるところが白く染まる頃、ようやくシンの射精が止まった。俺の身体はシンの精液で上から下までべとべとだ。

「ふう~……イったな……」

 天井に貼りついたシンのゼリーのような精液がぼたぼたと垂れる音が響く。天井は本当にぶち抜いたのか一部が変な形に歪んでいる。まともに顔で受けていたら怪我ではすまなかっただろう。

「こんなに出しやがって……」
「いや、こんなの序の口だって」

 確かにその言葉の通り、あれだけの量を出したのにもかかわらず、シンのチンコは全く萎えていないのだ。いまだにびくびくと震え、尿道に残った精液を溢れさせながら、俺の目の前で第二射の準備をしている。顔をそらして上を見上げると、ちょうど見下ろすシンと目があった。その目はらんらんと輝いている。

「このまま二回目やらね?」
「……無理…………」

 はしゃぐシンの声にげんなりしながら、俺は目の前のチンコから離れるようにシンの腹へともたれかかった。



***




 結局そのあとシンは五回ほど抜いた。俺は一回手伝っただけでダウンしたので、せめて抜くところを見てほしい、とつぶれたソファに座らされ、床に胡坐をかいて筋肉がぎちぎちに詰まった太い腕で自らのチンコを勢いよく扱く。ぐぐっと腕が膨らんでいるところを見ると多分相当な力で握っている。多分、あれが人間だったらあっという間にひき肉になっていた。射精を直接受けたら死ぬのでシンは天井に放ったが、天井の精液が降ってきて精液まみれになること二回。流石に疲れ切って先にギブアップし、俺がシャワーを浴びている間に三回で合計五回だ。浴室から戻ってきたら、リビングはおろかダイニングの半分あたりまでシンの精液で埋まっていた。

「……気が済んだか?」
「んー……まだいけるけど……今はこの辺にしとくかな」

 シンがしゅるしゅるとその背を小さくしていき、元の二メートル強ぐらいの大きさへと戻った。シンもシャワーを浴びて精液を落とした後、服を着て家から出るともう外はとっぷり暗くなっていた。疲れてはいたがシンに抱っこされるのも癪なので、気合いを入れて家まで帰る。家の前にたどり着き、俺は玄関ポーチの前で振り返った。後ろについていたシンはその場で止まって俺を見下ろしている。シンが長い腕を伸ばして俺を引き寄せる。勢いあまって俺はシンの胸元にダイブしてしまう。

「わっぷ」
「尚樹、また明日な」

 シンが優しく俺を抱きしめる。車すら潰してしまえるパワーの持ち主が、俺を潰さないように、でも触れるとは違う絶妙な強さで俺を包んでいる。俺もシンの腰あたりに手を回す。

「……明日は家囲むのやめろよ。朝熱くて大変だった」
「んー………………わかった。尚樹が言うなら」

 そう上から答えが降ってきてシンは腕を解いた。見上げる俺の頭に手が添えられ、屈んだシンの顔が迫ってくる。口づけだけのキスだ。シンはすぐ身体を起こす。

「じゃあな!」
「…………ああ」

 俺はすぐ振り返って玄関の鍵を開け、家の中へとなだれ込んだ。鍵をかけてずるずるとその場にへたり込む。顔が、熱い。

「…………なんなんだよ、もう…………」




扉で隔てた向こうでは、シンが尚樹の入った家のドアを見つめていた。しばらくした後、シンは振り返って尚樹の家を離れていく。そうして尚樹の家が見えなくなったころ、シンは立ち止まる。

「……さて」

 シンは空を見上げると、ぐっと膝を曲げた。次の瞬間、ドンッ!!という音が周囲に響く。アスファルトは砕け、シンの姿はそこにはない。地面を強く蹴ったシンは、あっという間に地上五十メートル近くまで跳んでいた。

「尚樹が寝ているうちにやっちまうか」

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ハロウィンをテーマにした二人のSSが読めます。巨大化したシンが尚樹にいたずらをする話。(約1800字)

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