「研究所から脱出する人工人間たち」あらすじ

「研脱」のあらすじ:

【起】裏切り者

 少女はある日、気がつくと見覚えのない場所にいた。ここがどこなのか、なぜここにいるのか、自分は何者なのか、今から自分が何をなすべきなのか、なぜ記憶がないのか……いずれも彼女には分からなかった。謎だらけの状況の中で一つだけ確かなのは、どうやら彼女が記憶喪失になってしまったらしいということのみである。部屋には彼女の他にも記憶喪失の少女たちが3人いた。部屋の中に、ナタリーという名前の監視官の少女が入ってきたが、ナタリーは4人の少女たちの味方であると宣言し、彼女たちの素性や生い立ち、名前について親切に教えてくれた。4人の少女たちはナタリーのことを深く信頼した。4人の少女の名前はそれぞれ、赤アスリン、青レノ、黒ミア、白リディーであることが判明した。赤アスリンは火の魔法、青レノは水の魔法、黒ミアは闇の魔法をそれぞれ操ることができ、白リディーはどんな生物の姿にでも自由に変身することができる上に、星の魔法も扱える。

 ナタリーの話によれば、どうやら自分たちは、何らかの特別な理由があって外部からここへ拉致され、脱出できないように監禁されているらしい。この施設は「スレード教団実験調査研究所」と呼ばれており、スレード教団という危険で怪しいカルト宗教団体によって管理・運営されている。研究所では錬金術の研究や古文書解読、神学論争、人肉を調理して食べる儀式、そして違法な人体実験などがおこなわれていることが判明した。4人の少女たちは、ナタリーと共に反教団組織「旅人の仲間」を結成して教団と戦うことを決意する。そんな中、予想もしていなかった嫌な出来事が起きる。なんと、「旅人の仲間」の内のひとりである白リディーが、仲間を裏切って教団の側についてしまったのだ。裏切り者であるリディーを殺すために「旅人の仲間」は全力で総攻撃を仕掛けるが、ありとあらゆる生物の姿に変身できる白リディーはあまりにも敵に回すと厄介な存在であり、「旅人の仲間」の手に負える相手ではなかった。

 しかし、紆余曲折を経て彼女らは研究所を脱出することに成功する。

【承】隠された真実

 ところが、彼女たちの戦いはここで終わりではなかった。彼女たちが「脱出」に成功したことを知った教団の信徒たちは、彼女たちを見つけ出して捕まえるために、武器を用意して臨戦態勢に入ったのである。できる限り生け捕りにしなければならないが、どうしてもそれができなければ殺害してもかまわない、という指示が信徒たちに出された。

 そして衝撃的な事実が判明した。なんと、4人の少女たちの正体は実は人間ではなく、教団が黒魔術を用いて人工的に作り出した「人工人間」であり、彼女らの性格や人格は、オリジナルの人間のそれを模倣していたのだ。彼女らが研究所の外から拉致されてきたというのは真っ赤な嘘であり、ナタリーの作り話だったのだ。そして、4人の少女たちが記憶喪失になっていたのは、ナタリーの固有能力によるものであった。ナタリーは、この世に存在する全ての人工人間の記憶を書き換える能力を持っていたのだ。

 さらに驚くべきことに、ナタリーが「旅人の仲間」に協力するふりをしていたのは演技であり、「旅人の仲間」の活動情報を教団の上層部に流すことがその真の目的だったのである。深く信頼していた仲間の裏切りは旅人の仲間の士気を低下させたが、彼女らはどうしてもここで諦めるわけにはいかなかった。教団の信徒たちを駆逐し、研究所に捕らわれた人工人間の少女たちを救出しなければならないからだ。

【転】新たなる絶望

 さらにもう一つ驚くべき出来事が起きる。敵になったと思われた裏切り者の白リディーが、「旅人の仲間」に対して再び和解を申し入れてきたのだ。不思議に思って詳しい話を白リディーから聞いてみると、どうやら彼女が「旅人の仲間」を裏切って教団の側についたのは全て敵を欺くための演技であり、教団に対して大きな貢献をすることで組織内において一定の地位を手に入れ、武器庫の鍵を手に入れることこそが真の目的だったのだ。武器庫の鍵があれば「旅人の仲間」が武器を使うことができるようになるため、白リディーはなんとしても武器庫の鍵を手に入れたかったのだ。事情を知って納得した「旅人の仲間」は、白リディーと和解し、彼女を再び歓迎した。白リディーのお陰で「旅人の仲間」は武器を手に入れることができ、素手で戦う必要がなくなり、より戦いやすくなった。

「旅人の仲間」はついに研究所の最深部に存在する「人工人間強○収容所」へとたどり着く。そこには、おびただしい数の人工人間の少女たちが捕まっていた。「旅人の仲間」は、人工人間の少女たちを牢獄から解放し、自分たちの仲間に加えた。火属性や水属性、風属性など多種多様な属性を持つ彼女らは、「旅人の仲間」にとって大きな戦力となった。教団の信徒たちを大量に倒すことに成功した「旅人の仲間」たちは、いよいよ研究所において最も重要な場所である「所長室」へとたどり着く。そこには、この研究所の所長がいた。部屋の付近には、所長を護衛するために、強力な神官たちが配備されており、旅人の仲間の構成メンバーのほとんどはそちらへ回さざるを得なくなり、主人公は所長と一騎打ちすることを余儀なくされる。絶体絶命かと思われたが、主人公はかろうじて所長に辛勝する。部屋の外の廊下で神官たち相手に激戦を繰り広げていた人工人間の少女たちも、死者を複数人出してしまったものの最終的には見事に勝利を収め、旅人の仲間たちは研究所を無事に脱出することに成功した。

 しかし、まだ安心できる状況ではなかった。一難去ってまた一難、である。なぜなら、「スレード教団実験調査研究所」の建物の外には、人間を捕食する恐るべき食人植物が多数生育していたからである。赤アスリン、青レノ、黒ミア、白リディーはかろうじて生き残ったが、それ以外の人工人間の少女たちは全員食人植物に捕食されてしまった。食人植物は本来そこまで強い植物ではなく、万全の状態の人間なら苦戦するような相手ではないのだが、このときの少女たちは教団との戦いで傷つき疲弊していたので、食人植物相手に敗北を喫してしまったのだ。「旅人の仲間」は、こんなことになるくらいならいっそのこと研究所から脱出しなければ良かった、と考えたが後悔してももう遅かった。

【結】監視官

 武器屋から武器を購入して戦力を整えた「旅人の仲間」は、今はもう誰も住んでいない廃墟に滞在し、研究所の倉庫でくすねた携帯食料を食べていた。ところが、なんと旅人の仲間を襲うために、研究所からナタリーが追ってきたのだ。旅人の仲間は自分たちの身を守るために、ナタリーと戦わなければならなくなった。一時的とはいえ元仲間だったこともあり、心情としては戦いにくい相手だが、迷っている余裕のある状況ではなかった。ナタリーは非常に強い魔力を持つ監視官であり、旅人の仲間は4人がかりで戦っても苦戦することを余儀なくされた。しかし、最終的に勝利を収めたのは旅人の仲間であった。敗れたナタリーは死亡した。敵であるとはいえ、愛着のある元仲間が目の前で死ぬところを見るのは赤アスリンにとって耐え難い苦痛であった。

 癒えることのない悲しみと後悔を抱えながらも、新しい安住の地を求めて4人は旅に出るのであった。

作者のコメント

 酷いバッドエンドですね。果たして彼女たちが報われて、幸せになる日は来るのでしょうか……。

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