鶯命丹 2022/09/02 15:46

「美少年吸血鬼に愛玩用兼食用の豚として飼育されるおっさんの話」

↑こちらの本の第一話をまるごと載せておきます。
34000字(長くて読みづらかったらすみません)


無職になった太ったおっさんが美少年吸血鬼に拾われてスキンヘッドにされつつもペットとして可愛がられる人外ショタ攻め×スキンヘッドの太ったおっさん受けというニッチすぎる性癖エロ小説です。
【傾向】人外描写、軽度のカニバリズム的表現や、吸血行為、アナル舐め、イラマ
ショタ攻め×おっさん受け・全編ほぼエロあり・一部獣○(おっさんNTR描写あり)
・上記の傾向から信じられないかもしれませんが、いちゃラブ本です。



本の中身のうちいくつかの話はpixivで見られますので気になる方は試し読みにご利用ください。
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=16300601

以下 第一話




 まったく世知辛い世の中だ。
ガシャガシャジャラジャラとやかましい音を立てる店内を背に男――東條厚司 (とうじょうあつし)は大きくため息をついた。
パチンコ店の入り口の端に寄り、財布の中身を確認すると、残金四千八百円。
この金額で、いまだ半ばの今月を乗り切れというのか……いや、今月どころではない。
「あぁぁ……困ったなぁ……」
財布を握ったまま、とりあえず短く切った程度の傷んだ髪をガリガリと掻きむしった。
 不況のあおりを受けて在籍していた会社が倒産。無職となり、今後の給与の保証はない。
どうやって生きていけばいいのか途方に暮れた厚司は、現実を直視出来ず、とりあえず目についたパチンコ店へ入店し……そしてただでさえ心もとなかった残金を減らして、今に至る。
「なんでパチンコなんかやっちまったんだ。俺は」
後悔先に立たずとは言うものの、明らかに自業自得すぎて目も当てられない。
己の愚行を呪いながら、丸く肥えた背中を更に丸めてとぼとぼとパチンコ店を後にした。
 「あー。やっちまった」
駅前の喫煙所に立ち寄り、紫煙と一緒に大きなひとり言を呟いた。
喫煙所は無人ではない。呟くつもりなどなかった不安が、口からこぼれてしまったことに厚司は気付いていなかったが、周囲の人間は手の中の端末に熱中しながらも、ひとりで喋る小汚い中年と距離を取るべくいそいで一服を済ませて、そそくさと立ち去っていく。
「あーあー……まいったなぁ」
ひとり残された喫煙所に厚司の嘆きが寂しく響いた。
最後にふうーとため息をついて、煙草を吸い殻入れに捨てて喫煙所を離れた。
 とりあえず仕事でも探そうか。
そのためにまず、履歴書を書いて……
履歴書書くの何年ぶりだ?つーか履歴書買いに行かないと……
今後の展望を思い浮かべながらだらしなく太った体を揺するように、ダラダラと歩く。
ズリ、ズリ、と重い足を引き摺るように歩くので、靴底の減りが早い。年季の入ったスニーカーの足音が夕暮れの街に響く。
背中を丸めて、自宅のアパートに一番近いコンビニへ寄ろうと歩く途中、目に入った小さな不動産会社の入り口のドアに、求人募集の張り紙が目に入った。
そこには『住み込みで屋敷・住人の管理、世話をしてくれる方募集。年齢・資格・経歴不問』と書かれている。
マンションの管理人のような仕事だろうか?と近づいてよくよく見ると、マンションの管理人業に明るくない厚司でも分かるほどの良い時給であり、更にかなりの好条件である。
「給料も良いし、食費に家賃水道光熱費は会社持ちだぁ?……なんだよこれ。スゲーいいじゃねえか」
明日からの暮らしにも困るような状態としては願ったり叶ったりというもの。
早速電話でもして面接にこぎつかなければとチラシに目を走らせるが、連絡先が記載されていない。
「困った。相手さんが書き忘れたのか?」
そうつぶやくと同時にがらりと不動産会社のガラス戸が開く。
目の前には小柄な老人がひとり、厚司を見た。
「あんたこの張り紙が気になるのかね」
厚司が尋ねるより先に、老人が張り紙を指して言った。
「え……あ、ああ。そうです。まだ募集してますか?」
いきなりの事で面喰いつつも厚司は答える。
「ふーん……」
老人は気の無いような返事をしながら、厚司にじろじろと無遠慮な視線を送る。
上から下まで、品定めするような視線に少しムッとしながらも、厚司は作り笑いを浮かべて、おとなしく老人の言葉を待った。
「まあ、中にお入んなさい。とりあえず旦那さんに連絡しよう」
老人は言って、店内へと促すように顎をしゃくった。
「失礼します」
「ああ。ちょっとそこに座って待っててよ」
促されるまま店内に入ると、革張りの応接ソファーに腰掛けるよう勧められた。
向かいにあるソファーの奥。シンプルで無機質な事務机に向かった老人は、キャスター付きの椅子を軋ませて座り、これまたシンプルな白い電話の受話器を取り上げてどこかへ電話をかける。
「……ああ、カドマさん。私です、猿渡です。……ええ。例の張り紙。希望者が来ました。ただね、ちょっと年食ってるんですわ」
猿渡と名乗った老人は、目の前にその年食った本人が居るのもかまわず告げた。
確かに年食ってるが、爺に言われたくねえ!と内心憤慨するも、収入のために厚司は怒りを飲み込む。
「分かりました。じゃあお待ちしてます。はい、はい、どうもー」
間延びしたあいさつの後、猿渡は受話器を置きながら「カドマさんがね、迎えに来てくれるから。あんたここで待っとりなさい」と言って席を立ち、店の奥へと消えた。
「……ああ、はい」
厚司の一応の返答は、小さな事務所にむなしく響いた。
 手持ち無沙汰に店内をキョロキョロと見回していた厚司の元に、猿渡は盆に乗せた茶器を持って現れた。
「とりあえずお茶どうぞ」
「あ、ありがとうございます」
盆から茶たくへと移される、グラス製の茶碗。小麦色の液体は麦茶だろうか。
応接テーブルに置かれた涼し気な茶碗を見た途端、厚司は喉の渇きを自覚し、早速茶碗の中身を飲み干した。
あっという間に茶碗を開けた厚司に、向かいのソファーに腰掛けた猿渡は無言のまま急須から麦茶のおかわりを注ぐ。
「あ、ああ。どうもすみません」
無言こそ卑しさを非難されているようで、丸い背中を更に丸めるように、厚司は頭を下げて再び茶碗を持ち上げた。
しんと静まり返った店内に、カチコチと秒針の音だけが響く。
気まずさに、何か話題をふろうかと、厚司が口を開けるより早く猿渡が言った。
「あんたはなんでアレに応募しようとしたんだい」
相変わらず品定めするような視線に辟易しながらも厚司は愛想笑いを浮かべて答えた。
「実は、以前勤めていた建築会社が倒産しまして。次の仕事をどうしようかと思ってるところにあの張り紙が目に入りまして……どうやって連絡をしようかと思っていたところでした」
「へぇ、ああそうですか」
自分で聞いておいてずいぶんそっけない言い草だとイラついたが、厚司は我慢して会話を続ける。
「あの張り紙、連絡先が書いてないですけど。良いんですか?」
「ああ、良いんですよ。私が見てますからね」
不愛想な物言いにまたもむかっ腹が立つが、生活費生活費と呪文を唱えて、麦茶と一緒に飲み込んだ。
そこに、からからから、とガラス戸の開く音がして、猿渡がさっと素早く立ち上がる。
思わず釣られて立ち上がり、背後を振り返ると、仕立ての良いスーツに身を包んだ老紳士が立っていた。
「ああ!カドマさんお待ちしとりました」
厚司への態度とは打って変わって、猿渡は愛想よく挨拶をしながら男の方に近づいていって、大袈裟な仕草で握手を求めた。
求められた男はにこやかに微笑みながら猿渡の手を上品な仕草で握り「お待たせしました、猿渡さん。こちらが求人希望の方ですか?」と厚司を見た。
その視線に厚司は勢いよく頭を下げた。
「はじめまして!東條厚司と申します」
厚司のしゃちほこ張った挨拶にも、カドマは丁寧にお辞儀を返しながら、懐から名刺ケースを取り出して名乗った。
「はじめまして東條さん」
厚司が「お名刺拝見させて頂きます」などと畏まって受け取り見るとそこには『暁月家(ぎょうげつけ)家令 門真実次( かどまさねつぐ)』と書かれていた。
「家令、ですか?」
見慣れぬ単語を呟くと、門真はにっこりと微笑んで「長く暁月家に仕えております」と頷いた。
「つきましては東條さんのご都合が宜しければ、このまま我が主人の元へご案内させて頂きたいのですが、いかがですか?」
「大丈夫ですよ。この人無職だって言うからね」
門真の問いに何故か猿渡がハキハキと答えた。
厚司はなんでお前が答えんだよ!と憤ったが、それよりも先に聞いておかねばならないことがあった。
「予定は無いので大丈夫です。しかし今履歴書を持ってなくて……」
申し訳ないと頭を掻く厚司に、門真は優しく言った。
「大丈夫ですよ。東條さんのお人柄を直接見させて頂きますので。では、早速参りましょうか」
門真は優雅にガラス戸を開けて、厚司の退出を促した。
「あ、はい!宜しくお願いします」
促されるままそそくさとドアをくぐる厚司は、目の前に止められた黒塗りの車の美しさに面食らった。
背後では「では猿渡さん。また宜しくお願いします」「ええ、ええ、はい。お任せください」と猿渡のやたら張り切った声が聞こえる。
「さぁどうぞ。お乗りください」
丁寧に開けられた後部座席に恐縮しきり、乗り込む厚司。
腰を落ち着けたタイミングで静かに閉まるドア。
洗礼された身のこなしに、これと同じものを求められるのでは……と言い知れぬ不安に怯える厚司。
静かに開く運転席に、門真が乗り込み振り返って、厚司に笑いかけた。
「そのように緊張されなくとも、大丈夫ですよ」
「あ、はい……大丈夫です!」
一体何が大丈夫なのか……自分の心中でツッコむ厚司を乗せて車はなだらかに走り出した。


 街をぬけ、緑あふれる小高い丘を登って行くと、ひらけた土地に豪奢な鉄の門扉が現れた。
何処かにセンサーでもあるのか、門扉は一人でに開き厚司を乗せた車を招き入れる。
門の中は美しく整えられた園庭となって、来訪者の目を楽しませる作りになっていた。
優雅な庭に、呆けたような顔で見入っていると、車は静かに停車し、門真が穏やかに告げた。
「お疲れでございましょう。到着致しました」
「えっ!ああ、はい!お疲れ様です」
慌てて背筋を伸ばして返答する厚司に微笑んで、門真は運転席から降り素早く後部座席のドアを開けた。
「ありがとうございます……」
恐縮しながら車から降りると、清々しい木々の空気の中にその屋敷はあった。
英国のカントリーハウスとはこのようなものであろうかと名前だけのイメージで、目の前の館を見る厚司。
質素というには立派すぎる館ではあるが、全体的にこじんまりとした印象を受ける、落ち着いた風合いの屋敷であった。
それでも、安アパート暮らしのしがないサラリーマンにはついぞ縁のない豪邸には変わりない。
まじまじと屋敷の外観を見上げる厚司を横目に見ながら、煮詰めた玉ねぎのような濃厚なアメ色の扉を開けて、門真は入室を促した。
「し、失礼します……」
ぺこぺこと頭を下げながら入室すると、洒落た玄関ホールに圧倒される。
キョロキョロと室内を見回す厚司の元へ、軽やかな足音が駆けて来た。
「門真!戻ったの?」
「はい、旦那様。ただいま戻りました」
優雅にお辞儀をする門真の視線の先を見て、厚司は目を見開いた。
そこには、まるで少女漫画から抜け出したような美少年が立っていた。
耳元で切り揃えられた黒髪はきらめく夜空のようなつやで陽光を反射し、新雪のように白い肌にまろやかな頬、薄く小さい唇。すらりと伸びた手足は健康的で、糊のきいた白いシャツと黒い吊りズボンが少年を上品に飾っている。
「あなたが新しい従業員さん?」
にっこりと、花のほころぶような微笑みを浮かべた少年が厚司に近づき、きらきらとした瞳で見つめる。宝石もかくやという程にきらめく黒い瞳に、厚司は思わずたじろいでしまう。
「え、あの……えっと、そう、ですね?」
確かに、求人に応募しているので従業員という立場になるのだろうが、まだ決定ではないし……などと思案するも、天使のような美しさの少年に見つめられて思考がまとまらない厚司は助けを求めて門真を見た。
「東条さん、こちらが私たちの主、暁月家ご当主、咲夜様でございます」
動揺している厚司に門真は助け舟を出す。
「咲夜様。こちらが今日から働いていただく東条厚司さんですよ。きちんとご挨拶なさってください」
「はじめまして、厚司さん。僕が当主の咲夜です。今日からよろしくお願いします」
門真に促され、美少年は厚司に向かって丁寧な所作でお辞儀をする。
「……はっはい!!東条厚司です!よろしくお願いいたします!」
まるで映画か、童話のワンシーンのような洗礼された空気に厚司は一瞬呼吸も忘れて魅入っていたが、なんとか現実を思い出し、場違いな大声で粗野な挨拶をかました。
「すごい。元気で素敵ですね。こちらこそよろしくね厚司さん」
厚司の態度にも嫌な顔せず、微笑む咲夜。
「あ、の!しかし面接など何もしなくても良いのでしょうか!」
美少年の笑顔の破壊力に動揺しきりの厚司が、ドギマギと大声を上げる。
その言葉に門真と咲夜が顔を見合わせてのち、のたまった。
「いいよ。厚司さん良い人そうだし。ねえ、門真」
「ええ。旦那様が宜しければ、私は何も異論はございません」
主従は優雅に微笑んで厚司を見ていた。
「ようこそ暁月家へ」

 挨拶を済ませた後、厚司は門真に自室へと案内された。
「本日はお疲れでしょうから、業務は明日から教えます。夕食の時間になりましたら、お迎えに上がりますので、それまで部屋でお寛ぎくださいませ」
そこは従業員の部屋にしては美しく整えられている。
ゲストルームのようだった。
「い、良いんですか?」
あまりの好待遇に落ち着かない様子を見せる厚司に、門真は頷いて言った。
「明日からたくさん働いて頂きますから。今日はゆっくりお休みください」
「あ、ありがとうございます……明日から、頑張ります」
頭を下げた厚司に門真は優しい声で「ええ、明日から」と返答した。
ではごゆっくり。と添えてドアが閉まる。
離れていく足音は全く聞こえなかったが、たっぷり離れたであろう間を取って、厚司は備え付けのベッドに倒れ込んだ。
「あああー!緊張したー!」
大きく息を吐いて伸びをする。しっかりと弾むスプリングが厚司の重量を優しく受け止めて心地良い寝心地だった。
寝転がって部屋の中を見回すと、上品な調度品が目に入る。壊したりしたら大ごとだと、想像だけで嫌な汗が背中を伝う。
気を取り直して部屋を明るく照らす大きな窓に近づく。
窓からは中庭だろうか?まるで公園にあるような噴水を中心に、整えられた生垣と咲き誇る花々があり、それらを見て歩く厚司の新たな上司、咲夜が居た。
教養のない厚司には、花の種類などバラだとかチューリップなどくらいしか区別がつかず、手入れが大変そうだと、風情の無い感想しか浮かばなかった。
「しかしあんな美少年がこの世に存在するなんてなぁ。金持ちで顔もいいとか……神様ってやつは依怙贔屓だなぁ。俺なんか安アパートに安月給でモテた事もなく生きてきたってのによ」
聞こえないことを良い事にぶつくさとぼやく。
ふと生垣に生える花を見ていた咲夜が顔を上げた。
「あ」
咲夜はまっすぐに数ある部屋の中から厚司を見つめて、微笑みながら手を振った。
「ど、どうも」
タイミングの良さに心臓が痛むほどに脈打つ。
思わず聞こえもしないのに声に出して挨拶をして頭を下げ、窓から離れた。
「ああーびっくりした……」
再びベッドに倒れ込む。
部屋に差し込む光がゆっくり薄暗くなっていく。
落ちていく夕日につられるように、眠気が瞼を重くしていき、厚司はいつの間にか眠りについていた。
 コツコツ。コツコツ。
硬い音にぱちりと意識が覚醒する。
部屋の中はすっかり暗くなっていて、厚司は慌てて起き上がった。
「は、はいっ!」
こけつまろびつドアに取り付いて勢いよく開けると、ドアの前には咲夜が立っていた。
「あ!起きた?ご飯だよ」
「す、すみませんっ!ねむっちまって……」
笑顔で告げる咲夜に冷や汗をかきつつ謝ると「いいんだよ。よく眠れた」と、にこやかに言われた。
「は、はい。ぐっすり寝てました」
恥ずかしさに頬を掻きながら答えた厚司の手を取って咲夜は元気よく小走りで廊下を進む。
「よく眠れたなら良かった。今日は厚司さんの歓迎会だからご飯が豪華だよ」
楽しみだね。と無邪気な様子に、最初に会った時よりも親しみを感じて厚司はホッと息を吐く。
そしてたどり着いた食堂で再び緊張に身体縮こませることになった。
「……す、すごいですね」
長いテーブルに、真っ白なテーブルクロスがかかり、その上には所狭しとおいしそうな食事が並んでいる。
「お待たせしました。厚司さん。どんなものがお好きか分からなかったのですが、ささやかながら歓迎の意を表して食事をご用意させて頂きました」
配膳をしていた門真が、二人に気付き告げる。
「い、いや……充分ですよ……他の方はまだ来てないんですか?」
美しく配膳されたテーブルを横目に見ながら、厚司は恐縮して聞いた。
「他の方?」
厚司の横にいた咲夜が聞き返す。自分を見てほしいと言うように厚司の手を掴んで引きながら。
「ええ。だ……旦那様のご家族とか、他の従業員の人とか……」
まるで宝石のようなつぶらな瞳に見上げられ、さらには言い慣れぬ『旦那様』などという尊称を使う気恥ずかしさから、視線をさまよわせて厚司が聞くと、少年は朗らかに「他の人は誰もいないよ」と言った。
「えっ?!いない?……誰も?」
「うん。ここには僕と、門真。あと厚司さんの三人だけ。だからそんな緊張しなくて大丈夫だよ」
さあ座って食べよ!と強く厚司の手を引いてテーブルの下座に導く咲夜と、素早く椅子を引く門真。
「座って座って!ねえ門真、僕の椅子もこっちに持ってきて」
下座に厚司を強引に座らせて、咲夜はその右横に椅子を持ってくるようねだる。
「さあ厚司さん。たくさん食べてね」
早速持ってこさせた自分の椅子に腰かけ、はなやかな笑顔で咲夜は食事を促した。
「は、はい……い、いただきます」
控えめに手を合わせて目の前に注がれたスープに手を付けた。
「う、うまっ……」
一口食べて、思わず声が上がる。
厚司の反応に気をよくした咲夜が得意げに胸を張る。
「そうでしょう!門真は料理が上手なんだ。さあどんどん食べてね」
己の手柄のように言う咲夜が、手当たり次第に皿を寄せて厚司の前に置いていく。
「ああ、ありがとうございます……でも、ちょっと多すぎやしませんか?」
テーブルに並ぶ料理はどう見ても3人分を越えている。いくら厚司が巨漢でも食べきれる量ではない。
「申し訳ございません。つい張り切りすぎてしまって」
「大丈夫だよ。厚司さんは身体が大きいから食べられちゃうよ」
はにかみながら謝る門真に、咲夜がにこにことフォローする。
「いくらなんでも……だ、旦那様は食べないんですか」
頬杖をついてにっこりと厚司を見つめる咲夜に、食事を勧める。咲夜の前にはカトラリーさえ用意されていなかった。
「僕はさっき食べちゃったから、お腹いっぱいなんだ。だから厚司さんが全部食べていいんだよ」
「か、門真さんは……」
「私も先ほどいただきましたので」
笑顔で、有無を言わさぬ空気が食堂に満ちる。
左右から見張るような主従に気圧され、厚司はとにかく目についた皿を空にしていく作業に没頭した。

 厚司はシャワーを済ませて、重だるそうに体を左右に揺らしながら歩き、ベッドにごろりと倒れ込んで大きく息をつく。
「く、苦しい……食い過ぎた……」
笑顔で行われる責め苦のような食事を終えて、厚司は自室として与えられた部屋に戻ってきた。
結局、というか当然というか、長いテーブルに並べられた料理は三分の一程食べたところで辞退した。
悲し気に眉をひそませる咲夜を見ると心が痛み、限界を伝えてから二回ほど「もう少し食べられるかなぁ」なんて言ってはみたが、やはり完食は不可能だった。
「うう……最近特に腹が出てきたって言うのに……また肥えちまった」
自虐的に膨れた腹を叩きつつ厚司はあくびをした。
シャワーで温まったからか、厚司は眠たげに目をまたたかせ、うとうとと重くなる瞼を手で押さえた。
「ふ、あぁ……そろそろ寝るか」
少し早いが、このまま瞼を閉じて眠ってしまおう。と厚司が眠る体制を取った所でコンコンコン。と軽やかな音が響いた。
ハッとしてベッドから起き上がり、ドアを開けると目の前には咲夜が、自身の身長程あろうかというくらい大きなテディベアを抱いてしょんぼりと立っていた。
「どうしたんです?旦那様」
厚司は眠気を殺してなるべく優しく聞こえるように、目の前でうつむく少年に声をかける。
もじもじと照れくさそうにしたのち咲夜は小さい声で呟いた。
「あのね。なんだか怖くなってきちゃって……こっちで一緒に寝てもいい?」
潤む瞳がチラチラと遠慮がちに厚司を見ている。
「えっ!えーっと……あぁー……門真さんのところは……」
「ここがいい……」
いくら子供と言えど……むしろ相手が子供だからこそ、今日会ったばかりの人間とベッドに一緒に寝るのは憚られる。良い断りの文句を探そうと言葉を濁す厚司に「絶対迷惑はかけないから!寝相も大人しくしてるから!お願い……」そう言ってテディベアごとしがみつき、うるうると目に涙を貯めて、咲夜は厚司を見上げた。
泣いてる子供を無碍にできず厚司は渋々部屋へ招き入れた。
「狭くても文句なしですよ」
「うん!大丈夫!」
さっきの涙はどこへやら、ニコニコと機嫌よく厚司のベッドに上がり込みもぞもぞと布団の中へ潜り込むとぎゅっとテディベアを抱きしめて厚司へ可愛らしい笑顔を向ける。
「今日だけですよ」
厚司は毒気ない笑顔に釣られて苦笑しながら、空いたスペースに潜り込む。
「じゃあ電気消しますね」
「はぁい」
ベッドヘッドにあるリモコンの消灯ボタンを押すと、軽い電子音の後部屋の電気はすぅと消えた。
真っ暗な部屋の中、二人の息遣いだけが響く。
「おやすみなさい厚司さん」
「おやすみなさい」
小さな声で囁く咲夜に挨拶を返して、厚司は目を閉じた。
 ――目を閉じてどれくらい経ったのか……もぞもぞとする気配に厚司はふと意識が戻った。
身体にぴったりと寄り添うぬくもりを感じる。薄く目を開けると胸元に埋まる様に咲夜がしがみついていた。
人外のような美しさの少年でも、子供は子供か。
寝ぼけた頭で厚司は思う。
両親や家族がおらず、広い屋敷に使用人一人と暮らす子供は寂しいのだろうとひとり納得して胸元にいた咲夜を抱きしめてやる。
そうされるのを待っていたように、咲夜は厚司の首に腕を回しぎゅうっと抱き着いてきた。
子供にしては低い体温を温めてやろうとその背中をそっと撫でてやる。
更にぎゅうぎゅうとしがみついてくる咲夜の息が首にかかりこそばゆかったが、厚司は我慢して背中を撫でる。
ぬる。と首筋に熱く濡れた感触がしたと思った、その時。
がじり。と強い痛みが首に走った。
「いて!」
反射で首を引こうとするも、がっしりと巻き付いた咲夜の腕のせいでまったく身動きが取れない。
「ちょっと!なにを……っうあ!」
痛みで目がちかちかと明滅していた厚司が声を上げる。
自身の首元からじゅっ、じゅっ、ずぅぅっ、とおぞましい音がする。
「いっ、ひっ……いっ!」
じゅうぅっ、ずずっ、ずぞっ
啜る音が響くたびに、厚司の喉から引きつれたような悲鳴がこぼれる。
痛みに食いしばった顎が痺れ、自身の中身が啜りだされる感触にぞわぞわと鳥肌が立つ。
「やっ、めろ……はっなせぇっ……んあっ!」
咲夜の背中に回していた手が、せめてもの抵抗に夜着を力いっぱい引くが、小柄な少年の身体はびくともしない。それどころか戯れに厚司の首筋をべろりと舐めて、傷口をいじくった。
「い、ってぇ……やめ、ろってぇ……」
ずぞ、ずぞぞ、ずずっ
昼間に見た洗礼された上品な面持ちの少年の出す音とは思えない、はしたない音が暗い部屋に響く。
その音が激しくなるにつれて、厚司は痛みではない別の感覚に身体をこわばらせるようになっていく。
「うっ……なん……これ」
じゅう、と首を吸われる度にゆるんだ口元から情けない嬌声がこぼれ、快感に背筋が震えた。
ちゅぅっ、とひときわ大きな音を立てて、首筋から唇を離した咲夜は、額を合わせるように厚司の顔を覗き込んでにやりと唇をゆがめた。
「気持ち良くなってきたかな?」
咲夜のゆがめた唇の内側が、薄暗い部屋よりも黒く赤く光っている。
「な、なに……なんなんだ。おまえ」
くらくらと酩酊する思考を追い払うようにまばたきを繰り返す厚司の頬を両手で包んで、咲夜は更に笑みを深くする。
「何って……食事だよ。僕は吸血鬼で、君はそのご飯。分かるかな?」
聞き分けの無い子どもに言い聞かせるように優しい声音で咲夜は囁く。
「な、なん……きゅうけつ、きって」
目の回るような浮遊感に襲われて言葉がうまく出てこない厚司を慰めるように、咲夜ははくはくと空しく動く唇に口づけをした。
「ぐっ!ぅう!……んっ……おぁ」
合わさった唇から、鉄さびのようなえぐみが厚司の口内に広がる。
その味を追うように、咲夜の唇からぬるると舌が差し込まれる。
ぬちゅ、ぐちゅ、といやらしい水音が二人の合わさった唇から漏れ、子供の舌と思えぬ質量を持った淫靡な舌が、厚司の口内を蹂躙した。
「んおっ!おおぉっ」
ずるる、と厚司の口内から抜けていく咲夜の舌は、人間の舌とは似ても似つかない太さと長さで唾液の糸を垂らしている。
暗い部屋においても、輝くように美しい咲夜のかんばせから、グロテスクに垂れ下がる巨大なナメクジのような舌が、もう一度べろりと厚司の唇をなめた。
「ひっ……」
小さく悲鳴を上げた厚司の唇に、咲夜はにやりと意地悪く嗤ってついばむようなキスをする。
「怖がらなくていいんだよ」
甘くささやくサクランボのような唇が、厚司のかさついた厚い下唇を挟んで優しく引く。
ちゅぷ、ちゅっ、とかわいらしい音を立てて下唇を吸う咲夜はうっとりと目をつぶっている。
その表情は幼気で、赤子が母の乳を吸うような満足げな表情をしている。
唇を吸われるくすぐったさと、その安心しきった咲夜の表情に、常軌を逸した現実を忘れさせ、厚司は張りつめていた息を少し吐き出した一瞬。
がぶり、と厚司の下唇に咲夜の尖った牙が食い込んだ。
「んんぅっ!」
食い破った厚司の唇に、むしゃぶりつく咲夜の表情は恍惚として妖しく、美しかった。
「ふっ……うう、んっふぅ」
じゅる、じゅるるっ、と穴の空いた唇を強く吸われているのに、厚司の喉から漏れるのは苦痛の呻きでは無く、甘い喘ぎであった。
吸われる度にぞくぞくと身体に淫楽が広がり、ぶわりと汗が浮く。痛みは全くなかった。
混乱する厚司の思考を読んだように、咲夜は唇を離し「気持ちいいでしょう?吸血鬼に血を吸われてると凄く気持ち良くなれるんだよ」と悪戯を告白するようにはにかんで告げた。
掬い上げるように厚司の顎を両手で包んで、まるで犬を可愛がるように譲りながら、咲夜は蠱惑的に笑んで続ける。
「キスでこんなに気持ち良いんだから、本番は、どうなっちゃうんだろうね」
「……ほん、ばん」
麻酔をした後のように痺れる下唇のせいでうまく言葉が喋れない厚司を嗤って、咲夜は誘うように下半身をピッタリと擦り付けた。
「ほら、僕のこれを君の中にズボズボしながら、君の血をチュウチュウ吸うんだよ。考えただけできゅんきゅんしちゃうね」
にやにやと下卑た嗤いを浮かべながら情交のように腰を蠢かす咲夜。
「うっ……んあっ!やめ、やだっあぁっ」
擦り付けられる咲夜の陽物に、厚司の陽物も淫らな悦びを拾ってしまう。
「そんなトロトロな声で言われてもなぁ」
快楽に震える身体で、抵抗を示すも嘲笑われただけだった。
「ほら脱いじゃおー」
そういうと咲夜は素早い動きで厚司の下着を剥ぎ取り、放り投げた。
「ひ、やだ!はなせ!」
「無駄な抵抗はやめて、くぱぁしてね」
咲夜の胴体ほどあろうかという脚を軽々と持ち上げて、厚司の尻穴を曝く。
「おい!おいやめろぉ!まてっ」
ジタバタと暴れる巨漢を難なく抑え込み、咲夜は高らかに宣言した。
「じゃあいただきまーす」
「まっ!ああ!ふ……んっあぁっ」
べろぉ……べろぉ……
長い舌を使って、優しくねっとりと尻穴を舐める咲夜。
まるでナメクジが厚司の尻を這い回るように舐っていく。
「や、あっああっ……うっ、ううっん」
這い回る舌に翻弄されるように、厚司の身体が淫靡にくねる。
ちろちろ、ちろちろと舌を細かい動きに変えると「ああっあっあっあっ」と細かく甘やかに鳴いた。
「ほら、気持ちいいでしょう。次は指入れて広げるから、自分で足持って」
咲夜に指示をされ、とうとう厚司は従順に自らの膝裏に手を入れて、咲夜の前にまだ閉じた蕾をさらけ出した。
「そう、良い子だね。今からもっと気持ちよくしてあげるからね」
咲夜は満足そうに微笑んで厚司の太ももを撫でた。
体毛の多い厚司の太ももはふさふさとした感触で咲夜を楽しませる。
「足、もじゃもじゃ」
からかうように笑われて、厚司の顔にかあっと赤みが走った。
「うるせ、っ!……あっああっ」
文句を言おうと厚司が口を開いた瞬間、咲夜は厚司の慎ましく閉じた蕾にかぶりついた。
ぞぶ、ぞぶ、ぞぶ、と甘噛みする様に口全て使って尻穴を愛撫する。
「ひっ、ひぃっいっ……いぃっ!」
ちゅぷ、ちゅぷ、と舌先を使って、ノックするように突くと、厚司の穴はきゅぅきゅぅと甘えるように咲夜の舌先を締め付けた。
「ああっ……ふっあふっ、うあっん」
蕩けた嬌声と共に腰がくいっくいっと上がり、咲夜の舌に押し付けるように身体が反応する。
咲夜は右手の指をじゅぶとしゃぶり、舌先と一緒に厚司の尻穴へずると差し入れた。
「あうっううっ、うぁっ」
ずるずるる、ずるずるる、と指を浅く抜き差ししながら、舌で肛虐の限りを尽くす。
媚薬の役割を果たす唾液を尻穴に塗りたくられ、厚司の身体は快楽に跳ねるだけの傀儡に成り下がる。
「うぉっ、んぉぉ!おお、んぅっ」
「そろそろ良いかなぁ」
悦に入り身を捩る厚司を見て、咲夜はいやらしく両の目を細めて自身の陽物を取り出した。
それは舌と同じく人間の子供とは思えぬ質量を持って、麗しい思春期前の少年の身体に、不釣り合いにそそり勃っていた。
「……う、うわ……」
身に余る淫楽に呆けていた厚司が、それを見て悲鳴に近い声を上げた。
それを聞いて咲夜はにっこりと微笑みかける。
「大丈夫だよ。痛くないって。むしろもっとしてって縋るようになるよ」
得意げに陽物を扱きながら、咲夜はぴとりと厚司の尻穴に当てて擦り付ける。
つるつるとした亀頭に尻穴を撫でられて、厚司の身体は大きく震えた。
「じゃあいくよ」
軽く告げた後、咲夜はズブズブと厚司の胎内へ陽物を突き刺した。
「うぐ、んっ……」
ずぐ、ずぐ、と尻穴が捲られ、陽物が厚司の腹の中に収まっていく。
尻たぶにぴったりと、咲夜のつるりとした腹が当たり、あの凶悪な陽物が全て厚司の胎内に収まった事を知らせた。
「ほら、全部入ったよ……じゃあ動くね」
咲夜は厚司を褒めるようにふさふさの太ももを優しくさすって、腰を浅く動かして、小さな抽送を開始する。
じゅぷ、じゅぷ、じゅぷ、じゅぷ
「んぉっうっうー……んっおお!」
粘膜を粘膜で擦り合わせる快感に厚司の口からはひっきりなしに喘ぎが漏れた。
「おんっおっおんっんんっ!」
「ふふっ、ピストンに合わせた吠え声、可愛いねぇ。噛んじゃお」
「おおっ!ふぉぉっそれ、はぁっああっ!」
持ち上げた内腿にガブリと噛みつかれじゅる、じゅぶ、と啜られながら突き上げられると、身体が弾けそうなほどの激しい愉悦が、厚司を襲う。
喘ぎだけでなく唾液が、だらしなく開きっぱなしの唇からどろどろと垂れた。
ひと突き毎に、ひと啜り毎に、ビクッビクッと身体が痙攣し、息をするのもままならない厚司が叫ぶ。
「も、もう、やめっ……あめだぁっ!いっ、ひぃっ……いくっ、出るっ」
厚司の嬌声に合わせるように一層強く齧り付き、ピストンを早めてやると全身をきゅぅうと硬直させて、厚司はオーガズムを迎えた。
「…………っ!っんふっ、ふぅっうっま、……あって!とまっ」
絶頂にあっても止まらない刺激に厚司は手を伸ばしもがく。
「僕、まだいってないから」
無情にそれだけ言うと咲夜は再び厚司の血を啜り、自身の陽物を扱き上げるために厚司の尻穴を攻めた。
「ああっしぬ!うっうっしぬぅ」
「死ぬの?そうかな……大丈夫じゃない?まだこんなに血が詰まってる」
厚司の揺れる腹を撫でながら、咲夜は嗤っている。
「食べごろの子豚みたいに、肉がぷよぷよに詰まってる」
さわさわと肥えた腹を撫でられて、厚司の身体は滑稽に震えた。
「ふぅっ……うっ……し、ひにたい、もう死にたいぃ、ひっいい」
厚司は首を激しく振って駄々をこねるように咽び泣いた。
「ふふっ、なぁに死にたいの?子豚ちゃんは」
咲夜は自身の快楽の為だけに腰を振り、厚司を追い詰めていく。責め立てられ、愚かしくも淫らに身をくねるさまは、熱に炙られた海鮮のようだった。
「こんなにきもちいいのに死んでいいの?」
「んっひぃ!いいっ……気持ちいい、いま死ぬぅっいま、しっ、にたいぃ」
じゅぷ、じゅぷずぶ、ずぶ、ずぷっ
粘着質な水音は止まず、快楽に追い立てられる厚司は咲夜へと縋るように手を伸ばす。
「可哀想に、怖くなっちゃった?僕のテディ貸してあげるね」
哀れなその手に、咲夜は持ってきたテディベアを抱かせてやった。
縋るものを得た厚司は、テディベアをぎゅうと抱えてくぐもった鳴き声をあげている。
「可愛いー!いい歳した小汚い子豚ちゃんがテディを抱いてる」
嘲笑らう声さえ、鈴が鳴るような美しさで、咲夜は肛虐を続けていく。
「ふっ……はぁ……そろそろ、出すね……っあっああっ」
「んぐっ、うぅっふ、ふぅぅぅっ」
厚司の身体はぐんとのけぞり、二度目の絶頂を迎え、ぎゅうっぎゅむと咲夜の陽物を締め付ける。その尻穴の蠢きに、咲夜も胎内に精を吐き出した。
はぁ、はぁと荒い呼吸をこぼしながら、咲夜はゆるゆると絶頂の余韻を楽しむように腰を振るう。
「あ、僕のテディが……」
呟かれた言葉に、厚司はふと埋めていた顔をずらしてテディベアを見た。
「……あ」
そして気づいた。大きなテディベアの足に白く粘ついた精液が跳ねている。
「……あ、これ……俺……わ、わるい」
激しい情事の後、思考も口もうまく回らない厚司が、オロオロと動揺するのを見下ろして、咲夜はにやりと意地の悪い笑みを浮かべ、まだ尻穴にすっぽりと収まっていた陽物を乱暴に抜き去った。
「ぐっうっ!」
いきなりの刺激にうめいた厚司を、強い力でひっくり返し、うつ伏せになった尻にまだ硬度を保った陽物を突き刺した。
「ぐぁっ!あっ、や、めっらめ、ぇっえっ」
いまだ淫楽の余韻に健気に収縮する尻穴に、咲夜は容赦無くじゅく、じゅく、と凶器を突き立てる。
厚司の悲痛な声は下敷きになったテディベアに吸収されていく。
「僕のテディを汚して!悪い豚ちゃん!お仕置きだよ」
ぐちゅっぐじゅっぐちゅっ
「あだっ!あ"っあ"っあ"ぁぁっやめっや、やらっやらぁっあっあっしぬっしぃっ、ぐっぅぅっ」
強い快感が、激しい殴打のように厚司の胎内を抉る。
厚司の目に涙が滲む。弛んだ唇からは唾液が落ち、情事によって上がった体温により垂れた鼻水も、テディベアのふわふわの毛が優しく受け止めてくれた。
うつ伏せにされたせいで、揺さぶりに合わせて厚司の陽物は、テディベアの柔らかい毛にくすぐられ甘やかな快感をとろとろに濡れた亀頭に施していた。
「テディにちんちん押し付けて、いやしい子豚ちゃん」
「ふっ、んんっくぅ、ぐっぅぅっ」
厚司の分厚い背中に、重みがかかる。
肩甲骨辺りに唇を寄せてぢゅうっと吸うと、組み敷かれた厚司が甘い鳴き声をあげて悦ぶ。
「んんっ!うあぅ、あぅっうぅ……」
「可愛いねぇ子豚ちゃん。背中にもお肉たっぷりだ」
咲夜はいやらしく口角の上がった唇を大きく開け、がぶりと厚司の背中の肉に噛み付いた。鋭い牙が肉を破って貫き、中からどろりと暖かい血が溢れる。
口の中に広がる甘い血を、一滴残らず啜り上げながら、咲夜は快楽を求めて陽物を奮う。
「ふっ……うぅ、ふぅっふぅ」
飢えた獣のような息遣いで、溢れる血を喉を鳴らして飲み込んでいく。
喉が潤う。胃が満たされる。下腹がひきつれるように気持ちいい。ぬるぬるで温かい粘膜で自身の陽物を扱き、快感を追う。咲夜は性欲と食欲の満たされるこの時間が大好きだった。
「やめっ!あ"あ"っらめっかむの、やめっおっおぉぉっしぬっ、しぬっしぬぅいぐっいぃぐっいくっ」
猛る欲望のままに肉を噛みしめた痛みも、吸血の催淫効果で蕩けるような悦楽に変わり、咲夜を悦ばせる従順な喘ぎになる。
貪っていた背中の肉から唇を離し、咲夜は優しく囁いた。
「死ぬほど気持ちいいねぇ……子豚ちゃん」
そう呟いてから咲夜は再び、血の滴る分厚い肉に力いっぱい噛み付いた。
ぶちぶち、ぶちっと肉の繊維をちぎる音が、咲夜の歯に伝わる。
「ひっ!い"いぃっ、ぐぅぅっうぅっうっうっ」
肉を強く噛みちぎられ絶頂を迎えたのか、厚司の身体がびくっびくっと跳ね、胎内がねだるようにぎゅう、ぎゅうと収縮する。
咲夜は、そのきつく陽物を締め付ける尻穴の蠢きに甘えて吐精する。
口の中に残る肉を噛み砕き、飲み込んで、どくどくと血の溢れる傷口を長い舌を使って舐めしゃぶる。
「んっ……うっ、うぅ……」
咲夜の舌に合わせてくぐもった声が小さく埋めく。
「ごめんねぇ、つい子豚ちゃんが可愛くてお肉まで食べちゃった……」
てらてらと血に汚れた口元を、長い舌でぺろりと舐めながら咲夜はへらりと笑って詫びる。
だが、組み敷いた厚司からはなんの返答もない。
「……あれ?子豚ちゃん?……死んじゃった……?」
背中に耳を当てると、どくどくと早鐘を打つ鼓動が聞こえ、咲夜はほっと息を吐いた。
「良かったぁ、生きてた……じゃあ、もうちょっと食べちゃうね」
そう言って咲夜は再び抉った傷口に顔を近づける。
射干玉のような黒髪が、さらさらと落ちて厚司の、肉の多い背中にかかる。
興奮により潤む黒曜石の瞳は組み敷いた獲物を食い荒らす獣欲を宿して妖しく光っていた。
でろり
果実のような唇から、グロテスクな舌が躍り出た。
ぞろ、ぞろ
巨大なナメクジのように這い回る舌は、汗の浮いた背中を存分に舐った後、まるで楽しみに取っておいた好物を味わう様に執拗に傷口をくじり回した。
はっ、はっ、はぁ……
この世のモノとは思えないほど美しい少年の、犬のように浅ましい呼吸と、淫蕩な水音だけが暗い部屋に響く。
その宴安は夜明けまで続いた。


 厚司は意識が浮上すると共に、身体中にジクジクとした痛みが走るのに気付いた。
この痛みの原因はなんだ……とぼんやりする思考で考える。
二日酔い……いや、昨日は酒は飲んでない……はず……。
そういえば昨日俺は何を……パチンコに行って、金に困って……帰り道に変な求人を見つけて…………
「うわぁぁぁっ!」
筋立てて考える内に昨日の、昨夜の恐ろしい出来事を思い出して絶叫しながら起き上がる。
「ぐっ……うう、いってぇ……」
跳ね起きた瞬間、身体中の痛み……特に背中がひきつれるように痛み、厚司は蹲った。
「おはよう。昨日は可愛かったよ」
隣から涼しげな声が聞こえて、厚司はそちらに向き直る。
無垢な裸をシーツで覆っただけの姿で、横臥の状態で微笑む咲夜の姿を見て、厚司は悲鳴を上げる。
「うわぁあぁっ!」
逃げようともがいて、シーツで足をもつれさせベッドから派手に転がり落ちた。
「うお!おあぁっ!」
「あらら大丈夫?」
ベッドから頬杖を付いて、咲夜は楽しそうに言った。
「う、るせぇこの化け物めっ……っあぁ?……」
威勢よく立ち上がり、咲夜に向き直った厚司は、悪態をついた瞬間膝から崩れ落ちた。
咄嗟に付いた腕がぶるぶると異常な程震えて、身体を支えていられずぐしゃりと上半身が落ちた。
「ダメだよぉ!そんな急に動いたら立ちくらみするに決まってるじゃん」
けらけらと笑いながら咲夜はベッドから降り、産まれたままの姿で厚司の元へゆっくり近づく。
そして、まるでぬいぐるみでも抱えるような軽やかな動きで厚司を持ち上げ肩に担いだ。
「昨日はちょっと無理しちゃったからね。今日は大人しくしてた方が身の為だよ」
昨日の事を思い出して、厚司はかっと顔に血が集まるのを感じた。
「き、昨日って!お前があんな事するからじゃねぇか!」
大声で怒鳴ると頭がクラクラしたが、厚司は怒りで意識を保つ。
「ははっごめんねぇ」
「ごめんねじゃねぇよ!つーか何処行こうとしてんだ!」
部屋のドアを開けようとしてる咲夜に厚司は驚き、静止をかける。
「何処って門真の所だよ。子豚ちゃんも洗って、ベッドもシーツ変えないとぐちゃぐちゃに汚れてるし。子豚ちゃんの体液で」
「お、俺のだけじゃねぇだろ!」
「えぇー。殆ど子豚ちゃんのだと思うけどなぁ。僕、全部子豚ちゃんの中に出したし」
「お、おまえっおまえ……」
怒りで言葉が出て来ない厚司は、疲労にぶるぶる震える腕を振って少年の華奢な背中や、小さな頭を殴るも全くダメージになってないようだった。ならばと足をジタバタさせて蹴っ飛ばしてやろうとしたが、担がれた時に抱え込まれていて全く動かない上に、動かそうとするたび内腿がぶるぶる震えてしまう。
「ひっ!な、なん……」
更には、突然尻穴から何かが滴る感触に厚司は身体を強張らせた。
「ほら、僕の子種汁が子豚ちゃんの雌穴から溢れちゃうよぉ」
「んひぃ!やめろ!やめろぉ」
下卑た笑いを含んだ声がしたと思ったら尻穴にズブズブと何かが埋まる感触に厚司は涙声で抗議した。
「ほら、ぐちゅぐちゅしてるでしょう?これみんな僕の汁なんだよ?このまま押さえておいてあげるから廊下を汚さない内に門真にきれいにしてもらおうね」
「うっうっ、うぐっ……ぬ、けよ!ゆびぃっい、ひっいっい!」
歩く振動で胎内を抉られ、厚司の身体は散々昨日覚え込まされた快感に痺れ、情けなく喘ぐ。
「ほらほらもう着いたからね。泣かないで子豚ちゃん」
ガチャリとドアの開く音がして、厚司の背中から穏やかな声が聞こえてきた。
「おはようございます旦那様。おや、わざわざ運んで下さったのですか。捨て置いて頂ければ私が回収しましたのに」
「おはよう門真」
声の主の門真は、あられもない主人と厚司の姿を見ても特に驚いた様子もない。
しかし厚司は昨晩の情事の名残りが残る裸を抱えられ、あまつさえ尻穴に指を突っ込まれている状況に、ぎゅっと身を縮め息を潜めていた。
コツコツと、小さな足音を立てて門真が近づいてくるのが、背中越しでもわかる。
「……おや、まだ生きてる」
「ひっ!」
肩越しからぐるりと顔を覗き込まれ厚司は悲鳴を上げた。思わず咲夜の首にしがみつき、肩口に顔を埋めて隠す。
「吸い殺さなかったんですか?珍しい」
門真の問いに咲夜は瞳をキラキラと輝かせて「僕、この子を飼おうと思うんだ」と宣った。
「飼う、ですか」
「飼う、だぁ!?」
咲夜の言葉に二人の男はそろって同じようなリアクションをする。二人の反応に気を良くした咲夜は続ける。
「そう!この子豚ちゃんにご飯をあげて、運動させて健康にして、その健康な血を吸うの!名案でしょ」
「名案ですね」
「名案じゃねぇよ!」
またも二人の男はそろってリアクションをした。今度は正反対のリアクションだが。
「つまり養殖という事ですね」
「そうそう!養豚場の豚なの。畜産だよ」
「そういえば今までやった事ありませんでしたね、畜産」
主の提案に首肯する門真と、否を唱える厚司。
「反対!俺は反対だ!嫌だ!」
「どうして?子豚ちゃんは美味しくて健康的なものが食べられて、僕に血を吸われるだけの簡単なお仕事をしてれば死ぬまでずっと、何不自由なく暮らしていけるんだよ?」
「その血を吸われるのが嫌なんだよ!」
「えっ?なんで?全然痛くないでしょ?むしろトロトロふにゃふにゃになるくらい気持ちいいのに?」
「それだよ!それ!無理矢理ヤラれて気持ち悪いだけだってんだよ!」
心底不思議そうに首をかしげる咲夜に抱えられたまま、厚司は断固拒否の姿勢で怒鳴る。
「えぇー……嫌そうには見えなかったけど」
「う、うるせえ!」
「しかし困りましたね。このまま飼育を拒否されると殺処分しかありません」
言い争いに埒が明かないと思ったのか、門真が一言、抑揚のない声で言った。
「さつしょぶん」
物騒な言葉に、厚司は改めて自らの異様な状況に思い至った。
「ええ。我々の秘密を知られてしまったので、殺すしか」
厚司の言葉に門真はうんうんと頷きながら、悲痛そうに眉をひそめていたが、その瞳は無機質で特に何の感情も見えない。
「ええー!飼いたいよー。ちゃんと可愛がる!大事に面倒見るからぁ!餌も豪華なのあげるし、綺麗にお風呂にも入れてあげるし、服だって着せてあげるからぁ!」
「いいえ、旦那様。相手が嫌だというのに飼育することは出来ませんよ。可哀そうでしょう。職を失いその日暮らしになったとしても、自由なまま死にたいと望む者もいるのです」
咲夜が可憐な唇を尖らせて拗ねるのを、門真はゆっくりと首を振って窘める。
「さあ旦那様。私が始末してまいりますのでそれをこちらへ」
「や、やだ!それなら僕が血を吸い殺すから!どうせ血抜きするでしょ?!もったいない!」
咲夜は手を伸ばす門真から、厚司を抱えた小さな体をひねって隠すようなしぐさをする。
「抜いた血だってちゃんと使いますよ。料理に入れたり、後で朝食にもお出しします……ですが、まあ抜いて頂けるなら手間が省けてようごさいます」
もったいないと言われたことに憤慨するように言う門真。咲夜はあっさりと部屋へと踵を返して歩き出す。
「じゃあ僕、部屋で吸いきって「なりますっ!!俺喜んで豚になります!!」
咲夜の言葉を遮って、厚司は高らかに宣言した。
命の価値の前に、人間の尊厳など二の次なのだ。
厚司の宣言を聞いて、主従は二人とも満足げににっこりと笑う。
「本当?!良かったぁ。じゃあこれからよろしくね。僕の子豚ちゃん!」
「良かったですねぇ旦那様。さあ、そうと決まれば浴室の準備が出来ていますので早くご入浴なされませ。お風邪を召されます。厚司さんが」
「はあい」
門真に浴室へ行くように促され、咲夜は素直にドアへと戻る一瞬、立ち止まって従者を振り返る。
「ああ、そうだ。子豚ちゃんの部屋、ベッドぐちゃぐちゃに汚れちゃったから綺麗にしてあげて。あとテディも洗っておいて!子豚ちゃんが精子ぶっかけちゃったの」
「おまえ!なんで言うんだよ!」
咲夜の発言に、厚司が慌てて彼の口を塞ごうともがくが、咲夜の体幹ピクリともぶれず、まったく影響がない。
「気になさらないで大丈夫ですよ。旦那様のお食事の後始末は慣れてますので」
「そうだよ。門真はプロだよ、あれくらい余裕余裕。もっとぐちゃぐちゃな時もあったし」
「……いったいどんなことをしたんだよ、それ」
顔をしかめる厚司に、主の代わりに門真が答えた。
「お食事中興奮した旦那様が、お相手を酷く食い荒らしまして。いったい何をどうしたのか、肉片が部屋中に飛び散っていた時はさすがに驚きましたねえ」
「やだなあ。そんな昔の事まだ覚えてるの門真は。若気の至りだよぉ」
恥ずかしそうに照れる咲夜を横目に見て厚司は「……聞くんじゃなかった……」と青い顔で呟いた。


 「着いたよ。やっぱり裸だと冷えるねえ」
咲夜に抱えられて入った浴室は、広い浴槽にたっぷりと湯が張られていて、あたたかな空気が充満していた。
「おい、いい加減降ろせよ……」
「はいはい。滑らないようにしてね」
ざらついた石の感触が、厚司の足に当たり、長い事浮いていた足がようやく地上に降りることが出来た。
ほっと息を吐いたのもつかの間、背後に回った咲夜が素早い手つきで厚司の尻を割り開いて、無遠慮に肛門に指を突っ込んできた。
「おっ、ぐっうぅ!いきなり、なにすんだ!」
刺し貫かれた衝撃で、上半身が前のめりに倒れる。壁に備え付けられた鏡にもたれかかるように手をついてなんとか激突は免れた。
「そうそう、ちょっと前かがみになると楽だよ。今、ナカにある僕の汁を掻き出してあげるからね」
咲夜がぐじゅ、ぐじゅ、と指を蠢かすたびに、何かが這い出るような感覚に厚司は呻いた。
「うっ、ぐ……きもちわりぃっ……ちょ、まてっじぶ、んでやる!やめろ、あっ」
「大丈夫大丈夫。僕これも上手だからね。すぐ終わるよ」
咲夜は慰めるように、厚司の背中や腕を、空いた手で撫でまわした。
身体を撫でられながら、尻穴をほじられて厚司の肌がぞわぞわと粟立つ。
「寒い?シャワー出そうか?」
咲夜が壁に取り付けられた蛇口をひねると、頭上から熱い湯が落ちてくる。
「大丈夫だよぉ。すぐに綺麗になるからね」
甘やかすように優しく囁き、手で撫でる代わりにシャワーヘッドで温かい湯をかけながらぐちぐちと尻をくじられると、誤魔化しようのない快感が身体中を走り、とうとう厚司は抵抗を口にすることもやめてしまった。
「は、はっはぁっ……ん、ぁっ、あぁっ」
シャワーの水音の合間に一定のリズムで響くねばついた音が、厚司の耳を○す。
羞恥に下げた視線には、シャワーで流されていく白濁が見えた。
「そろそろいいかなー。どうする、子豚ちゃん」
尻穴をくじる速度がゆっくりになり、咲夜が厚司に聞いた。
「な、なにが、だよ……」
嫌な予感がする。
湯の熱と、快感とで赤く染まった顔を背後に向けると、シャワーヘッドを持った咲夜が、美しいその顔に喜色をたたえて微笑んでいた。
「このままお尻ぐちゅぐちゅしてイキたいか、それとも僕の子種汁はもうなくなったからこれもおしまいにするか」
バラ色の小さな唇が、にんまりと横に伸びて、いやらしい笑みの形に変化する。
「どうする?選ばせてあげるよ」
ずる、ずると緩慢な指の動きが、厚司の尻穴をくすぐり続けている。
断るべきだ。今すぐその指を抜けと言ってやるべきだと思う。
しかし、厚司の思考とは裏腹に、尻は咲夜がゆるゆると動かす指の動きを追うように揺らめいて、好い所に刺激が欲しいとねだっている。
「ふっ、んんっ!そ、そこっああっ……」
厚司の逡巡を見透かすように、咲夜の指が快楽のツボを刺激する。
突然強く流れる悦楽の電流に痺れ、ゆるんだ唇からだらしなく舌が垂れた。しかしその刺激も長くは続かず、溺れる前に波のように引いて行ってしまった。
「ねえ、決まった?」
美しい異形はぱっくりと裂けるように開いた唇から長く太い舌を出して、ねろりと厚司の背を舐る。
「っ、して、ほしいっ。尻……イかせてくれっ」
這いまわる舌に翻弄されるように痙攣する厚司の背中に口づけを落として、咲夜は尻穴に埋まった指を蠢かし、射精を促してやった。
「前にねえ、象の繫殖のために射精をさせるところを見たことがあるんだ。お尻の穴に腕を突っ込んで、こう、ガシガシ動かすんだよ」
「んああっ!あっあぅっ、うっ……ううっ、ふぅっ……」
待ち望んだ強い悦楽の波に溺れ、あられもない声で鳴きながらも、厚司は喋る咲夜の言葉を聞いていた。
目の前にある鏡越しに、喜色を湛えた黒曜石の瞳と目が合う。
「その時、無理矢理射精させられる象さんは可哀そうで、でもとっても卑猥だなって思ったんだ」
「ふっ!ううっんっっ……んっぐうぅ、ううっ」
指使いが明確に厚司を追い詰め、鏡越しに見ていた咲夜の顔を見つめていられず、快感で眩む視界をぎゅっと閉じた。
「それに比べたら、ちゃんと子豚ちゃんの意見を聞いてあげて僕はとっても優しいよね。ねえ?」
「あっああっ!あっああぁっ」
えぐられている箇所が燃えるように熱く、厚司の身体は絶頂の兆しをとらえた。
「ねえ?僕、優しいよね?善くしてっておねだりする子豚ちゃんの事、善くしてあげてるもんね?」
強者の問いかけが、言外に語る。
己を支配している者が誰なのか、しっかりとその目に、心に刻みこんでおけと命令する。
「ああっ!いいっ、すげっ……いくっいくっ……やさし、いっいっいぃっ……」
厚司は、閉じていた瞼を開けて鏡越しに咲夜を見た。
可憐な瞳に色欲の光を灯したその目を見つめながら、思考が白くはじけるような強い快感に飲まれ、厚司は絶頂に達した。
「あ!イった?子豚ちゃんのお尻、僕の指をぎゅんぎゅん締め付けて可愛いよ。子種ほしいよぉって言ってるみたい。でもせっかく出したもんねー。子種汁を啜るのはまた夜にねぇ」
咲夜は嬉しそうにはしゃいで、ちゅっちゅっとかわいらしいリップ音を立てて厚司の尻たぶにキスを落とす。
「う、や、めろって……いいだろ、もう」
「そうだね。今度はちゃんと身体を洗おうか」
息も絶え絶えに言う厚司の言葉に、あっさりとしたがって、咲夜はその戯れをやめて立ち上がる。
「じゃあこっち向いて。それで頭をこっちに下げて」
厚司にも立ち上がるように促して、咲夜は備え付けられていたソープを手に取った。
泡立つ両手を厚司の方へ伸ばしてかがめと言う。どうやら頭を洗う気らしい。
「い、いやいい。自分で洗える」
「いいから、ほら」
一瞬ためらったが、抵抗したところで逃れられないのは散々学習した厚司はあきらめて咲夜に頭を差し出した。
「よしよし。綺麗にしてあげるからね」
ご機嫌に弾んだ声で、咲夜は厚司の全身を洗っていく。
ぬるぬるの小さな手が自身の身体を這いまわるのに、わずかに快感を拾わなくもなかったが、腹に力を込めてやり過ごす。
「じゃあ流すね」
全身まるまる洗われて、熱いシャワーを浴びせられると本当に自分が犬かなにかになったようで、厚

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