シナリオの作り方の応用について考えてみる【作例つき】

前回こちらの記事にて「基本」について書いてみましたので、今回は「応用編」を書きます。
https://ci-en.dlsite.com/creator/14255/article/853166

 「基本編」の方では、物語には物理的な課題と精神的な課題が必要であるという話をしました。今回は、ストーリーをよりドラマチックなものにするためには何が必要であるかを考えてみたいと思います。

 今回は、この理論が実際にちゃんと正しいかどうかを検証するために、作例も作っていこうかなと考えています。まずは、「応用編のテクニック」をひとつも使わず、基礎編のテクニックのみであらすじを構成するとどうなるか確認してみましょう。応用編のテクニックが入っていないので恐らくかなりつまらないものになると思われます。

 では、今回の作例では、「物理的な課題」として美少女剣士の主人公が、魔法使いの友人と協力して旅に出て、病気の妹を助けるために危険な山の中へ薬草を取りに行くというストーリーを、「精神的な課題」として主人公が被害妄想によって妹のことを嫌な奴だと考えている(が本当はいい子)、という設定を付けてみます。この設定に沿って簡単な物語のあらすじを試しに作ってみます。

剣士と魔法使い

1.山のふもとにある小さな小屋で、主人公と病気の妹がふたりで暮らしている。姉妹は仲が悪く、主人公は妹のことを嫌っている。山の頂上にあると言われる魔法の薬草があれば、どんな厄介な病気でもたちまち治ると言われており、妹はこれを取ってくるように主人公にお願いした。憎たらしい妹を助けるためではなく、家事をやらせて自分が楽をするために、主人公は打算で妹の頼みをしぶしぶ引きうけた。

2.ひとりで山に入るのは危険だと考えた主人公は、仲のよい友人とコンビを組むことにした。強力な魔法が使える友人の活躍もあって旅は順調に進んだ。もしかするとこの旅が終われば、友人との距離が吊り橋効果で縮まって、恋人になれるかもしれない……そんなことを考えた主人公は胸を高鳴らせる。この旅は主人公にとってただ危険で厄介なだけの旅ではなく、幸運を掴むチャンスでもあった。しかし、旅を続けている間もずっと、妹と喧嘩をしたときの嫌な記憶が主人公の頭から離れることはなかった。

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4.主人公と友人は無事に山の頂上へと辿りつき、薬草を手に入れることに成功する。そして、それを家へと持ち帰り、煎じて妹に飲ませた。すると、妹の病気はたちまち治り、再び家事ができるようになった。妹は主人公にお礼を言い、これがきっかけで主人公は妹と仲直りする。そして、自分が本当に信用すべきだったのは友人ではなく妹だったのだと主人公は気が付く。

 さきほど予想した通りなんともメリハリのないいまいちなシナリオになってしまいました。これを少しアレンジしてみます。

剣士と魔法使い(アレンジ版)

1.山のふもとにある小さな小屋で、主人公と病気の妹がふたりで暮らしている。姉妹は仲が悪く、主人公は妹のことを嫌っている。山の頂上にあると言われる魔法の薬草があれば、どんな厄介な病気でもたちまち治ると言われており、妹はこれを取ってくるように主人公にお願いした。憎たらしい妹を助けるためではなく、家事をやらせて自分が楽をするために、主人公は打算で妹の頼みをしぶしぶ引きうけた。これは疫病のたぐいではなく、魔法使いの呪いのたぐいなのだと妹は主張したが、主人公は耳を貸さなかった。なぜならこの近辺に住んでいる魔法使いなんて一人しかしないし、その一人の魔法使いは主人公の大切な友人だったからだ。主人公は、妹の病気がごくふつうの疫病であると信じて疑わなかった。

2.ひとりで山に入るのは危険だと考えた主人公は、仲のよい友人とコンビを組むことにした。強力な魔法が使える友人の活躍もあって旅は順調に進んだ。もしかするとこの旅が終われば、友人との距離が吊り橋効果で縮まって、恋人になれるかもしれない……そんなことを考えた主人公は胸を高鳴らせる。この旅は主人公にとってただ危険で厄介なだけの旅ではなく、幸運を掴むチャンスでもあった。しかし、旅を続けている間もずっと、妹と喧嘩をしたときの嫌な記憶が主人公の頭から離れることはなかった。

3.ところが、これから山の頂上に辿り着こうか、というときになって急に友人の態度が豹変した。なんと、友人が主人公に突然襲い掛かってきたのだ。主人公は友人を返り討ちにし、二度と立ち上がれないほどの重傷を負わせた。そして、なぜ自分を突然裏切ったのか問い詰めた。そして友人は、主人公の妹に呪いをかけて病気にしたのは自分であると白状した。主人公はかつて自分の愛した友人に失望し、激怒し、殺害した。そして、妹のことをずっと憎み続けてきた主人公の気持ちが揺らいでしまう。本当に憎むべきなのは妹ではなく友人の方なのかもしれない、と主人公は葛藤する。

4.主人公は無事に山の頂上へと辿りつき、薬草を手に入れることに成功する。そして、それを一人で家へと持ち帰り、煎じて妹に飲ませた。すると、妹の病気はたちまち治り、再び家事ができるようになった。妹は主人公にお礼を言い、これがきっかけで主人公は妹と仲直りする。そして、自分が本当に愛すべきだったのは友人ではなく妹だったのだと主人公は気が付く。

 少しはマシになったのではないでしょうか? アレンジ後のあらすじは、「信頼できる味方だと思った魔法使いの友人は、実は裏切り者であった」「妹の病気は実は疫病ではなく、魔法使いの呪いによるものだった」「本当に主人公が仲良くするべきだったのは友人ではなく妹の方だった」といったどんでん返しや裏切り、謎解きがいくつか入っています。

まとめ
 どんでん返しや裏切り、謎解きなどの要素を多用することで、物語はよりドラマチックになる場合がある。

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