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新戸 2023/07/19 19:15

ブルアカ:メイドアリスは眠らない

「行ってらっしゃい、アリスちゃん」
「当番頑張ってね~」
「先生に、よろしくね」
「はい、お留守番は任せました。それでは行ってきます!」

ゲーム開発部の面々に見送られながら、アリスはミレニアムの学舎を発った。
時刻は朝の七時。
いつもより早起きをしたみんなに手伝ってもらいメイドにジョブチェンジしたアリスは、
当番として先生をサポートするため、軽い足取りでシャーレへと向かった。

「おや? おはようございます、アリスさん」
「スミレ先輩! はい、おはようございます!」
「今日のアリスさんはメイドさんの格好なのですね。C&Cのお手伝いですか?」
「いえ、今日のアリスはシャーレの当番です。先生のお世話をしに行きます!」
「なるほど、トレーナーの。そういうことでしたらあまり時間を取ってはいけませんね。行ってらっしゃい、アリスさん」
「はい、行ってきます!」

時折出会う人たちと軽く会話を交わしながら。

「ねえ、あのメイドさんって……」
「向かってる方向は……っていうことは、あれが今日のシャーレの「当番」なのかしら?」
「あんな小さい子まで……可哀想……」

あるいは、通りすがりの人々に見送られながら。
エプロンとスカートの中ほどを指先でつまみ上げ、ポニーテールを風になびかせ、「しゅたたたた」と口に出しつつ、小走りで駆けていく。
アリスのメイド観は、今もまだ歪んでいた。



「おはようございます、先生! メイドのアリスが到着しました! ……先生?」

シャーレのオフィス、先生の仕事部屋に入るなり、アリスは大きな声で挨拶をした。
デスクに先生の背中を見つけたからだ。
しかし、返事がない。
ただのしかばねなのだろうか? 否。

「これは……徹夜で仕事をして、値落ちしてしまったに違いありません!」

メイドとなり、推理力も兼ね備えたアリスにとって、この状況を見破ることは容易であった。
『メイド茶屋探偵』を履修したアリスに死角はないのだ。

「こんな眠り方では疲れは取れません。寝るならせめてソファですよ、先生」

言いながら、アリスは先生を横抱きにして運び、オフィスのソファに横たわらせる。
この様子だと、起きるまでもう少しかかることだろう。
であれば、先生が寝ている間にデスクまわりを掃除してしまおう――

極めて合理的な判断のもと、アリスは当番としてのお仕事を開始した。



「――……っ! 今、何時……!?」
「あっ! 先生、おはようございます! 今は午前の10時半です!」
「10時半……良かった、まだ午前だった……」

安堵のため息を吐く先生は、しかしアリスの言葉に再び焦りを見せる。

「先生。先生はクソザコスネイルなんですから、あまり無茶をしてはいけません。あんまりひどいとユウカに言いつけますよ?」
「ユウカに告げ口するのだけは勘弁して!?」

そう。
先生はユウカに頭が上がらなかったのである。



「おお、床がピカピカになってる……」
「えっへん。アリスはレベル100のメイド勇者ですから」

部屋の掃除は、先生が寝ている間にほとんど終わらせられていた。
学習能力・身体能力ともに高く、意欲も十分なアリスにとって、この程度は文字通り朝飯前だった。
無論、当番の生徒たちが普段から綺麗にしていたから、というのもある。
アリスひとりの力ではなく、みんなの力による賜物であった。

「よし! それじゃ朝ごはんを食べて、仕事に取り掛かろう! アリスは……食べてから来たのかな?」
「あっ……はい。アリスは食べてから来ましたが、その、先生のご飯の用意は忘れていました……」
「あはは。大丈夫大丈夫、気にしないで。掃除を頑張ってもらったんだから、このくらいは自分でしないとね」

笑って手を振る先生に、しかしアリスは申し訳無さを覚える。
今日は先生のお世話を完璧にこなすつもりだったのに、ご飯の用意を忘れてしまうなんて……と。
しかし、ご飯を作ってから掃除をするのは、埃が舞ってよろしくない。
そう考えると食事をさせてから掃除をするか、掃除を終わらせ換気をしてからご飯を作ることになるが、先に食事をさせるには先生を叩き起こす必要があり、しかし先生を叩き起こすと寝不足で疲れが……。

「アリスには……何が正解なのか、わかりません。アリスはメイド勇者失格です……」
「ええっ!? 急にどうしたの、アリス?」

ハムと目玉焼きを乗せたトースト、それからコーヒー入りのマグカップを手に戻ってきた先生が相談に乗り。
「じゃあ、今はレベル80ということで」と、暫定的にレベルダウンすることで落ち着いた。



シャーレに寄せられた依頼や連邦生徒会への報告書などの仕分け。
飲み物や食事の用意と、その後片付け。
先生の話し相手、先生の個人的な出費のチェック、先生へのお小言などなど。
仕事部屋の掃除を除いても、当番のタスクは山のようにある。

厳密に言えば、それら全てをその日の当番がこなす必要はない。
日々かわるがわる訪れる生徒たちが、各々得意な分野で業務をサポートするようになっているからだ。

そして、今日のアリスは先生をお世話しにきたメイド勇者であり。
シャーレ全体の掃除を完了させつつも、コーヒーや食事を必要なタイミングですかさず提供し、ユウカの言いつけ通りレシートをチェックし、肩を揉み、お小言を繰り出していった。
先生にとってはすこぶる平和で、手伝いがありがたく、しかし耳の痛い時間であった。



「18時になったし、今日はこの辺で切り上げようか」
「わかりました、お仕事終了ですね。お疲れ様でした、先生」

先生がグッと背中を伸ばしている間に、アリスは先生のマグカップを持って給湯室へと駆けてゆき……
少しして、同じマグカップを手に戻ってきた。

「先生、こちらをどうぞ」
「これは、ホットミルク?」
「はい! ハチミツ入りのあま~いホットミルクです」

仕事中、ブラックコーヒーばかり飲んでいたから、それを気遣ってくれてのことだろう。
少し口をつけてみると、人肌程度の飲みやすい温度。
一口飲み、その甘さと優しさに「ほう」と吐息が漏れる。
ここまで気を回してくれていることに対する感謝と、アリスのメイド力の高まりを感じ、

「ありがとう、アリス。やっぱりアリスは、レベル100のメイド勇者だよ」
「! ぱんぱかぱーん! アリスはレベル100に返り咲きました! 先生のお墨付きです」

しかし、アリスからのありがたいサポートも今日はここまで。
ここから先は残業タイム……大人の時間の始まりだ、などと思いながら、アリスを見送るために立ち上がり――

「それでは先生。お夕飯にしましょう」
「えっ。晩ごはんまで用意してくれてるの?」
「はい! 今日のアリスは先生のお世話係ですから!」

用意してくれてるのなら、食べないわけにはいかないなと送り出すのを一旦棚上げし――

「先生! お食事の後は歯磨きです!」
「あ、うん。……いや、ちょっと待って。どうしてアリスが私の歯ブラシを持ってるの?」
「それはもちろん、アリスが先生のお世話係だからです!」

「はい、綺麗に磨けました!」
「……大人として大切なものを喪ったような気がする」
「それでは先生、シャワーに行きましょう!」
「待って、引きずらないで! そうそう、こうして横抱きにされるのが……じゃなくて!?」

「先生、どうしてもダメですか?」
「流石にここまでお世話される訳にはいかないから! そもそもシャワーブースそんなに広くないし!」
「そうですか……残念です」

「さあ先生、ベッドに横になってください。先生が眠るまで、アリスがお話をしてあげます」
「……どうしても、寝ないとダメ?」
「どうしてもです。先生が残業をしようとしていたことくらい、まるっと全部お見通しなのです」

「昔むかしあるところに、クロマルノ王国の第3王子が居ました。彼はみんなから胸毛王子と呼ばれており……」
「前にアリスがやってた変わったゲームだコレ……!」

そして、棚から下ろす機会はついぞ巡ってこなかった。



やはり、日頃から無理をしていたのだろう。
しばらくはツッコミを入れたりしていた先生だったが、その受け答えはすぐに曖昧なものとなり。
スヤスヤと寝息を立て始めるまで、そう長い時間はかからなかった。

それを見たアリスは物語をそらんじるのを止め、しかし帰り支度を始めるでもなく。
先生の呼吸と、時計の針の音。
かすかな月明かりだけが差し込む夜闇の中、アリスはじっと、眠る先生を見つめ続けていた。
夜は更けていく。



「んん~っ……くっ、はぁ~……。すごいスッキリしてるのに、まだ6時とか」

明けて朝。
「きょうび、子供だってこんな時間に眠らんわ」という時間に寝かしつけられた先生は、久方ぶりの心地よい目覚めを味わっていた。
前日の夕食が普段よりずっと早かったこともあってか、空腹感もすさまじい。
事実、目覚めた理由の半分くらいはこの空腹感が理由であった。

「……いや。これはいつも夜食食べてるせいかな」

――やはり、少しは生活を見直すべきだろうか?

熟睡による体調の良さを実感しながら部屋を出ると、トーストの香りが鼻先をくすぐる。

――こんな朝早くに、一体誰が?

疑問と共に給湯室を覗き込んでみると、メイド姿のアリスが朝食の用意をしてくれていた。

「……アリス? どうして……」
「あ、先生。おはようございます。今日は早起きさんですね!」
「うん、おかげさまで。……ところで、どうしてこんな時間にアリスがここに?」

アリスが当番だったのは昨日のこと。
昨晩は寝かしつけられてしまったが、その後はミレニアムの寮に帰ったのだろうと思っていた。

「それはですね、昨日こなせなかったミッションのリベンジだからです!」
「リベンジ」
「はい! アリスは先生のお世話を完璧にこなしたいと思っていましたが、昨日は朝ごはんの用意を失敗してしまいました。先生はアリスをレベル100のメイド勇者だと言ってくれましたが、それではアリスが納得できません」

だが、違った。
アリスは虎視眈々と翌朝のリベンジチャンスを狙い、シャーレに泊まり込んでいたのだ。

「――できました! アリス特製、モーニングプレートです!」
「おー。美味しそう」
「はい、きっと美味しくできてます! さあ先生、どうぞ召し上がれ!」

トーストに目玉焼き、ウインナーにサラダとフルーツを添えて。
いつもより少しだけ色鮮やかな朝食。
けれど、アリスが作ってくれたということもあり、先生の目にはとても鮮やかに見えていた。



……その後。
「生徒にメイド服を着せ、朝帰りさせた」としてシャーレの風評が悪化したが、大多数の人は「あのシャーレだしな……」と納得し、先生を知る生徒たちは「あの先生だもんね」と納得したとかしなかったとか、メイド服着て押しかけたとか。

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新戸 2023/04/18 17:33

ブルアカ:ゲーム開発部の十戒

「うぐぐ……ぬわーーーーーっ!!」

廃部の危機を乗り越えた数日後。
寮の自室に、お姉ちゃんの叫びが響き渡った。

「……どうしたのお姉ちゃん、急に叫んだりして」
「どうしたもこうしたもないよ! やっぱりおかしいでしょ、G.Bibleの中身! 神ゲーマニュアルって聞いてたのに!!」

あぁ、と私は嘆息する。
どうやらこれは思い出し怒りらしい、と。

──G.Bible。
廃部を免れるため、藁にもすがる思いで探し出し。
中身を見るためにヴェリタスと協力し。
C&Cとドンパチをやらかすハメになった、伝説のゲームクリエイターが残したデータ。
ちょうどいい記録媒体がなかったせいでお姉ちゃんのゲーム機に入れることになり、セーブデータがロストしたあの一件は記憶に新しい。

それだけの犠牲と労力を払った以上、それなり以上の報酬を求めてしまうのは人の常。
けれど、実際に表示されたのは内容は『ゲームを愛しなさい』ただそれだけ。

……確かにそれは、ゲームクリエイターに必要な素養なのだろう。
事実、もうダメかと思われたゲーム開発部も、頑張ってゲームを完成させたことで存続できた。

ゲームが好き。
ゲーム開発部が好き。
みんなと一緒に過ごす、この時間が好き。
だから、あの短時間で完成に漕ぎ着けることができた。
それは間違いのないことだ。

だけど、「終わりよければ全てよし」と言えない人も居るわけで。
そう、大切なセーブデータが消えたお姉ちゃんだ。

「よし! こうなったら、私たちも書こう!」
「書くって、何を?」
「G.Bibleみたいなのを!」

……ついでに言うと、テイルズ・サガ・クロニクル2の評判がそこそこ良かったから、調子に乗ってる部分もありそうだ。



そんなこんなで、明けて翌日。

「──というわけで! 書くよ、私たちのG.Bible!」

ユズちゃんとアリスちゃんも交えて、部室で話し合い。

「でも私たち、まだ二本しかゲーム作ってないよ? クオリティも、片方はその……だし」
「だいじょーぶだって! あれと同じくらいの内容だったら今の私たちでも書ける書ける!」
「はい! テイルズ・サガ・クロニクルシリーズを作ったみんななら神ゲーマニュアルも書けると、アリスも思います!」
「……まあ、お姉ちゃんの憂さ晴らしみたいなところもあるし。そこまで気負わなくていいと思うよ、ユズちゃん」
「そういうことなら……」

表には出さない、私たちだけのG.Bibleを書くことになった……のだけれど。

「どうすれば神ゲーを作れるか……分かれば苦労はしないよね。そもそもそれを知りたくてG.Bibleを探してたわけだし」
「ぐぬぬぬぬ……」

早々に、マニュアル制作は暗礁に乗り上げた。
私たちがそれぞれ「神ゲーだ!」と思うゲームはあっても、その作り方まではわからない。
解析すれば、プログラムの内容はわかるだろう。
でもそれでわかるのはプログラムの書き方であって、ゲームを作る上での理念や方法論ではない。

「……ひょっとすると、G.Bibleを書いた人は自分が「こうしなさい」って言ったらゲームの幅が狭まっちゃうから、あの一文だけを残したのかも」
「それは……あるかも。もし明確な手引きがあったら、あの時はそれに頼っちゃってただろうし」
「うん。それに、私たち自身がどんなゲームを作りたいかを考えて作ったからこそ、もらえた感想も特別賞も、素直に喜べたんだと思う」

もし仮に──G.Bibleに神ゲーの作り方が詳しく載っていて、その通りにゲームを作って。
それがミレニアムプライスで一位を取ったとしても、あの時もらった特別賞ほど心を動かされたとは思えない。
結局は神ゲーマニュアルのお陰……そんな気持ちが付きまとっただろうから。

「えー!? じゃあ私たちのG.Bibleは!?」
「諦めようお姉ちゃん。私たちじゃ、書けてもクソゲー回避マニュアルくらいだよ」
「そんなぁ~……」

お姉ちゃんが情けない泣き顔を作るけど、こればっかりはどうしようもない。
そもそものところで私たちには制作の経験が足りなさすぎるんだから。

「つまり、不評だった点を分析すればいいんですね?」
「え? まあ、うん。そういうことになるけど……アリスちゃん、もしかして本当に書くつもりなの? クソゲー回避マニュアル」
「はい! なぜ成功したかはわからなくても、なぜ失敗したかはわかるとエンジニア部の皆さんも言っていました!」
「なんで動いてるのかわからないプログラムと機械ほど、怖いものもないような……?」
「なのでまずはテイルズ・サガ・クロニクルシリーズのレビューを参考に改善点を──」

『ダントツで絶望的なRPG』
『一番足りてないのは正気』
『デッドクリームゾーンさえ名作に思える』

「う、うわぁん……っ!!」
「ああっ、アリスちゃん! 1のレビューはあんまり見ないほうが!」

ゲームを作った私たちは「そう感じる人もいる」ということを直視しないといけないかも知れない。
けれど、いちプレイヤーとして楽しんでくれたアリスちゃんに、あれを見せるのは忍びない……!

「レビューを参考にか~。私たちとしてはベストを尽くしてリリースしたつもりだったけど──」
「うん。確かに、って思える部分も、いくつかあったし……」
「そういう部分を忘れないように書き留めておくのもいいかもね」
「タイトルはどうするんですか、モモイ?」
「んー。クソゲー回避マニュアルは流石にイヤだし……」

G.Bibleを真似るなら……
ゲーム開発部──GameDevelopmentDepartment──ううん、G.D.D.Bibleは長すぎるよね。
Bibleと言えばトリニティだけど……あ、そうだ。

「開発部の十戒、とかどうかな?」
「じっかい?」
「十の戒律、してはいけないこと……だよね?」
「うん。数が合わなかったら数字は変えればいいし」
「封印みたいでかっこいいです!」
「うん! じゃあ、よし! それでいこう!」

そういうことになったのだった。



「とりあえず、最初のチュートリアルで騙すのはダメだよね」
「うっ! いきなり狙い撃ち!?」
「……ただの騙し討ちは、プレイヤーからの信頼を失くしちゃうもんね」
「アリスも……あれは衝撃でした」
「うううっ! ごめんなさぁい……」
「あれのお陰で衝撃と印象を残せたのはあると思うけどね」

「開幕でいきなり殺しに来るのも、なくした方が良かったのかな……?」
「それを削るなんてとんでもない! 死んで覚えるのはレトロゲーの醍醐味だよ!」
「はい! 試行錯誤をして強敵を倒せた時の爽快感と達成感もありました!」
「復活をシステムに組み込んだ方がいいのかも。ただゲームオーバーにするんじゃなくて」
「スピリッツライクみたいな?」
「うん。そのまま真似るんじゃなくて私たちなりのやり方で、だけどね」

「難易度は……下げた方がいいのかな……?」
「色んな人にやってもらう前提なら下げた方がいいのかも」
「作って何回もテストしてると慣れてきちゃうもんね」
「? 何度かやれば慣れるものじゃないんですか?」
「それはできる人の理屈なんだよ、アリスちゃん。苦手な人は……本当、何回やっても、だから」

「グラフィックがチープ……ミドリ、これってどうにかできそう?」
「ドット絵で豪華にするのは難しいかも。魔王城ドラキュラみたいなのは職人芸の領域だし」
「でも3Dだとレトロのイメージからは外れちゃうよね……」
「アリス、知ってます! そういう時は会話時にキャラクターの立ち絵を付けるといいです!」
「それなら……うん、いけるかも。時間さえあれば、だけど」
「攻略本のキャラとかアイテムのイラストって、読むだけでテンション上がるもんね!」

「2が完成したのは期限が迫ってたから、っていうのもあったよね……」
「今は商売でやってるわけじゃないし、資金繰りに追われることはないけど──」
「結果を出し続けないと、またユウカに叱られてしまうかも知れません」
「延期するかもだけど、スケジュールは立てておいた方がいいかもね」



……とまあ。
レビューとか、感想とか、とっくに出てた反省点とか。
そういうのを諸々詰め込んで、私たちのゲーム制作マニュアル『開発部の十戒』は完成した。

もっとも、そのうち半分以上が身内同士での刺し合いだったけど。
お姉ちゃんが書くテキストの問題とか。
ユズちゃんの難易度設定とか。
私の作業開始が遅れがちだー、とか。

……いやいや、そもそもシナリオ上がってくるのが遅いのが元凶でしょ。
1にしたって、ファンタジーのはずが他のジャンルも混じってくるような内容だったし。

……けど、まあ。
ダメ出ししなかった時点で私も同罪か。
作ってる最中は行ける気がしちゃうのが怖いよね。
よく分からない熱のようなものに背中を押されるっていうか。
でもその「熱」が冷めないうちに完成させないと、未完成のままお蔵入りになっちゃったりもして。
なんともままならないものなのだ。



「ひとまず十戒は完成したけど……」
「やっぱり気になるかな? 最後の数合わせ」
「私は、いいと思うな。これも一つの答えだと思うし……」
「はい! アリスもそう思います!」
「や、私もイヤってワケじゃないんだよ? ただ、なんていうかこう、気持ちの問題って言うか……」
「G.Bibleのために、セーブデータが犠牲になっちゃったからね」
「うう……私の汗と涙と時間の結晶……」

レビューと向き合い、反省点を列挙し、身内とやり合ってもなお出てきた戒律は九つで。
誰の悪いところ探しをしてやろうかと、最後の戦いが始まりかけたところで、
『G.Bibleの「ゲームを愛しなさい」を採用するのはどうだろう?』という案が出てきたのだ。

ゲームがあったからこそ、私たちは今の関係を築くことができた。
私とお姉ちゃんの関係だって、ゲームのお陰で良好になったのだ。
だからきっと、これから先も、私たちがゲーム自体を嫌うことはない……と、思う。

だけど、だからこそ。
最初に抱いたその気持ちを敢えて言葉にしておくのは、アリなんじゃないかとも思うのだ。
それは多分、お姉ちゃんも同じだろう。
大きな代償と労力を支払って得たものがあの一文だったから、思うところがあるってだけで。

「──よしっ! 吹っ切れた! ゲーム開発部の十戒はこれにて完成! お疲れ様!」

そんな気持ちも、ひとしきり唸って発散したのだろう。
一枚のルーズリーフ……十戒を書き記した、走り書きや落書き混じりの紙片を掲げ、お姉ちゃんが言った。

言い出しっぺであるお姉ちゃんが終了を宣言したのなら、この会議はこれでおしまい。
私たちはささやかな歓声を上げながら、パチパチと拍手をしたのだった。



その後、私たちの十戒はリングバインダーに収められた。
ゲーム開発部の活動記録、その一枚目に。

これから先、迷うこともスランプに陥ることもあるだろう。
そんな時にそっと取り出し、ここに記された文字を辿れば、
「ああでもない、こうでもない」
と、みんなでやり合ったことを思い出せるはずだ。

その時の気持ちを忘れさえしなければ、きっと私たちは頑張れる。
だって、ここにはゲーム開発部のみんなの思い出が詰まっているのだから。

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新戸 2022/12/27 12:59

ウマ娘:スズカと行く二年参り

「トレーナーさん、そろそろ行きましょうか?」
「ん、そうだな。出発しようか」

十二月三十一日、大晦日。
今年も残すところ一時間。
そんなタイミングでスズカと二人、外へ繰り出す準備をする。

コートにマフラー、右手には黒の手袋。
ポケットに五円玉を二枚忍ばせて、財布を懐に突っ込めば準備は完了。
一足先に玄関を出たスズカは紺色のコートを纏い、左手だけを手袋で覆っている。
施錠を済ませ、鍵をポケットに放り込み、スズカの方を振り向いて、

「じゃ、行こうか」
「はいっ」

俺が左手を差し出し、スズカが右手でそれを握る。
二人並んで歩くようになって、いつしか当然の習慣となったそれ。
特に冬は暖かくてありがたいな、などと思いつつ。

「今年ももう終わりかあ。なんか、年々短くなっていってる気がするなあ」
「ふふっ、トレーナーさんったら。それ、去年も言ってましたよ?」
「あー……確かに言った覚えあるな」

なんでもない会話を交わしながら、近くの神社へと向かった。



近場の神社は、長い階段を登らなければならないこともあり、普段はさほど人気がない。
だが、正月の初日の出を見るのなら、小高い場所にある神社は絶好のスポットとなる。
けれどやはり年をまたぐ、二年参りの時間帯となると訪れている人の姿はまだまばらで。

「まだ少し時間がありますし、甘酒をいただきませんか」
「いいね。温かくて美味しそうだ」

年をまたぐその瞬間の、賽銭箱前の先頭を虎視眈々と狙いつつ。
左手にスズカの体温を感じながら、冬の澄み切った空を見上げ、時を過ごす。
時折手をぎゅっと握ったり、握り返されたり。
視線を感じて左を向けば、スズカと目が合って笑い合ったり。

温かさは自他の境目を曖昧にし、寒さは輪郭をハッキリさせる。
冬の冷たい空気は孤独感を一層深めるけれど。
だからこそ、繋いだ手のぬくもりが一際強く、大きく感じられる。

暖かい部屋の中でのんびり、ぬくぬく過ごすのも好ましいが。
こうして二人、寒い中で待つというのも、俺は嫌いではなかった。

「トレーナーさん」
「ん」

呼びかけに応じて歩を進め、賽銭箱に向かう列へ。

並ぶと言っても、そこまで人は多くない。
今年も残すところあと五分。
結局は、前の人たちがどれだけ長く祈るかの賭けでしかない。
だからスズカにとっても、これはちょっとした運試しみたいなもので。

「あと三十秒か。……スズカ、五円玉」
「ありがとうございます」

けれど、こんなちょっとしたお遊びでも、上手くいったら上機嫌になる。
そんなところに可愛らしさを覚えつつ、五円玉を放り投げた。



「トレーナーさんは何をお祈りしました?」
「いつも通りだよ。スズカは?」
「私も、いつも通りです」

これもまた、いつも通りのやり取り。
具体的に何をお祈りしたか、教えたことは一度もない。
それでも、なんとなく。
お互いに何を祈ったかは、分かっている。

「けど、あのやり方で叶うかどうか」
「大丈夫ですよ。きっと」

玄関を出て手を繋いでから、俺の左手とスズカの右手は、ずっと繋ぎっぱなしである。
つまり、参拝の最中もお互い片手が塞がっているわけで。
お参りの基本的な作法とされる二礼二拍手一礼。
その拍手を、お互いの空いた手をぶつけての「ぱふ、ぽふ」で済ませているのである。

「……ま。神頼みが通じなくても、そうなるように頑張ればいいか」
「はい。今年も頑張りましょう」

「今年もよろしく」と言うかのように、繋いだ手をぎゅっと握られて。
俺もそれに答えるように、ぎゅっと手を握り返す。

静まり返った帰り道。
耳に届くのは除夜の鐘と、お互いの息遣い。

耳が痛くなるような寒さの中でも、孤独はこれっぽっちも感じない。
繋いだ手のぬくもりと、愛しい人の笑顔が傍にあるから。

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新戸 2022/12/18 19:12

ウマ娘:ネコと和解せよ

トレーナー室が、猫に乗っ取られてしまった。

ことの始まりはある秋の日。
風が肌寒くなってきたタイミングで降った雨は、激しさこそなかったものの冬の到来を予感させるには十分なほどに冷たくて。

「トレーナーさん、ちょっとこの子たち避難させてあげてくれませんか?」

そう言って、スカイが何匹かの猫をトレーナー室に連れ込んできたのだ。
その中には俺にも見覚えのある、スカイと遊んでいた猫もいて。

「わかった。タオルとか暖房は必要か?」
「助かります!」

友達の友達を助ける、という感覚に近いだろうか。
ともあれ、そのような許可を出したわけである。

ファンヒーターの前に並び、その温風を気持ちよさそうに浴びる猫たち。
動物嫌いでもなければ心和む情景だろう。
俺もその例に漏れず、仕事の合間にそちらを見ては癒やされたものだ。



──時に。
庇を貸して母屋を取られる、という言葉がある。
一部を貸したら全部を奪われてしまったという、要するに『恩を仇で返される』なヤツだ。
あんな感じの事態が、トレーナー室で発生した。

少し考えれば分かることだが、秋から冬にかけて気温は日々低下していく。
外で暮らす猫たちには厳しい季節だ。
スカイの友達である地域猫にとってもそれは同じで。
故に猫たちは、温風を求めてトレーナー室にやってきた。

『もうすぐ使うだろうし、いちいち仕舞っておくのもなあ』

そう思い、出したままにしていたファンヒーターの前に陣取り、稼働させよと視線で圧をかけられ。
ファンヒーターの前から離れる猫がいたかと思えば、トイレのためにドアを開けるように要求され。
その猫がトイレを済ませて戻ってくるまで、木枯らしを浴びながらドアの前で待機することになり。

「あははー……あの子たち、来ちゃいましたか」

授業を終えてやってきたスカイから、苦笑いと謝罪を受け取ることとなったのである。

「えっと。冬の間、あの子たちをここに置かせてもらっても構いませんか?」

必要なものは、ちゃんと私が揃えますから──。
スカイにそうお願いされては、首を横には振れなかった。
(飼育の許可自体は、理事長に伺いを立てたら秒でもらえた)



その後はまたたく間に、トレーナー室がキャットナイズされていった。
そんな言葉は多分ないが、そう言うほかない。

まず猫用のエサとエサ皿、それからトイレ。
冬が来て、暖房を切って帰っても寒さに震えずに済むようにそれぞれの寝床。
ファンヒーター前に敷くためのラグ。
室内でも運動できるよう、キャットタワーやおもちゃなどなど。

まあ、元々物がそこまで多くない部屋だったから別に問題はないし、猫たちも妙にわきまえているというか……こちらが息抜きをしている時にしか、ちょっかいを出してこない。
腕やキーボードの上に居座ることもなければ、書類や棚には近寄りもしない。
どうやらスカイが言い聞かせた言葉を理解して、ちゃんと守っているらしいのだ。
だから猫がいる、それ自体は別に構わない……のだが。


「あ、またソファで寝て……もうそろそろ肌寒い時期だろうに、まったく」

そんなことを呟きながら、ソファでお昼寝するスカイに毛布を掛けてやったところ。
体をよじ登り、頭の上に陣取った猫に、額をしこたま猫パンチされるという暴力沙汰が発生したのである。
解せぬ。

その後も、コタツを引っ張り出して休憩用のスペースを設けた時。
スカイの隣以外の辺を猫たちに占拠されたので、コタツを諦めてソファに座ろうとしたら、ズボンを咥えて引っ張られ、スカイの隣にお邪魔することになったり。

バレンタインデー。
俺にチョコを渡して走り去ったスカイが、猫に追い回されパンチされたり。

春を過ぎても、当然のように居座り続けてたり……と。


そう。
猫たちにとってトレーナー室は、すでに我が家も同然となっていたのだ。



十年二十年とトレーナーを続けていく気概は、ある。
だからこの部屋に居座り続けること自体は難しくはない……と、思う。

しかし、猫たちの世話をしているのはスカイだ。
現役を退いた後、猫たちを実家に連れ帰るかも知れないし、里親を探す手だってある。
手を出してくることもあるが、基本的には利口な猫たちだ。
もらわれた先でも上手くやっていけるだろう。

だが、果たして俺は。
猫たちも、スカイさえもいなくなったトレーナー室に、耐えられるのだろうか?
「トレーナー室、まこと広うなり申した」とこぼさずにいられるのだろうか?

すでに憂鬱だ。
心まで猫たちに乗っ取られてしまった。
そして、ため息なんて吐いていたからだろうか。
スカイにも、猫たちにさえも心配そうな目で見られてしまった。

「トレーナーさん、何か心配事でもあるんですか?」
「心配事というか何というか……」

濁してうやむやにしても良かった。
だが、それは不義理だ。
スカイの悩みに、心のうちに踏み込んだこともある。
だったら俺自身も、胸襟を開くべきだろう。

「実は、かくかくしかじか」

……心の内を語るのは、些か気恥ずかしいものがあったが、快いものでもあった。
悩みを話し、共有することで、心が軽くなったからだろう。
そして一通りの話を聞き届けたスカイは、俺の悩みに対し、こんな提案をしてくれた。

「だったら、引退後は私が近くに家を用意しますから、トレーナーさんも一緒にこの子たちと暮らす、なんてどうです?」
「え。すごいありがたいけど……プロポーズだと思っていいの? それ」
「……」


猫たちとスカイに、しこたまパンチされてしまった。



──ともあれ。
トレーナー室は猫たちに乗っ取られてしまったが。
これからはもっと気楽に、もっと楽しく過ごせそうな気がしたのだった。

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新戸 2022/12/03 03:01

ウマ娘:グラスワンダーの独占力

最近、グラスに後をつけられている。

顔見知りの子たちに、グラスと一緒にトレーニングしてくれるように頼んだり、
その関係で話をするようになったり、ちょっとしたアドバイスをしたりと、
担当契約を結んだトレーナーとウマ娘ほど緊密ではないにせよ、
合えば挨拶をする程度には、親しくなるだけの機会はあったわけで。

知人である以上、何か悩んでいるようだったり、人手が必要そうだったなら、
スケジュールに問題がなければ、手を貸すのは当たり前のことだろう。

が、ウマ娘的には……というよりも、グラス的には、
俺が担当外の子たちにお節介をする様は、少々思うところがあるようで。

「──それで、スイープさんに何故あのような言葉を?」
「そうしたら、グラスのスピードを上げるヒントが掴めそうな気がしたから……かな?」
「……はあ。いえ、確かにタメにはなりました。そこは合っています。ですがトレーナーさん、あの場面で走って逃げようなどとけしかけるのは──」

俺が顔見知りの子たちと話をすると。
決まってその後、このようにしてグラスとお話するのがお決まりとなってしまった。

──そう。
俺はグラスに、後をつけられているのだ。



「俺ってそんなに信用ないんですかねぇ……」
「あー、あはは……」

週末の居酒屋。
グランドライブ関連で縁を持ったライトハローさんに、ついつい管を巻く。

彼女が俺と同世代であったこと。
かつてレースを走り、しかし今は競技者ではないこと。
そして学園関係者ではない、友人であったこと。
それらが俺の口を軽くしていたのだろう。

学生であるウマ娘に愚痴るなんてのは論外だし、
トレーナー間の繋がりに、友情はあれどもライバルであることに変わりはなく。
理事長や、その秘書であるたづなさんに相談するなんてのは論外も論外。

その点、ライトハローさんは同世代で話しやすいし、雰囲気も柔らかい。
それに活躍こそしなかったらしいが、かつて競技者であった経験から
ウマ娘視点での考えや思いを予想してももらえるのだ。

もちろん、それはあくまでライトハローさんの考えであり、
今回で言えば「グラスが何故俺を付け回すのか」を正確に言い当てるものではないかもしれないが、

「でも、グラスちゃんの気持ちもわかります」
「そうなんですか?」
「はい。だって、担当トレーナーさんにもっと自分を見て欲しいって思うのは、誰でもそうだと思いますから」
「──」

「たとえばの話ですけど」と断ってから、ライトハローさんが言葉を続ける。

グラスが俺以外のトレーナーと親しげに話していたら、気になるのでは?
それでグラスが何らかのアドバイスを受け、走りに変化が起きた場合は?
そんなトレーナーとグラスが、俺の知らないところで楽しげにしていたら?

「うぐぐ……。正直に言うとキモいと思われるかも知れませんけど……妬きますね」
「ですよね。トレーナーとウマ娘だと少し立場が違いますから、単純に逆転させるのも正確ではないですけど。でも、結局はそういうことだと思います」

……そうか、そうだよなあ。
良かれと思ってあれこれお節介を焼いてたけど、そう言われてしまうとぐうの音もでない。

「担当以外の子とは、あまり話とかしない方がいいんですかね……?」
「いえ、余計なお節介だと言われてないなら、続けた方がいいと思います。担当の居ない子も、学園にはたくさんいますから」
「それは、確かに」
「なのでトレーナーさんがすべきことは、ちゃんとグラスちゃんに話を通すことです」
「それは、今から誰それと話をしてくるぞー、みたいな?」
「いえ! これからもいろんな子にお節介をするだろうけど、俺の一番はお前だ! とグラスちゃんに言ってあげることです!」

ダン、と机をジョッキで叩き、顔を赤らめたライトハローさんが言う。
どう見ても酔っ払いの発言だが……一理ある。
少々小っ恥ずかしいが、それでグラスとの関係が円滑になり、
後をつけまわされなくなるかも知れないのなら、試してみる価値はあるだろう。

「今日はありがとうございました、ライトハローさん」
「いえいえ、どういたしまして」

かくして、週末の飲み会で悩みも解決。
月曜にでもアドバイスを実行しようと心に決めて、帰宅した。



そうして迎えた、月曜日。

「グラス! 俺はこれからもこれまでのように、いろんな子にお節介をすると思う!」
「急にどうしたんですか?」
「でも俺の一番はグラス、お前だ! だから安心してくれ!」
「……平熱ですね」

額に手を当て、熱を測られた。
確かに俺らしくはない行動だけども。だけども。

「誰かに、何か言われたんですか?」
「言われたというか……実はこの間の金曜日に、ライトハローさんにアドバイスを」
「正座」
「えっ」
「そこに正座してください、トレーナーさん。その話、詳しく聞かせてもらいます」

どうしてこうなった。



……その後、グラスに一連の流れを話したことで理解を得られ、
「後をつけまわすのは、もうやめにします」と言ってもらえた。

で。
代わりに、ぶらぶらと歩き回る時は常にグラスが隣にいるようになった。
思い描いていた解決の形とはいささか異なるが……
閃きをすぐさまグラスに伝えられるし、まあ、これはこれでいいか!

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後書きです。

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