鶯命丹 2023/03/26 14:53

魔力多過ぎ夫×魔力吸収しすぎ屈強妻♂魔力供給セックス前編

ショタ攻めでも中出しは作れる!!

魔法・魔力・魔術が普通、電気の代わりに便利な機械を動かしたりする世界で
魔力が多すぎて機械を壊してしまうショタ夫と
魔力全然なさすぎてむしろ人とか機械の魔力吸っちゃう屈強軍人妻♂の
魔力供給セックスです。

世界観とか書き過ぎてエロシーンに行くまでがやたら長いです。
すみません

なんかいろいろ国名だとか機械だとか出てきてますけど魔力供給よしよしセックスってことさえ覚えて帰ってください。


ミカル=ムヒア・コン・オーケソン
魔力強すぎ夫
貴族
魔力強すぎのせいで近くにいると普通の人間は発狂する
魔力で動く機械はあふれ出るミカルの魔力でキャパオーバーになって壊れるので、普通の人と一緒に生活できない。実家の敷地の離れでひとりで暮らしてた。
人と接触してこなかったので会話がどもりがち


妻♂
ロズモ・ギレレロルン・バロネスヴェストリン
魔力なさ過ぎて吸っちゃう妻♂
魔力がないので触ったものの魔力を吸ってた
吸ったそばから魔力が抜け落ちてくので、吸ったからどうということはない。
軍人家系
魔力付与された武器や防具が使えないので貴族の出身だが下士官止まり
負けず嫌いで愚直なので魔法が無くても誰よりも強くなれば良いんだとフィジカルに全振りした結果最強の肉体を手に入れた
魔力で動く機械の魔力を吸ってしまうので機械が動かなくなる
普通の生活ができないのでひとりで暮らしてた


あらすじ
魔力多過ぎショタの父(40代)と魔力吸収軍人の父(60代)(位はショタ父のが上)が出会い、各々の厄介な息子の話で意気投合
 ちょうどよいのでは?!って二人を結婚させる
 顔合わせすらしない状態で結婚式
妻♂の勤務地(辺境)にショタ父が建ててくれた結界付きの家に二人で仰々しい結界が施された幌馬車で向かう
新居で年上女房♂のリードでよしよしセックス

よしよしセックスの過程で、受けが攻めに愛撫するシーンがありますので、ご注意ください。
――――――――――――

  その日は、ロズモ・ギレレロルン・バロネスヴェストリンの結婚式であった。
 巨躯であるロズモは、ギレレロルン族の伝統的な婚礼衣装を身にまとい、クレーティムト国教会の教会で結婚式を挙げている。
 正面にいるのはクレーティムト国教会の司祭。
 頭に笠を被り、笠のふちからぐるっと目隠し……というか足先まで隠れる長い布を垂らしており、姿が全く見えない。
 更には、その垂れ下がった布に何やら仰々しい呪文まで描かれている。
 これが、クレーティムト国教会の司祭の正装……という訳ではない。
 ロズモはちらりと視線を右隣りに移す。
 ロズモの頭3つ分は低い小柄な人物が、やはり頭に笠を被り、笠のふちから垂れ下がる布に覆われている。
 布に描かれた仰々しい呪文も同じく。顔どころか、体型すら見通せなかった。
「ロズモ・ギレレロルン・バロネスヴェストリン。そなたはミカル=ムヒア・コン・オーケソンを伴侶とし、永遠の愛を誓いますか?」
 司祭の格式ばった問いかけが響く。
「はい、誓います」
 ロズモの低く良く通る声が、教会内に反響する。
 誓う以外の回答は無いじゃないか。とは言わない。
「ミカル=ムヒア・コン・オーケソン。そなたはロズモ・ギレレロルン・バロネスヴェストリンを伴侶とし、永遠の愛を誓いますか?」
 同じ問いがかけられる。
「…………はい、誓います」
 ロズモの隣から聞こえた声は、まだ幼く、かすかに震えていた。
 無理もない……とロズモは密かにため息をつく。
 隣に立つロズモの伴侶、ミカル=ムヒア・コン・オーケソンはまだ14と、成人にも満たない少年だと聞いた。
 貴族の結婚とは、政略結婚が常とはいえまだ小さな少年が、色黒の傷だらけの大男に嫁ぐなんて、恐ろしくて身もすくむ思いだろう……
 ロズモは自身の伴侶に同情を寄せた。
「それでは、誓いの指輪、の……交換を……」
 司祭が、美しい装飾が施された盆を差し出す。その上には二つの指輪があった。
 相手の指輪と、自分の指輪の大きさの違いにロズモは目を見開く。
 ――こんな細い指輪が入るほど、この子の指は細いのか……
 眉根を寄せるロズモの視界の端で、伴侶の少年が動いた。
 覆う布の向こうからすっと差し出される小ぶりな手。
 その手すら仰々しい呪文の描かれた手袋で覆われていた。
 そして、ロズモはそれを見て一瞬、ぴたりと動きを止める。
 ――この指輪は、手袋の上からするべきだったか? それとも外して良いものだったか?
 ロズモはほんの一瞬だけ、思考する。
 慌ただしく告げられた結婚式の流れでは「指輪を交換してください」とだけしか言われなかった。
 普通、指輪は手袋の下だろうな。
 素早く判断したロズモは細い伴侶の手を取って、さっと着けてた手袋を抜き去った。
 青白い、日に焼けた事のない手だった。しかし、貴族のお坊ちゃんにしては荒れているなと思ったのはほんの一瞬。
 ハッと息を呑む声が、伴侶の少年と、司祭から聞こえた。少年の手が、逃げようとするのをロズモは反射的に握って引き留め、素早く指輪をはめる。
 はめた瞬間、伴侶の手はサッと垂れぎぬの中へ引っ込んだ。
「……なんてことを……は、早くあなたも指輪をして!」
 司祭は小さな声でロズモを叱責し、盆をロズモへと押し付けた。
「あ? 交換なのでは?」
 盆に残るのはロズモの指輪。伴侶が手に取ってロズモの指へはめる手筈のものだ。
 ロズモが戸惑い指輪と司祭を交互に見ると、司祭は垂れぎぬの向こうから慌てた様子で捲し立てた。
「良いから早く! あなたがこの指輪を着けたら終わりなのですから!」
 切羽詰まった司祭の様子に気圧され、ロズモは自身の指輪取った。
 自分ではめようとしたその瞬間、がちゃんッと司祭が盆を落とした。
「大丈夫か……え?」
 ロズモが司祭を見ると、司祭は身体を激しく揺らしていた。
 まるでリズムを刻むように、一定間隔で右に左に揺れている。
「わ、この指輪は tさあら なまさ! 声が」
「えっ? 司祭殿? 何を……」
 司祭は意味のわからない言葉を叫びながら、更に激しく身体を揺らす。
 足を地面に縫い付け、背骨がバネになってないとおかしい程に、激しい勢いで司祭の身体が揺れている。
「ど、どういうことだ? これも儀式の一部なのか?!」
 あまりの異様さに、ロズモは咄嗟に伴侶をその背に庇う。
「あ さ ふ手がむふ! ぬむよ」
 司祭は一言呟くと、糸の切れた操り人形のようにその場に崩れ落ちた。
 ドサッ、と人の倒れる音が、静かな教会に響く。
「し、司祭! 大丈夫か!?」
 走り寄り、脈と呼吸を確認する。
「……気を失っただけか? さっきのは、何かの発作か?」
 思わず疑問を口にするロズモへ、小さな声が答えた。
「わ、私の……せい、です」
 声はか細いが、静かな教会ではよく聞こえた。
「私の手袋が取れてしまったから……司祭様は発狂してしまったんです……」
 ロズモの伴侶はずっ、と鼻を啜る音の合間にぽつぽつと喋った。
「私の……多すぎる魔力が漏れ出し、司祭様を狂わせてしまったんです。いつも、そう……私の近くにいると、生き物はみなおかしくなってしまう」
 少年の声は震えている。
「あなたの魔力? それじゃあその物々しい格好は?」
「はい、私の魔力を外に放出しないためです……」
「司祭の格好も、同じようなモノですね? これも?」
 司祭も少年と同じく笠を被り、そのふちから呪文を描かれた布が垂れ下がっている。
 少年の笠がこくりと揺れた。
「はい、私の魔力に充てられない為の装束です」
 少年の答えに、ロズモは教会の中を見回して聞いた。結婚式だというのに誰もおらず、しんと静まり返った教会内にようやく合点がいく。
「じゃあ、この俺たち以外に誰もいない、無人の結婚式も……あなたの魔力にあてられて、人が発狂するから?」
「……はい、その通りです……」
 伴侶の少年の声は震えている。
 ロズモはそうだったのかと頷き、倒れた司祭を横抱きに抱えて立ち上がる。
「とにかく、司祭を外に出そう」
「はい」
 伴侶の少年はずっ……と鼻をすすると、ロズモの後について歩き出した。

 教会から出て、まずロズモの目に飛び込んできたのは、遠くに集まる親族の姿だった。
 教会の扉が開き、現れたロズモたちを見ると、親族連中にどよめきが上がる。
 親族の中で、頭ひとつ飛び抜けて背の高い老年の男が、大股で歩いて近づいてきた。
「お祖父様」
 ロズモが祖父へ歩み寄るのと、背後の伴侶が数歩教会の方へ後ずさるのは同時だった。
「ロズモ……本日は誠にめでたいな。ミカル=ムヒア殿、不束な孫でありますが、どうぞよろしくお願い致す」
 目の前に来たロズモの祖父、ユヌ・ギレレロルン・バロネスヴェストリンは、孫の伴侶の少年へ深々と頭を下げた。
「……こ、こちらこそ……不束者です、が……よろしくお願い致します……」
 少年の声は辿々しく響く。振り返るとかなり遠く、教会の中ほどまで下がっている。
 祖父への影響を気にしてだろう。そう解釈してロズモは祖父へ向き直った。
「お祖父様。司祭殿が妙な動きをし、意味不明な言葉を発した後、気を失ってしまいました。今は、脈と呼吸は落ち着いております」
 祖父はロズモから司祭の身体を受け取って頷く。
「おお、わかった。あとはこちらで……お前たちも、このあとすぐに引越しだろう? そこな幌馬車で行くと聞いたが……」
 祖父が目をやった先に視線を向けると、旧式の幌馬車が目に入った。
 幌には、伴侶や司祭のかぶる笠に描かれたものと同じ呪文が、びっしりと描かれ、禍々しい。既に馬車に乗り込んでいる御者は、伴侶や司祭のように笠を被り、全身が布に覆われている。
「あれに、乗るんですか? 俺たちは?」
 思わず付いて出た言葉に、祖父は神妙に頷いた。
「お前の体質もそうだが、ミカル=ムヒア殿も魔動力が使えぬ故、どうしても旧式の移動方になる。魔動式車や魔動列車など途中で動かなくなったら大変だろう」
 祖父は、司祭を横抱きに抱えたまま幌馬車の方へ歩き出す。
 ロズモも後を追い、更に離れた距離感を保ちながら、伴侶の少年が続いた。
「新居には、家財道具や日用品などさまざまな物があらかじめ用意してある。お前たちが詰めた荷物も、既に幌馬車へ運び込んである。道中気をつけてな」
 祖父は司祭を一度地面に下ろすと、幌を捲り二人に中へ入るよう促した。
「もう出発なのですか? 互いの親兄弟に挨拶もしていないし、着替えすら……」
 ロズモの困惑に、祖父は静かに首を振る。
「出来ぬだろうな。今もワシ以外、誰も近づいてこないだろう?」
 ロズモはもう一度、自分たちを遠巻きに見る人々に目をやった。
 自分の父や母、兄弟よりも更に離れたところに、伴侶の少年の親族だろう人々が数人。
 彼らは皆一様に、呪文の描かれた布に覆われた姿をしていた。
 おおよその背丈以外、布に覆われ性別すら判明しない。
 しかし、彼らの空気は遠くに居てもよくわかった。まるで禍々しい葬列でも見たかのように、怯え、より固まっていた。
 伴侶の親族の異様な様子に目をすがめるロズモ。それに同意するように祖父が渋い顔をする。
「可愛い孫の婚礼に、あるまじき雰囲気で胸くそが悪い。もっとたのしげに出来んものか……そもそも、お前の父ナトルがこんな馬鹿げた……」
 馬鹿げた結婚と言おうとしたのだろう。しかし、ロズモの背後――離れた位置ではあるが――にいる伴侶の少年を慮って祖父はぴたりと口を閉ざした。
「……さあ、乗りなさい。道中は長い。若い二人がお互いを知るには持ってこいじゃ!」
 祖父はにっこりと明るく言った。誤魔化しの笑顔であっても、渋い顔のまま別れるより良い。
 ロズモも、笑顔を浮かべて祖父を抱きしめた。
「お祖父様ありがとうございます」
 祖父も力強く、末の孫息子を抱きしめ返す。
「ああ、達者でなロズモ」
 祖父から腕を離したロズモは、伴侶の少年を振り返る。
「乗りましょう、伴侶殿」
 手を差し伸べると、伴侶の少年は小走りにやってきた。
 慌てた様子で幌馬車に乗り込もうと荷台に手をかけるも、上手く上がれない様子だった。
「お手伝いします……おぉ! 軽っ!」
 ロズモは伴侶の身体を持ち上げる。猫の子のような軽さに驚いた。
「……ありがとうございます」
 礼を述べすぐに幌の中へと引っ込もうとする伴侶の少年を、ロズモの祖父ユヌが引き留めた。
「ミカル=ムヒア殿、この通り粗野な孫ではありますが、気の優しい男でございます。どうぞあなたの人生のロズ=モであるように……末永く良くしてやってください」
 祖父が深々と頭を下げた。
「お祖父様……」
 ロズモは祖父の愛に胸がぎゅっと軋んだ。
 笠布越しに、伴侶の少年がじっと祖父を見ているのを感じる。伴侶の少年の笠がこくりと頷き、これまで以上にか細く震えた声で「……はい……」とだけ答えた。

「お祖父様、お元気で!」
 馬車が動き出す。ガタガタと整備が甘い旧道に揺られながら、ロズモは見送る祖父に大きく手を振った。


 幌の中は薄暗かった。
 上等の布なのか、かなり日の光が遮られているようだ。
 徐々に慣れた目で中を見渡すと、確かにロズモが荷造りした鞄やら書物、武器などが置かれている。
 伴侶の少年は、彼自身の荷物だろう書物や道具に隠れるように小さく丸くなって座っていた。
 背後に置いた大きなクマのぬいぐるみを見て、少年の幼さにロズモの胸が痛む。
「あー……伴侶殿……少し話をしないか?」
 笠が動いた。
 どうやらロズモの方を見ているらしい。
「改めて、はじめまして……ロズモ・ギレレロルン・バロネスヴェストリンと申す。どうぞよろしく」
 ロズモはぎこちなく笑みを浮かべ、頭を下げた。
 伴侶の少年の笠がふい、と向きを変える。ロズモから顔を反らしたようだった。しかし、すぅと小さく呼吸を繰り返すと、再び笠の向きが動いた。
「……ミカル=ムヒア・コン・オーケソン……です。あの、あなたはなんともない……のですか?」
「なんとも、とは?」
 ロズモが首を傾げる。
「……妙な幻が見えたり、不気味な声が聞こえたりは、してないですか?」
「全くそんな事は無いが……」
「物凄く寒気がしたり、逆に暑く火照ったりとかは?」
「いや……なんともないな」
「異様にお腹が空いたり、喉が渇いたり、目の前の物が自分を食べようとしてきたりとかは?!」
「ないない! なんだその質問は」
 ロズモは伴侶の少年の問いかけが分からず苦笑した。
「いったいなんの謎かけですか、伴侶殿。今の子どもたちのあいだで流行ってるので?」
 ロズモの笑みに、伴侶の少年は茫然としているようだった。
 しばらく緊張した気配の後、はぁぁーと大きなため息が、垂れぎぬ越しに聞こえてくる。
「あなたの噂は本物のようですね。ロズモ殿」
「ロズモで良い。なんだ、伴侶殿は俺の噂を知ってて結婚を了承したのか」
「私も、ミカルとお呼びください……噂の事は知っていました<魔喰いロズモ>魔法を無効化し、魔力を吸い取る屈強な騎士……むしろ、その噂を聞きつけて、父があなたを利用したのです」
 ミカルの声が暗く沈んでいる。
 ロズモは視線を彷徨わせた後、意を決して口を開いた。
「……魔喰いなんて、かっこよく言えば聞こえはいいが……俺の体質はかなり厄介ですよ。魔力を動力にしている物もみんな無効化してしまう。おかげで魔力を付与した武器や防具は意味を成さず、日常的に使える家具も魔力で動く物は全滅なんだ。だから、一緒に暮らすとなると、生活がかなり不便だと思うが……」
 ロズモの声が徐々に小さくなる。
  
  ロズモは特異体質だった。
 生まれつき魔力を有しておらず、その上魔力・魔法の類を無効化してしまう。
 クレーティムト国やその周辺諸国、ギレレロルン族もみな、ほとんどの人間は魔力を持っている。
 魔法を使える者も、珍しくない。
 ただ稀に、魔力をまったく持たない人間が生まれてくる事がある。そういった人間は、魔術師などの特定の職業に着けない不便や不利はあるが、日常生活を送るには支障がない事の方が殆どだ。
 しかし、ロズモの場合は違う。
 ただ魔力が無いだけではなく、触れたものの魔力を無効化してしまうのだ。
 炎の魔法が付与された剣を取ればただの剣になり、どんな攻撃をはじくという防御の加護が付いた鎧を纏うと、攻撃をはじかないなんの変哲もない鎧に変わる。
 つまみを捻るだけで火がつく、魔力を動力にしたかまどに触れると魔力が無くなり、人力で火を起こす必要が出てくるし、水を自動で汲み上げる水道が使えなくなり、井戸から水を汲んでいた。
「……おかげで、兵団の寮では生活できず、配属先を移動するたびに駐屯地近くに小屋を作って暮らしてた」
 どんよりと肩を下げたロズモに向かって、ミカルは驚いたように問いかける。
「魔力付与が無い武器や防具では、戦いに支障があるのでは?」
「支障は大アリだ。新人の頃は上官にも同期にも随分と馬鹿にされた。悔しくて悔しくて死に物狂いで身体を鍛えたさ。魔力に頼らずとも強ければ誰も文句は言えないだろうと……で、先の戦で特別に恩賞を賜るまでになったのだ」
 ロズモは得意げに胸を張る。その様子を見て、ミカルは感心したように息を吐いた。
「凄い……大変な努力があったのですね」
「まぁな。しかしながら、やはり出世は望めないようだ。お祖父様が将軍という地位にありながら、親族の中で未だに下士官なのは俺だけだ。この前など、俺より十若い長兄の末息子にさえ抜かされてしまった……だから本来、コン(伯爵)の位を持つあなたのような貴人と、俺なんぞ下級騎士は話すどころか目通りだって叶わないはずだ」
 ロズモはじっとミカルを見た。
 ミカルは動揺しているのか、笠がふらふらと揺れ、落ち着きなく座る体勢を直しているようだった。
「……あなたの膨大すぎる魔力が原因、と聞いているが」
 ロズモの言葉に、ミカルはビクッと身体を震わせた。
 たっぷりの沈黙の後、ミカルは長く深い息を吐き、訥々と語り始めた。

  ――私は、生まれつき魔力がとても強く、膨大な量を持っていたと聞いています。
 はじめ、両親はそれをとても喜んだようですが……
 この国の貴族は魔力が多く、魔法を使える古い血筋を重んじていますから……
 だけど、乳母が……私の世話をする乳母がことごとく発狂していったそうです。
 始めの乳母は三ヶ月。私の世話をしている最中、奇声を発して壁に頭を打ちつけ血だらけになっていたそうです。
 次の乳母も、私の部屋のカーテンで首を吊ろうとしていたところ助けられました。
 その次も、次も……
 大抵の場合、私から離れて数日すると、正気に戻るようですが……発狂した乳母の何人かは、私から離れても正気に戻る事はなく……いまだに……
 彼女たちにも、彼女の子どもたちにも、本当にすまないことをしたと……
 そのうち、人を狂わせるだけでなく、魔動力の機械も破壊してしまう事が発覚しました。
 私が触れると容量を超えた魔力を込めてしまうため、色々な機器が破裂したり燃え出して……
 暴走した魔動機械の爆発で、屋敷が燃えて崩壊する事も何度かありました。
 事態を重く見た両親は、屋敷の敷地内に結界を施した小さな家を作り、私をそこに隔離しました。
 私が、6つの時です。
 その日から、私は小さな家の中でひとりで暮らしていました。

「……あー……そうだったのか。それは、寂しかっただろう……」
 ロズモは、そう言ってからすぐに後悔した。
 幼い子どもが、自分のせいで様々な災難を抱え、たったひとりで暮らす孤独にかける言葉などないように思えた。
 しかし、ミカルはふるふると笠を横に振る。
「寂しかったのは、そうですが……それよりも、もう誰も傷つけなくて済むとホッとしました。それなのに……こんな……結婚だなんて……」
 ミカルが呟いた途端、馬の鋭いいななきが聞こえた。
「どうした?!」
 ロズモは素早く御者の背後の幌をめくると、御者の様子がおかしい。
 先ほどの司祭のようにバタンバタンとのたうち回っている。
「おい! 大丈夫か? しっかりしろ!」
 ロズモが御者の肩を掴むと、ビンッ! と身体を硬直させるとバネのように飛び跳ね、馬車から飛び降りると森の中へと走って行った。
「お、おい! どこへ行くんだっ! すまんミカルッ俺は御者を追う! ここでじっとしててくれ」
 ロズモは装飾過多な婚礼衣装を脱ぎ去ると、綿のシャツとズボンのみになり御者が消えた森の奥へ走って行った。
 
  身体能力の高いギレレロルン族であり、更には騎士として日々身体を鍛えているロズモは、若く活発な雄シカのように森の中を駆けていく
 「くそっ! 俺の足でも追いつけないとはっ」
 ロズモは必死に森の中に目を凝らし、御者の後を追う。
 そろそろ呼吸が荒く弾むようになってきた頃、緑一色の森の中に、ポツンと立ちすくむ白い御者の姿を見つけた。
「御者殿っ! 無事か?」
 ロズモが駆け足で御者に近づく。
 御者は何も言わず、じっと石のように立ちすくんでおり、ロズモの問いかけにも答えない。
「失礼」
 ロズモはさっと笠を取り払い、御者の顔を見た。
 御者は老年に差し掛かろうという年齢の男だった。とても騎士であるロズモを巻くほど、速く走れるようには見えない。
 御者の瞳はぼんやりと宙を見て、ぽっかりと口を開けていた。
「御者殿、しっかりしろっ!」
 呆ける御者の頬を叩くと、糸が切れたように緊張した体が弛緩した。
「おっと! さっきの司祭殿とおんなじだな……」
 地面に顔が激突する前に、間一髪ロズモは御者の身体を抱きとめた。

「すまん、待たせた」
 ロズモが御者を抱きかかえて幌馬車に戻った。
「御者の方は……無事でしょうか?」
 ミカルは荷台の中から半身を出して、そっと様子を伺っているようだった。
「大丈夫そうだ。今は気を失ってるみたいだから、最初の目的地の街に置いていこうと思う。俺が馬車の手綱を取るから、安心して乗っててくれ」
 ロズモが小さく微笑むと、ミカルはこくりと笠を動かした。
「すみません……私のせいで……」
 御者席に座ったロズモの背後から小さく謝罪の声が聞こえる。
 振り向くと小さく丸まったミカル。
「ミカルがわざとやったわけではないだろ? そう落ち込むな。少し速足で進んでいくから、口を閉じてろよ」
 ロズモがミカルを励まし、手綱を大きく振って馬を走らせた。

 立ち寄った街で、御者を医者に任せると、ロズモとミカルは街から離れた旧道の近くで野宿をする。
「街の宿で一泊するか?」と問うも、ミカルはふるふると必死に笠を振った。
「私が街にいると、どれだけの人が発狂してしまうかわからないですから」
 固く小さな声で応えたミカルを見おろして、ロズモは眉をひそめた。悲愴感に身を固くしている少年が痛々しい。
「そうか……野宿になるが、大丈夫か?」
「大丈夫です。もし、良ければロズモだけでも街で宿泊をしてきてもいいですよ」
「まさか! 親同士が決めたとはいえ結婚した伴侶を夜の森にひとりきりにして、自分だけ宿屋で休むような薄情者ではないぞ、俺は」
 ロズモは笑って、俯いているであろうミカルの笠をぐりぐりと撫でた。
「見ての通り俺は野宿なんか慣れたもんだ! ミカルは野宿の経験は?」
「経験……ないです」
 ぐらぐら揺さぶられた笠を抑えて、ミカルは応える。
「そうかそうか。それならば張り切って準備しよう。あなたの夫が、頼りがいのある男であるところを見せて差し上げねば」
 ロズモがどんと分厚い胸を叩き、得意げに鼻を鳴らすと、荷台から飛び降りる。
 幌からそっとミカルが顔をのぞかせると、夕暮れの森の中に走って行くロズモの背中が見えた。
 
 ロズモはあっという間に木枝を集めてかまどを作り火をつける。
「問題は食料だなぁ。今から急いで何か捕まえられればいいが……」
 ロズモは火の調子を見ながら呟くとミカルがもたもたと荷台から降りて来た。
「食料はあります。私の体質上、何処かで宿を取ることは出来ませんから……」
 垂れぎぬの間から差し出される箱を受け取ると、早速それを開けた。
「おお、これは助かる。ビスケットや干し肉、乾燥した野菜もあるな。お、飲み水も持って来たのか! いやぁ用意が良いな」
「私の家では、保存する機械が保たないので、常に保存食を食べていたから……私の家から持ち出してきた物ですが、加工は私ではないので狂ったりはしないはず……です。あと、私の両親が用意してくれている物もありましたから……それだけならきっと……」
「ははは! せっかくならミカルの用意した物が食べたいな! まぁイカれるかどうかは食べてみて様子を見ようか」
 ロズモは笑って熾した火に鍋をかけ、野菜と干し肉を煮た。嵩が増して少量でも腹が膨れる。
 保存用の固いビスケットも砕いて入れる。
「そのまま食べないのですか?」
 手元を覗き込むミカルにロズモは「そのままだと固いだろ? スープに入れるとふやけて食べやすい。固いままの方が好きか?」と聞いた。
 ミカルは笠を少し傾けて「食べてみたことないので、わかりません」と答えた。
「そうか、じゃあ今日試してみてくれ。固い方がよければミカルの分は次から固いままのビスケットにしよう。さぁ出来た! あとはこれを入れる器を探さないとな」
 塩で味をつけると、荷物を漁って入れ物を見繕った。
 ミカルは小さな器で、ロズモは大きなマグカップだった。
「どうだろう? 食えるか?」
 スープで満たした器を差し出す。
 笠は取らないのだろうか?
 興味が湧いて、ロズモはじっとミカルを見つめた。
 ミカルは手袋の着いた手を垂れぎぬの隙間から出して器を受け取ると、手は静かに布の隙間に戻っていく。
 少しの間の後「美味しいです」といくらか明るい声が聞こえてきた。
「良かった! 食えたもんじゃないと言われたらどうしようかと思った」
 ロズモはミカルの答えに破顔して自分のマグカップに口を付けた。
「うん、うまい……ミカルは、その笠は取らないのか? もう御者も居ないし、心配しないでもいいんじゃないか?」
 自画自賛して食事を続けるロズモが問うと、ミカルの笠がふるりと揺れた。
「いいえ、近くに誰か通るかもしれないし……あなたがおかしくならないとも限りません……父が作らせた新居には、私の部屋もあると聞きました。魔力を封じる呪術を幾重にも施したと言っていたので、そこでなら外せるかもしれません」
 沈んだ声で答えるミカルを見て、ロズモは唸る。
「そうか……そんなに警戒が必要なのか……あ、そうだ!」
 ロズモはズボンのポケットに手を入れると、白い手袋を取り出した。
「式の時に俺が取ってしまった手袋だ。返すの忘れてたよ……これを取ってから司祭がおかしくなったから……あれは、実質俺の責のような気がするな」
 ロズモが苦笑しながら手袋を差し出す。ミカルは垂れぎぬのあいだからスッ、と手を出して手袋を受け取った。
「いえ、あなたのせいではありません。きちんと伝達出来ていれば……」
 暗く沈んでいくミカルの声に、ロズモは慌てた。せめて慰めたかったのに、さらに落ち込ませてしまった。
 何か話題を変えようと腰を浮かせた時、ころりとポケットから何かが落ちた。
「ん?」
 そちらを見れば、焚き火の灯りを反射して光る指輪だった。
「ああ! そうだ、これも忘れてた」
 ロズモが笑って身を屈めると、落ちた指輪を摘み上げた。
「それは、あなたの指輪?」
「バタバタしててこちらも付け損ねてた。どうだろうミカル。今、これを俺に着けてくれないか?」
「え? でも……」
 ロズモの提案に戸惑いを見せるミカル。
 しかし、ロズモは譲らず、ずいと自身の左手をミカルの方へ差し出した。
「ミカルも手袋越しなら問題ないだろう? 笠も外さないから手以外は出ないし。せっかくなら俺も伴侶に指輪を着けて貰いたい」
 照れたように笑うロズモに絆されたのか、ミカルはこくりと笠を傾けると手袋に覆われた両手を垂れぎぬの隙間からそろりと差し出す。
 ロズモの手のひらから指輪を摘む指先は、ぶるぶると震えていた。
「で、では……失礼、します……」
 掠れた声で呟くミカルが、片手でそっとロズモの手を取った。手袋越しでもひんやりと冷えた小さな手だった。
 ぶるぶると震える手は二度三度、指輪を通すのに失敗した後、ようやく丁寧にロズモの左手の薬指に指輪をはめる事に成功した。
「……っ、はぁぁ〜〜……」
 ミカルは大きく息を吐いて脱力しているようだった。
「おお〜! ありがとうミカル! うん、うん、なかなかに感慨深いものだな」
 ロズモは指輪のはまった手をかざしたり、遠ざけたり近づけたりして破顔する。
「……そうですね……ロズモ、なんともないですか? 急に鳥肌が立ったり、誰かが背後に居るような感じとかしませんか?」
「まったくない」
 恐々とした声音で問いかけるミカルをロズモは呵々と笑い飛ばした。
「さて、そろそろ寝るか」
 ロズモは荷物の中から古いランタンを取り出して焚き火の火を移す。
「えっ?! あ、あの……」
 ミカルは急にそわそわと落ち着きなく笠を揺らして、分かりやすく動揺している。
「どうした?」
「あ、あの……私たちのしょ、初夜について……な、なんですが……」
 ボソボソも喋るミカルの方へ耳を寄せると、虫の羽音よりも小さな声で今日の夜の事を聞いていた。
 ロズモは合点がいったと何度か頷くと、ミカルの笠を優しく撫でる。
「新居に着くまでは清いままでいよう。幌の中だとしてもほぼ野外だしな」
 目線を合わせるように腰を折るロズモに、ミカルはふるふると笠を振った。
「い、いえ! そういうことではなく! 私の近くにいるだけで、普通ならおかしくなってしまうんです。だから、肌が触れ合うなんて、いくらロズモが、魔力の干渉を受けない体質だとしても危険です……だから、私たちはそういうことをするべきじゃない。と、言いたくて……いえ、営みのことだけではなく……この結婚生活も、早いうちに解消した方が良いと……」
 ミカルの声は徐々に小さくなっていき、笠が俯く。
 俯いてばかりの伴侶の少年を見下ろして、ロズモは少し考えた。そして「それなら試してみるのはどうだろう?」と提案する。
 ロズモの言葉にミカルが笠を傾けた。
「試す、とは?」
「今の防御してる状態で、こう、ぎゅっと抱き合ってみておかしくならなかったら次は笠を取って……という感じで少しずつ試していくんだ。途中で俺がおかしくなれば止めればいいし」
 ロズモの提案に、ミカルは笠をぶんぶん音が出るほど横に振る。
「そんな! ダメですっ危険です!」
「やってみなきゃわからんだろ? それに俺だって普通の人と結婚は難しい体質だ。ここでミカルと離縁しても他にアテがあるわけじゃない。このまま二人で暮らすなら落とし所を見つけていく方が円満に暮らせると思うが、どうだろうか?」
 うぅ〜ん……と唸るような声が笠から聞こえてきたあと、ミカルは小さく頷いた。
「……わかりました……少しずつ試す案に、協力します。でも本当に少しずつですよ! 危険ですから!」
「良かった! じゃあ早速」
 笑顔で両腕を広げるロズモ。
「さ、早速過ぎませんか……」
「おやすみの挨拶だ」
 笑顔で待つロズモと、笠から唸り声を出すミカルが向き合っている。
 ミカルが、恐る恐る一歩を踏み出した。
 じり、じり、と少しずつ距離が縮まっていき、あと半歩の距離まで来たミカルを、ロズモはえいやと抱きしめた。
「うわ!」
 驚いて声を上げるミカル。
 ロズモは笠が外れないように身を屈めて、ミカルの肩に顎を乗せる。
「おやすみミカル」
 ロズモは笑って、ミカルの背をトントンと叩くとそっと離れた。
 ミカルの肩を掴んで、くるりと軽い身体を幌の方へ向き直らせて背中を押す。
「さあ、そろそろ寝よう。明日もたくさん進むからな」
「……はい」
 小さい声で返事するのが精一杯のミカルを、ロズモは軽々と持ち上げ幌の中へ入れると、自分も身軽に幌の中へ乗り上げた。
「俺はこっちの方で寝るから、何かあったら気軽に起こしてくれ。じゃあおやすみ」
 ロズモは少し離れた所でごろりと横になると、早々にイビキをかいて眠ってしまった。
「どうしよう……ドキドキして眠れないかも……」
 家から持ってきた大きなクマのぬいぐるみに抱きついて、唸るミカルとは大違いだった。


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長すぎて上手く表示されないので前後編にしてます

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