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涼介シリーズの記事 (5)

team-h 2023/12/25 23:17

team-h 2023/07/19 18:30

team-h 2023/05/17 00:00

お誕生日おめでとう涼介!!

二人の付き合いの長短は関係ありません。
ただ純粋な程の”絶対的な信頼”と”二人で一つ”が同時に成立している心の完成形。











































「今日は涼介”くん”のお誕生日」
































夕食の席は特別にうなチラシを用意したアナタ。
涼介はそれを喜んで平らげ、今はめいいっぱい膨らんだお腹に満足しつつテレビを見ています。

「ぶっちゃけ言うと誕生日だって仕事だし、歳ばっかくって、あんま嬉しくないよなぁ~」


なんて言いつつも、
突然アナタに部屋を暗くされ、テレビまでもを消されてビックリ仰天の涼介くん!


ちょっぴり不器用かつ不気味なアナタの「はっぴば~すで~♪」と共に


薄っすらと明かりの灯ったサプライズの手作りケーキが登場するや否や

「え……」

と、あからさまに表情を変えてしまいます。


トン……、とケーキが彼の目の前に置かれます。


「ねぇ~えぇ!マジでぇ~~~~~~~(照照照照照照照照!)!!!!!!」

と、嬉しすぎてどうしていいのか分からなくなった涼介くんは身体をよじりによじって
どうしていいのか分からな過ぎてもうヤバいです。




久しぶりに歌う事が恥ずしすぎて途中で濁してしまったアナタが


「お願い事して、フーッてして?」
なんて恥じらいつつ言ってみると


「なんだよ、やめてくれよ~(笑)」

と、涼介くんがお道化始めます。
お道化てはいますが、
ちょっと涙が滲んでいるような気がしました。

































目の前の席に座り、ソワソワと落ち着かない涼介くんを照れてしまってよく見られないアナタ。






































その時のアナタの口元に
涼介くんはただただ見惚れてしまいます































そして
















「じゃあ、お願い事、言うね」




そう言って、身をかがめる涼介くんは
男らしく、そして”彼らしく”意を決したみたいです

















































「死ぬまでずっと……」















































「今日みたいな日が過ごせますように……」






















































そう言ってろうそくの火を吐息で全て消した涼介くん








































彼の起こした爽やかな風がアナタの髪を撫でています













































それを感じたアナタ。
自分でセッティングしたクセに
アナタの方が泣き出しそうで
それを見つめる涼介くんがだんだんとゆがんでいきます













































「なによそれ……、欲しいものとか言ってくれると思ってたのに……(照笑)」














































なんて照れ隠しで言ってみたアナタ
なんでしょうか。アナタは突然に古典的な女の子の口調に様変わりしました




だって普段の涼介は自分の欲望をアナタの前ではあまり話しません




――だから、それが知りたかったのに。












ガッカリしたわけでは無かったアナタです。
でもたまには、涼介くんのワガママを聞いてあげたくて……
その為なら何でもしたくて





















――でも何をしてあげたらいいのか私には分からなくて





































こんな何もできない馬鹿な私を
愛してくれているのが







ホントに不思議で堪らなくて……















































フツフツとこみあげてくる
大きすぎる幸せと少しの不安――







そんなあなたの表情を見て、涼介くんは何かを感じたみたいなんです。
だけど、彼は心が満たされました。






だからアナタの頬に手を添えて――















































「だから好きなんじゃん」



















































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この後は言うまでもなく、
アナタと涼介は一つになりました










だけど、その空間にはなぜだか不思議と一つのいやらしさも感じられません


そこにはただ




現世で割かっていた身体が

元の一つに戻っただけ。

ただそれだけの空間なのでした
















































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作者あとがき



なんだこれ。何なんだよこれ……!!!!クソッ……!!!!
胸が苦しい!!!
























そんな時の特効薬は大和君です

team-h 2023/04/10 01:46

土屋涼介の分かりやすいヤキモチ

※”何があっても守ってあげる”のその後のお話です。以前、その後のお話はしないといったのですが、やはり涼介が嫉妬するのはアナタの元カレだけだったので……🙇🙇

※大和が登場するので、大丈夫、な方のみお読みください。
シチュエーション感は無いです。恐らく壁目線になるかと思います。
壁目線中の読み心地は悪いかもしれません。

※大和の彼女は良妻賢母。

※涼介は良くない気持ちを飲み込んでしまうので、この様な形なりました……🙇なんでも来い!という方のみお進み下さい。

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涼介のプロポーズを受けてから少しを経たある日。



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今日、あなたと涼介は温泉デートに来ています。
(高級な旅館なのですが、アナタの会社の提携施設でもあり、実はお得に泊まることが出来ました。)

到着した旅館のエントランスには外へ続くテラスデッキがあり、そこにはどこまでも続くような青空とそれを満喫できるような寝椅子が数台置かれていました。



















今まで何度も星空デートへと連れて行ってもらったアナタの脳内には
(きっと夜には素敵な星空が広がっているんだろうな)と楽しい想像が広がります。





















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そしてしばらく――。

お部屋で寛いだ後に大浴場へと向かった二人。

大浴場の階。
エレベーターのドアが開いた時、
涼介は「しまった!浴衣の帯を忘れた!」
と言ってお部屋に急いで戻って行きました。

先に入ってて!とは言われたものの、
タイミングが合わずにすれ違っても困るので
アナタは涼介が戻るのを待つことにしました。

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大浴場前の待ち合わせ用ソファにゆっくりと腰掛けるアナタ。

反対側には、髪をゆるくまとめ上げた浴衣の女性が静かに座っていました。

彼女の手には冷えたフルーツ牛乳が2本。

上気した頬は、お風呂上りからなのでしょうが、
アナタの目には、彼氏を待っている”少し照れた女の子”の様に見えたのでした。

その人との穏やかで静かな時間を過ごすアナタ。

しばらくすると、エレベーターがチン!と音を立てて止まりました。

(涼介!)と思うアナタですが、出てきたのは老齢の男性でした。

男湯の暖簾をくぐっていくおじいさんを見送るアナタと女性。

女性の方は、アナタよりも長く、男湯の暖簾を見つめています。

エレベーターに向き直るアナタ。
そのエレベーターは、急いで下の階に降りているようです。

大浴場は展望露天風呂があるので最上階に鎮座しています。
そして、アナタと涼介のお部屋は6階です。

6階で一度止まり、最上階へと上がってくるエレベーター。

(今度こそは……!)再びチン!と音を立て開くエレベーター。

しかし、開く扉を見守るアナタの目にはとんでもない光景が――!

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「いや~!びっくりだよ!こんなところでまた会うなんて!」
「ホントですね」

楽しそうに笑い合いながら出てくる男性二人。

うち一人は紛れもなくアナタの婚約者である土屋涼介、なのですが……
その隣には……。


「あれ?真幸?もう帰ってたの?」

そういって立ち上がる反対側の女性。
彼女は、涼介と楽しそうに笑う”大和真幸”の側へ駆け寄っていきました。

二度目のびっくりに言葉も出ないアナタに涼介が近づきます。

「ごめんごめん!帯取りに行ってたら、知り合いに会っちゃって~」と、彼はのんきに後ろ髪を掻いています。







「あの人、知り合い……なの?!」と驚くアナタ。
「そう……、だけど?」

と、きょとんとしながらも、何かを察する涼介。
同じようなきょとん顔の女性も、”げっ”とあからさまに嫌そうにする大和の隣で
アナタの顔を見つめて来ます。

思いもしなかった鉢合わせに固まるアナタ。
しかし、大和真幸は一枚上手でした。

不可思議な空気が流れたこの場を「同じ会社なんです!」の一言であっという間に片付けた大和真幸。

まさかの鉢合わせの元カレの一言に
何とか、その場をしのぐことが出来たアナタなのでした。



























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夕食を終え、涼介が、もう少しだけ、と誘って来たのは、足湯に浸かりながら、スイーツやカクテルが楽しめるお洒落なバーでした。
もちろん、ノンアルコールカクテルも豊富です。

バーに入ったアナタは、聴こえてきた声に絶句します。











「そんな……、私、ずっと待ってたんだよ。先に帰っちゃうなんて」
「のんきにフルーツ牛乳なんて買ってる方が悪いんだろ!っていうか、俺、嫌いだし!アレ飲むと気持ち悪くなるんだよね~」














見えてきたのは、ニヤつきながら彼女に嫌みを言う大和と、
とても悲しそうな彼女さんの姿。









無言になってしまった彼女に、
さすがの大和も、
見ていただけのバーテンダーさんも、バツ悪そうに固まってしまいました。










同じく店の入り口で唖然と固まるアナタと涼介。
しかし、涼介はアナタに何やら合図を送ってきます。

(何とかしてあげよう)と、目線で伝えてくる涼介。


正直に言うと、全力で首を振りたいアナタでしたが、微笑みながら手を握ってくる涼介に
アナタの胸も”誰かに分けてあげないと”
と、溢れ出してしまうくらいに幸せでいっぱいになってしまうのでした。







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バーテンダーさんの喜び伝わる”いらっしゃいませ!!(助かった!)”の後――。

カウンターに横並びに座る二組のカップル。
大和と涼介は隣り合い、とても楽しそうにお話しています。

アナタが頼んだスイーツは、
作るのに時間がかかるそうなのですが、それも気にしなくて良さそうでした。

時に彼女さんに意地悪をする大和ですが、ニヤつきながら嫌みを言った後、彼女の顔に穴を開けてしまう程に反応を確認しているのが、今のアナタにはハッキリと分かりました。

ただ、その不可解な行動の”理由”が理解できないアナタ。
そんなアナタを涼介は笑って見つめています。

「すっごい皺寄ってるよ」と、アナタの眉間を撫でる涼介は珍しくほろ酔い気味です。
人前にも関わらずに顔を近づけて笑う涼介に、アナタは彼の顔を直視できません。

羽織を着た浴衣姿も様になっていて、何度見ても、どこから見ても
アナタの彼氏は、単純にとてもカッコ良くて、いつまでたっても”大好きな人”のままなのでした。

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しばらく4人で笑いあった後、
お酒が入った大和は、涼介にずっと秘密にしていたことを打ち明けました。

それは、かつて”アナタと大和が付き合っていた”という、過去。

恐らく大和は、彼女の反応が見たくて言った言葉だと思うのですが、
その言葉を聞いたとたん、グラスを傾ける涼介の手が止まってしまいました。

言葉を聞いた彼女さんも、先ほどまでの笑顔のまま表情が固まってしまいました。

グラスを置いた涼介は黙ったままです。

とっさに涼介を見るアナタですが、涼介はアナタを見返してはくれませんでした。

心配したアナタ。
昔の話で、とグラスを持つ涼介の手を握ろうと手を伸ばしますが、
涼介はその手をスッと引いてしまいました。

初めての経験にどうしていいか分からないアナタ。

口元は微笑んだままの涼介ですが、その目は全く笑っていませんでした。

気づかない大和が独壇場を続けますが、涼介は黙って立ち上がりました。
「どうしたんですか?」という大和に、涼介は「ごめん。酔っぱらっちゃって」とだけ答えます。

休みたいので先に部屋に戻る、といった涼介。
彼はアナタに「ゆっくりスイーツを食べてからおいで」と優しく言って去っていきました。
しかし、彼のその青い瞳はアナタを捉えてはいません。

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しばらくして、豪華なパフェに対面したアナタ。
しかし、手を付ける気が起こりませんでした。

「ごめんなさい。これ、二人で食べてください!」

そう言って、店を後にしたアナタ。
残された大和とその彼女にも
スイーツを楽しむ話題は何一つありませんでした。












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身重の体にも関わらず、小走りで部屋まで急ぐアナタ。

部屋の前につき、ドアノブを回しますが、鍵がかかっている様です。

スペアのカギで扉を開けるアナタ。

部屋に入り、暗い部屋に明かりをつけて、
涼介の姿を探し回りますが、その姿は一向に見当たりません。

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もしかしたら、と大浴場へと向かったアナタ。

待合のソファに座り、アナタは一人、男湯の暖簾を見つめて涼介の姿を待ち続けます。

ですが、
夜も更けた時間帯には、涼介どころか、誰一人、通りかかる人もいませんでした。

一人、静かな時間を過ごすアナタは少しだけ涙ぐんでしまいます。

そんなアナタの目の前でエレベーターがチン!と言いました。

出てきたのは、大和真幸――。の彼女さん。

アナタの姿を見つけて、彼女も驚いている様でした。
バツ悪そうにするアナタ。

しかし、彼女はアナタに優しく微笑みました。

彼女の両手には、空になった牛乳瓶が二つ。

気まずそうにするアナタに対し、彼女は「これを返しに来たんです」と微笑みました。

自動販売機の横にある、返却棚に牛乳瓶を入れる彼女さん。

戻し終えると、彼女はアナタの隣に座ってきます。

ご主人はお部屋ですか?
と聞く彼女に対し、アナタは「それが……」とワケを話しました。
そして最後に「すみません」と付け加えるアナタ。
それは恐らく”大和の元カノでごめんなさい”という意味だと思います。

元カレの今カノに対し、こんな気持ちを抱けたヒロインちゃんは
きっと涼介に



幸せを抱えきれないぐらいに与えられているからなのだと思います。





ただ、その言葉を聞いた大和の彼女はキョトンとしています。
「あの……」と、彼女の機嫌を伺うアナタに大和の彼女さんは、



「それは私に言う事ではないですね」と微笑みました。



その言葉の意味を察したアナタ。





アナタは、気が付けばソファから立ち上がっていました。























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そして、何かにつられる様に

旅館の廊下を駆け出すアナタ。



















































思い出すのは、嬉しそうにアナタの手を引く涼介の姿。
スラっと整った出で立ちには似合わない程のガサガサとした手。
その手に乗せられているのは、アナタの指先です。





































その思いでの日には、いつも満点の星空が輝いているのでした。












































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静かになった温泉旅館。
そのエントランスには、
外へ続くテラスデッキがあり、
そこにはどこまでも続くような星空と
それを満喫できるような寝椅子が数台置かれていました。
























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夜はまだ肌寒い季節です。
テラスデッキに出たアナタは満点の星空に包まれました。

しかし、アナタが心を振るわせられたのは、星空ではありませんでした。






































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寝椅子に転がり、星空をじっと見つめている土屋涼介――。
































その彼の影に、小さく膨らんだお腹の女の子の影が近づいていきました。
































_______________________________________。






アナタに気が付いた涼介。
寝転がっていた彼は、アナタに気が付いて、ハッと身を起こしました。

「駄目じゃないか!そんな薄着で!」

酔いも醒め、冷静になった涼介は、浴衣のままのアナタに、急いで自分が着ていた羽織を被せます。


いつまでも変わらない優しさに、
































降り注ぐ彼の愛情が、
心から溢れ出してしまったアナタはなぜが涙が溢れて止まりませんでした。























そして彼に――

黙っていてごめんなさい。と何度も謝罪します。




































あなたよりも前に付き合っていた人がいてごめんなさい。
あなた以外に好きな人がいたことがごめんなさい。
大好きな人を傷つけてごめんなさい。
私を大事にしてくれる人を傷つけてごめんなさい。





































______________________________________

目の前に








子供の様にむせび泣くアナタの姿に涼介は戸惑ってしまいます。

彼女にこんな顔をさせてしまった自分が、
どこまでも不甲斐なく、大人げなかった、と。
謝りたいのは自分の方で……、と感じる涼介。

どうしていいのか分からない彼でしたが、
ただ一つだけ分かっているのは























































「人間って、抱き締めてもらうと、落ち着くんだって」























































_______________________________________
























































ただ一言。
それだけを言って、アナタを抱き締める土屋涼介。






















































その力強さに少しだけ苦しさを感じるアナタなのですが。





















































_____________それはそれで心地がいいと感じるアナタなのでした。
























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言葉もなく抱き合う二人。



きっと月に帰ってしまったかぐや姫も
微笑ましい二人の行方を、かつての地球に思いを
馳せながら
笑顔で眺めている事でしょう。















































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(翌朝の朝食の時間はさすがに別々に取った大和と涼介カップル。
大和カップルの方はまた揉め事を起こしている様で、それを唖然と眺めるアナタと涼介なのでした)



※こんなトコロで終わってごめんね
































なのでした🙇

team-h 2023/04/07 23:35

大和の分かりずらいヤキモチ

【大和の分かりずらいヤキモチ】

なんと!しっかり者ヒロインちゃん、今回は帰宅時に痴○(?)にあってしまいます。

_________________________

残業を終えた帰りの電車。
いつもの帰宅風景である電車内の――、






空いた椅子でウトウト眠っていると、
気が付けば、一人の大人しそうな男性が異様にぴったりとくっついて座ってきます。



反対側を見れば席は空いているのに、なぜか体を寄せてくる男性に違和感を覚えつつも痴○だとまでは断定できずにその場は再び寝たフリでやり過ごしました。
(これ以上近づいたらちゃんと自衛しますがそれも無いので)







無事、何事もなく最寄りのホームに降り立ったアナタ。










振り返り――、先ほどまで乗っていた車内を覗くと例の男性はそのまま眠っていました。

自分の考えすぎだった、
と胸を撫で下ろし、アナタは鞄からスマホを取り出します。

――。

この日、アナタは大和真幸からお誘いを受けていたのでした。
スマホ画面を確認するアナタ。
この時すでに23時は過ぎています。



スマホ画面には以下のやり取りが残されていました。











大「20:00 ご飯いこうよ」
ヒ「20:05 ごめん。今日は無理かも。トラブル発生で残業中……」
大「20:05 また?仕事できなすぎだろ。何時に終わる?」
ヒ「20:08 多分終電になると思うから。今度また誘って(ごめんねスタンプ)」
大和の既読は即着いた。
ヒ「20:37 なんかごめんね。言い方良くなかったのかな。ご飯大丈夫?ちゃんと食べた?」
大和の既読は即着いた。







そして最後に――。

ヒ「23:03 今やっと最寄りついたよ。帰るね。今日はせっかく誘ってくれたのにごめんね。(おやすみスタンプ)」












それだけ打ち終えると、アナタは自宅に続く暗い夜道を歩き始めました。

都会から離れた人通りの少ない見慣れた夜道にはアナタの靴音だけがコツコツと鳴り響いています。








しかし、しばらく進んで行くうちにアナタは、何やら異変に気が付きました。







どうやら靴音がもう一つ増えている様なのです。
踵を少しだけ引きずるような、男性の重い革靴の音。


しかも、アナタの歩調に合わせるように、アナタの少し後ろを歩いているようです。

(いつの間に居たんだろう……)電車内で経験した不安要素も相まって、いつもなら気にならない様な事でも不安になってしまうアナタ。

確かにこの道は、”人通りは少ないが誰もいないとは限らない”。
そう思いつつも、アナタの歩く速度は、だんだんと早まります。

それに合わせるように歩調を強める男の足音。

怖くなったアナタは、軽く駆け出しました。
同じように駆け出す音に、アナタは強い恐怖を感じます。

無意識にアナタの歩調もさらに早まります。
目の前の角を左に曲がればスグにあなたの自宅なのですが、アナタはその勢いのまま右に向かって駆け出しました。








(このまま自宅まで行っても怖いから、後ろの人を巻いていこう!)




右に曲がってすぐ、全力で駆け出そうと、一歩を踏み込んだ、その瞬間。

アナタは男の靴音を真後ろに聴き、背筋に温度を感じます。

――後ろに誰かいる!!

そう思ったのも束の間、あなたの腕はグイっと引っ張られてしまい、アナタの態勢が崩れます。グラつく足元を低い姿勢で必死に踏ん張るアナタ。

「放してください!」

中腰で叫ぶアナタに、男はあっさりと手を放し、
あなたはその場で盛大に尻もちを突きました。

「ここ左だろ!!」

痛みに耐えつつ、顔を上げると、
そこには、口元を押さえ笑いを堪えている大和真幸が立っていました。

「え……、真幸?」
「そうだよ!……プッ!お前、俺の事、変質者だと思ってやんの、……ククククク!」
「まっ……、間違えるよ!普通!!」

真っ赤な顔で訴えるアナタをよそに大和真幸は笑いを堪えるのに必死です。

(むかつくけど……、それでも……)

「よかった。さっきの人じゃなくて……」
その場でホッと胸を撫で下ろすアナタは、そう言って小さくため息をつきました。

しかし、アナタの言葉に、大和は強く反応してしまいます。


気づかないアナタは、大和が手も差し伸べてくれないので自力で立ち上がり話を続けます。

「何でこんなところにいるの……」
と、ポンポンとスカートに着いた汚れを落としながら聞くアナタ。

「本当に残業なのか確かめに来た」
「ちゃんと残業だよ」
「ってか、さっきの人ってなに?」

質問され、返答を考えているアナタを大和は真剣に見つめています。

大和の質問に対しアナタは、”痴○未満男”について説明をしました。


「な、感じで。痴○とは言えないんだけど、、少しだけ気になって、それで……」

言い終えるころには、大和は再び口元を抑えています。

「プププッ!!」

大和は堪えきれず、深夜にも関わらず盛大に笑い始めます。

「ははは!オマエっ!自意識過剰じゃん!アハハ!お前みたいなの!誰が痴○すんだよ!物好きだな!!ハハハハハハ!!!!」

その言葉に、温厚なアナタもさすがにムッと来て、アナタは大和を置いてスタスタと歩き始めました。

「あっ、おい!待てよ!」

急いで着いてくる大和。
それも無視して歩くアナタなのでした。

______________________

自宅に入ったアナタと大和。
このころには大和の機嫌もすっかり斜めになっていました。

残業を終え、電車内での不安、さらには大和の奇行によってヘトヘトになったアナタ。(大和の奇行はわりとよくある事なんですが)

とりあえずリビングで一息つきたいところなのに……。

「すぐに風呂に入れ」

と、大和がせかしてくるではありませんか。

一息だけつかせて、と言うアナタですが、当の本人は”汚いからヤだ”の一点張り。
何が汚いのか、問いかけると

「他の男に触られたから」だそうです。

いや、だから……。とアナタが痴○未満男について、”ただ近かっただけ”と説明しても、
一向に納得しない大和真幸。

終いには、
「右半身が男と密着してたんだろ?え?何?もしかして嬉しかった?へぇ、若い男だったんだっけ?そりゃ嬉しいか~、お前なんて俺ぐらいしか相手しないもんな~????はぁぁぁぁぁぁ!!!(デカい溜息)……そんなアバズレもう無理だわ~、さすがの俺も汚すぎてゲロ吐きそう」
と、今までの自分を棚どころか丘の上に置いてきたような発言を繰り返します。

どうせお風呂には入るし……(この人言い出したら聞かないし……)。と渋々承知したアナタはシャワーへと向かいます。

______________________

一方、大和の心は嵐の様に荒れていました。

アナタがシャワーに入っている間。
大和真幸は、アナタの部屋のすべての窓をチェックしました。
外に見える景色――、変わらないであろうアナタの日常。

そのどこかに、

”アナタを狙う誰かが潜んでいるのでは無いか”

と、彼は不安で堪りません。

誰かがコイツを見ていたら――。誰かが……。



俺からコイツを奪っていこうとしてるなら――――。



それだけで心臓がキュッと縮む様な気がしています。
それは酷く痛いようで、彼にとってはとても辛いようなのです。

ただ一人の、どこにでもいる女の子なのに――――。


大和真幸にとっては
その女の子が何よりも大切で堪らないのでした。

_______________________

シャワーを終え、出てきたアナタ。
なぜか雨戸まで全て締め切られ、
カーテンまでもを閉められた部屋で何事も無かったかのようにテレビを見ている大和真幸は、パジャマに着替えたあなたを笑顔で迎えます。

こっちにおいで、と嬉しそうに誘う大和に、今度はアナタが逆にシャワーをせかします。

_______________________

アナタにい言いつけられた通り、シャワーを終えた大和真幸。

出てくると、アナタは仕事の疲れも相まって、テレビをつけたまま、テーブルに突っ伏すように眠っていました。

大和君のほっとする時間の一つが始まりました。

自分のテリトリーを守るために、いつも気を張っている大和真幸。
初めて ”ありのままの自分” を許してくれたアナタの寝顔。

ヨダレが垂れていようが、乾かした髪がボサボサだろうが、大和真幸には関係がありません。

ありのままの、
”超好きなアナタの無防備な寝顔”
は、彼にとって

”一番に守りたい幸せ”

なのでした。

しばらくその寝顔を見つめる大和真幸はとても嬉しそうです。
面白い企画のテレビ番組に、時々目をやりつつも、その間に挟むアナタの寝顔に堪らない幸せを感じてしまう大和なのでした。

そして、かつて自分が言った言葉を胸の内で反芻する大和真幸。

”何があっても守ってあげる”

彼にとって、アナタのただの無防備な寝顔は
何があっても守ってあげたい自分にとっての唯一の希望であり

”幸せ”

なのでした。

(もちろん、アナタが起きた頃にはいつもの太々しい大和真幸に戻っています。なんなら翌朝にアナタが用意したトーストに対して、「俺、味噌汁とご飯用意できない女とか、無理だわ~」とか言ってきます)

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