シナリオの作り方の基本について考えてみる

 某サイトで紹介されていた「物語の作り方のコツ」について考えてみます。

1.物理的な課題を解決する表層のストーリーと、精神的な課題を解決する深層のストーリーの2層構造にする
2.主人公の間違った認識が正される話にする

 らしいです。物理的な課題というのはその物語の中で起きる表面的な戦いや事件のことです。例えば鬼退治をするとか、革命が起きて政府が転覆されてしまうとかそういったようなものですね。その一方で、精神的な課題というのは、文字通り主人公が持つ考え方や気持ちに関する課題です。例えば、もともと自分なんか生きている価値がないとネガティブな思い込みを持っていた主人公が、本当は自分が仲間から必要とされる存在であることに徐々に気が付いていくお話だったり、人間が生きることに意味なんかないというある種のニヒリズムのような思想を持っていた主人公が生きることの素晴らしさを知ってゆくお話などがこれに当てはまります。物理的な課題精神的な課題、どちらが欠けてもよい物語にはならないらしいです。もし物理的な課題がない場合は、何も事件が起きない中主人公がずっと平凡な日常生活を送り、自分の心の中の問題を解決するためにずっとウジウジ悩み続けるだけのお話になってしまいます。また、物理的な課題だけがあって精神的な課題がない場合、主人公の心の中の悩みや葛藤といったものがない、ただ目の前の事件を解決するために頑張るだけの単調な話になってしまいがちです。

 つまり、よくある物語の構造というものを整理すると以下のようなものになるようです。
・「事件がまだ起きていなかった頃」の主人公は、事件がないからこそ安全な日常生活を送ることができていたが、敗者であるが故のモヤモヤした悩みやルサンチマンみたいなものもずっと抱えていた
・しかし、危険な事件が起きることによって平和な日常は幕を閉じ、危険な非日常の世界が訪れてしまう
・主人公にとってその事件は一つのピンチであると同時に、自分の心の中の悩みを解決して幸せになるためのチャンスも兼ねている

 「2」については、「1」の精神的な課題のことを別の言葉で言い換えているだけのような気もします。
 
 全ての作品が例外なくそうである、と言い切ることはできませんが、確かにたいていの作品はこうしたセオリーに沿ってシナリオが作られているような気がします。このへんのことってふだんから小説や漫画をかいている人じゃないとなかなか気づけなくて、見たり読んだりするだけの側に回るとつい見落としがちなポイントなので、初めて知ったときは目からウロコでした。

 ただし注意しないといけないのは、これを守ってシナリオを作ったから必ず面白いものになるというわけではなく、あくまでもシナリオを作る基本的な知識に過ぎないということです。この条件をしっかり守って書かれているのにつまらない作品なんて山ほどあるでしょうし、そもそも「面白い」か「つまらない」かはあまりにも読み手の個人的な感性や趣味嗜好に左右される割合が高すぎます。

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